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670 名前:一刀十三号 ◆keNb29aoZQ [] 投稿日:2011/03/05(土) 08:44:31 ID:Q4jnPS1+O
「にゃー(シンプル イズ ベストに17桃香です)」
「だ、そうですよ〜…」
671 名前:一刀十三号曰わく、[] 投稿日:2011/03/05(土) 08:48:07 ID:Q4jnPS1+O
江東の地から一刀が無事に徐州に帰って来た。
日程は知らさせていたので殆どの者がその時間には仕事を終わらせるか、放り出して城門にて出迎える。
「お帰りなさい…ご主人様」
一番始めに声をかけたのは、代表して桃香だった。
「ただいま、桃香」「ハイッ!」
返事してくれたことが嬉しくて、その返事に返事をしてしまう。
「皆も久しぶり、元気だった?」
「「「ハイッ!!」」」
この場に居た者たちからは元気な返事が返ってくる。
次に愛紗が挨拶ではない内容の言葉をかける。
「その、ご主人様…お怪我をなさったとか?ご無事なのですか」
「ああ大丈夫だよ。怪我はおろか傷も無い、大袈裟に言えば後遺症とかの類も無いよ」
それは嘘だったがその言葉に一同は、ホッと胸を撫で下ろしていた。
「その件に関しては本当に申し訳ない、我らがもっとしっかりとしていれば…我が姉にして孫呉の王、孫伯符の名代として詫びを入れよう」
「……桃香、月。ごめん」
それぞれが謝罪の言葉を口にするも。
「孫権さんそんなお詫びだなんて、頭を上げてください。お節介焼きのご主人様が『なにかしらの時にしゃしゃり出て勝手に怪我をした』と云うのが大筋の真相でしょうから…」
672 名前:一刀十三号曰わく、[] 投稿日:2011/03/05(土) 08:53:44 ID:Q4jnPS1+O
妙に鋭い桃香の推理に『ドキッ』としながらも平静さを装う一刀。
「ほ〜らっ恋ちゃんも顔を上げて!どうせ悪いのはみんな、み〜んな、ご主人様なんだから」
「いや、一刀は悪くないぞ。むしろ我が姉を、我らの王を助けてもらったぐらいだ!」
その言葉にその場に居た全員が女としての感が働いた。
「時に…孫仲謀殿?」
「なに?急に改まって」
「いえ、何故に我が主の呼び方が姓ではなく名の方に?…しかも呼び捨てござったな」
『別に非礼を問うておるのでは無く……』と、依然と言葉を続けている星だったが無論そんな物は蓮華の耳に入らず。
「・・・なっ!それは!!…一刀、助けて!」
こと次第に気付いた蓮華は慌てて弁明をしようとするも、余計慌ててしまい火に油を注ぐだけであった。
『…一刀助けて…』『…一刀って…』
『…ご主人様を呼び捨てなんて、羨ましい…』
こうして呪詛が唱えられている中。
「いやはや、呉でもしっかりと種付けでしたかな、主?」
「「「ご主人様!!」」」
星の一言が留めとなる。
久しぶり故に感激の再会になるはずだったのだが、いまや鬼も逃げ出す修羅場と化していた。
673 名前:一刀十三号曰わく、[] 投稿日:2011/03/05(土) 08:59:10 ID:Q4jnPS1+O
「いや…私はまだ一刀とは…そういう関係に…」
「ほほう?では種付けはこれから、まずは仕込みだったと」
「ぬっ!」
「なに!」
蓮華の言葉に星が反応し、そして愛紗と思春が連鎖反応した。
『『チャキ!!』』
愛紗と思春が同時に武器を構える。
「勘弁して!この二人同時は無理だから!死んじゃうから」
このやりとりにみんなが良くも悪くもみんな、自分たちのご主人様が帰って来たことを実感していた。
『…ポッ』
ただ、依然と恥ずかしがって取り残されている蓮華と、半ば本気で一刀を亡き者にしようとしている思春を除いて…
・・・
・・

そしてようやく落ち着いて来た頃、今日の晩に一刀の無事に帰還した祝賀会を開くと蓮華と思春、二人を誘ったのだが。
『一刀を無事に届けた今、まだ国元が不安でもあるから一刻も速く戻りたい』と、丁重に断られた。なので、蓮華達を皆で見送った後に城に入った。
◇ ◇ ◇
その晩、祝賀会が開かれた。
始めは普通の宴会だった、だが程良く酔っ払った愛紗が一番最初に絡んできた。
「で、ご主人様…ヒクッ!いったい揚州で何があったんですか?勿論、怪我の事ですよ…」
「なんにも」
隣に座った愛紗からの直球も、あえて見逃し三振を決め込んでみた一刀。
674 名前:一刀十三号曰わく、[] 投稿日:2011/03/05(土) 09:03:06 ID:Q4jnPS1+O
だが愛紗の質問を筆頭に心配で同じ質問をする者、聞きたいが言い出せなくてもじもじしている者、黙りを決め込む者と人それぞれだ。
元気になった後、雪蓮から桃香たちに『怪我をした事をやんわり伝えた。多分大丈夫だから…安心して』と、聞かされた。
更に後日、使者の任務を終えて帰ってきた穏に謁見の内容を聞くと半ベソに成って怒られたので謁見の中身は未だ不明の一刀。
まあ、孫策を襲った毒矢で一刀が代わりに傷ついて“そのおかげで危うく死にかけ”毒抜きの為に孫策が傷の部分を盛大に噛み千切った為に『北郷一刀の身体に一生消えない傷が残った』
 なんて事がバレたらと思うと自然と背筋が寒くなっていった。
「(本当の事なんて言えないな、少なくとも暫くは。誰かさんなんて『戦です!即、戦です!!』なんて言いだしかねない)」
幸いにも一刀に残った傷は正面から見て腕の内側、注意深く見ないと分からないだろうし、おいそれとバレないだろうと思っていた。
「使者の陸遜から聞いているだろ、流れ矢で怪我しただけだって」
「ならば、その傷をお見せください」
「……怪我から二ヶ月も経ってるんだよ、普通治るだろ」
675 名前:一刀十三号曰わく、[] 投稿日:2011/03/05(土) 09:07:49 ID:Q4jnPS1+O
「刺さった矢傷ならばそれは一生残ります。そして二ヶ月程度で跡形も無くなって、治るようなかすり傷で・・・わざわざ報告の為に使者なんか立てないでしょ!!」
「(うっ…酔っ払ってる筈なのに、鋭いです愛紗さん)」
愛紗の的確な指摘に内心タジタジの一刀。
「怪我を負ったと聞かされて、私も含め皆が皆、心配で仕方ありませんでした…それなのにご主人様は…のほほんと…」
結果、約四ヶ月近くの放置プレイが物凄く効いているらしい。
掴んだ腕を放さないで瞳に涙を溜めながら上目遣いの愛紗、二人きりなら抱き締めてそのまま押し倒してただろうと一刀は確信していた。
「おっと愛紗よ、そこまでだぞ」
凄く良い雰囲気だったのを、突如邪魔されて怒りを露わにして星を睨んだ愛紗。
「お主の今の気持ち分からないでもない。だが、四ヶ月も待たされたのは私も含めみんな同じだぞ。ならば、序列で考えれば桃香様が妥当だと思うのだが?愛紗」
「えっ!?」
突然話を振られて驚く桃香。
「私?私は後でいいよ…愛紗ちゃんがご主人様の事で凄く心配していたのは本当だし」
桃香が遠慮する言動と仕草を見せる。
676 名前:一刀十三号曰わく、[] 投稿日:2011/03/05(土) 09:10:58 ID:Q4jnPS1+O
だが、愛紗も桃香がどれだけ心配していたか分かっている。
実は報告が有ったその日から、大小を含めてポカミスが絶えないでいたのだ。
「…すまぬ星、礼を言う…」
暴走しかけた自分を止めてくれた星にお礼をつぶやく愛紗。
「桃香様。今晩はご主人様と…」
愛紗の薦めに戸惑い、みんなの顔を見回してしまう。
その場に居る全員の優しい顔に思わず目尻に涙が少し。
「皆からのお願いです」
「うん…ありがとうね、皆。今夜だけは甘えさせて貰うね」
そのやり取りを見た一刀が自分はどれだけみんなに心配をかけ、大事にされているのか悟った。
「みんなごめん。本当に…ごめん」
思わず頭を下げる一刀。
「そんな、頭を上げてご主人様。私が勝手に大袈裟に心配しただけだよ」
「『必要以上に他人の心配をする』桃香はそんな器用じゃないだろ、いつも全力で物事に当たるんだから、時々見てるこっちがハラハラするぐらい」
そう言うと桃香の顔を覗き込む一刀、覗かれた桃香は顔を真っ赤にする。
「おそらくだけど。夜もあまり良く寝てないだろ」
「えっ!…なんで、それを…」
不意な図星に呟いてしまった桃香。
677 名前:一刀十三号曰わく、[] 投稿日:2011/03/05(土) 09:14:59 ID:Q4jnPS1+O
「うっすらと、目にくまがあるぞ」
「ウソッ!やだっ!?」
思わず目を両手で隠してしまう桃香。
「やっぱり寝不足勝ちだったか」
その台詞に『ピンッ!』と来た桃香が。
「…酷いよご主人様、騙したのね」
「騙してない、うっすらと目にくまが有るのは本当だし…その桃香の美しさに陰りが…あると…言うか…」
後半はごまかした一刀の言葉も桃香の耳にはしっかり届いていた。
「…ご主人様…」
「みんな、本当にすまなかった。ただ本当に、もう大丈夫だから心配しないでくれ」
「『もう大丈夫』…それはやっぱり、大丈夫ではない時があった…と、考えてよろしいのですよね、ご主人様?」
鋭い指摘に口を当ててしまった一刀を皆が見逃すはずもなかった。
「・・・やっぱり“何か有ったんですね”…さあ!何が有ったか白状してもらいましょう!!ご主人様!」
「あー!もう勘弁してくれー!!」
詰め寄る愛紗と悲鳴を上げる一刀を尻目にみんなの笑いがこだまする。
一部は暖かく見守り、また一部の者は右往左往していた。
それに気付いた愛紗もいつの間にか釣られて笑っていた。
◇ ◇ ◇
・・・
・・
678 名前:一刀十三号曰わく、[] 投稿日:2011/03/05(土) 09:16:59 ID:Q4jnPS1+O
その晩、一刀の部屋。
「ご主人様♪」
「なに、桃香?」
「えへへ〜呼んだだけ♪」
閨の中で寄り添う二人。
「ご主人様と二人っきりなんて本当に久しぶり。ご主人様の匂い、体温、感触が・・・胸の熱が収まらないのご主人様」
桃香から抱きついて、唇を寄せてくる。
「ひふううぅぅん、ちぷっ、くむ……ふ、はふ」
濃厚な、それこそ三ヶ月分を取り返すような長いキス。
「ん、ふっ、む!?うっ、ぷ、ん、ん」
ようやく永いキスを止めて唇を解放されると、自由になった唇をお返しと云わんばかりに桃香の耳に運んで、まずは縁を次に全体を舐め回し始める。
「はぅ!?うぅ〜、う…っあ、あ、あふぅ、ん」
「ごめん、桃香。もう我慢出来ない」
「いいよ、ご主人様。私も、もう我慢の限界♪」
一刀と桃香が繋がる。
「ご主人様のが、ごひゅじんさまのぉっ、ぢゅぷ……ふ、ちゅッ」
行為に浸りながら、またキスにも移る。
本番の方も三ヶ月分を取り戻すかの様に激しく求め合った、永く甘い一時が続く。
・・・
・・

ことを終えて、自分の腕の中で健やかな寝顔の桃香を見つめと、改めてこの幸せ“も”守ると心に誓う一刀だった。
679 名前:一刀十三号曰わく、[] 投稿日:2011/03/05(土) 09:21:31 ID:Q4jnPS1+O
涼州に赴き、名将と名高い馬騰とも会え一帯を平定する。
漢王朝を繋がりとして馬騰と協力体制になれたことに満足する曹操。
錦馬超こと、馬超とは戦直前の口上の後、会えないのが心残りと言えば心残りらしいのだが…馬騰の娘であることと口上の時のやりとりから推測する性格を考えれば『結果としては良かったのかも?』と思っていた。
偶然と機転とで張三姉妹を用いた策のおかげで当初推測していた被害を比較的抑えられた曹操軍。
こうして地形的に後方の憂いを無くした軍勢は無事に許昌に帰還した。
◇ ◇ ◇
公式による涼州の戦いの褒美をそれぞれに与えたのち、私的な褒美で曹操は干禁の服を購入の為に街に繰り出していた。
遠慮の無い褒美の三着の服も曹操に取っては大したことでは無かったが、その後の夏侯惇と干禁の服屋の奥に籠もった密談の方に驚異を感じていた。
城への帰り道に遠巻きながら例の本屋を眺めて曹操は干禁に訪ねた。
「あの本屋…よね?」
「その通りなの〜」
「早速、取り調べますか?華琳様!」
「待ちなさい、春蘭。まだ泳がせておくわ、手出し無用よ」
「は、はい」
少し淋しそうに返事をした春蘭。
680 名前:一刀十三号曰わく、[] 投稿日:2011/03/05(土) 09:32:53 ID:Q4jnPS1+O
「で、あの本は貸してくれると嬉しいんだけど?場合によってはもう一着、追加してもいいわよ」
「そのことに関してなんですが、華琳さま?」
「なにかしら沙和?」
「本が無いのは困るからまずは写しが必要なのー、そして調べが終わったら本を返して欲しいの」
「なぜ、写しが有ればそれでいいんじゃないの?」
「それが、なぜなのか…あの本がとっても大事に思えて…なの〜」
と、本を大事に抱えながら淡い不思議な表情を浮かべる干禁。
それに一番近い表情を曹操は知っていた、それは自分を純粋に見とれている時の荀文若にそっくりだった。
「判ったわ、ならば『写しを作ったらその本を渡し、調べが終わったら原本を返す』それでいいかしら?沙和」
「それだったら…いいの」
「なら決まりね」
右手を干禁に向かって差し出す曹操、一瞬だけ戸惑ったが素直に本を差し出した。
「早速写しを作りなさい。そうしたら例の密書との共通点、この店との接点、あるならば背後関係を調べるわよ」
こうして城への帰る速度を若干速めた曹操であった。
◇ ◇ ◇
「例の本、調べはどうなってるの?」
例の本とは、勿論干禁から借りている新兵訓練の本である。
681 名前:一刀十三号曰わく、[] 投稿日:2011/03/05(土) 09:36:39 ID:Q4jnPS1+O
「はい、例の密書と本の書き手ですが、ほぼ間違い無く同一人物かと思います。字の癖にかなりの特徴が見受けられます、特にこう全体的に丸みの癖が」
そう言いながら二つの書状を出し説明する郭嘉。
「ならばあの本屋とこの書き手は繋がりがあると?」
「それは調べなければ分かりません」
「ならば調べなさい」
「御意…」
こうして密かに本屋に対して調査が始まった。
◇ ◇ ◇
そして、曹魏による本屋への調査が始まった約一ヶ月半後に一つの報告書が冥琳に齎された。
『許昌の拠点の一つ、書店に魏の探りが入ってます。明確な目的は不明、おそらくは諜報活動の拠点と見抜いた模様。ご指示を』
暫し考えた冥琳が返答用の竹簡にただ一つの言葉を書いた。
『閉店』
◇ ◇ ◇
ある日の朝、やや慌てた様子で郭嘉が曹操の下に。
「か、華琳様!」
「どうしたの稟?騒がしいわよ」
「も、申し訳ございません。ですが、例の本屋が今朝突然に閉店いたしました!」
「なんですって?」
その報告に驚きながらも冷静に対応する曹操。
「本屋の前には閉店したとの立て札が、店内はもぬけの殻でどうやら一晩で全てを持ち去った様子です」
682 名前:一刀十三号曰わく、[] 投稿日:2011/03/05(土) 09:41:46 ID:Q4jnPS1+O
『やられました…』と、付け加えて悔しがる郭嘉。
「でもこれでなにかしら関係が有ると確信出来たわね。稟、引かれたなら引かれたで緩みが出る、徹底的に調べなさい」
「御意」
急ぎその場を離れて行った郭嘉であった。
その後の調査でなんとか、例の本屋の真の経営は孫呉であり諜報活動の拠点だった、と突き止めれた。
だが、それから更に調査をするものの情報源であるはずの孫呉で兵士訓練にはその様な方法を取り入れてないとの報告が来る。
『極秘な訓練で見つからないのでは?』と憶測も出るも、ならばなぜそれが本となって許昌に?と矛盾した事実が混乱を招くだけであった。
そんな中、一人の女性が推測だが意見を述べる。
「華琳さま〜、未だ推測の域を出でませんが…最早これは未知の知識と言う領域に達してはないでしょうか?」
「未知の知識?」
「はい、稟ちゃんと私が各地を旅しながら見聞を広げてましたが…沙和ちゃんの言う『ふぁ〜く』とか『さのばびっち』と言った単語は聞いたことが有りません」
「そうなの?稟」
「はい、風と二人それなりに大陸を練り歩き見聞を広めたつもりですが…そのような単語、聞いたことがありません」
683 名前:一刀十三号曰わく、[] 投稿日:2011/03/05(土) 09:44:11 ID:Q4jnPS1+O
そう答えながらもなにか思い出そうとしている郭嘉。
「・・・そう言えば、単語と言うか発音と言うか?昔読んだ書簡の中に似たような物が」
「それは何?」
「それは・・・風、なんでしたっけ?」
「・・・・・ぐぅ〜」
「寝るな!!」
と、寝ていた程仲徳に郭嘉の突っ込みが入る。
「おおっ!」
「『おおっ!』じゃないわよ・・・って、そうでした!羅馬よ、羅馬の言葉に似ているのよ」
程仲徳に突っ込みを入れた反動で思い出す。
「そうですね〜、言われてみれば昔読んだ羅馬に関する書簡に似たような発音の単語が有ったり無かったり〜」
『どっちだよ!』と、何処からか軽い突っ込みも入る。
「そうなると一つの結論が導き出されます、華琳さま」
「それはなんや?風」
羅馬の単語になぜか惹かれた張遼が訊ねる。
「それは、孫呉とこの本は関わりが無いということ」
すると、張遼から冷静な突っ込みが入る。
「ちょい待ち!売ってたのが孫呉と関わりある本屋なのに、なんで孫呉と関わり無いんや」
「ああ、言い方が悪かったですね、本の製作に関わりが無いかと」
「売ってるのに、製作に関わり無いん?」
疑問を立て続けに投げかける張遼。
684 名前:一刀十三号曰わく、[] 投稿日:2011/03/05(土) 09:49:28 ID:Q4jnPS1+O
「まあ作らなくても、誰かが作った物を売ればいいだけですから〜。で、華琳さま、ここからは憶測ですが…」
「いいわよ、言ってみなさい」
「御意。では…揚州の孫策と徐州の劉備は大変に仲良しさんであること」
「そうね」
「そして、その劉備の所には…まさに未知の塊の様な、天の御遣いと称される人物がいるですよ〜」
『!』
程仲徳の指摘に忘れ物を思い出した様な表情になった曹操。
「最近では徐州に未知の服の意匠が姿を表し、江東の地に居た時期から揚州全体から未知の政やあらゆり運営方法が出没しました。まさに天の御遣いの影ある処に未知の知識有り!なのですよ〜」
その推測に一番驚いたのは曹操では無くその訓練法を習得しつつあり実践している干禁であった。
実質的には驚きより動揺と不安の割合の方が大きかった、何故そちらの方の割合が大きいかといえばそれをすぐ具体的に言葉にしてくれた人物がいた。
「じゃあ、なに。あれは敵の技術?しかも“敵将が考えた可能性が有る”って言うの!華琳様!?」
「どうしたの桂花、そんなに声を張り上げて?」
荀文若の考えが解っていながらも質問をしてみる曹操。
685 名前:一刀十三号曰わく、[] 投稿日:2011/03/05(土) 09:54:38 ID:Q4jnPS1+O
「これが落ち着いていられますか?ひょっとしたら彼女が敵と通じてるかもしれないんですよ。可能なら彼女の訓練法を即刻中止にするべきかと。それがもし駄目でも、せめて身辺調査はするべきかと」
干禁に取って一・二位を争う、恐れていた事二つが同時に口に言葉として出た瞬間だった。
そして、その言葉に対して誰よりも早く反応したのが楽進であった。
「ならば桂花様、私達も身辺調査なさいますか?」
「なっ!何を言っているの、凪」
「沙和は真桜と私で村を出る前は無論、その後もいつも三人一緒でした。ですが私は沙和が誰かと通じているという事実は見受けられません、ならば我ら二人も沙和と一緒に敵と通じていると見るのが普通でしょう」
「まあ、普通に見たらそうでしょうね」
と、かなり凄い発言をさらりと流す曹操。
「なのに容疑は沙和だけとは納得出来かねます!」
「そやそや、うちら三人いつでも一心同体や!」
「凪ちゃん、真桜ちゃん…」
「桂花、言い過ぎとちゃう?」
「私は一つの可能性として、軍師として警告を…」
「しかし、沙和ちゃんが奸計?埋伏の毒ですか〜…良くも悪くも沙和ちゃんには似合わないですね〜」
686 名前:一刀十三号曰わく、[] 投稿日:2011/03/05(土) 10:00:02 ID:Q4jnPS1+O
程仲徳の意見には殆どの者も納得している。
「それに凪ちゃんと真桜ちゃんとの繋がりを考えて真桜ちゃんだけならともかく」
『酷ッ!』と李典の突っ込みが入り。
「冗談ですよ〜真桜ちゃん。しかしながら凪ちゃんの性格からその可能性は著しく低いかと…」
「信頼の根拠は結局は凪やと言うんかい…トホホ」
そんな中、曹孟徳が口を開いた。
「憶測だけで話し合っても埒が開かない、ならば書いたと思わしき人物に直接聞きに行きましょう」
「華琳様!?それは」
「稟!五胡の守りは現状のまま、各城の守りは必要最低限にし許昌と洛陽のみ守備三万の兵士を置いたとして総数でどのぐらい用意できる」
頭の中の情報をフル活用し計算して導き出した答えは。
「二十六万強、かと…」
「キリが悪いわね、三十万用意しなさい。勿論“徴兵などせず”に」
残り四万弱の兵士の捻出、最近は豊かになった洛陽や許昌にかなりの流民が来ているから志願者だけでも“数は揃う”のだが、問題は質であった。
「華琳様。数だけならばすぐに揃いますが、質も考えますと…最低で半年は必要かと」
「なら、沙和。出来るかしら?」
「はい?」
687 名前:一刀十三号曰わく、[] 投稿日:2011/03/05(土) 10:02:59 ID:Q4jnPS1+O
「稟が捻出するだろう四万弱の新兵を、まあアナタ一人じゃないとしても…準備期間も考慮して二ヶ月半でどう?」
曹操のその問い掛けに一同がざわつき傍らに居る夏侯淵が耳打ちする。
「…華琳様、流石に…」
「…あら、決めるのは沙和本人よ…」
「(これが出来れば華琳様の為にもなるし、沙和への容疑も晴れるのなの)やります、華琳様!」
「よろしい、よく言った沙和。稟、今すぐに新兵募集の手配を!」
「御意」
「風、徐州の劉備に降伏勧告の使者を」
「御意〜」
「桂花!今から三十万人分の戦の準備を!」
「御意!」
「桂花、せっかく沙和が用意してくれるのだから。万が一にも“用意出来ませんでした”は許さないわよ…フフッ」
「御意!?」
最後の笑いに恐ろしさを感じながらも美しさも感じる荀文若。
一連の流れで状況証拠だけにも関わらず、なにかを確信したのか。
「じゃあ、天の知識とやらのお手並み拝見といきましょう。待っていなさい(北郷一刀!この私を怒らせたこと…後悔させてあげるわ)」
688 名前:一刀十三号 ◆keNb29aoZQ [] 投稿日:2011/03/05(土) 10:11:37 ID:Q4jnPS1+O
「にゃー(ご静聴ありがとうございました、ではまた〜)」
「でわ〜でわ〜」

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