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296 名前:一刀十三号 ◆keNb29aoZQ [] 投稿日:2011/02/08(火) 14:35:10 ID:fZHuDMPwO
「にゃー(シンプル イズ ベストに19桃香です)」
「本当にネタが無いが書く気力が無いのか…」
「・・・」
297 名前:一刀十三号語る、[] 投稿日:2011/02/08(火) 14:37:38 ID:fZHuDMPwO
「今この時期に江東の地、孫呉を攻めるのですか?」
主君の決めた軍事行動に懸念が有るのか、些か不満がこもる声で確認する三大軍師の一人郭嘉。
「ええ、そうよ」
「何故に今、江東なのでしょう?袁紹を滅ぼせました。それならば『今は涼州を平定して後顧の憂いを断つ』が私の考えれる最良の策なのですが」
「稟は不満?」
「正直賛成出来ません、今この時機に孫策に戦いを仕掛ける意図が解りません。徐州の劉備は孫策とは大変友好的です、場合によっては援軍として後ろからの強襲の危惧も」
「そうだとして聞けば涼州相手に戦うのはだいぶ勝手が違うらしいじゃない」
「はい、涼州は基本は草原が続き隠れる所が少なく、涼州の兵はその全てが騎兵と言っても過言では有りません。正に騎兵の為に用意された戦場です」
「確かに私達もそれなりに騎兵はあやつる、だが涼州の兵には遠く及ばない。ならば勝手が判る相手に勝利し一人でも多く兵士を揃える、それが兵法の基本ではなくて」
「それでしたら我等魏兵、水上戦は尚更不得意かと」
「稟。江東の地は涼州の草原のように、その殆どが水の上なのかしら?魚も陸の上では息する事もままならない」
「確かに陸戦のみに持ち込めばこちらが有利ですが、孫呉にこの人ありと謳われる大軍師・周公謹がそれを許しますか」
298 名前:一刀十三号語る、[] 投稿日:2011/02/08(火) 14:40:08 ID:fZHuDMPwO
「なら私の軍師達は周公謹に劣ると」
この安い挑発に郭嘉はあえて乗る。
「たかが江東の片田舎の軍師、周公謹なぞ我等三人!いえその気に成れば私一人で退けましょう」
「あら逞しいのね、なら期待してるわよ稟」
「は・はい!!」
「それに袁術を追放した後瞬く間に揚州を制圧する手腕、ぜひとも味わってみたいわ。本当はもう少し熟すのを待ちたいのだけど…最近はろくにまとな敵を相手にしてないから欲求不満なの」
「はう…」
曹操の妖しい声に鼻から一筋の赤い線を引くも程仲徳(止血役)も居ない今、自分の君主の前で失態を晒し血まみれにする訳にはいくまいと必死に耐えた郭嘉。
「それと劉備は性格上、自分から出撃はしない。孫策からの救援要請が有ればお人好しの彼女は直ぐにでも出て来るでしょうけど、そんなものは私達が全て握り潰す」
と、言いながら肩まで上げた手で何か握り潰す仕草をする曹操。
「そして揚州平定後は城だけの包囲ではなくそれこそ州全体を包囲して経済封鎖してしまえば劉備は徐州で弱体化するだけ、慌てて討って出るのら待ち構えて撃退すれば良し。
 揚州と徐州を平定して軍備を整えからその後に涼州討って出る、どう稟?これでも私なり考えているのだけど」
299 名前:一刀十三号語る、[] 投稿日:2011/02/08(火) 14:43:54 ID:fZHuDMPwO
「はい…そこまでのお考えがあるのでしたら私からとやかく言うことはあまり有りません」
「あら?ならば少なからず言うが有るのかしら」
「はい。徐州の全てを包囲すると言いますが、それは並大抵のことではないと申し上げておきます」「それも稟が頑張ってくれるんでしょう」
今度は妖しい動きの指先が郭嘉の顔の輪郭をなぞる。
「お、お、お戯れを…華琳様(今は評議、今は評議…)」
ただひたすら必死に鼻血の噴出を耐える郭嘉。
「相変わらずつれないのね・・・まあ良いわ、けれど稟の言った懸念も一理はある。万が一に劉備に邪魔されない為にも時間との戦いでも有るの、だから急ぎなさい」
「はっ!」
郭嘉個人にとって、その日最大の危機を回避した。
◇ ◇ ◇
「はぁ…しかし正直なところ敗残兵なども取り入れた急な軍備増強とかだから、どうしても質の悪い兵が混ざっているのよね〜。曹操軍として規律を守らせることや、予定通りの行軍移動も多少手間取るかも」
「ふむ…ならば行軍調練や軍の規律は実戦で調練するとして、戦働きに関しては多少報奨金も使って乗り切るわよ」
「了解です。…では部隊の中核は正規の兵で編成。先鋒は徴兵した者たちで配置します」
「その様にお願い」
300 名前:一刀十三号語る、[] 投稿日:2011/02/08(火) 14:46:38 ID:fZHuDMPwO
「・・・ねぇ、一刀。・・・今日は暇?」
雪蓮が都合を聞いてきた事態にビックリし、そのしおらしい仕草に改めてドッキリした一刀。
「緊急で重要な仕事は無いし普通の仕事もあらかた片付けたから、暇と言えば暇だよ」
「・・・そう、ならちょっと付き合ってくれるかな?」
断る理由も無く雪蓮からの嬉しいお誘いで有る、二つ返事で返すと早速雪蓮に手を引かれて玉座の間を出て城外へと向かった。
そして俺は城からほんの少し離れた森の中にある小川へと連れてこられた。
到着した場所には膝程の高さのおそらく石碑だろう物が有り、到着するなり雪蓮はまず軽くを手を合わせた。
自然と一刀も軽く手を合わせた。
短い黙祷の後、
「ここにね……母様が眠っているの」
その言葉を皮切りに、母・文台の墓石を掃除をしだす雪蓮。
「手伝うよ」
またもや自然と手伝う選択をした一刀、その対応に雪蓮が微笑む。
「どうしたの?」
雪蓮の反応に声を出して訪ねた一刀。
「なんでも無いわよ…ただ一刀はやっぱり一刀なんだって解ったから嬉しいだけ、それと・・・ありがとう、一刀」
「?」
一刀には意味が解らず首を傾げるだけであった、だがただ一言。
「どういたしまして」
今この時は間違い無く、二人だけの時間が流れていた。
301 名前:一刀十三号語る、[] 投稿日:2011/02/08(火) 14:49:22 ID:fZHuDMPwO
◇ ◇ ◇
矢傷を負った兵士が建業の本城に到着すると城内は途端に慌ただしくなる。
「申し上げます!我が国に曹操軍が侵攻しているとのことです!現在、敵先鋒が既に本城より十里先の所まで迫っているとのこと!」
「なんだと!どういうことだ?国境の守備隊や途中の物見は何をしていた!」
「それなのですが、守備隊や途中の物見が放った伝令は尽く先の戦いで魏に下った神速と名高い張遼の部隊に捕殺された模様。ただ一人、辿り着いた伝令も事態を伝えると同時に」
「そうか分かった、なら直ちに籠城戦の準備を始めろ」
「御意」
籠城戦の命令を下したのち暫し考えに耽る冥琳。
「この時機に南下だと?先に涼州平定をして後顧の憂いを取り除くと思ったが…読みが甘かったのか、それともそう思わせてたこと事態が既に曹操の策略なのか」
「冥琳よ、そのような推測は後じゃ。ともかく今はこの状況を打破し曹操の軍勢を追い払うが最優先事項ぞ。儂は軍部に行って迎撃の準備を致す、冥琳は策殿たちを」
「分かりました、祭殿」
正に本城は蜂の巣を突っついたような状態で曹操軍を向かい討つ準備に追われていた。
◇ ◇ ◇
302 名前:一刀十三号語る、[] 投稿日:2011/02/08(火) 14:51:31 ID:fZHuDMPwO
二人は口も開かずにただ黙々と清掃作業に没頭している。
清掃作業も終わり周りの雑草は駆られて綺麗に磨かれた墓石は存在感を醸し出していた。
「こんなとこかな?」
一刀が口を開いたのをきっかけに雪蓮も清掃作業を終え母・孫堅の話題を話し出した。
「母様は嫌がるかもしれないけど、亡くなった後でも威厳が有るのよね。こんなこと言うと『死んだ後ぐらいゆっくり休ませろ!』と、怒られそうだけど」
そう語る雪蓮は、どこか寂し気で有りながらも嬉しそうで誇らし気だった。
雪蓮から孫堅の武勇伝を聞く、すると雪蓮の行動原理の何かを垣間見た気がした。
一通り聞いた後に水が無くなってることに気付く、武勇伝で興奮した頭を冷ます為に顔を洗おうと、ついでに水を汲もうと川に向かった一刀だった。
◆ ◆ ◆
「…これは命令違反だ…」
「…手柄さえ立てちまえば問題ねえよ、どこも一緒だよ…」
「…どうなっても知らいからな…」
「…お前らだって無理やり徴兵されて、いつまでも女に顎で使われるなんてウンザリだろ…」
「…徴兵が半ば無理やりなのは否定しない、だが曹操様達は考え有っての行動だとおらは思っている…」
303 名前:一刀十三号語る、[] 投稿日:2011/02/08(火) 14:54:07 ID:fZHuDMPwO
「…けっ!怖じ気づいた奴らなんか無視だ無視。だが俺達違うぞ…いいか雑魚なんて狙うなよ、一目で将官だと解る奴らを狙え!最大の獲物は敵の大将様だ…」
「…誰が手柄立てても恨みっこなしだ、けどよ隊の誰かが手柄立てれば隊にも恩賞が有るかもしれないぜ…」
「…いいかこれは抜け駆けなんだ、本隊が来るまでが好機だ。本隊が来ちまったら手柄は総て持ってかれちまうからな・・・・・よしっ、散れ!」
・・・
・・

◆ ◆ ◆
『チッ、ここは外れかよ、ん?・・・・・!!居た・・・・あきらかに将官、だな』
◇ ◇ ◇
カランッカランッカランッ…
持っていた手桶を落した、酷い脱力感と眩暈の為に持つことを維持出来なかったからだ。
以前、曹操の処にいた時にも襲われた酷い脱力感と眩暈、だが今回のこれは過去に何度か体験したモノとは比べものにならないぐらいに酷かった。
この感覚は正直言えば大嫌いな一刀、誰だって気分が悪くなるのを好き好む奴なんて居ないと考えながら。
だがこれは逆に考えれば歴史的にとてつもなく重要な分岐点を示すメッセージとも取れると悪くないのかもしれないと酷い頭痛の頭で思った。
304 名前:一刀十三号語る、[] 投稿日:2011/02/08(火) 14:57:16 ID:fZHuDMPwO
頭を振るい少しは気を紛らせる、そこから気力を振り絞って周囲を見回す。
見回した一刀はこの場には自分と墓前の雪蓮のみと確認する。
『・・・?』
ここでなにかに掴み所の無い違和感と言うか不思議な感覚に包まれる、以前頭痛が酷く思考がまとまらないのをどうにかしようと一刀は顔面を一発ぶん殴ってみた。
外的な激痛に一瞬、頭痛に対しては鮮明にクリアに成った。
『!』
そこ瞬間、この風景にデジャヴを感じた。
「(そんな筈はない。この世界においては勿論、以前でも“この風景は知らない”だが俺は知っている、“何故だ!”)」
仕方が無いので本当は嫌なのだが、もう一発顔面を強打し風景を思考に組み込ませる。
『・・・!!』
今度は明確に判ったのでもう一発顔面にパンチを喰らわす心配が無くなったのも気付いたことの内容の為に遙か彼方に消し飛んだ。
「(以前、雪蓮から聞かされた“自分が殺されたシチュエーション”そのまんまじゃないか!)」
その時のことは曹操軍の奇襲とおそらく一部の兵の独断が重なった不幸な事故なのだと一刀は未だ頑なに信じている。
そして今この時、どこからも曹操軍進行の報告はもたらされていない。
305 名前:一刀十三号語る、[] 投稿日:2011/02/08(火) 15:01:52 ID:fZHuDMPwO
けれど、一刀は“未だに激しい頭痛と付け加えられた酷い不安感が拭えない”でいた。
『華琳は奇襲をするか?』
「(奇襲ぐらい華琳じゃくてもするだろう)」
『華琳は暗殺はするか?』
「(否)」
力一杯に否定し曹操を絶対において信頼しているが、一向に一刀の心から不安が消えない。
兵士一人一人まで総てにおいて規律がしっかりしているのか?と不安が残る。
どうしても一人ぐらい暴走する奴がいるかもしれないと。
頭痛が原因なのだろう、どうしても悪い方にしか向かわない考えをクリアにする為に必要無いと思った三発目を顔面に叩き込んだ。
三度、瞬間的にとはいえクリアに成った頭は考えるのを止めた、考えるのではなく体が勝手に動いていた。
ともかくその時一刀は雪蓮に向かって走った、何をするのかも解らずに唯がむしゃらに不安を掻き消す為に走る。
それがあたかも始めから決められていたかのように夢中に雪蓮に向かって、これで勢いが余りぶつかって雪蓮に怒られたってかまわない。
『“なんなことで済む”なら構わない、いくらだって怒られる』
『なんか見えた気がした』
、『何か光った気がした』
だが、今は構わない。
「しぇれーん!!」
「一刀!?」
雪蓮に飛びつくと、一筋の疾風が走った。
306 名前:一刀十三号語る、[] 投稿日:2011/02/08(火) 15:03:32 ID:fZHuDMPwO
◆ ◆ ◆
「(ん?何か落ちたのかしら)」
母・文台の墓前に一刀のことと近況を報告している最中に遠くでなにやら音を聞くも警戒の必要無しと感じた雪蓮は報告を続けた。
「(母様。変な言い方だけど…今度は巧くいきそうよ)」
すると一刀が走ってくる気配を感じ、何か有ったかと振り向く。
「しぇれーん!!」
「一刀!?」
雪蓮が一刀に飛びつかれると二人共々倒れこみ、同時に一筋の疾風が走った。
「ア痛タタタ・・・痛ッ!!」
派手に転んだ為に軽い打撲等の痛みの後に左肩に激痛が走った。
慌てて起き上がり左肩を確認するも、実際は傷など負ってはいなかった。
ただ過去二度にわたる傷と傷みが魂魄に刻み込まれていて、この状況の為に思い出してしまった痛みだったのだ。
だがその痛みも一刀の左腕を見た瞬間四散する。
左腕にかすり傷、状況は一刀ととの墓参りの時の自分に対しての暗殺。
そのことを考えればほぼ間違えなく放たれた矢尻には毒が塗られている、そして傷を負ったのは一刀。
その結論に自分が死ぬのでわなく、一刀を失うと思った瞬間全身の血が凍る。
『!!』
矢を放った兵が相手を仕留めたのか確かめる身を乗り出した。
307 名前:一刀十三号語る、[] 投稿日:2011/02/08(火) 15:06:07 ID:fZHuDMPwO
気配に気付きその方を向くと弓を持った兵士を見た瞬間、雪蓮の中でなにかが弾けた。
「・・・」
無言で立ち上がる雪蓮。
「ひゃあぁああぁ!ぁぁあ!」
それを見た暗殺の兵士は恥じも外聞もなく悲鳴を上げ、そして逃げだした。
いまだ距離は最初の位置から一歩も縮まっていないのに。
『この場にいたら殺される』
『距離の差などなんの意味など無く殺される』
『逃げても必ず殺される』
判ってはいたのだが少なくとも今は、今だけはこの場に一瞬たりとも居たくなどなかったのだ。
逃げる兵士を追おうと流れるような動きで進もうとした瞬間。
「・・・うぅっ」
一刀の呻き声が雪蓮を人としてその場に踏み留ませた。
急いで治療に入る雪蓮、一刀の上半身の服を脱がし左腕の傷を確認する、見れば既に傷口の一部が変色し始めてる気もしていた。
やはり毒矢だと考えて間違い無いだろうと判断する。
「ごめんね、一刀」
一言誤ってから傷口に口を添えて、そして傷口を噛み千切った。
「…ウウゥ…ヴ!ヴヴゥッ」
矢の傷口を噛み千切られる痛みの為に呻き声を洩らす一刀、口には舌を噛まない為の布は無く、代わりに雪蓮の左手の手が挟まれている。
「クッ!!ッ」
308 名前:一刀十三号語る、[] 投稿日:2011/02/08(火) 15:10:10 ID:fZHuDMPwO
意識が無くとも外部からの激しい苦痛の為に強く歯を噛み締める一刀、なので雪蓮の左手は血に染まりだす。
雪蓮の左手も噛み千切られる勢いの為、苦痛の声が漏れ顔は歪み額には玉の様な汗を噴いている。
雪蓮なりの一刀に対する贖罪のつもりなのだろうか、一刀の口から左手を全く離す様子がない。
噛み千切った傷口から口を放すと雪蓮の口はまるで人を食った様な状態だった、そして傷口から溜まった血が一瞬吹き出すとまるで返り血を浴びた様な状態になり雪蓮を朱に染める。
『ぺっ』
噛み千切った部分の肉塊を吐き捨て、次いで口の中の血も吐き捨てる。
次に急いで止血と応急措置をしあらかた終わりかけた時に駆けつける人影が。
「雪蓮姉様。敵が、曹操が攻め!」
言葉の途中で雪蓮が赤く染まっている事態に更に走る速度を上げ近づく蓮華。
「雪蓮姉様!何処かお怪我でも!?」
「蓮華。いい所に来た私は大事無い、それよりも一刀を」
言われた蓮華は一刀を見るなり。
「一刀?一刀!どうしたの一刀!!私を守ってくれるって言ったじゃない」
血まみれの一刀に激しく取り乱す。
「落ち着け蓮華!」
怒鳴られた蓮華は硬直し、結果落ち着く。
309 名前:一刀十三号語る、[] 投稿日:2011/02/08(火) 15:14:15 ID:fZHuDMPwO
「ここで私や貴女が取り乱せば助かるも助からなくなる、止血と応急処置はしたから今すぐ城に連れて帰り本格的な傷の手当てをなさい。後、矢に毒が塗って有る可能性が高いわ毒の専門医も呼びなさい。
 そこに傷口だった部分があるから見せればなにかの手掛かりなるかもしれない、判ったなら急ぎなさい!」
「「「ハッ!」」」
兵士達が一刀を慎重にしかし最速に運んで行った。
「それと雪蓮姉様…」
話しかけようした蓮華は。
「…曹操…殺してあげる…」
『!』
生まれてから初めて見た姉の姿に心の底から凍りついた。
◇ ◇ ◇
口についた血をたった一度だけ袖の部分で拭い、浴びた一刀の血を拭こうともしない雪蓮は城に戻ると出撃準備の激を飛ばす。
突然の出撃命令に籠城戦の準備をしていた冥琳が駆けつけた。
「雪蓮!出撃命令って何を考えて!!貴女怪我をしているの!?」
「私は平気、しかし一刀が代わりに怪我をした。この戦いに守りなど不要、我ら孫呉は仲間を傷付けた相手を絶対に許さない」
激昂はしているもののいつもの本能に身を任せてる戦狂いの状態でもない。
「分かったわよ、昔から貴女は言い出したら聞かないものね。総員出撃準備!準備が整い次第出撃するぞ」
310 名前:一刀十三号語る、[] 投稿日:2011/02/08(火) 15:18:22 ID:fZHuDMPwO
粗方出陣準備が整ったころ雪蓮が親衛隊と出撃しようとすると、雪蓮の前方に立ちはだかる影が一つ。
「……孫策、曹操殺すのを恋に譲る」
「残念だけどいくら天下の飛将軍呂布の願いでも、それだけは聞けないわね」
「……ならいい、曹操殺すの早い者勝ち」
「まあ、結局のところはそうなるでしょうね」
雪蓮と恋のそんなやり取りの中『言葉を遮る』というにはあまりに弱々しい声が聞こえる。
「…ェレ……しぇれ…、だ目…だ…恋も」
「一刀!」
「ご主人様…」
だが、声が小さいながらも思いが比例したのか、二人の一刀に対する思いが大きいのかその役目を果たした。
「華りんは…けっし…ひきょう…なこと…しない」
必死なのか余裕が無いのか大勢の前だというのに曹操の真名を口に出している一刀。
そんな必死の一刀の頭を撫でながら。
「そうね、でも一刀?前にも言ったでしょ、曹操から噛みついて来たら戦うって。だからせめて追っ払わないといけないのよ、しっかりと躾をつけてね」
相変わらず頭を撫でながら優しく微笑み諭すように語りかける。
だがその笑顔と裏腹に内心は決して穏やかではない、それこそ曹操本人が直接関わらない配下にしろ配下が起こした不始末は主の不始末、それが世の習わしだ。
311 名前:一刀十三号語る、[] 投稿日:2011/02/08(火) 15:22:31 ID:fZHuDMPwO
ましてや、一刀は自分の命の危険に晒されているのに、そんな事はお構いなしに息も絶え絶えながらに曹操を信じそして庇う。
それが理由で一刀に引かれているのもまた事実なのだが。
そんな一刀の姿を見ていると雪蓮は、

“……正直、嫉妬せずにはいられない”

「……レンも」
今度は反応の無い恋に話しかけた一刀。
「………………………コクッ」
その返事の意味を知っている一刀は再度諭す。
「…恋、お願いだ」
「…コクッ」
モヤモヤ感を胸に抱きながら雪蓮と同じ少しだけ悲しげな目をしながら頷いた、だがその意味はまだ理解出来ないでいた。
「…お願い…から、なるべくお…び―」
喋っている途中意識を失った。
「一刀!」
「ご主人様!」
「気を失っただけですよ、止めたのですが言うことを聞いてくれない上に少々無理をしましたからな」
「一刀は大丈夫なの?」
「少々荒っぽいやり方でしたが孫策様の適切な処置のおかげで大事には至っておりません。体内に毒も残ってません、後は安静にしていれば大丈夫ですぞ」
「本当に大丈夫なの?」
一人の女性になった目で訴える雪蓮。
「…これは珍しいものを…」
医者は呟く、普段の雪蓮なら聞き逃さないものの今は聞き逃した。
312 名前:一刀十三号語る、[] 投稿日:2011/02/08(火) 15:24:24 ID:fZHuDMPwO
「もし駄目でしたら、私はここに居らず自決しておるか逃げ出しております。御遣い様を見殺しにしたとあっては孫策様にどの様な酷い目に遭わされるか分かりませんからな」
孫家専属の主治医が代表して答える。
自信に満ちた答えにようやく安心したのか雪蓮の気配がいつもの状態に戻りつつある。
「ならば呂布将軍」
「……恋でいい」
「はい?」
突然、飛将軍からの真名を許す発言に困惑する雪蓮。
「……孫策はご主人様が凄く大事……恋もご主人様が凄く大事」
一旦、目を瞑って何かを考えたのか?しかし直ぐに目を開くと。
「……ご主人様は孫策を凄く大事。……だから孫策と恋、気持ちは同じ。だから孫策に真名を授ける」
素直な思いの告白に江東の王は微笑みを含んで返答した。
「天下の飛将軍が真名を託してくれるなら、私も真名を託さないと信頼に報いられない。恋、私のことは雪蓮と呼んでいいわ。…これで一刀に関しては好敵手ね」
「…コクッ」

「なら、本当は殺したかったけど、仕方ない。一刀の言い付けを守って、曹操を懲らしめてから追っ払うとしましょうか」
「…コクッ」
その時、全軍の出撃準備が整って小覇王と飛将軍が引き連れて孫呉の軍が出撃した。
313 名前:一刀十三号語る、[] 投稿日:2011/02/08(火) 15:26:55 ID:fZHuDMPwO
◇ ◇ ◇
両軍相対するなか、雪蓮が単騎で前に出て来た。
「私も出るわよ。春蘭、着いてこなくていいわよ」
既に出る準備をしていた夏侯惇は異論を唱える。
「そんな〜華琳様」
「たかが舌戦で一々怒る春蘭を叱りつけて従わせるのも面倒なのよ」
「あう〜華琳様〜」
半ベソの夏侯惇を見て曹操と夏侯淵がほくそ笑む。
「やはり春蘭は可愛いわね」
「ですが華琳様〜孫策が卑怯にも単騎の華琳様を斬りつけるとも限りません、どうか護衛を私めに」
「春蘭。孫策わね英傑なの、英傑は自身の魂魄を裏切らない為に決して卑怯な事はしないの。だからアナタはそこで大人しく待ってなさい、なら出るわよ」
舌戦に応じる為に、曹操も単騎前に出た。
両軍が相対する間の空白部分の中央に更に二人が相対し、先に口を開いたのわ雪蓮。
「あら?曹操。よく恥ずかしげもなく、前に出て来れたわね」
「どういう意味かしら?」
ひとまずごまかすものの兵を鼓舞するための舌鋒が出てくるかと思えば、自分を貶めるに近い言葉に噂に聞いた英雄孫策とは思えぬ振る舞いに内心で動揺する。
「自分の胸に聞いてみたらどうなの?まるで部下の躾がなってない…一度ならず二度までも…」
314 名前:一刀十三号語る、[] 投稿日:2011/02/08(火) 15:29:18 ID:fZHuDMPwO
「『躾がなってない』とはなんだ!ましてや二度だと?私と貴女がこう相対するのは初めてなのに二度目とはどういう事だ!答えよ孫策」
まるで意味が解らない問いと部下への中傷に怒りをあらわにして問い返す。
「(今のが聞かれた!?)」
内心舌打ちをした雪蓮。
「…そうね、今の発言は“公平ではない”わね。二度目に関する発言は忘れて頂戴…私にしか判らないことだから、私の失態として捉えてもらって結構よ」
雪蓮が自ら認める、あえて『自分の顔に泥を塗る』と、ある種汚名を残すと。
「…孫策、貴女なにを言っているの?…」
雪蓮の失態を認める発言に状況がますます飲み込めない曹操は困惑するも、
「ならばもう一つの方、部下の躾がなってないとはどういう意味だ!」
と強い態度で臨んだ。
「先程、賓客として徐州の劉備の処から訪れている、世間からは天の御遣いとして称されている北郷一刀が“あなたの兵に暗殺されかけた”」
「!」
覇者として、覇道を進む者として暗殺の手段を用いるなどあってはならない事実。
「本来、私を狙った矢にはご丁寧に毒まで塗ってあったわよ。そして北郷一刀が、それこそ命を賭けて私を救ってくれた…ましてそんな貴女を更に庇うなんて…」
315 名前:一刀十三号語る、[] 投稿日:2011/02/08(火) 15:31:08 ID:fZHuDMPwO
雪蓮の口から出てくる言葉に次々と衝撃を受けた曹操が言葉を漏らす。
「私も…庇った?」
『チッ!!』
今度は口に出して舌打ちをする雪蓮。
いくら一刀の事で感情的になっているとはゆえ、立て続けに同じ過ちを繰り返したからだ。
本来なら王として、他人に物事を悟られてはならない立場の者として、こっちの方があってはならない失態である。
「まあ、そんな戯れ言はどうでもよい」
その言葉に落胆した様な表情になりながら天を仰ぎ見て、
「(あーごめん一刀。無理かも、やっぱ曹操殺しちゃうかも)」
と、思った雪蓮。
「第一に私の配下が卑劣にも暗殺をしたですって、ましてや毒を使ってまで?それが私の部下達を動揺させる為の『あなたの嘘』とも限らないわ」
曹操も言われぱっなしではなく反論する。
「そう思うならそう思いなさい、寧ろそっちの方が私に取って好都合よ。遠慮なく貴女を殺せるってものだわ(所詮その程度の女だったとして、一刀の知っている曹操じゃ無かったとして)」
「あら?こんな時代に私を殺すのに何の遠慮がいるのかしら」
「(有るから歯がゆい思いをしてるんでしょうが!)」
と、内心でヒステリックを起こす雪蓮にとって残念なことは、雪蓮が英傑であったようにやはり曹操も英傑であったことだろう。
316 名前:一刀十三号 ◆keNb29aoZQ [] 投稿日:2011/02/08(火) 15:33:23 ID:fZHuDMPwO
「にゃー(ご静聴ありがとうございました、ではまた〜)」
「・・・本当に大丈夫ですか?バカ猫」
「・・・・・にゃー(それは燃え尽きる直前の蝋燭のように)」
「これでいつものバカ猫ですね安心です…それでは皆さん、ではでは〜」

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