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958 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2009/02/14(土) 00:02:20 ID:GUK0I5Qy0
バレンタイン投下、一番乗り、いくぜ!

大丈夫、だよね?
961 名前:呉の終わりからバレンタイン[sage] 投稿日:2009/02/14(土) 00:04:28 ID:GUK0I5Qy0
 大陸を二分する二つの大国。
 一つは天の御使いを擁する孫呉、そしてもう一つが、
 
「『ぱいずり』って言葉が、天の国にあるらしいよ」
 
 平和を愛し自由を尊ぶ桃香さまが治める我等が蜀。
 天下二分の計が功を奏し、大陸全土を襲った動乱を過去のものとしていた。
 しかし油断は許されない。
 いくら同盟を結んだとは言え、平和を一番と考える蜀は、隙あらば呉の領土に攻め込む用意があるからだ。

「ぱいずり……ああ、ぱいずりですな。アレはよい物です」

 はいはい、趙雲る趙雲る。
962 名前:呉の終わりからバレンタイン[sage] 投稿日:2009/02/14(土) 00:05:38 ID:GUK0I5Qy0
 我等が誇る蜀は、それはそれは平和だった。
 失業率、死亡者、貧富の差、それら悉く全てに置いて呉を大きく突き放す程平和であり、なにより桃香さまの頭が平和だった。羨ましい限りだ。

「それでね、行商の人に他にも教えて貰ったんだけど、『ふぇらちお』とか……『ばれんたいん』とか」

 大事な首脳会議も、平和だったら雑談と変わらない。それに文句が出ないのも平和だからだ。
 きっと養分が胸へ流れているからバカみたいに肥大して、その癖詰まってるのは平和かメンマ。メンマ大国蜀の都は、メンマ生産率大陸一です。

「えっと、ばれんたいんって言うのは、大切な人に『血夜胡』を贈るんだって」

 話の流れはあらぬ方へと進んでいるが、今この場にてそれを咎める者もなく。
 そして私と言えば、大都督として名高い彼の世界の話を聞いてみたいと、そう思っていた。
 そう、思ってしまっていたのが、そもそもの間違いだったのです!
963 名前:呉の終わりからバレンタイン[sage] 投稿日:2009/02/14(土) 00:08:21 ID:GUK0I5Qy0
「そこで! 血夜胡って言うのを再現してみたの!」

 ところで、いつも平和なこの国で、たった一つだけ、どんな誤魔化しも効かないそうでないものが存在する。

「一人じゃ皆の分用意するの難しかったから、愛紗ちゃんにも手伝って貰ったんだ」

 それは往々にして、なにかをやり遂げた風ににこやかな笑みを浮かべる愛紗さんの姿が確認されているとかいないとか。
 例えば、今のように。

「何分、耳にした事だけを頼りに作ったから、うまくできているかはわからんが……自信はある」

 全く、知らないとは幸せなことだ。義姉妹でありながら、桃香さまは蜀の最終兵器の実態をご存知ないらしい。
 だが私は知っている。知ってしまっている。アレがどれほど恐ろしいかを。知ってしまっているんだ。

「じゃあ、皆に行き渡ったし、食べてみてくれるかな?」

 そして、湿った土の色をしたできの悪い心臓が、私に手渡されたのだった。

「天の国では心の臓を『はあと』と呼び、血夜胡とやらはその形を模すらしい。ふふん、完璧だろう?」

 脈動し液体を吐き出すそれを自慢げに披露する製作者を尻目に、口の中で思いつく限りの平和でない言葉を転がす。
 どうせ後一回使えば、次に使えるかわからないんだ。読んだだけでついぞ機会のなかった卑猥で淫猥な単語を繰り返す。
 声にならない言葉を叫び続けた。これが友情の証で、後悔を少しだけでも減らせると信じた。
 
「もしかして……食べたく、ない?」

 涙を飲み込んだ。嗚咽を飲み込んだ。泣き言も、言い足りない猥褻な言葉も、ついでに血夜胡も飲み込んだ。
 刹那、意識が遠のく――
965 名前:呉の終わりからバレンタイン[sage] 投稿日:2009/02/14(土) 00:09:59 ID:GUK0I5Qy0
「すっご〜い! 流石愛紗ちゃん! 天にも昇る美味しさってやつだね!」
「と、桃香さま、そのように褒められてしまいますと、いささか照れてしまいます……」

 薄れ行く意識の中、二度と目覚めないのではないかという恐怖に怯えながら、もし次があるのなら絶対に呉に行こうと、平和な二人の会話を聞きながら、雛里は思った。
 

 蜀は、今日も変わらずとても平和だった。
966 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2009/02/14(土) 00:12:34 ID:GUK0I5Qy0
以上、蜀が大好きな自分の投下でした。支援ありがとうございます。

こんなでも投下されたんだから、皆もがんがん投下しまくるといいと思うよ!

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