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352 名前:一刀十三号 ◆keNb29aoZQ [] 投稿日:2010/10/13(水) 16:09:37 ID:kvi1pOewO
ガクガクブルブル…
「おや?どうしました馬鹿猫」
「にゃー(さすがに頭から水を被るのは寒くなりましたね〜)」
「はっ?別に湯部屋で水を被ってもそんなに寒くないでしょう」
「にゃー(やだな、風様。外に決まってるでしょ)」
「はっ?」
「にゃー(おいらの部屋に風呂なんて贅沢品有るわけないでしょ)」
「ならば、湯屋に行けばよろしいでしょう馬鹿猫…」
「にゃー(やだな〜風呂屋がまだ開店してない時や風呂代ケチる時よくベランダでよく頭から水被るでしょ〜)」
「・・・・・・・・(べらんだ?)」
「にゃー?(あれっ?あれっ?)」
「・・・ふうっ〜、馬鹿猫はほっといて30桃香ですよ〜」
353 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/10/13(水) 16:13:57 ID:kvi1pOewO
“雪蓮の軍勢は全員が抜刀しているのか?”
『ここは戦場だ、抜刀していてなにがおかしい?』と自分に言い聞かせた。
“では何故、殺気を放っているのか?”
先程と同じく、『ここは戦場だ、殺気を放ってなにがおかしい?』と、言い聞かせた。
そして最後に一刀は自分にこう質問した。
なら何故?相変わらず抜刀して殺気を放ちながら“真っ直ぐにこっちに向かって来るのか?”
自問自答の自答に対応出来ていない時、再び桃香が一刀に話し掛ける。
「やっぱおかしいよね、ご主人様」
おそらくそれは誰の目から見ても純粋な第三者の意見だろう、だからこそ余計に一刀は混乱する。
“そんな馬鹿な!”と頭の中が混乱する。
「「ご主人様!?」」
声をかけられて我に返った一刀を二人が心配そうに見詰めていた。
「大丈夫ですか?ご主人様。それでですね孫策さんの軍が並々ならぬ様子で迫って来てます…」
言われなくても分かっているだけに妙に苛立ちを感じた。
「それでですね、念の為に本隊で迎撃の準備をですね…」
『雪蓮達を迎撃?』また頭がおかしくなる。
“雪蓮を迎撃?”言葉は理解出来るが、意味が理解出来ない・したくないと頭の中で解けない問答を繰り返す。
354 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/10/13(水) 16:16:52 ID:kvi1pOewO
「…ご主人様!!」
「!、あっ。悪い朱里」
朱里の呼びかけに再び我に返る一刀。
「こちらも突然の大声失礼しました。で、依然先程の状態のまま孫策さんの軍勢がもう直ぐそこまで来ています。本隊の兵士達も浮き足立って来てますし、前衛・後曲も薄々と様子が変だと気付いてます。
 ご主人様のお気持ちも十分に分かるつもりです。ですが万が一にでも、今この無防備な状態で横撃を食らえば我が軍は回復不可能な辛辣な打撃を受けてしまいます。ご主人様ご決断を!!」
朱里の台詞に三度、酷い混乱に入る。
「桃…様、ご主…様で…判断不…能…わ?」
「…香…ご主…様…」
「…主………」
―――…――……
そして静かになった。
すると冷静に過去を思い出せた、嘗て雪蓮はこう言った。
『やっぱり私の知っている一刀と変わらない、ただ私を知らないだけ』
―それだけの理由で実際には会った事の無い俺を信用してくれた―
―ならば、あそこに居るのは誰だ?―
―目で見て…声を聞いて…肌を合わせて!温もりを感じ!!心を通わせたことのある雪蓮じゃないか!?―
―俺が!!俺を!?お互いを知っている!認識している!孫呉の王!孫伯符だろ!!―
―そう思った瞬間!総ての迷いが消え去り、渾身の力で怒鳴っていた―
◇ ◇ ◇
355 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/10/13(水) 16:19:18 ID:kvi1pOewO
「愛紗よ、孫策殿の軍勢だがなにやらただならぬ様子、平気だろうか?」
「だからと言って我らが誰一人抜け出せないのは、星お前も十分分かっているだろう」
「確かに…にな!」
呂布の攻撃をかわしながら答える星。
「お前達は呂布には絶対に手を出すな!同じ一般兵のみに集中しろ、それすらもこちらから攻めるな!攻められたら徹底して防戦しろ!」
戦の前とは180度違う愛紗達の態度、その理由と言えば…
◆ ◆ ◆
「見つけたのだ!呂布、鈴々と勝負なのだ」
「まて鈴々!ご主人様の約束忘れたのか」
「ちょっと、あいさつするだけなのだ!デリャー!!」
鈴々の攻撃を片手で受けてそのまま鈴々ごと跳ね飛ばした、すると三人の目が武人に変化する。
「お主…強いな…」
「ご主人様が三人掛かりと言ったのも分かる気がしたな…鈴々よ」
「う〜この程度の相手なら本気を出した鈴々なら一人で平気なのだ」
「……今日は調子良くない」
「なんだ?負けた時の言い訳か」
「……………フルフル、……今日の為に残ったご飯みんなで全部食べた……恋はお腹半分膨れた……だから実力も今日は半分……でもお前達の相手ならそれで十分」
「にゃにおー!デリャー!」
「コラッ!鈴々」
ガッキン☆
356 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/10/13(水) 16:22:31 ID:kvi1pOewO
愛紗が注意を言い終わる前に呂布のフルスイングの攻撃が鈴々目掛けて下から飛んできた、鈴々は獣的直感でなんとかその攻撃を受けると勢いだけで空中に投げ飛ばされる。
そして空中で三回転すると愛紗と星の間に“ストンッ!”と降り立った。
「お帰り鈴々。で、一人でやれそうか?」
「う〜、一人でもやれるけどお兄ちゃんのめいれいは絶対だから三人で戦うのだ」
「おや?鈴々、お主一人で倒せるなら頼んでよいか?生憎、愛紗と私は忙しいのでな。可能なら呂布の相手は鈴々一人にお願いしよう」
「あ〜ん、意地悪言うななのだ!星」
「ああ、分かっている。だが鈴々があまりに自信満々だったからな、ついつい悪戯心が出てしまってな」
「二人共!いつまでも遊んでるな、来るぞ!!」
「……お前達、さっさと倒して劉備も倒す……そしたらみんなで仲良く暮らせる場所を作る」
「させるかなのだ!」
「みんな仲良く暮らせる国を作るのは桃香様とご主人様だ!」
「袁術と手を組んでる時点で、その夢叶うと思うな!セイャー!!」
「………叶える………絶対に、叶える!!」
直後、四人が同時に駈けて。
『『『『ガッキーン☆』』』』
四人の得物が火花を散らした。
◆ ◆ ◆
357 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/10/13(水) 16:38:10 ID:kvi1pOewO
「本隊は援護を開始する!本隊総員、弓を構え!」
――――――――――――…
一瞬、静寂が辺りを包んだ、だがそれを一刀の怒鳴り声が突き破る。
「総員!弓を構え―――――!!」
向き等の明確な指示が無いため、総員が一斉に近い方の敵に弓を構える。
「目標!袁術軍、右翼!!可能な限り側面を狙え!!」
呂布側を向いていた兵士が一糸乱れず袁術側を向いた一呼吸後。
「放て―――――!!」
一刀の号令と共にかなりの数の矢が、袁術軍右翼の側面に突き刺さった。
その時!別の場所からも渾身の力を籠めた号令が発されていた。
「聞け!孫呉の勇者達よ!!我らはこれより悲願の独立を果たす。先ずは我らを散々利用した袁術を倒す為!袁術軍に突撃し全てを滅ぼす!?今までの恨み、今この場にてその総て晴らせ!!」
『『『『『オオォォ――――!!』』』』』
袁術軍右翼は劉備軍の反撃に思いのほか混乱していた、戦う気がほぼ零に等しい軍勢に必死の反撃を喰らえば、まあ分からなくないことだが。
だが彼等の不幸はそこで終わっていなかった、突如として転進した雪蓮の軍勢が雪崩撃ってきたのである。
積年の恨みを込めた渾身の一撃を当然止められる訳も無く、為す術も無いまま蹂躙される袁術軍、出来る事は少しでも命を長引かせる為に逃げ回るのみだった。
358 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/10/13(水) 16:40:46 ID:kvi1pOewO
◇ ◇ ◇
劉備軍の反撃に雪蓮達の突撃、袁術軍右翼は大混乱に陥った。
全体的に危機的状況なのは変わらないものの、とりあえず雪蓮達だけでも攻撃してこない事が分かって一息入れられる状態にはなった劉備軍本陣。
すると、
“ペタッ☆”想わず尻餅を着いた一刀。
「(ハハハ…だらしないな、どうやら腰を抜かしたらしい。華琳が見てたら怒られるな?いやその前に春蘭に殴られるか…)」
“後から来る恐怖”と云うやつだろう。
一刀自身、雪蓮達が袁術軍右翼に突っ込むまで絶対の確信が有ったわけではなかった、ただ無我夢中に雪蓮を信じただけで有った。
一般の兵士達は多少動揺したものの、あの時は君主の一刀があまりにも堂々としているように見えたので“そのような作戦”なのだと思っていたのだ。
もし、一刀の心情がみんなに読まれてたり、ばれていたりしたら劉備軍本陣は瓦解していただろう。
その時は雪蓮も劉備軍本陣に攻め込んで躊躇無く劉備軍を滅ぼしてたかもしれない。
尻餅を着いた一刀に桃香が慌てて声をかけた。
「ご主人様!大丈夫ですか?まさか!!怪我でも!?」
「大丈夫だから怪我とかはしてない。ただ」
「「ただ?」」
首を傾げながらつぶやく二人が可愛らしい。
359 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/10/13(水) 16:43:38 ID:kvi1pOewO
「あまりにも恐ろしかったから腰が抜けだけ…みっともなくて悪いんだけど立てない」
「そんなみっともないなんて有りません、凄く立派でした。それに比べ私はご主人様に謝らないといけません」
「なんでまた、朱里?」
「孫策さんとご主人様の策を軍師である私が見抜けませんでしたから」
「…ああそれ、無理だから。第一あれ策じゃないし」
「…はい?ですがご主人様は適切な時期を見計って孫策さんの突撃の援護射撃をしたでは有りませんか?」
「あれは…なんとなくあれが一番良いかな〜と思って実行しただけで、それを雪蓮が最大限の効果を上げただけ。恐らく今の雪蓮の立場や状況から、こちらの状況次第ではそのまま俺達を殺す算段も選択肢に入ってたかも」
「では、ご主人様はどうして孫策さんがあのように動くと見抜いたですか?」
「あれは、見抜いたんじゃなくて信じただけ“こう動けば雪蓮ならきっとこう動いてくれる”と、ただひたすらに信じ抜いただけだから。…だから、見抜くのは無理だと思う」
するとジト目で近寄ってくる桃香。
「ほほ〜ご主人様?孫策さんをそこまで信じれる根拠は、な・ん・で・し・ょ・う・カッ!!」
桃香がしゃがむと同時に一刀の右ふとももをつねる。
360 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/10/13(水) 16:46:55 ID:kvi1pOewO
「イタタタタッ!」
「そうですね〜、あの状況下で揺るがない信頼とは今後の参考の為に是非とも、知・り・た・い・で・す・ネッ!!」
朱里もしゃがむと反対側のふとももをつねり出す。
「痛い痛い痛い痛い痛い…」
腰が抜けて動けない一刀は左右のほっぺたも追加されてしばらくの間つねられ続けるのだった。
◇ ◇ ◇
◆一方、袁術軍の比較的安全な部隊◆
カッ☆コ――ン!
一人の兵士の叩きつけた兜が石に当たってかなり高い音を出すと近くのみんなが注目する。
「かーっ!もうやってられねえ!!孫策様が決起したってのに袁術の雑兵なんかやってられるか!!元々、俺は孫堅様の兵だったんだ!今から俺は孫策様の兵だ!?袁術の兵な!…ゴプッ」
ドサッ★
複数の兵に槍で突かれ倒れる叫んでいた兵士、それをゴミでも見るような眼差しを送る隊長が。
「ふっ、バカが。袁術様に逆らうなどと考えるからそのような目!…カハッ」
突然、首から生えた剣に言動を遮られた隊長。
殆ど無理だったが首を可能な限り振り返ると、剣を握っていたのは自分の隊に所属している一人の部下だった。
「すいませんねえ、隊長…俺も元々孫堅様の兵士だったんすよ。だから俺も今から孫策様の兵になるわ!」
361 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/10/13(水) 16:49:50 ID:kvi1pOewO
と、喋りながら兜を脱ぎ地面に叩きつける、刺されてる隊長は口をパクパクさせて何かを言おうとしているが全く分からない。
ゆっくりと剣を抜くとそのまま仰向けに倒れて絶命してしまった為、隊長が何を言おうとしたのかは永遠に判らなく成ってしまった。
「貴様!よくも隊長を!!」
一人目を突いた兵士内二人が隊長を刺した男に向かう、一人目の槍は受け流すも次いで二人目の槍が迫る!対応出来ずに覚悟を決めたその時。
ガキッン☆
突如現れた別の兵が剣で槍を受け流した。
「奇遇だな、俺も孫堅様の兵だったんだ。孫堅様の死後、殆どの孫堅軍は袁術の軍に無理矢理取り込まれて志ない惰性の日々…それも今日で終わりだがな!」
反乱した二人目が三人目に話し掛ける。
「今日は…死ぬには良い日だと思わないか?」
「……ああ、孫堅様の嫡子。孫策様が決起したこの日に、袁術の糞ガキの兵としてではなく孫呉の兵として死ねるなら最良の日だろ」
攻撃を受け流されて一旦引いた袁術の兵士二人。
二人を倒さんと、直ぐに袁術軍の格好をした十数人の兵士が向かって来る。
それを見た二人目の男も剣を構え直し、三人目の男も剣を構えた。
「一人でも多く道連れだな」
「だな、孫家の兵士の死に様、見せつけてやるか!」
362 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/10/13(水) 16:52:50 ID:kvi1pOewO
けれど残り数歩の所で迫り来た兵士全員が反転して兜を甲冑を脱ぎ捨てる、二人を襲った袁術の兵は既に倒されていた。
『…?』
あまりに急な展開に状況が理解出来ず呆けた顔の二人、話し掛けたのは新たに兜を脱ぎ捨てた中の一人だった。
「おいおい、孫堅様の兵士は彼を入れて三人だったのか?」彼とは既に亡くなっている一人目の彼である。
この出来事が呼び水となり次々と兜・甲冑を脱ぎ捨てる者が現れた。
直ぐにでも消えると思われた名も無き一人の男が点けた小さな心の火種は、いまや決して消せない迄の業火と化して袁術軍を内部から燃やし始めた。
◇ ◇ ◇
劉備軍の反撃も利用して不意を付いた孫策軍が袁術軍の中央を横一文字に突っ切っていた。
先頭の雪蓮が袁術軍中央に差し掛かった所で。
「孫策!」
雪蓮を呼び止める声が響いた。
「あら、袁術」
雪蓮は立ち止まるも部下達は進撃を止めない。
「何故じゃ。何故、妾を裏切ったのじゃ!」
「別に裏切ってないわよ。元より貴女の部下になったつもりは毛頭無いし、同盟を組んでいるのは劉備達ですもの。場合によっては襲ってたけれど…覚悟を見せてくれたんだから、それにはきっちり応えないといけないじゃない」
363 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/10/13(水) 16:55:43 ID:kvi1pOewO
「なんと!なら妾を謀っておったのか!!」
「よくまあ、いけしゃあしゅあと…散々利用しておいて、でもまあ意味合い的にはそっちが近いわね」
「ぬぬぬ孫策め・・・!ところでよいのかの〜孫策?孫呉を再建する為の兵士じゃが、あてが無くなってしもうたの〜。こちらにはまだ飛将軍呂布も居るし、俄然妾達の方が有利じゃと思うのだがの〜?
 今からでも遅くない、妾の為に働くのじゃ?今ならその総てを水に流して無かった事にしてやるぞ?」
「(そう言って約束も水に流すって魂胆でしょうに)悪いけど袁…」
「ご注進!ご注進!!」
袁術の伝令が雪蓮の台詞を遮る。
「なんじゃ?妾は今大変忙しいのじゃ!」
「申し上げます!」
「だからなんじゃ!妾は大変忙しいと言うておるのじゃぞ!なんだが周りも騒がしくてかなわん」
そう、確かに袁術の前方を雪蓮の軍勢が突っ切っているので騒がしいのだが、今はそれだけではない騒がしさが加わっていた。
「その騒ぎに関することですが…」
「それならそうじゃと何故早く言わん!申してみよ」
「お嬢様。…そんな絶対に重大事項だと分かる報告を、孫策さんが聞こえる場所に居る今この時に喋させる無能さ、可愛らしい…」
364 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/10/13(水) 16:57:34 ID:kvi1pOewO
「うるさいぞよ、七乃。話が聞こえぬでわないか!ほれ早よう申せ」
「でも、嫌な予感はしますよね〜」
「一部、元孫堅の兵士達が謀反を起こしました」
「ほ〜ら、やっぱり♪」
「何じゃと!ならば、さっさと鎮圧すればよかろう」
「それが部隊単位で謀反を…」
「お主!さっきは一部と申したじゃろ」
「はあ、袁術軍全体から見れば未だに一部ですが…」
「何を言い訳しておる…まあよい。で、部隊長達は何をしておるじゃ!」
「部隊長が指揮を取っている所も有るみたいで…」
それを聞いてほくそ笑む雪蓮。
「反乱者達は赤い布を見つけては我先にと奪って頭に巻き着けてます、…その…中には我が軍の兵の血で朱に染めてそれを巻く者も居るとか…」
「ヒィィィィィ★な・な・なんと野蛮な!」
「ですので混乱が生じて伝令上手く伝わっていません、ただ『裏切り者が出た!』としか伝わらない地域も有りまして、既に一部では同士討ちも始まっているようで…」
「(母様、あなたの兵士達は袁術に取り込まれてても、魂魄は今だにあなたの兵士でした…)袁術!!」
「なんじゃ孫策!妾は今大変に忙しい。お主に構っておる暇なぞありゃせんのじゃ!」
既に許容量をオーバーしている袁術は彼女なりに怒鳴っていた。
365 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/10/13(水) 17:00:10 ID:kvi1pOewO
「なら、手短に言うわ。頼みの綱の大兵力も危なっかしいわね…後、先程の兵士の件だけど、借りるのではなく返させてもらうわよ!!先ずは貴女の軍をズタズタにして、次に貴女をズタズタしてから♪」
「ヒイイイイイィィィィィ!!?」
満面の笑みを浮かべその笑み対して倍近くの殺気を放つ雪蓮、思わずお漏らししそうなったのをギリギリの所で我慢した袁術だった。
駆けける雪蓮の部隊も終わりに差し掛かり言いたい事を伝えた雪蓮が兵士達に紛れて馬を走らせた。
「明命!」
「ハッ!ここに」
呼ばれると、いつの間にか何処からともなく現れて馬を並列に走らせている明命。
「“これより先、袁術の甲冑を脱ぎ捨て赤い布を頭に巻いてる者達は我が同胞達である!間違ってもこれを撃つな、これは厳命である!!”これを一字一句間違いなく此処にいる我が軍総てに伝達せよ!!」
「承知いしました!」
「その後、直ぐに劉備達にも伝えて頂戴。我が同胞達を撃たないで、と」
「承知…」
返事だけが聞こえたと思うと明命は既に雪蓮の脇から馬ごと姿が消えていた。
◇ ◇ ◇
「劉玄徳殿、北郷一刀殿。我らが主、孫策様の命によりこの黄蓋と呂蒙が助太刀にまいった。ほれ亞莎、お主も挨拶せぬか」
366 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/10/13(水) 17:03:56 ID:kvi1pOewO
「は・はひ!あっ!?すっ、すみません!北郷殿、劉備さん」
雪蓮の気遣いだろう、いつの間にか劉備軍本陣に手勢を連れた呉将が二人も馳せ参じた。
「なにを噛んでおる、腐っても大兵力の袁術相手にそんな暇はないぞ」
「…ハッ!了解で有ります。この呂蒙見事に袁術の軍勢を蹴散らしてみせましょう」
「うぬ、その心意気じゃ。ほれ皆の者も呂蒙を見習って袁術の馬鹿共を蹴散らすぞ!黄蓋隊構え!……放て!!」
こうして袁術側に対してはかなりの盤石に成りつつある劉備陣営だった。
「ところで伝令さん、愛紗さん達の戦況は?」
「ハッ!先程の最新の伝令では北郷様の言い付けを守り、関羽様・張飛様・趙雲様お三方で呂布将軍に対応。尚、敵一般兵は精彩に陰りが見えて防戦に近く、こちらからも積極的には手を出させてないそうです」
「流石は愛紗さん達、的確な現場判断です。ならばこのまま先に袁術さんをやっつけちゃいましょう。黄蓋さん、呂蒙さん、すいませんがこのまま袁術さんの方の前線の鳳統ちゃんの指揮下に入ってもらえますか?
 その後は鳳統ちゃんの指示で動いてください、お願いします。危険を承知で言ってごめんなさい」
367 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/10/13(水) 17:06:01 ID:kvi1pOewO
「うぬ了解した。なに儂はかまわぬぞ、たまには他国の軍師殿の指示で動くのも悪くないものじゃ。亞莎、お主も勉強になるじゃろう?」
「はい、知らない戦術を体験出来るかもと思うと身が引き締まります」
「はははっ!言うといてなんじゃがお主はちと真面目過ぎじゃ、もう少し肩の力を抜けい」
そう言いながら呂蒙の肩をバンバン叩く。
「それじゃ皆の者、いざ前線じゃ!」
「「「応!」」」
・・・
・・

ほどなくして前線に到着する呉将、鳳の旗の元、忙しく指示を与えている少女を鳳統だと確信して近寄る。
「お主が鳳統か?」「……はい」
人見知りの難が若干出掛かったものの場所と時、それと一刀から軍師として認められた誇りで抑えた雛里。
「我が名は黄蓋、孫呉の助太刀と馳せ参じた。して孔明殿の指示で鳳統殿、貴殿の指揮下にまいったのじゃが」
「朱里ちゃんが……。判りました、では最前線の公孫賛さんの部隊と交代してそのまま防戦をお願いします。その後、銅鑼で合図を出しますので中央に騎馬隊が突撃出来る程の道を開けてくれますか?」
「分かった、やってみよう。行くぞ亞莎」
「はいっ」
返事をするなり最前線に向かう呉軍。
しばらくすると交代した白蓮が部隊を率いて戻って来た。
368 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/10/13(水) 17:09:44 ID:kvi1pOewO
「雛里ー!交代したのはいいが、我々はどうするのだ」
駆け寄りながら早速、雛里に指示を仰ぐ白蓮。
「白蓮さんの騎馬隊だけで衡軛の陣を編成して下さい。そして、今袁術さんの陣を横一文字に駈けている孫策さんの部隊が中央を過ぎた時、ここから袁術軍の中央を真っ直ぐ駆け抜けて下さい」
「私の部隊だけだと、未だに約三倍から四倍の袁術軍を中央突破か?。軽く言ってくれるよな〜雛里は」
「孫策さんの横撃で袁術さんの軍は浮き足立ってます。間髪入れず白蓮さんの騎馬隊が中央突破を仕掛け成功すれば、十字に裂かれた袁術軍は簡単に瓦解するかと。
 大丈夫ですよ今の数より多い袁紹軍を駆け抜けた白馬陣です、必ず成功します」
「…まあ私とて、慣れない防戦をやらされて苛ついていたんだ。私なりに派手に暴れさせてもらうさ」
◇ ◇ ◇
孫の旗印が袁術軍の中央を突破したのを確認すると。
「今です!楽隊銅鑼を鳴らして下さい」
ジャーン・ジャーン・ジャーン☆
高らかと鳴り響く銅鑼の音。
「うぬ、合図だ。亞莎、道を開けるぞ」
「はい、祭殿」
黄蓋と呂蒙の部隊が中央に道を作る。
◇ ◇ ◇
ジャーン・ジャーン・ジャーン☆
鳴り響く銅鑼の音に自分達の突撃の時だと知る。
369 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/10/13(水) 17:13:07 ID:kvi1pOewO
「総員抜刀!」
ここで目を瞑った一瞬の間だが考え込んだ白蓮、本当に一瞬だが葛藤した。
白蓮自身その様な事をするのは柄では無いし、八つ当たりだってことも分かっている。
だが白蓮も人の子で有った、時には感情で動くこともあるのだ。
振り向き様に、
「弔いである!これより突き進む先に有る“袁の旗印”その総てを打ち倒すぞ!!」
それを聞き、あの出来事を思い出して白蓮の心中を察した兵士たちは、
『…!』
『『『『『『…ウオオオオオォォォォォ――――――――!!!!!』』』』』』』
涙を流しながら雄叫びを上げるのだった。
「白馬陣!突撃!!」白蓮の号令に。
ドドドドドドッ!!!
地を揺る勢い、正に怒濤の突撃!!
最早、袁術軍にこの突撃は止めれなかった。
◇ ◇ ◇
「七乃!七乃!なにがどうなっておるのじゃ!」
「まあ、多勢に無勢と油断しきっている所に劉備軍の思わぬ手痛い反撃に、手下だと思っていた孫策さんの便乗した会心の横撃、体勢を整える前に正面を中央突破する騎馬隊、公の旗印。
 おそらく麗羽様に追われて劉備の部下になったと言われてる公孫賛さんですよ、だったら率いる部隊は勇猛果敢な白馬陣の筈、とてもじゃないですが止められません!典型的な負け戦ですかね〜」
370 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/10/13(水) 17:16:15 ID:kvi1pOewO
「『ですかね〜』ではないのじゃ、さっさとこの戦に勝つ為に知恵を出すのじゃ!」
「ご注進!ご注進!!」
「次から次へと今度は何じゃ!妾はもう良い話しか聞きとうない」
と、そっぽを向いてしまった袁術。
「あ、美羽様の事は気にしないで報告してください」
「はあ…それでは報告します、正面から攻めて来るは公孫賛の軍勢のようです」
「ああっ、やっぱり…」
「そして公孫賛の兵の突撃凄まじく、とてもじゃないですが止められません」
「それも、やっぱり…」
「またなぜか?我が軍の旗を持つ者を集中的に討つらしく我が兵士たちは我先にと旗を捨ててます」
「なんと!妾の旗を捨ててるとな、七乃早速止めさせい」
「そんなこと無理ですよ〜。大方、麗羽様にやられた時の恨みを同じ袁の旗で晴らそうって腹なんだから」
「なんと!なら妾は麗羽姉さまのとばっちりを食らっておるのか?」
「そうとも言いますね〜」
「ぬ〜どうして麗羽姉さまは!いつもいつも妾に迷惑をかけるのじゃ〜!!」
自分のことは棚に上げて袁紹に恨み節を上げた袁術。
「だからさっさと逃げて体勢を立て直しましょうよ、兵隊さん集めて再度叩けば良いでしょう。(まあ、帰る場所が有れば良いんですがね〜)ほら孫策さんの軍が反転して真っ直ぐこっちに向かって来てますよ〜」
371 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/10/13(水) 17:18:32 ID:kvi1pOewO
先程の孫策の氷の笑顔を思い出した袁術が。
「し・し・し・仕方がないのじゃ、今は見逃してやるのじゃ!」
「それでは、退却でいいですねお嬢さま。じゃあ皆さん急いで退却しますよ〜」
「違うぞよ、見逃してやるのじゃー!」
退却の号令が出た事にホッと一安心の未だに生き残った袁術軍の兵士達。
「ご注進!!」
「今度はなんじゃ!妾はもう寿春城に帰ると決めたのじゃ!!」
とっくの昔に許容量オバーな所に新たな伝令に完全にキレる袁術。
「その寿春城が孫策軍よって落城いたしました!」
耳打ちしなかったこの報は、流石に直ぐ様に袁術軍全体に口づたいに広まって行く。
「なんじゃと!」
「あっ、やっぱり」
「正確には孫の旗と甘の旗の軍勢が我が軍が出立して数日後、攻めて来まして籠城するも、もぬけの殻と化した城では一日と持たず落城いたしました。また領地荊州の要所や拠点も次々と落とされいます」
“帰る城が無くなった”この事実が逃亡の選択を選ぶ兵士達を増やした。
そして大兵力に不安と陰りが出てきて、益々逃亡の選択する兵士を増産する悪循環になる。
そして退却の最中、あの大兵力を誇った袁術の軍勢はその袁術の周りですら数えれる程度しか部下が存在しなくなっていた。
◇ ◇ ◇
372 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/10/13(水) 17:21:23 ID:kvi1pOewO
逃げ遅れた兵士は今から逃げるか降伏するしか選択肢が無く、大半は後者を選択した。
そして孫策軍に合流する“元袁術軍の頭に赤い布を巻いてる兵士達”。
「ふう…袁術の方はなんとかなったか。残るは呂布だな、なにが有るか分からないから急いで援軍に行かないと」
「だね、ご主人様」
「はい、です」
「なら雛里に伝令を出して、そっちは白蓮と孫策達で上手くやって、て。既に袁術は敗走に入っているから決して深追いしないで…って釈迦に説法か、これ」
「いえ、そんなこと有りませんよ。ご主人様に気にかけてもらったと思えば雛里ちゃんも喜びます」
「そんなもん?」
「はい!」
力一杯答える朱里。
「なら伝令よろしく」
「ハッ!」
駆け出す伝令。
「なんか三人の事が心配なんだよな?意地張って無茶してそうだし」
「それじゃあ止めに行かないと、おそらくご主人様のお願いじゃないと言うこと聞かないと思うよあの三人は」
「ちなみに桃香がお願いしても止まると思うぞ」
「なら、無茶してたら二人でお願いして確実に止めましょうね、ご主人様」
「だな。朱里、本隊で呂布軍の包囲、お願い出来る?諦めさせるのが目的だから追い詰めないで」
「御意です」
373 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/10/13(水) 17:23:46 ID:kvi1pOewO
「それじゃあ三人を止めに行くか、桃香」
「はい、ご主人様♪」
そして、愛紗達が戦っている戦場に向かって進みだした。
◇ ◇ ◇
もう一方の戦場、この場の戦いは既にその四人のみに集約されていた。
一般兵は手を出さなければ反撃してこないのだから、わざわざ被害を作る必要は無いと判断し暗黙の了解でのお互いを無力化した。
戦う四人の組み分けは三対一、しかも一人の方は普段の半分しか実力が出せないにも関わらず三人との力は均衡していた。
もし呂布が万全な体調だったらと三人側の背中には嫌な汗が流れてる。
そんな中、本陣から駆けつけた一刀と桃香、そして親衛隊。
この時の一刀は油断していた、愛紗達にあれだけ呂布には油断するなと言っておいて自分は油断していた。
呂布と戦っている愛紗達を見つけると考え無しに親衛隊の護衛からひっそりと抜け出した二人、呂布との間に愛紗達が居たのが油断の原因。
「みんな無事か?」
戦いの最中の愛紗達に声を掛けたのは油断。
「ご主人様!」
「お兄ちゃん!?」
「主!!」
一瞬、一刀の声に反応してしまった本当の一瞬、愛紗達にも油断が出来てしまった。
「・・・北郷、一刀!」
374 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/10/13(水) 17:26:21 ID:kvi1pOewO
だが愛紗達の相手は飛将軍呂布、その一瞬で事足りたのだった。
三人の獲物を器用にまとめ上げ、そのまま自分の方天画戟ごと地面に叩き付けてめり込ませる。
愛紗達に絶対の反応不可能な隙が出来るもそれは呂布も条件は同じで有る。
しかし、地面に叩き込んだ方天画戟を軸に助走無しの棒高跳びの要領で愛紗達三人の頭上を飛び超える、超えた勢いで方天画戟を地面から抜いてそのまま空中でフルスイングをして遠心力を得た、
 その遠心力を利用すると通常のジャンプより遥かに遠くに飛んだのだった。
こうして桃香、一刀の間に誰も居なくなってしまった。
まるでデタラメな通常では考えられない動きに『しまった!』と思った時には既に駆け出していた三人、だが駆け出したのは何も愛紗達三人だけではない。
呂布は愛紗達より先に、彼女達より速く駆け出していたのだ。
この時一刀が不思議な光景を見ていた、まばたきの度に呂布の姿が拡大するのだ。
そして殺れる間合いに入ったのか大きく跳躍すると全身全霊をかけた一撃を方天画戟に込めて振り下ろす呂布。
「・・・月の敵(かたき)」
不思議なことにその台詞が一刀の耳にハッキリと聞えて、咄嗟に振り向いて桃香を突き飛ばした。
375 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/10/13(水) 17:29:25 ID:kvi1pOewO
「キャア!?」
桃香をなるべく安全な場所に突き飛ばし姿勢を直すと、既に面前まで迫って来てる呂布の目を捉えてしっかりと見据えた。
もの凄い獣の殺意に少しも怯むことなく、視線を逸らすこともせず迫りくる死神が具現化したような呂布に対して瞬間的にでも負けず劣らずの気迫をぶつけるのだった。
二度による乱世を駆け抜けてる魂魄がそう思わせたのか?先祖に当たるだろう島津家の血がそう思わせたのか?
“倒れる時は一人!そして前のめりが良い!!”
と、思った。
自分の体で呂布の方天画戟を受け呂布の動きを止める、駆けつけた三人が桃香の安全を確保出来ればそれで良いと。
死後の世界が有るとすれば何十年か先にみんなに滅茶苦茶怒られるかもしれないが、それは軽率な行動を取った自分への罰だと。
『恋さん!駄目――――――――――!!!』
が、一人の少女の心からの叫ぶ願いが奇跡を起こした。
その声に武人として…いや女性としての本能が反応して振り落としてる最中の方天画戟の軌道を無理矢理に変える、肩から腰までを真っ二つに斬られる予定だったストーリーが犠牲になったのは数十本の髪の毛だけに修正され方天画戟の先端も地中深く埋もれる。
376 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/10/13(水) 17:32:30 ID:kvi1pOewO
パチッパチッ☆と瞬きする呂布の視線の先には普段本気で走った事など皆無に等しいだろうメイド服の可憐な少女が肩で息をしていた。
「………月、生きてる?」
呂布に真名を呼ばれた少女は此度の戦いに付いて行くと言い出しが危険な為、城で留守番を頼んだものの“もの凄い胸騒ぎがする”と、頑として譲らなかったのだ。
仕方無しに比較的一番安全で万が一に真っ先に逃げれるだろう輜重隊に伴わせてたがいつの間にか、此処最前線まで来ていた。
そこであの場面に出くわし生涯初の渾身の叫び声を上げた、声を上げた当人は未だに肩で息をし。
「ご主人様!」
呆けてる呂布と一刀の間に割って入る駆けつけた三人、一刀を突き飛ばすような勢いで後退させる愛紗。
今度は絶対に引けない修羅の戦いになりかけたものを別のメイド服の少女がその空気を四散させてしまう。
「そうよ恋、月は無事よ」
声が聞こえた方を向いた呂布が見知った少女を確認する。
「………詠も生きてる?」
「ええ、ボクも生きてるわよ。残念なことにそこのバカち●このおかげでね」
ようやくに大分息が整った月が詠の側に近寄りながら。
「恋さん、ハア…私と詠ちゃんは無事だから…ハア、助けていただいたばかりか、ご主人様には大変良くしてもらってます」
377 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/10/13(水) 17:35:14 ID:kvi1pOewO
「・・・ご主人様?」
それを聞いた詠が怒った声で喋り出す。
「そうなよ!聞いてよ恋、月や“董卓の懐刀”とまで言われたこのボクまでが、今やあのバカち●この侍女なのよ!」
言っている意味をあまり理解してない呂布に詠のマシンガントークは続く。
「確かに結果的には助かったわ!それは認めるわよ…そしてある程度安全になったから、月に『二人で故郷に帰ろう』って言ったのに“ご主人様に受けた御恩を返すまでは離れられない。ううん、そんなのは詭弁、
 本当はご主人様と離れたくないんだと思う…”なんて言い出すのよ!?やい、そこのバカち●こ!!私の月に何をした!」
「・・・詠、落ち着くがいいと思う」
すっかり戦う気を無くしてる呂布が思い出し逆上してる詠を宥める、という珍しい光景が見れた。
「これが落ち着いていら…」
「詠ちゃん」
月の優しいながらピシッと締めるところは締めた張りの有る声が途端に詠を黙らせた。
「恋さん。私も詠ちゃん無事ですから、だから武器をしまってね」
再び、自分と詠の無事を呂布に告げる。
そして一刀の方を向きながら。
「ご主人様、我が儘なのは重々承知ですが恋さんも…呂布さんも助けてください」
378 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/10/13(水) 17:38:58 ID:kvi1pOewO
「なっ!月、それはいくらなんでも!」
口を挟んだのは愛紗。
「愛紗さん、今回の事は恋さんもやむ得ない事情が有ったのだと思います。それでも駄目と仰るなら…元主君として私が責任を取りますからどうぞ代わりに首を跳ねてください」
そう言われては『ならば、切ろう』とも言えるはずもなく困ってる愛紗を後目に行動に出た呂布だった。
方天画戟を地面に置いて一刀の方を向かい片膝を着いて。
「・・・月は悪くない、悪いのは恋・・・だから首を跳ねるなら恋のを」
そこに更に駆け寄る人影が一つ。
「待ってくださいなのです!此度の戦いの参加、恋殿に持ち掛けたのはねねなのです!恋殿は何も悪くはないのです、ですから首を跳ねるならねねの、ねねの首を跳ねてくださいなのです!」
脱出の火矢の準備をしていたが月の登場と呂布の行動に驚いて慌てて出てきた自称呂布軍の筆頭軍師陳宮。
成り行きを黙って見ていた一刀が頃合いと読んでか口を開いた。
「月、呂布には罰を問わない」
予め一刀の行動が分かっていても、分かっているからこそ愛紗から抗議の声が上がる。
「ご主人様!いくら何でも!!殺されかけたんですよ!?」
「おやおや、主の悪い癖が始まったな」
380 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/10/13(水) 17:42:58 ID:kvi1pOewO
「まあ、それでお兄ちゃんなのだ」
星と鈴々は理解しているのか、良い意味で諦められているのか否定の言葉は無い。
「呂布さんが言ったんだよ、襲ってる時『・・・月の敵』って。事情を知らなかったんだから襲われたって仕方ない」
一刀の理論に少々困惑な愛紗、その優しさに惹かれるのも事実だが正直歯痒い時も有るのもまた事実。
「そして月はこの戦いに付いて来ていた、ならば戦う相手が呂布だって分かった時点で此方から月の使者を出すべきなのにそれを怠った。戦中に使者がたどり着けるか微妙でも出さなきゃ接触の可能性すら無い」
内心で朱里はあの場で月に連絡して使者を用意できる余裕など微塵も無かったことを重々承知している。
「で、俺達は呂布さん達を相手に戦いを挑んだ。呂布さん達も仕方ない理由で戦わなきゃいけなかったんだよな」
「それは…あの戦いの後、在野に下って収入も無くなって。ですが慕って付いて来る者達に食事は与えてやらねばならず…そんな時、袁術から『協力して劉備を倒せば劉備の領土の半分をくれてやろう』と言われて…」
後ろめたさからか声が小さい陳宮。
「ほら、呂布さんが在野に下った責任の一端は俺に有った、そしてそれが原因のジリ貧脱却が今回の彼女達の戦った理由」
382 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/10/13(水) 17:48:13 ID:kvi1pOewO
この時点での凄い一刀理論に誰も口を挟まない、反董卓の発端は両袁家が原因だと思っていても。
「だから呂布さんを罰に問わない、勿論部下も。第一、罪を追求したら月が今回の出陣と同じで頑なに罰を受けちゃう。俺はそんなの嫌だ」
「女の子には寛大ですねご主人様…」
チクリと愛紗の棘が刺さる、まだ状況を正確に理解してない呂布に月が。
「大丈夫ですよ恋さん、ご主人様が許してくれましたから」
「・・・本当に?」
「はい本当です。で、恋さんもねねちゃんも今後の予定は?」
月の問いに行く当ても無い二人は無言の返事、すると月はそのまま振り返ると。
「ご主人様、もし良かったら凄く強い武将さんと将来有望な軍師さんを一人ずつ紹介出来ますがどうしますか?」
月の問いかけに、一瞬遅れたのち『ああ!』とした顔をして。
「是非ともお願いしたい、月」
満面の笑みで、
「了解です、ご主人様」
こうして呂布と陳宮が桃香と一刀の仲間になった。
その祭に月が恋に、
「恋さん、私は戦うことが出来ませんから、私の代わりに常にご主人様ことを守ってくださいね」
「・・・月の頼み、・・・分かった」
383 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/10/13(水) 17:51:32 ID:kvi1pOewO
「そうですね今は私のお願いで良いです。けど恋さんもきっと直ぐにご主人様の事を私のお願いが無くても守りたくなる筈だから…」
「・・・?」
言葉の意味を理解出来ず首を傾ける恋。
「今はまだ分からないでしょうけど、大丈夫直ぐに分かりますよ、ご主人様はそれだけ凄いですから」
恋を優しく抱き込む月の姿は正に聖母のような慈愛と優しさに溢れていた。
「で、お取り込み中悪いんだけど…」
突然、声を上げたのは孫呉の王・雪蓮。
実は雪蓮、この戦には一部の武将と兵士しか参加させていなかった。
残りの部下は袁術のの領土、主要な拠点を落とす為に分散させていた。
この戦に参加していた黄蓋、亞莎の部隊も後詰めとして既にこの場を後にしていた。
こうして荊州・揚州の主要の拠点が陥落の報告の早馬が唯一残っていた雪蓮の元に次々に駆けつけた。
しかし、袁術から荊州を奪い、江東の地を取り返した今、孫呉の為に真っ先に行動を取るだろう雪蓮が此処に居残ったのが甚だ疑問の一刀。
なにはともあれ先ずは祝いの言葉をかけた。
「江東の地、奪還おめでとう雪蓮」
384 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/10/13(水) 17:54:10 ID:kvi1pOewO
「ありがとう、一刀。反董卓の時からの江東奪還の為になる援助に今回の出来事。どれだけ感謝の言葉を列ねても、どれだけ感動を表現しても足らないわ。・・・でもね〜正直言うと当初の予定よりかなり急の奪還でね、
 兵士は今回の戦いで戻って来たり、旧臣の配下達の合流でそれなりになんとかなりそうなんだけど。将官階級の人手が圧倒的に足りないのよね〜。だ〜か〜ら〜、一刀を江東の地奪還のお祝いとして三ヶ月程借りるわよ〜♪」
「…?……?………?」
長い長い沈黙の後。
「!!!」
一刀を含めた劉備軍、将官・軍師一同が。
『『『エエエエエエエエエエェェェ――――――!!!』』』
結局は行く事になってしまう一刀なのだが、ぐずる将や抵抗する者…妙な結託を見せ雪蓮の提案に賛同する軍師コンビ。
反対有り、説得有り、狼狽・ちゃちゃ・静観が入り乱れて、ただひたすらに、それはもう本当にただひたすらに大変だったのだ………
・・・
・・

385 名前:一刀十三号 ◆keNb29aoZQ [] 投稿日:2010/10/13(水) 18:04:33 ID:kvi1pOewO
「にゃー(長かった…)」
ブンッ!!プチッ!?
「麗羽様〜これでいいんですか〜」
「ええっ、よろしくてよ」
「で、死骸どうしますか」
「斗詩さん、あなたの武器で後二回程叩き潰したのち適当に捨ててきなさい」
「は〜い、了解です麗羽様〜(うぅ、潰れた死骸触りたくないな〜)」
「(私の話を書き上げたのち没にしたなどとそうなって当然ですわ)」
その様子を見ている風。
「まあ当然ですかね〜。ではでは、ご静聴ありがとうございました〜」

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