- 229 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2009/02/07(土) 23:15:04 ID:IaJrYdtU0
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流れ止まってるみたいなんで、まだ書き掛けだけど3レスほど先行して投下してみたい
- 231 名前:紅旗の下に[sage] 投稿日:2009/02/07(土) 23:28:51 ID:IaJrYdtU0
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『一気に江夏を陥とすぞ。遅れるな、祭!』
──これは、過ぎ去った夢だ──
『ハッ、必ずや黄祖めの首級、上げて見せましょうや、堅殿!』
──あの御方と共に駆けた、悦びに満ちた日々──
『この戦が終われば次はいよいよ荊州攻めだ。そろそろ蓮華も連れてみようかと思っているのだが、どう思う?』
──だが、儂は知っておる──
『ハハッ、それはようございますな。権殿には策殿にも劣らぬほどの将器が感じられる。早い内から戦を経験して
おけば、必ずや良い将となりましょうぞ』
──それが決して叶わぬ夢であることを──
そして、1本の矢が孫堅の胸を貫いた。
『け……堅殿────ッ!!』
ガバッと身を起こし辺りを見渡した祭は、それが夢であった事を思い出し小さく息を吐いた。
「フッ、今更あの時の夢を見ようとはの」
既に過去の出来事と割り切った、と言えば嘘になる。
主を護りきれなかったという後悔が、今も祭の胸奥に疼きを残している事実は否定しきれない。
しかし今の主を支える為にひとまず心を切り替えたつもりだった。
「儂もまだまだ未熟、と言うことか」
自嘲気味に呟き窓の外を見る。
まだ幾分薄暗い。
東の空にようやく陽が昇り始めたばかりと言う頃だろうか。
と、突然部屋の扉がドンドンと喧しく叩かれた。
「さ、祭さん、大丈夫!?何かあったの!?」
「ん?北郷か?鍵なら開いておるぞ。入って来い」
「じゃ、失礼して。──祭さん、今の大声は何ご……と……」
扉から顔を覗かせた一刀が、何やら言いかけた顔のまま絶句する。
「北郷?」
「…………」
「おい、北郷ッ!」
「え?……うわっ!ご、ゴメン!」
強い口調で声を掛けると、我に返った一刀がみるみる顔を真っ赤にさせ、慌てて顔を引っ込めた。
- 232 名前:紅旗の下に[sage] 投稿日:2009/02/07(土) 23:29:55 ID:IaJrYdtU0
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「なんじゃ、どうかしたのか?」
「どうしたもこうしたも、まさかそんな格好してるとは思わなくて」
怪訝な顔を浮かべた祭だったが、自分の身体を見下ろして納得した。
身に付けていた夜着は寝乱れて大きく前が開いていた。
しかもビッショリとかいた汗で肌に貼り付き、豊かな双乳とその頂までがくっきりと浮き出している。
祭自身の美貌も相俟って非常に扇情的な姿を晒していた。
「ハハハハッ、これは失礼した。今目覚めたばかりだったものでな。暫し待っておれ」
そして手早く身支度を整えると、祭は部屋の外で立ち尽くしているであろう一刀に声を掛けた。
「良いぞ、北郷」
「う、うん」
そう答えて極まり悪そうな顔の一刀が入ってきた。
「それにしてもお主のような若人からそのように意識されるとは、儂もまだまだ捨てたものではないようじゃな」
言って呵々と笑い声を上げる。
子ども扱いされたように感じて憮然とする一刀だったが、すぐに表情を引き締めると祭に問いかけた。
「そんな事よりもさっきの声は一体何だったんだ?」
訊かれた祭の顔が不意に翳る。
「……少しばかり昔の夢を見た」
「夢?」
「己が主も護りきれなかった、不甲斐無い阿呆の夢よ」
雪蓮たちの母親である孫堅が、荊州の劉表を攻めた際に非業の死を遂げたことは一刀も聞いていた。
常に孫堅に付き従い戦場を駆け回っていた祭は、当然主君の死を目の当たりにしたのだろう。
微かに浮かんだ自嘲気味な笑みが、普段豪放磊落な彼女にも未だ癒しきれない深い傷があることを窺わせた。
しかしすぐに何時もの顔に戻ると、一刀の肩をバンバンと叩きながら言った。
「ハッハハ!そんな顔をするでない。案じずとも何時までもクヨクヨするのは儂の性に会わん。それより今は何とし
ても策殿を盛り立て、孫呉の天下を手にする事こそが大事じゃ。北郷、お主の使命も益々重くなること、重々
承知しておくのじゃぞ」
「ああ、分かってるよ。雪蓮の望みが皆で笑って暮らせる世界を作ることなら、俺達の望みは雪蓮が笑って前へ
進めるように支え続ける事だもんな」
「うむ、その通りじゃ。フフフッ、北郷よ。お主は近頃、本当に好い男に育ってきたのう。どうじゃ、1つ儂にもお主の
子種を植え付けてはみんか?」
- 233 名前:紅旗の下に[sage] 投稿日:2009/02/07(土) 23:30:37 ID:IaJrYdtU0
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一刀の顔が再び真っ赤になる。
「か、からかわないでよ、祭さん!そ、それじゃ俺はそろそろ自分の部屋に戻るから!」
赤い顔のままそそくさと部屋を出て行く一刀を見送りながら祭は苦笑を浮かべた。
「やれやれ、まんざら冗談でもないのじゃがな」
やがて一人になると再び先ほどの夢が頭をもたげた。
自分自身に怒りを禁じえない、忌まわしい記憶。
しかしその後の一刀の言葉が不安を打ち消した。
(そうとも。策殿の往く道を切り開く事こそが我が喜び、我が希望。もう二度とあのような思いをしてなるものか。
今度こそ我が主君の想い、護り通して見せようぞ)
そう、誓った筈だった。
- 234 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2009/02/07(土) 23:33:06 ID:IaJrYdtU0
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>>230
スマソ、予告編じゃないけどプロローグ的な感じで
明日中くらいで書き上げたいと思ってる