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646 名前:395[sage] 投稿日:2009/02/02(月) 05:22:50 ID:sBjizXoS0
395-の続きを投下します
よく考えたらタイトルを考えてませんでした。
そのままだけど曹魏†学園ということで以下9レスでいきます
647 名前:曹魏†学園二時間目 [1/9][sage] 投稿日:2009/02/02(月) 05:25:47 ID:sBjizXoS0
「とりあえず外に出よう」

華琳にそう言って一刀は脱出の方法を考え始めた。

ここからの脱出経路は二つある。
一つはドアを開けて堂々と玄関を通って外に出る方法だ。しかしこれは他の男子生徒や寮の管理人さんに見つかる可能性が非常に高く、
いくら共学化されたばかりで男が比較的少ないこの学園の男子寮と言えど、この人数だ。
ぞろぞろと女の子を引き連れて外まで出るとなると非常にリスクの高い手段になる。
もう一つは窓から飛び降りるという手だ。俺はできないだろうが、あの三国志の世界で戦争をしていた面々ならこれくらいの高さは飛び降りても大事ないだろう。
そうなると軍師たちは抱えて飛び降りてもらうか。…それが無理でも彼女たち数人だけなら見つからずに玄関から出られるのではないか。

そう考えていた矢先ドカンという音と共にドアが勢い良く開けられた。

「北郷!何だこの扉は!まともに開かないではないか!」
そこには鍵付きのドアノブを捻って開ける開き戸に初遭遇し、その鍵の開け方も、扉の開け方も分からなかった春蘭が
思いっきり蹴り飛ばしたドアが辛うじて原型を留めたまま蝶番に繋がっていた。
また鍵の部分は折れて完全に使い物にならなくなったことは一目瞭然だった。
「さぁ、いきましょう。外に出るんじゃなかったの?」
華琳は事も無げに部屋の外へ歩き始め、他の面々もそれに倣う形でぞろぞろと部屋から出て行った。

一刀は願った。
どうか何も起きませんように。
どうか誰にも見つかりませんように。

慎重に出口まで誘導し始め玄関が目前に迫ったその時まで、一刀は神様にさっきの祈りが届いたと思っていた。
648 名前:曹魏†学園二時間目 [2/9[sage] 投稿日:2009/02/02(月) 05:31:09 ID:sBjizXoS0
「北郷くん!」
終わった。
さようなら俺の学園生活。
そう確信しながら一刀は声のするほうを振り向いたら、管理人の寮母さんが明らかに怒り顔で俺のほうにやってきた。

「北郷くん。これは一体どういうこと!?」
「いや、これには色々と事情が…」
どうやってこの事態を説明すべきか。
朝起きたら女の子が部屋に寝ていました、いやこの説明は誤解を生みすぎる。
実は従姉妹が泊まりに来てたんです、俺の家族関係にこんなに大量の従姉妹はいない。
住む家がない子たちに一時的に部屋を貸していました、不純異性交遊でアウトだ。

この難局をどう切り抜けようかと華琳たちのほうを見たがその顔は明らかにこの状況を楽しんでいる顔だった。

「お手並み拝見といきましょうか、"北郷くん"?」
「何とかしろ、北郷!」
「ついでにここで死ねばいいのに」
「隊長、骨は拾いますのでご安心ください」
戦場にただ一人取り残された兵士の気分だった。
ああ…これが四面楚歌か。
650 名前:曹魏†学園二時間目 [3/9][sage] 投稿日:2009/02/02(月) 05:38:02 ID:OJ3YmMon0
もうこうなったら謝って謝って謝り抜くしかないと覚悟を決めた時、寮母さんが思わぬことを言い出した。
「いくら外国の子とは言え玄関では靴を脱ぐように説明しなさい。ほらもう、そこ等中に靴の足跡が残っているでしょう。後でちゃんと雑巾で拭いておくのよ。」
そして華琳たちに向かってこう言った。
「昨日はごめんなさいね。急にこの人数の部屋を用意するのは大変で…。
全員の個室は空きがないから何人かは相部屋ということになってしまうけどいいかしら?
引越しの業者さんがもうそろそろ来るそうだから北郷君も手伝いに来なさい。荷物の運び入れは女の子たちだけでは大変でしょう。」
一体どういうことだろうか。寮母さんに聞こうとしたら先に女子寮のほうを見に行くとかで相手にしてもらえなかった。
「一刀、外に出るんでしょう?それに私たちの荷があるらしいわ」
華琳たちはすたすたと出口に向かって歩いていく。
「北郷!何だこの透明な扉は!向こう側が透けて見えるぞ…おわっ、何だ!?」
春蘭が自動ドアの前に立ったら急にドアが開いたことに驚いて飛び退いた。
「華琳様!危険です、近寄らないでください!もしや妖術か!?」
春蘭が飛び退いたと同時にまた閉まり出す自動ドア。

まずい。春蘭なら武器がなくても間違いなくあの自動ドアを叩き割りに行く。素手であんなもの叩き割ったら軽い怪我じゃすまないぞ。
俺は慌ててドアと春蘭の間に入り、何とか春蘭の暴走によりこれ以上被害が増えない方法を考える。
春蘭だって魏の一軍を預かる将だったのだ。決して馬鹿ではない。…かなり抜けている部分は否めないが。
だがきちんと説明すれば分かってくれるはずだ。それに華琳か秋蘭を通して手懐けてもらう、もとい話を聞いてもらうという手もある。

「春蘭、これは自動ドアってやつなんだ。別に華琳に危害は加えないから安心していいよ。
扉の前に立つと自動的に開くだけのものだからこれ以上扉を壊さないでくれ」
この場で一番危険なのは春蘭だ。よく考えてみれば現代のあらゆる道具は華琳たちの時代の人間からすれば妖術と言われてもおかしくない。
まずはそこから説明しなくてはならないか…。

一刀は自動ドアの前に立ち、再びドアを開けてみせた。
651 名前:曹魏†学園二時間目 [4/9][sage] 投稿日:2009/02/02(月) 05:45:27 ID:OJ3YmMon0
「俺がここに立っている限り扉は開けっ放しになる。離れれば閉じる。妖術じゃないから俺はこの通り安全だし、まずは外に出よう」
「ふぅん、面白いからくりね。まぁ、一刀が安全と言うのなら安全なのでしょう」
「むむむ…」
春蘭は何やら唸っているようだが華琳は納得したのかそのまま外に出て行き、他の面々もそれに倣うようについていった。
「どういうからくりなんやろなぁ、気になるわあ」
「あれなら姉者が扉を開けた拍子に壊すということもないだろう。便利なものだな、北郷」
「ああ。便利なんだけど春蘭相手じゃあこれから先が不安すぎるよ…」
今後のことを言えば不安でないとは言い切れないが、そこは華琳と秋蘭に何とかしてもらうしかない。

とりあえず女子寮に荷物が来るそうだからそちらに移動しながら全員にこの世界はからくりが非常に発達していること、
ここは元いた世界より安全な場所であるから無闇に暴れないでくれということを告げてあまり騒がないよう頼んだが、どこまで納得してもらえたのだろうか。
華琳や秋蘭は納得したようだったが、熱狂的華琳信者の春蘭と桂花はそれでも御身に何かあっては、とブツブツ言っている。
部下たちは好奇心のほうが優先しているらしく、道路の街灯やら電線やらに興味津々のようだ。
季衣と流琉は天の国の食べ物について二人で話し込んでるし、稟と風は舗装された道に感心している。
俺の話がどこまで通じていたのか甚だ怪しいのは不安だが、
どうやら目の前に迫った女子寮の前にはもう引越しのトラックが横付けされてこれから荷物の搬出をするところだった。
653 名前:曹魏†学園二時間目 [5/9][sage] 投稿日:2009/02/02(月) 05:53:48 ID:OJ3YmMon0
トラックに興味を惹かれている面々を置いて華琳が尋ねてきた。
「私たちの部屋が準備されているのはいいのだけれど、一刀、私たちはこれからどうすればいいのかしら。」
「うーん、先に管理人さんに挨拶して部屋の確認をして…。
荷物は引越し業者さんが勝手にやってくれるだろうから、俺も華琳たちについていったほうがいいだろうな」
「なっ!?何であんたに華琳様のお部屋を見せなければならないのよ!ハッ、まさか今のうちに華琳様のお部屋の間取りを確認して襲う算段を立てるんじゃ…」
「そうだな…。いくら北郷だとしても、いきなり華琳様や我らの部屋を見せるというのは」
「そうだそうだ、桂花や秋蘭の言う通りだ!」
すると日頃から俺に拒否反応を示してきた桂花を筆頭にプライバシーに対する不満が返ってきた。
「風は別に構いませんよー。稟ちゃんもいいよね?」
「え?あ、いや。流石に私もいきなり男性を部屋に招くというのは…」
「隊長なら別に部屋を見せてもええんちゃう?なあ凪」
「隊長がお望みとあらば私はいつでも…」
「凪ちゃん朝から大胆なのー」
「うちは別にええで。見られて恥ずかしいもんでもないし一刀なら大歓迎や」
「私は別にお兄様ならいいと思います」
「うーん、流琉がそういうなら僕もー」
一方で諸手を挙げて歓迎してくれる人もいる…のは嬉しいんだが何か勘違いしているぞ。
まぁ、これまでの所業を考えればそういう目的だと言われても否定できないわけで、今後部屋に入らないとも言い切れない自分が恨めしい。
意見がバラバラに分かれたところで、後は華琳が判断を下してもらうしかない。
これではまるで軍議だなとかつての戦乱の日々をふと思い出した。
俺は同盟軍で自らの領地に俺を招き入れるかどうか。そう考えると、ある意味これも彼女たちにとっては戦争なのかもしれない。
655 名前:曹魏†学園二時間目 [6/9][sage] 投稿日:2009/02/02(月) 05:59:08 ID:OJ3YmMon0
「一刀はどう思う?この世界のことに詳しいのはあなただけれど、私たちだけで荷が片付けれるのかしら?」
「うーん、そういうことなら俺も行ったほうがいいのか。電気や簡易キッチンもあるから色々と説明しておかないと危ないだろうな」
簡易キッチンは電気コンロだからガス爆発のような危険はないが、何も知らない春蘭たちがあれこれいじって危険が及ぶ可能性が考えられないわけではない。
ここは華琳たちと一緒に部屋を見て生活道具の使い方を説明したほうがいいだろう。
「電気?キッチン?」
「ああ、こっちの国の一般的な生活のための道具…とでも言うのかな。生活に必要な知識だから色々と覚えてもらうことになると思う」
「なら決定ね。一刀も同席して天の国の道具とやらについて説明なさい」
華琳の決定には異を唱えられず、他の面々も渋々承諾してくれたところで
皆を女子寮の中へ案内して管理人さんに引き合わせるとさっそく部屋を見せるからついてきてくれと言われた。
どうやら11人いるが部屋の空き数から6部屋しか使えないらしい。
部屋割りについて誰が華琳と相部屋になるかで一揉めした後、結局華琳は一人で一部屋使うことでまとまったようだ。
春蘭と桂花はそれでも諦めていないようだが、そもそも部屋は隣同士なんだし行き来は自由なんだからさして問題にはならないはずだ。

一通りの家具の搬入が終わったら、細かいダンボールは置いておいて先に部屋の説明に入った。
657 名前:曹魏†学園二時間目 [7/9][sage] 投稿日:2009/02/02(月) 06:10:20 ID:OJ3YmMon0
「このスイッチを押すと電気が点くんだ。それからこっちはコンロ」
「へぇー、天の国って便利なんですねえ」
「流琉、この箱みたいなのなんだろう?」
蝋燭以上に明るいこちらの灯りやわざわざ火を熾さずに料理が出来ると大喜びの流琉。
季衣は引越しの作業をしている間に気になった壁のエアコンに興味をもったようだ。
「ああ、季衣。それはエアコンって言うんだ。ここのスイッチを入れると電源が入るよ」
「うわっ、兄ちゃん、箱から温かい風が出てくるよ」
「へぇ、これで寒暑を和らげるのね。あんたの国にしてはそこそこ気が利くじゃない」
相変わらず褒められているのかどうかよく分からない桂花の言葉を聞き流しながら、冷房に切り替えたり温度を変えたりして説明を急いだ。
「これは気持ちいいですねぇ、…ぐぅ」
「風、起きなさい。まだまだ覚えることはたくさんあるのですから」
「おぉ!こんなに気持ちよく寝れる天の国はスバらしいところです」
「一刀、これはどういう仕組みか説明なさい」
一から全部説明していくと時間がいくらあっても足りないので細かい部分は追々説明すると言って大まかな機能と使い方を教えていたのだが
一部の人間(主に新しい知識を知りたがる華琳とからくりが好きな真桜)はなかなか話を先に進めさせてくれない。
これまで当たり前のように享受してきた文明の利器を一から説明するのには苦労した。
特に目に見えない電波や電気といったものは直接その目で見せて説明することができないため、細かいことはからくりに強い真桜でもよくわかっていないようだった。


「お、もう昼過ぎたのか。ちょっと遅いけどお昼にしようか」
悪戦苦闘しながら一通り部屋の使い方を説明したところで時間を確認すると昼を回ったところだった。
659 名前:曹魏†学園二時間目 [8/9][sage] 投稿日:2009/02/02(月) 06:13:46 ID:OJ3YmMon0
「兄ちゃん、僕もうお腹ペコペコだよぉ」
「北郷ぉ、何か食べるものはないのか。このままでは飢え死にするぞ」
先ほどから空腹を訴えていた季衣と春蘭はもう限界が近いようだ。
これ以上腹を空かせてしまうといつぞやのように春蘭は壁や物を破壊に走るかもしれない。
「兄様、冷蔵庫というものは便利なのですが食材はどこに買いに行けばいいのでしょうか?」
「そうですね。先ほど見たところ周囲には食べ物の屋台や食材を売る店はないようでしたが、街はここから離れたところにあるのでしょうか?」
よく考えてみればここで生活するということになるのなら、街のほうに何があるのか教えておく必要もある。
他にも知らせておくことは山のようにあるし、地理が分からないとそもそも彼女たちは外に出た時にこの部屋に帰って来れないのではなかろうか。
「今日は日曜だから食事は出ないし外で食べようか」
ここに居ても昼食は勝手に出てこない。天の国もそれほど便利なわけじゃないんだよな。
どうせなら流琉の手料理を楽しみたかったがそれは次の機会にしよう。
「一刀の国の料理かぁ。楽しみやなあ」
「北郷、店について心当たりはあるのか?」
661 名前:曹魏†学園二時間目 [9/9][sage] 投稿日:2009/02/02(月) 06:19:08 ID:OJ3YmMon0
こちらの料理に期待感を高まらせる霞と浮かない顔をしている秋蘭。まぁ、その気持ちも分かるけどね…。
それは華琳のことだ。下手な料理を出されれば例え見知らぬ国でも一言余計なことを言わずにはいられないだろう。
「うん、まぁあるにはあるんだけど…」
口を濁しつつ秋蘭には答えたが俺自身そのような店には縁がないし、学生の小遣いには少々厳しい値段だ。
かといって俺が行く牛丼屋やラーメン屋は華琳が行くと少し単調な味と不満が出るだろう。
それにラーメンのような見知った料理の場合、また店主を呼び出して問題を起こしかねない。
流石にこちらの生活でまで再び行きつけのラーメン屋が出入り禁止になるのは避けたいところだ。
となると初見で味の良し悪しの基準が分かりにくい洋食を頼めるファミレスが無難な選択肢になる。
丁度彼女たちにこっちの国の料理を紹介できるし、ファミレスならば色々と事態の整理をするために多少長居しても目くじらを立てられて追い出されることもないだろう。
結局俺の部屋だとほとんど事情らしい事情は聞けなかったからいい機会かもしれない。
そう考えていると、
「沙和ぁ、今日は隊長のおごりやて」
「一人で天の国に帰っちゃった隊長の罰にはまだ足りないけど我慢してやるのー」
「ごちそうさまです、隊長」
もう既に俺の奢りであることが確定済みのようで、他の面々もそれが当然という顔をしている。
「はぁ…。勝手に帰ったのは俺のせいじゃないんだけどなぁ。これも仕方がないか」
「それじゃあ一刀、その店に案内なさい」

一刀は財布の中を確認しつつ、頭の中でこの面々が思い思いに料理を頼んだ場合いくらで済むか軽く計算して眩暈を起こしそうになっていた。
663 名前:おまけ[sage] 投稿日:2009/02/02(月) 06:38:13 ID:OJ3YmMon0
おめでとう一刀君!
華琳様の"私の一刀がこんなボロ小屋に住んでるなんて許せない"電波を受信したため、男子寮は近代マンションに改築されました!

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