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185 名前:ガルルガ[sage] 投稿日:2009/01/20(火) 00:01:43 ID:bG34nRa60
三分後、亞莎SS第二弾を投下します。
時間軸は滅茶苦茶ですが、大目に見てやって下さい。
188 名前:ガルルガ【勉学の時間1/4】[sage] 投稿日:2009/01/20(火) 00:05:25 ID:bG34nRa60
月の光が薄らと窓から差し込み、暗い私の部屋を照らした。
それは蝋燭の炎と相まって、一層私の部屋を明るくしてくれる。
眼が悪い私にとって、部屋が明るいのはとてもありがたい。

机の上に広げた書物が見えるし、何より――あの人の顔もよく見える。

「一刀様……」

向かい合うように置いた椅子を見つめ、そこに座る人の名前を私は呟く。
天の国からやって来た“北郷一刀”様。私が心から御慕いしている御方。

毎夜、私は軍師としての知識や軍学を学ぶ為、寝る時間もかなり削って勉学に励んでいました。
只の一兵卒から軍師へと抜擢された私にとって、勉学の時間は何時間あっても足りないくらいなのです。
ある時――徹夜して勉強を続ける私を見兼ねた一刀様が、共に勉学に付き合ってくれる事になりました。

一刀様曰く「亞莎は無茶をし過ぎるから、俺がしっかり監視してないと駄目だよ」らしいです。
監視と言っても、一刀様にとっても学ぶべき事が多いらしく、楽しく時間を過ごされています。

最初は恐れ多かった事もありました。
でも今は一刀様が来てくれるのがとても楽しみで仕方がありません。
そして今夜もまた、一刀様が来るのを今か今かと、私は待っていた。

あ〜……駄目です。せっかく広げた書物に手が付きません!
一刀様が来る前に、これだけは終わらせておきたいのに……
191 名前:ガルルガ【勉学の時間2/4】[sage] 投稿日:2009/01/20(火) 00:09:47 ID:bG34nRa60
そう私が溜め息を吐いていると、背後から扉を軽く叩く音が聞こえた。
一刀様だ……! 私は瞬時にそう思い、背後へ振り返る。

「一刀様!」

私自身、驚くくらい弾んだ声で一刀様の名前を呼んだ。
でもそこに居たのは――

「ふむ……残念じゃが、ワシは北郷ではないぞ? 亞莎」

ニヤニヤした顔を浮かべている、祭様でした……。
間違えた……!? よりもよって一刀様と祭様を……!?
自分の顔が熱くなっていくのが分かる。恥ずかしい……!

「あ、あ、あの……す、す、すいません……! さ、さ、さ、祭様とは思わず、てっきり一刀様かと……」
「はっはっはっ! 謝らんでも良い。こんな夜中に頑張っているようじゃから、一声掛けようかと思って寄ってみたが」

祭様の視線が、顔を隠していても向いているのが分かる。
うう……こんな真っ赤でみっともない顔は見られたくありません。

「面白い物が見られて満足じゃ。ふふふ、亞莎もやるのぉ」
「あ、あううう……」
「一刀様♪(←声マネ)か。北郷も好かれておるなぁ」
「い、い、いえ……好いているだなんて……そんな、私は……一刀様の事は……」
「隠すな隠すな! あんな声で北郷の名を呼んでおいて、好いていないなどとは通じんぞ?」

必死に恥ずかしさを隠そうと、私は口を開くが、祭様は笑いながら私の肩を叩くだけだ。
駄目です……今の祭様には、何を言っても私自身が墓穴を掘るだけのようです……。
195 名前:ガルルガ【勉学の時間3/4】[sage] 投稿日:2009/01/20(火) 00:13:29 ID:bG34nRa60
「少し前に明命にも言ったが、自分の気持ちを偽ってはならん。正直になれ」
「しょ、正直に……ですか……?」
「そうじゃ。男を好く事は、悪い事でも何でもない。寧ろその気持ちを押し殺して、一生後悔する選択をする者は愚か者じゃ」
「…………は、はい」
「真面目に生きるのも良いが、生き過ぎるのも考え物じゃぞ? ここの若い連中は頭が堅くていかんからなぁ」

そう言い終わると祭様は扉を開け、出て行く素振りを見せた。
私の頭に祭様の言葉が駆け巡る。自分の気持ちに正直になれ……。
私の……一刀様への気持ちは……。

「勉学、ほどほどに頑張るのじゃぞ? 亞莎」
「あ……は、はい! ありがとうございます!」
「うむ、良い返事じゃ。時期に御待ちかねの北郷も来るだろう」

再び私は、自分の顔が熱くなるのを感じた。
祭様……もう本当に勘弁して下さい。

「北郷と共に学ぶのも良いが、間違って男女の“勉学”に行かんようにな♪」
「えっ……? それってどう言う……?」

男女の勉学……? 一刀様と男女の勉学……………って、え、えええ!?

「さ、さ、さ、祭様ッ!? そ、それってまさか……!?」
「はっはっはっ! 冗談じゃ、冗談」

最後に豪快に笑いながら、祭様は部屋を出て行った。
まるで大きな暴風が過ぎ去ったかのような感覚だ。
祭様に散々からかわれ、顔の温度も何回変わった事か……。
198 名前:ガルルガ【勉学の時間4/4】[sage] 投稿日:2009/01/20(火) 00:17:43 ID:bG34nRa60
「はうう……」

書物を退け、机の上に身を投げ出し、ドッと疲れた身体を癒す。
もう祭様にからかわれるのは、勘弁願いたいです……。

そう思っている時、再び私の背後から扉を叩く音が聞こえた。
また別の誰か……少し警戒していると、待っていた人の声が聞こえてきた。

「ごめん亞莎。ちょっと遅くなった」
「は、はい。どうぞ」

今度こそ一刀様だ。退けていた書物を戻し、身体を整える。
顔は……多分大丈夫。熱く感じないし、普通を保てている……筈。
ガチャッと、扉を開ける音が聞こえる。2人だけの時間が始まる合図だ。

「一刀様!」

私は一刀様の名を呼び、笑顔で出迎えた。
それに一刀様も笑顔で応えてくれる。
今日で何回目になるだろう――私は顔がまた熱くなるのを感じた。
199 名前:ガルルガ[sage] 投稿日:2009/01/20(火) 00:20:02 ID:bG34nRa60
以上です。御後が宜しいようで……
支援、ありがとうございました!

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