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965 名前:ガルルガ[sage] 投稿日:2009/01/18(日) 22:49:28 ID:dQGZdzMK0
えっと、今から三分後ぐらいに亞莎SSを投下します。
亞莎関連のSSが少ない、と言うか、全く無いので。
拙い物ですが、宜しくお願いします
972 名前:ガルルガ[sage] 投稿日:2009/01/18(日) 22:53:40 ID:dQGZdzMK0
息を深く吸い込み、調理台に立つ私は気を落ち着かせた。
そして私は、今の自分の服装をジッと見つめる。

うん、あの方から頂いた服に変な所はない。
作業用の服はちゃんと着こなせている。

そして私の眼の前には、これから作る“ある物”の材料が置いてある。

団子粉――うん、ばっちり。
あんこ――たっぷりとある。
ごまとごま油――ちゃんと揃ってる。

私が作ろうとしている、ある物……それはごま団子。
ある出来事がキッカケで大好物になってしまったお菓子。

そう、毎夜、私の部屋で一緒に勉強をしている――天の御遣い様。
名前は“北郷一刀”様。私は敬意を込めて一刀様と呼んでいる。
……本当は一刀様が「一刀で良いよ」と言ってくれたからなのですが。

その一刀様が勉強している私に差し入れと称して持ってきてくれたのが、ごま団子だ。
初めて口にした時は、こんな美味しい物がこの世の中にあるなんて知らなかった。
何より一刀様が私の為に持ってきてくれたのが嬉しくて……今でも忘れられない。

あれから一刀様は、度々私に差し入れとして、ごま団子を持ってきてくれる。
でも貰ってばかりの私にとって、それが図々しい気がして心苦しかった。
私も一刀様に何か差し上げたい――そう思い立ち、今に至ります。
974 名前:ガルルガ[sage] 投稿日:2009/01/18(日) 22:56:23 ID:dQGZdzMK0
「作り方はちゃんと頭に入ってるから大丈夫……失敗は出来ない」

手作りのごま団子――以前一刀様と一緒に作り、一緒に食べた事がある。
その時の一刀様の笑顔はとても眩しくて…………少し話が外れました。

売られているごま団子も美味しいが、手作りのごま団子はもっと美味しい。
普段からお世話になっている一刀様に差し上げるなら、それくらいでないといけません。
2人で作った時は失敗ばかりしていた私ですが、一刀様の為、失敗は絶対に許されません! 

「よし……待ってて下さい! 一刀様!」

こうして、私のごま団子作りは始まった。



―――――――――――――




「で、出来た……!」

悪戦苦闘の末、私の眼の前には光り輝く数個のごま団子。
失敗はしないと誓ったのに散々失敗した結果、出来たのはこれだけ。
でもこうして無事に出来上がっただけでも、私は自分を褒めたい。
ちゃんと味見もしたし、味は特に問題は無いでしょう。
976 名前:ガルルガ[sage] 投稿日:2009/01/18(日) 22:58:36 ID:dQGZdzMK0
誰かに食べられないよう――ごま団子を乗せた――お皿の横に“一刀様”と、紙に書いておく。
こうしておけば、私が一刀様を呼びに行っている間は安心です。うん、我ながら良い考えです。

「早速一刀様を呼びに行きましょう。出来立ては、とても美味しい筈です」

……でもその前に、身体中に付いている団子粉を落とさなくて駄目ですね。
こんな姿を見られてしまったら、一刀様に笑われてしまいますから。



―――――――――――――




う〜ん……今日は一刀様に会い難い日なのでしょうか?
普段はバッタリと会ったりするのに、今日に限ってなかなか会えません。
明名や祭様、思春様にも居場所を訊いたりましたが、一刀様の姿は無い。
こうしている間にも、せっかく作ったごま団子が冷めていってしまいます。

「はうう……1度調理台に戻りましょう」

ガックリと肩を落とし、私は一先ず調理台へ戻る事に決めました。
まさか一刀様になかなか会えないのが、こんなに心苦しいだなんて……。



そうして私が調理台へ戻った時、信じられない光景が広がっていました。
ちゃんと置いていた筈のお皿が、ごま団子が…………無い!?
977 名前:ガルルガ[sage] 投稿日:2009/01/18(日) 23:00:11 ID:dQGZdzMK0
「そ、そんな……なんで!? どうして!?」

私は慌てて辺りを探しますが、ごま団子の姿はありません。
それどころか、お皿の影も形も無い……どうしてこんな事に。
せっかく一刀様の為に……喜んでもらいたくて……一生懸命に作ったのに……。
酷い……一体誰がこんな酷い事を……!?

私の眼から涙が零れ落ちていくのが分かる。
もう1度作ろうにも、材料が全く無い。
ごめんなさい……一刀様。ごめんなさい……!

「あれ……? 亞莎?」
「へっ……?」

泣いていた私の耳に、探していた人の声が響く。
私が後ろを振り向くと、そこには思った通り、一刀様の姿があった。
慌てて私は流れていた涙を拭う。とんでもない姿を見せてしまった。

「どうしたんだ亞莎。何で泣いているんだ……?」
「い、いえ……一刀様が気になさる事では――」

そう言った私の眼が、徐に一刀様の手の方に向く。

「あ、あ、あーーーーーーーッ!!」

そして一刀様の両手に握られている物を見て、私は仰天して声を上げた。
そんな私の頓狂な声に驚いたらしく、一刀様が冷や汗を流している。
980 名前:ガルルガ[sage] 投稿日:2009/01/18(日) 23:03:01 ID:dQGZdzMK0
「あ、亞莎? さっきから本当にどうしたんだ?」
「か、か、一刀様ッ!? その手のお皿……!? ごま団子が乗っていた筈ですが……!?」
「ん……ああ、これ? もしかして亞莎も食べたかったのか?」
「あ、い、いえ……そう言う事ではなくてですね、どうして一刀様がそのお皿を……?」

「ああ。腹が減ったから、調理台に何かないかと思って、少し前にここに来たんだよ」
「そしたら俺宛てにごま団子が乗った皿が置かれていたからさ、食べて良いのかと思ってつい……」

そう言う事だったんですね。ああ、他の人に食べられていなくて良かった。
でも一刀様、次からは誰が作ったのか確認してから食べて下さいね。
私、本当に不安だったんですからね。大声を上げて泣き出すくらいに。

「それにしてこのごま団子、かなり美味かったよ。亞莎も居たら、分けてあげてたけど……」
「あ、いいえ、私の事は御気になさらず! ……その…………本当に美味しかったですか?」

私はもう1度、恐る恐る訪ねた。顔が何故だか熱い。
恐らく私の顔は真っ赤に染まっているのだろう。

「ああ、本当に美味しかったよ。誰が作ってくれたのかは知らないけど、また食べてみたいな」
「あ……は、はい! 一刀様がそう御望みならば、何時でも!」
「ん……? どうして亞莎がそんなに張り切ってるんだ?」
「あ……え、えっと……秘密です!」

今はまだ、私が作った事は秘密にしておきたいと思います。
また次に作る時までに、一刀様の驚いた御顔はとっておきますね。
貴方が美味しいと言ってくれた――ごま団子を持っていく時まで。
987 名前:ガルルガ[sage] 投稿日:2009/01/18(日) 23:25:59 ID:dQGZdzMK0
失礼、繋がり難くて書き込めなかった。
SSは以上です。支援、ありがとうございました。

機会がありましたら、また亞莎SS投下させてもらいます。

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