- 715 名前:430[sage] 投稿日:2009/01/17(土) 15:05:34 ID:/W4aMiS30
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>>690
もちろんOKですよー
wktkしながら待っておきますw
…とまあただ待ってるのもあれなので、
北郷新勢力ルート:Interlude
─決意─
3レス程度ですが投下しときますー
- 716 名前:真√:Interlude 1/3[sage] 投稿日:2009/01/17(土) 15:07:26 ID:/W4aMiS30
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「さて……私はこの辺りでお別れですかな」
突如、星はそう切り出した。
いきなりなことに呆然とする三人に、星はその反応はさも意外と言う様に首をかしげる。
「おや?どうなされた、お三方?」
「いや……いきなりお別れなんていうから、驚いて。……んで、どう言うこと?」
とりあえずそう説明を求める一刀に、星は「ああ」と手を打つと、
「そう言えば話しておりませんでしたか。
いや何、少々路銀が心もとなくなってな。一寸仕官でもしようかと」
「はは…路銀って辺りが趙雲さんらしいって言えばらしいな」
そう言う一刀に、しかし風と稟は苦笑してみせ、
「お兄さんお兄さん、そうは言いますが、今のご時勢お金は大事なのですよー」
「そうですよ、一刀殿。我々とて蓄えが豊富にあるわけではないのですから。
近いうちに一稼ぎしないといけないと思いますよ」
「……はい、ごめんなさい」
残念ながら、事お金に関しては今の一刀に発言権は無い。何と言っても彼は無一文だ。
「この辺りですと…冀州の袁紹さんか、幽州の公孫賛さんですかー?」
「ああ。距離的には冀州の方が近いのが……聞いた噂を信じるならば、袁紹殿は余り好き
になれそうもないのでな。幽州へ行こうかと思っている。
……時に北郷殿。貴公に聞いておきたい事があるのだが……よろしいか?」
そう聞いてきた星の雰囲気が、先ほどまでと違い真剣なものになっているのに気づいた。
「いいよ。俺に答えられる事ならだけど」
「かたじけない。何、聴きたいのは一つだけだ。
……貴公は風と稟を幕下に加えて、人の下に着くのではなく、人の上に立つ事を選んだ
わけだが……貴公はどのような世を目指すのか?」
「何を目指すか……か」
一刀はそう星の言葉を反芻すると、しばしの間静かに眼を閉じる。まるで、己の心の内
を確かめるかのように。
その間、質問した星のみならず、風も稟も一言も発する事無く、一刀の言葉を待った。
「……正直に言うとさ、二人の主になるのを承諾したのって、あの時は深く考えていなか
ったんだと思う。……雰囲気に流されたって部分は確かにあったかな。けど……」
「……けど?」
- 717 名前:真√:Interlude 2/3[sage] 投稿日:2009/01/17(土) 15:09:52 ID:/W4aMiS30
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「まだあれからそんなに日は経ってないけど、四人で旅してる間もずっと考えてた。
もしこの世界の流れが、俺の知っている通りに進んでしまうのだとしたら……これから、
今まで以上の混乱が大陸全土を包むことになる。それこそ、現状が幸せだと思えるぐら
いのね」
もし、と言いつつも、一刀はその混乱が確実に起きるであろうと予感していた。明確な
根拠などはないけれど。……いわゆる、黄布の乱、だ。
「……はっきり言って、今の俺には何の力も無い。この世界のまともな知識も、多少の剣
は習っていたけど、実際の殺し合いなんてした事もないどころか、真剣を握ったことすら
も無い。……だからと言ってさ、力の無い人、弱い人が苦しむ時代が来ることがわかって
居るのに、それをただ傍観している事なんて、俺には出来そうも無い。
…俺は自分自身が『天の御遣い』なんて大層なもんだとは思えないけど……例え虚名で
も、『天の御遣い』ってやつをうまく使えば、苦しむ人を少しでも助けることはできるか
もしれないなら、俺はそれを成したいと思う」
「……成程。だが、『天の御遣い』の名を使い、力に対して力で対抗する。…それは只の
偽善ではないのか?」
「……かもしれないね。もっといい方法があるのかもしれない。けど、今の俺には今言っ
た方法ぐらいしか思いつかないし、出来ないから。……それにさ、俺の世界には『やらぬ
善よりやる偽善』って言葉があってさ。確かに偽善で自己満足なんだろうけど……それで
も救われる人が居るなら、やって損はないだろう?」
「ふむ……だが、貴公が助けたいと言っている者達と貴公は、もともと関わりなどないだ
ろう?これから起こるであろう混乱も、貴公のせいで起こるわけではあるまい。
…貴公が身体を張る必要などないのではないか?」
「……そうだね。けどさ、それならどうして、俺がこの世界に来たとき……三人と初めて
会ったあの日、趙雲さんは、俺を助けてくれたの?君と俺とはなんの関わりなどなかった
のに」
「……むっ」
そう切り返されるとは思って居なかったのだろう。一刀の言葉に、星は一瞬言葉を詰ま
らせる。
「あの時……助けられる直前までさ、俺これはマジで死んだなーって思ってた。なんでこ
んなことになったんだろうって、絶望感でいっぱいだったよ。
- 718 名前:真√:Interlude 3/3[sage] 投稿日:2009/01/17(土) 15:10:53 ID:/W4aMiS30
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だから、趙雲さんが助けてくれた時、安堵したっていうか…すごく嬉しかったよ」
改めて面と向かってそう言われ、照れているのだろう、星は少し紅潮した頬を掻いた。
「だからさ、今度は俺がそれを成したいと思う。
あのときの俺の様に、自分ではどうすることもできない暴力に晒されて居る人を助けた
いと思う。……こんなのは綺麗事で理想論なんだろうけどさ、もし、そうして俺に助けら
れた人が、更に立場や力の弱い人を助けて…ってずっと続いていけば、多少の動乱や混乱
なんて、何とかなりそうな気がするんだよね。……俺はその一助ができればいいと思うよ」
そう己の内を語り終えた一刀は、これで全て言い終えたと言う様に、大きく息を吐いた。
「何か最初の質問の答えにはなってない様な気がするけど……俺には大望なんてないしな」
「いや……結構、満足だ。
それと、私のことは星と呼んでほしい。…貴公には、我が真名を預ける価値がある」
「……うん、ありがとう、星」
そんな星の言葉に、今度は一刀が照れて頬を掻いた。
「さて……私はそろそろ行くとしよう。……三人とも、達者でな」
「はいー。星ちゃんこそ、お達者でー」
「まぁ、貴女なら大事無いとは思いますが……お元気で」
「またな……また会えることを願っているよ」
三者三様の別れの言葉を告げ、去っていく星の背中が見えなくなるまで見送った後、余
韻を断ち切るように凛が口を開いた。
「では……我々も参りましょうか、一刀様」
「そですねー。大きな動乱があるというのなら、それに備えないといけないですし。頑張
るのですよー、ご主人様」
そう言って先に歩き出す風と稟。
「ああ。……って様って何!?って言うか、風のご主人様ってのはもっと何!?」
そんな慌てる一刀に振り返り、風は言う。
「ふふっ……やはり風の見る眼は間違っていなかったのですよー」
その顔には、稟もほとんど見たことが無い様な、太陽ような笑顔が浮あった。
それを見た稟も、自然と顔をほころばせ、笑顔を浮かべていた。
そんな二人を見て、北郷一刀は思う。大丈夫だ、と。
この二人と一緒なら、暗雲に満ちた未来も、突き進んで行けるだろう、と──。
- 719 名前:真√:Interlude[sage] 投稿日:2009/01/17(土) 15:14:26 ID:/W4aMiS30
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以上、お目汚し失礼しましたー
なおこれは
出会い(第一章)と黄巾の乱(第二章)の幕間にあたります。
この後、舞台は黄布の乱へと移っていくわけですが
それはまたいつの日か。
ではでは。