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534 名前:ハム√の人[sage] 投稿日:2009/01/16(金) 01:22:37 ID:Szxf3lHW0
一人いれば大丈夫だよな…ということで投下開始します。
大体5-6レス程度で終わると思います。
さるさん喰らったらジャンピング土下座で勘弁してください。
535 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2009/01/16(金) 01:23:21 ID:Szxf3lHW0
[四]

 ようこそ、この一風変わった三国志の世界へ…なんて言われた覚えも言った覚えもないけれど。
 俺がこの世界に来てから、すでに数日が経過していた。

 伯珪とは、最初に会った後は、あまり話す機会がない。
 彼女は、多忙の身なのである。
 んでもって、俺は天の御遣い、なんて肩書きはあるけれど、その実ただの居候。

 ここ数日、俺の話相手になっていたのは、伯珪ではなく、客将である一人の女の子だ。
 その名前を聞いたときはびっくりしたのも、今では…いや、今でもやっぱり、彼女が「あの」武将とは、信じられない部分はあるか。

 ともかくも、伯珪はやたらと忙しい。
 内政内政盗賊退治また内政。
 普通に見えてもそこはそれ。
 白馬に乗って剣を取り、あるいは周囲に適格な指示を飛ばす様を見れば、伯珪だってわりと凛々しい女武将に見えたりする。

 が、その一方で。
 連日机の前で溜息ついたり頭を抱えたりしている様を見てると…なんというか。
 ああ、やっぱり普通の女の子なんだなぁ、などと妙に納得してしまったり。

「まあ、あれだけやることがあればしょうがないか」

 苦笑する自分は、というと、桶を片手に水汲みに来てたりする。
 どこからどう見てもただの雑用係です、本当にありがとうございました。

 漫画とか小説の見すぎと言うことなかれ。『異世界』に来てやっていることが、ただの雑用というのはどうしても悲しいものがある。
 まあ、普通に考えてみれば…由縁もわからぬ人間が、いくら天の御遣い、なんて肩書きを持っていたとしても、いきなり重用されるわけがない。

「どっちかっていうと、重用したり、主として祭り上げたりする方が、問題あるよなあ…」
536 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2009/01/16(金) 01:24:40 ID:Szxf3lHW0
「どっちかっていうと、重用したり、主として祭り上げたりする方が、問題あるよなあ…」
「そうとも言えませぬぞ。
 北郷殿に相当する能力が備わっており、尚且つ、貴方を拾った者が相応の眼力を備えているのだとしたら、むしろそれは正しい」

 ここ数日で、聞きなれた声が、どこからともなく聞こえてきた。
 独り言に返事が返ってきたことには驚くけれど、声を聞けば納得する。
 彼女がしたなら、大概のことは驚くほどのことじゃない。

「子龍…?」

 この世界に来て、二人目に知り会った女性。
 姓は趙、名は雲、字は子龍。
 三国志でも一際光る英雄と全く同じ名をもつ、彼女の字を呼び、同時に頭上を仰ぎ見る。
 目に入ってきたのは、木の上で昼間っから酒を飲み、意地悪そうに笑っている…やっぱり美少女だった。

「おや、今日も雑用か?忙しいことだ」

 …本当に彼女があの趙子龍なんだろうか。
 趙雲と言ったら、質実剛健忠義一徹、全身これ胆の勇将のはず。
 けど、目の前にいるのは少々?奇抜な美少女。
 まあ、公孫賛が普通の美少女だったんだから、別に不思議じゃないって言えば不思議じゃないのかもしれない。

「しかし…すでに乱世の兆しは見えている。
 だというのに、せっかく迎え入れた天の遣いを雑用に使うなど…。
 義には厚いが、伯珪殿は所詮は凡人の器、ということか」
「そうかなぁ?わりと伯珪はやり手だと思うぞ。
 そもそも、俺が天の遣いなんて決まったわけじゃないし」
「何をおっしゃいますやら。
 その名前。その服装。さらには人の字を言い当てる離れ業。
 どこからどう見ても、貴公は本物の天の御遣いにしか見えませぬが」
537 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2009/01/16(金) 01:25:46 ID:Szxf3lHW0
「…どうやったって胡散臭く聞こえるなぁ」
「失敬な。私は本心から言っているのですが」
「ってことは、伯珪の評価についても本心?」
「おっと」

 言葉面だけ聞くと、口が滑った…なんて思ってるように聞こえるものの、相変わらず彼女の口には薄い笑みが浮かんでいる。
 何のつもりなんだろうか。まあ、彼女の行動が破天荒なのは今更か。
 実際会ってから十日とたってはいないのだけど。

「…こんな荒んだ世の中で、あれだけの人格者が統治者として存在することはむしろ奇跡じゃないかなー、と俺なんかは思う」
「ふむ、その評価も捨てがたいですな」

 冗談で返したつもりが、妙に納得されてしまった。

「とはいえ、英雄と呼ぶには少々魅力が足りぬ…貴公はどうお考えか?」

 それにしても本当にいいのか、ここまでぶっちゃけちゃって。
 趙雲さん、仮にも伯珪のこと、恩がある相手って言ってませんでしたっけ?

「居候の身にそんなこと聞かれてもなぁ」

 投げやりな台詞にも、子龍は取り合わない。
 そのまま、自分の言いたいことをしゃべり続ける。

「乱世は最早目前。しかし、伯珪殿は盗賊退治と内政ばかりに気をとられている。
 それ以外にやるべきことがあるのではないか?」
「うーん…」
539 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2009/01/16(金) 01:27:45 ID:Szxf3lHW0
 確かにそうだ。
 こっちの世界の流れが、俺の知っている世界の時代の流れと同じなら。
 この後、黄巾党の乱、董卓の暴政などが続き、最終的に世は戦国乱世になる。

 しかも、幾ばくかの人々には―――少なくとも子龍には―――その流れが半ば見えているのだろう。
 …が。それに比べると伯珪は、目の前の些事に捉われているような気がするのは確かだ。
 で、その原因はというと。

「やっぱ、人手…っていうか、人材が足りないよな」
「…ふむ」
「そもそも、白馬義従だっけ?
 あの騎馬隊にしても、個々人の騎射の腕はともかく、戦術的な支えが伯珪の軍学だけじゃなあ…。
 内政に関しては、ほとんどが伯珪の承認がないと動かない状態だし。
 軍師というか名士というか、そういう人がいればいいんだろうけど…」
「…ほう」

 首を捻ってると、いつの間にか、子龍が酒を飲むのをやめ、こちらをじっと見ていた。

「…どうかした?」
「いやはや。少々驚いておりました。
 何ともはや…なかなかどうして」

 何とも言えない彼女の顔に、首を傾げてみる。
548 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2009/01/16(金) 01:48:37 ID:Szxf3lHW0
「何で驚くのさ」
「…いえ、桶を手に持って、いつまで考え事をしているのかと」

 ………しまった!?
 俺水汲みの途中だった!?

「わ、悪い子龍!
 話はまた後で!」
「うむ、急がれよ」

 少々重い桶を持ち直し、走り出す。
 その後ろで。

「…」

 視線が俺のことを追っかけてきている気がした。
551 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2009/01/16(金) 01:51:31 ID:Szxf3lHW0
というわけで今回は終了。とりあえずごめんなさいorz
エロパロ板出身としては、スレに投下する方が慣れてるはずなのですが…むむむ
一応、いくつか回避方法を考えてみます…
次回は桃園三人組に寄生される話になるかと。ではまた

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