- 831 名前:825[sage] 投稿日:2009/01/04(日) 21:13:01 ID:9cOL76hb0
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>>826-829
レスサンクス。実はまだ書き上げてないんだが、結構需要があるようなので、
前半分を掲載します。
桂花SSです。
- 832 名前:桂花の乱(前半 1/11)[sage] 投稿日:2009/01/04(日) 21:14:56 ID:9cOL76hb0
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三日続いた秋雨の後、おとずれた満天の星空。
大国・魏の首都、許昌上空でもそれは変わらず広がっていた。
街を照らし続けている星の光。さながら永遠を感じさせるその柔らかな光には、
どんな悪党であっても心洗われるに違い。そんな平穏な夜。
そう、どこからか胡琴の音が聞こえてきそうな穏やかな夜だというのに――。
宮中のほど近く。高官が住まう一角に建てられた邸宅の一室にゆらめく影は、
空の光とは無縁の闇に塗りつぶされていた。
「あああ……っ、ありえないわっ!!」
静寂に漏れる、うめき声とも叫び声ともつかないわずかばかりの音。
「そんなっ、そんな……っ」
声とともに書卓がばしばしと叩かれる音があたりに響く。
音のたび、猫の耳にも似た頭冠がずれていくが影は気にもとめない。
「あんな奴の……? はっ、ありえないわよ。だって私は華琳様のものなのよ?」
華琳様専用肉便器とかならまだしも。……ああ、なんて甘美な響きだろう。
うっとりと思考をどこかの向こう側に手放しかけた影が、やおら首を振る。
- 833 名前:桂花の乱(前半 2/11)[sage] 投稿日:2009/01/04(日) 21:15:36 ID:9cOL76hb0
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「いけないいけない。今はこの悪魔の所業としか思えない事態にどう対応するか、
それが大切よ」
王佐の才と称された自分の能力なら必ず打開できる。
(そうよ)
うまくいけば華琳様も目を覚まされて、あの全身肉棒男を追放してくれるかもしれない。
そうすれば華琳様の寵愛は自分が一身に受けることができる――。
「ふふっ、ふふふふふふっ」
それは余りにも都合のよい三段論法だったが、普段の怜悧さはまったくないらしく、
合わせ絵をうまく完成させた童子のように、猫耳影は口元を綻ばせる。
「今度こそ、お別れのときね、北郷一刀」
欄間から零れる光をその身に浴びながら。
怨敵が零落するそのときを思い浮かべて。
荀文若は嗤った。
- 834 名前:桂花の乱(前半 3/11)[sage] 投稿日:2009/01/04(日) 21:16:12 ID:9cOL76hb0
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「ふわあああ……」
「ん、どうした北郷、すごい欠伸だな」
朝議へ向かう途中。春蘭が少し不思議そうな顔をして話しかけてきた。
どんよりとした俺とは裏腹に春蘭は夏の太陽のように晴れやかだ。
……少し羨ましい。
「いや、なんかさ夜中にうなされて起きたんだけど、それから一向に眠れなくてさ」
「……ふうん」
ちらりと流し目をくれて、彼方を向く春蘭。
「なに?」
「そんなこと言って、本当は、よ、夜這いでもしてたんじゃないのか?」
「…………はい?」
思ってもみなかった球が飛んできて思わず反応が遅れる。
春蘭も言ってはみたものの恥ずかしくなってきたみたいで、
俺をちらちら見ながらも、第二波、第三波と仕掛けてくるつもりはないようだった。
普段は春蘭からは想像できない乙女な部分。仲良くなった今では
春蘭にそういうところがあるというは良く知ってるけど、
出会ったばかりのころからは考えられない。
- 835 名前:桂花の乱(前半 4/11)[sage] 投稿日:2009/01/04(日) 21:20:42 ID:9cOL76hb0
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「春蘭=乙女=ぶっちゃけありえない、って思ってたもんな」
しみじみと嘆息。
「ほほう、そこまで死に急ぐか、北郷」
当然のように抜刀する春蘭。
「いやいやいや、そういう意味じゃなくてっ」
うっかり口を滑らしたらしい。ギラリと光を放つ七星餓狼を前に俺は後ずさった。
「貴様の言いたいことはわたしが男みたいだということだろうっ」
「ち、ちがっ、うぉっとぅっ!?」
今のいままで俺の首があった位置に豪快な軌跡が描かれる。
二撃、三撃と繰り出される攻撃に意味ある言葉を発することができない。
(乙女の前に、武人だろう、春蘭は)
本当なら褒め言葉になる筈のそれを口の中でもごもごさせながら
脱兎のごとく逃げ出す俺。
「待たんかゴルァアアアー」
「もうちょっと時代考証した上でセリフをっとぅ!?」
「問答無用ーっ」
- 836 名前:桂花の乱(前半 5/11)[sage] 投稿日:2009/01/04(日) 21:21:24 ID:9cOL76hb0
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「ふう、ふうっ、はー」
どうやら逃げ切ったらしい。
内廷をぐるっと一周し、朝議を行う奥の殿舎まで逃げてきたが、
春蘭はまだ来ていなかった。
見回すと、主だった将官、文官はすでに到着しているようだ。
ちょうどいい時間潰しと運動になったかもな。……二度目はごめんだが。
などと考えていると……、
「お兄さん、どもどもです」
「おう、風か。どうした?」
「どうした、ではないのですよ。風は、お兄さんの種馬ぶりを見せつけられて驚きなのです」
「そやで隊長、英雄色好む。それでこそ我らが隊長や、って言ってやりたいけど、
ちょっとアレはあかんで」
「真桜、それはどういう……」
「……少し見損ないました」
「女の子はデリケートなのー、優しくしないとめーっ、なのー」
「凪に沙和まで。何の話だよ、いったい」
少し怒ったふうの北郷隊の副官三人を前に、俺は首を傾げた。
何のことを言っているのか、まるで見当がつかない。
「ヒソヒソヒソ(これって、しらばっくれとるだけなんちゃうんか?)」
「ヒソヒソヒソ(お兄さんが嘘が下手ですから、もしそうなら容易く看破できるのですよー)」
「ヒソヒソヒソ(やはり風聞のたぐい、ということなのか?)」
「ヒソヒソヒソ(でも、隊長ならやりかねない話だったのー)」
「オイコラチミタチ、丸聞こえで何を人聞きの悪いことを言っているのかね?」
「おやおや、聞こえない方がよかったのですか?」
風が手で口を押さえながら、にまにまと笑みを浮かべる。
- 840 名前:桂花の乱(前半 6/11)[sage] 投稿日:2009/01/04(日) 21:37:26 ID:R/hCzH260
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いや、まあどっちかと言うと……
「聞こえるように話してくれた方が助かるけど。ただ何のことか判らないから、
結局聞こえても聞こえなくても一緒というか」
顔を見合わせる4人。その顔には一様に「まだ半信半疑」と書いてあった。
そしておもむろに頷き合う。何らかの合意に達したようだ。
というか、普段の警邏とかもこれぐらい真剣にやってほしいんだが。
「隊長、今からふたつ質問をします」
「とっても大切な質問なのー。正直に答えないとだめー、なのー」
「了解」
「まずひとつめや。隊長は嫌がる女の子を無理やり犯したこと、あるんか?」
「いきなりだな」
「あるのですか、ないのですか」
凪がぐっと詰め寄ってくる。拳が固く握られており、返答如何では飛んできそうな勢いだ。
「ちょ、ちょっと落ち着けって。そうだな……」
魏の女の子と交わした、過去の事例をいくつか思い出す。
「そういうのは別になかったな」
「ホンマかいな?」
「嘘じゃないって。華琳が無理やりやらせたのがあるにはあるけど、
それも最終的には合意を得てからしてるよ」
そうだよね? アレって合意の上だよね?
裸に剥かれた上に後手に縛られて転がされてた毒舌軍師を後ろから、
というやつを思い出しているが、結構喘いでた記憶もあるし……。うん、大丈夫な筈。
「あー、なんか思い出してるのー、とてもいやらしいのー」
「あのなあ……ふう、もうひとつはなんだよ」
「…………ぐー」
「おいこら、風」
「おおっ、質問内容のはしたなしさにうっかり寝入ってしまいました」
- 842 名前:桂花の乱(前半 7/11)[sage] 投稿日:2009/01/04(日) 21:38:02 ID:R/hCzH260
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居住まいを正した風は、一拍置いて、こほんと咳払いをする。
ちらりとこちらに一瞥をくれて風が口を開く「んとですね、」
「お、おう」
「魏の種馬としてここの4人を含め、大勢の女の子をこましてはまぐわいを
重ねているお兄さんですがー」
これまたすげえいきなりな内容だった。
というか、
「心通わせてとかそういう言葉を使ってほしいんだが……」
「魏の種馬として必ず中出しするお兄さんですがー」
それは否定できない内容だった。……だって、気持ちいいしなあ。言えないけど。
「お兄さん、お兄さん」
いつのまにか風がすすすと俺の横まで来てしたり顔を浮かべている。
「孕ませてしまったらどうするの? なのですよ?」
「きゃーなのー」
「核心やー」
「…………」
それぞれ桃色の反応を返す三人娘だが、俺の返答はすでに決まっていた。
「そりゃ、責任をとるよ。それより先に嬉しいって気持ちが先にくるとは思うけど」
「どうやって取るのですか」
「せや、取り方が重要や」
「なのー」
結婚という言葉を思い浮かべる。この世界で何て言うのかは知らないけど、
婚姻制度自体はあったはずだから、説明すれば理解してもらえる筈。
でも……
- 843 名前:桂花の乱(前半 8/11)[sage] 投稿日:2009/01/04(日) 21:39:30 ID:R/hCzH260
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(気持ちを伝えるために、結婚を意味する言葉を使うのは、ちょっと違うかもな)
自分の考えを検めると自然と言葉が口をついて出た。
「母親となる女の子と赤ちゃんを愛し、慈しみ、その人たちのために一生懸命生きる、
というところかな」
そうだ、こうやって平たく言葉にした方が、しっくり来る。
「いつも共にあって、手を取り合って、いっしょに幸せを紡いでいきたい。
俺は、その人たちの寄る辺となりたい、かな」
戦乱の時代。それがどれだけ叶えられるのかは判らない。
でも、できる限り力を尽くしたい――。それが俺の偽らざる感情だった。
「……という感じなんだけど」
「あ、や、うん、ええんとちゃうかな」
「う、うん。沙和もいいと思うのー」
「さすが……我らが隊長です」
三者三様の反応。しかしどの顔にもどことなく赤味が射しているようでもあり……
「この天然女たらしが」
風のゆったりとしつつも鋭い舌鋒が耳に痛く、俺は苦笑を禁じ得なかった。
「で、なんでいきなりそんなことを聞き出したんだ?」
「それはな、……これや」
真桜が取り出したのは、途中で折れた立札だった。内容を検める。
「なになに、天の御使いを僭称する北郷一刀、魏の国内において
女の子を無理やり押し倒し、妊娠させた……?」
- 844 名前:桂花の乱(前半 9/11)[sage] 投稿日:2009/01/04(日) 21:40:41 ID:R/hCzH260
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なんだ、これ。俺は、こんなこと――してない、
と言おうと顔をあげると、そこには4人の笑顔があった。
「大丈夫やって、隊長、ウチらは疑ったりせえへんって」
「隊長の高潔さは十分に存じているつもりです」
「ちょっと不安だったから質問してみたけど、納得のいく答えをもらえたのー」
「皆……」
北郷隊の、今まで築いてきた絆を感じて、うっかり涙ぐむ。
「風も、お兄さんのこと、信じてたのですよー」
三人の間に割って入ろうと、風が後ろからつんつんと軍扇でつついてくる。
「ああ、風もありがとな」
少し癖のある、だけど綺麗な金髪を撫でてやる。
すんすんと鼻を鳴らしながら、風は少しうれしそうだ。
「せやけど、無理やりはあかんでー、隊長」
「そうなのー。ちゃんと合意が必要なのー」
「そうですよ。女の子の、き、気持ちを大切にしてあげてください」
「お兄さんのちんちんは硬くて太いですから、無理やりだと相手を殺しかねない、
なのですよ」
酷い言われようだった。
「するときはちゃんと相手を様子をうかがいながら、気を使ってやってるっての。
というか、その話はもう終わったはずだろ」
「いやいや、これからが本番なのですよー」
あははは、と辺りに笑いが巻き起こる。
朝議が始まるまでの間、俺たちはそうやって冗談を言い合って過ごした。
- 846 名前:桂花の乱(前半 10/11)[sage] 投稿日:2009/01/04(日) 21:42:20 ID:R/hCzH260
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(いけない、ぎりぎりになってしまったわ)
魏の猫耳頭巾、もとい知恵袋である荀文若こと桂花の昇殿は朝議が始まる少し前となった。
普段ならこんな開始直前の到着など無い彼女ではあったが、今日ばかりは違った。
(あの年中発情男を追い落とす為だもの。これぐらいは仕方ないわね)
手には不眠不休で書き上げた20巻もの弾劾状がある。
これぞ、天の御使いを騙る北郷一刀を抹殺する切り札。アイツがどれだけ非道で
変態かをこれでもかと書き連ねてある。これを読み上げたとき、
元々チリ程度しかなかった声望も地に堕ち、腐れ外道としての貌が暴かれる。
泣き叫んで自分の足下に跪く一刀を想像するとついつい笑みがこぼれてしまう。
「さあ、その哀れな贄は何をしているのかしら?」
一刀にしか向けることのない、その意地の悪い笑顔で、桂花は辺りを見回す。
「いたわ……」
荀文若飛翔のための供物・北郷一刀を殿舎の一角で発見する。
一刀は、北郷隊の三人娘、そして風と談笑している様子だった。
「なによ、あいつ……」
その楽しそうな雰囲気を目にした瞬間、脳内血管が焼き切れそうなほどの怒りがこみ上げる。
こっちは夜を徹してこの弾劾状を書き上げたというのに。
「糞蟲は何をそんなにのほほんとしているの? 地を這いつくばって許しを乞うたらどうなの?
そんなことも思いつかないほど馬鹿なの? 死ぬの?」
一刀を射殺さんとばかりに睨みつけてみるが、一向に気づく様子はなかった。
「ありえないわ……」
余りの怒りにくらくらとしていたが、息を深く吸って軍師としての冷静さを
取り戻した桂花は、思考を切り替えた。
「しょせんは今だけのことよ。朝議が進むにつれ、あの馬鹿は自分の犯した罪の
深さを後悔し、この桂花様に屈することになるのだから……」
必ず訪れるであろうその時のことを考えると、今この瞬間のやすらぎなど
ごみくずのようなものだ。
- 847 名前:桂花の乱(前半 11/11)[sage] 投稿日:2009/01/04(日) 21:43:59 ID:R/hCzH260
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「せいぜい最後の時を楽しむことね……」
嘯く桂花だったが、あははと笑いの渦が起きてしまうと、
思わず反応せずにはいられなかった。
「何の話をしているのかしら。……敵を知り、己を知らないと
百戦危うからずとは言えないわ。情報は、重要よ……」
誰かに言い訳するように呟いて、こそこそと集団に近づいてみる。
「せやけど、無理やりはあかんでー、隊長」
「そうなのー。ちゃんと合意が必要なのー」
「そうですよ。女の子の、き、気持ちを大切にしてあげてください」
「お兄さんのちんちんは硬くて太いですから、無理やりだと相手を殺しかねない、なのですよ」
聞こえてきたのは、真桜、沙和、凪、風の声。
(先だって流言を飛ばした効果はあったみたいね)
そのそれぞれ一刀を責め立てる様子をうかがい、桂花はひとり納得した。
何を隠そう一刀が女の子を押し倒して妊娠させたという怪文書をばら撒いたのは、
他ならぬ桂花なのだ。
(万が一にもあの馬鹿の肩を持つ阿房がいたら困るのよ)
弾劾状を書き上げる傍ら用意した立札は、皆の反応を確かめるためのもの。
一般常識を弁えた人間なら当然、アイツを責め立てるはず……。
さっきの様子はまさに自分が想像した通りだった。
「麾下の三人娘にすら責められてたからね、あの馬鹿……」
くくくと桂花ののどが鳴る。
(この調子なら弾劾中アイツの肩を持つ奴なんて出てきようもないわ)
自分の立てた策にひとしきり満足して、桂花は朝議の開始は今か今かと待ち続けていた。
- 848 名前:825[sage] 投稿日:2009/01/04(日) 21:47:26 ID:R/hCzH260
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>>832-847
『桂花の乱(前半)』
割るとしたら、こんなところしかなかったので、少し中途半端なところになってしまったかも。
後半では桂花のエロがあり升。
>>837-838、>>845
支援サンクス。
>>841
うp期待!!