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647 名前:エロ本[sage] 投稿日:2008/12/25(木) 00:11:08 ID:auwmjQSL0
ちなみに私は今日中に購入予定……ってなわけで、カウントダウンSS投下。
終わりには=了=発売まであと一日を入れます。






 私はなぜ生きているのか?
 その疑問はこの世界で暮らすにつれて、だんだん希薄になってきたものだ。
 決して、忘れてはいけないはずなのに。


『新世界にて〜冥琳の場合〜』
648 名前:エロ本[sage] 投稿日:2008/12/25(木) 00:16:39 ID:auwmjQSL0

 特に今日も暇だった。
 休みの日は大体このようなものだろう。
 この世界に来てから、この世界での職を貰ったが何故退屈なのだろうか?
「暇だな……」
 もう、3時だというのに、何もやることが存在しない。家にも誰もいない。
 一緒に暮らしている蓮華様も穏も思春も外に出てしまっている。
「はぁ……」
 まだ、帰ってくるまで時間があるだろうか?
 そう思うと、途端に眠くなってくる。
「少し寝るか……小喬たちもどこかにいってるし」
 そうすると、自然に瞼が下がっていった。こんな楽な時間があったなんて思わない程に。




 目の前にあったのは炎だった。
 そして、愛しき人がそこにいた。たどり着きたい場所がそこにあった。
 でも……私の声は決して届かなかった。
649 名前:エロ本[sage] 投稿日:2008/12/25(木) 00:21:55 ID:auwmjQSL0
「雪蓮!」
 目が覚めると、私は無意識にその愛しい名前を叫んでいた。
 息が荒い。寝苦しい。
 喉をかきむしりたい様な感覚がまだ残っている。
「はぁ……はぁ……」
 あの夢の光景は何だったのか?
 見たこともない光景であるのに、何故か見たことがある光景。今世界ではデジャヴと言っただろうか?
「何なんだ……」
 訳が分からない。
 何かに縛られているような感覚がある。何が?分からない。
「雪蓮」
 ただ愛しい人の名前を呼んだ。
 そして、帰ってきた声は
「どうしたの?冥琳」
「……!!」
私が愛していたもう一人の主であった。




 なぜ、うなされていたのか?
 それはまるで檻に押し込められた動物のようで。
 狭い水槽に閉じ込められた
650 名前:エロ本[sage] 投稿日:2008/12/25(木) 00:26:11 ID:auwmjQSL0



「すみません。蓮華様」
「いいのよ」
 頭にひんやりとした濡れタオルが乗せられる。蓮華様の話によれば、寝ている間にうなされていたらしい。
 それにしても、なぜこのようなことに?
「蓮華様、買い物に出かけたのでは?」
「いえ、私だけ先に帰ってきたの。買った物を家に届ける必要があったから」
 後ろを見れば、確かに大きなビニール袋とそれに入っている数々の食糧や生活必需品がある。
「そうですか……」
 私もまだ頭が回っていないようだ。
 そのようなことは見ればすぐ分かるというのに。
「冥琳」
 蓮華様が私の顔を覗き込んでくる。
「何か?」
「さっきの姉さまの名を叫んでいたけれど……」
「……!!」
 一瞬、時が止まったかと思った。冷静に考えればうなされている事を聞いているのだから、叫んだことを知っているのは当然だろう。
「もしかして……冥琳」
 隠せないと思った。
 いや、隠してはいけないと思った。
「私は……」
651 名前:エロ本[sage] 投稿日:2008/12/25(木) 00:30:56 ID:auwmjQSL0



 この世界に雪蓮の枷はないと言った。
 その意味が分かっている。理解している。……だけど。



 夢の事を残らず蓮華様に話していた。
 炎に包まれる夢。雪蓮を追いかける夢を。
 以前、北郷が「私は謀反を起こした」と言った。その時の名残なのかもしれない。
「そう……やっぱり姉様は」
「蓮華様が気になさることではありません」
 そう、これは私の問題。
「私が未だに雪蓮の事を……」
 忘れてしまえば解決なのだろうか?
 たとえ、大喬を悲しませることになっても。
「それは違うわ」
 だが、その答えを持っているのは。
「私は雪蓮姉様の枷はないと言ったけど、雪蓮姉様が居なかった時の絆がないとは言ってないわ」
「蓮華様?」
「あの時は、みんなが姉様の影を見ようと後ろ向きになっていたの。それは私も同じ」
 あの時、私は何をしていた?
 蓮華様は何をしていた?互いに顔を合わせずに。
「後ろ向きに行こうとするのが駄目なの。冥琳は背負いすぎなの。だから……」
 そして、私の顔に胸を教えてて、その言葉を言った。
「私達と一緒に生きよう。前向きに」
 孫呉を継いだ王の言葉でもない。雪蓮の後継ぎの言葉でもない。蓮華の声がそこにあった。
652 名前:エロ本[sage] 投稿日:2008/12/25(木) 00:36:07 ID:auwmjQSL0



 ただ、救われたと思った。
 何を望んでいたのか分かった。
 私は唯……この声ではっきりと伝えてほしかっただけなんだ。




「蓮華様……」
 私は蓮華様の言葉にしばらく思考が止まっていた。だからだろう。次の言葉の人物に気づかなかったのも。
「あれ〜、冥琳様と蓮華様……お邪魔でしたか?」
「「げっ?」」
 いつの間にか、入口が開いていた。
 そこには間延びする声と共に穏が立っている。
「「……」」
 いや、穏だけではない。後ろには思春、小蓮様、大喬と小喬と勢揃いしている。
「……お前ら、どの辺から見ていた?」
「いえ〜、別に何も聞いていませんよ〜。ただ、聞いてない方が、誤解がすごいんじゃないかな〜って」
「の、穏!」
「ふふふ……これでお姉ちゃんは一刀争奪戦脱落だね〜」
「小蓮!」
 二人して顔が真っ赤になる。穏があらぬ誤解をすれば……。
「ま、忘れろ!」
 とたんに私達も立ち上がるが穏達もダッシュで逃げ始める。
「ま、まてー!」
「あははは」
 そんな笑い声が響く夕方。
 そこには確かに、私達の笑顔があった。
653 名前:エロ本[sage] 投稿日:2008/12/25(木) 00:37:38 ID:auwmjQSL0


         =了=発売まであと一日

というわけで、全勢力完了……あれ?誰か忘れてるような。
わたし、このカウントダウンが無事に終わったら、結婚するんだ。……orz

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