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614 名前:エロ本[sage] 投稿日:2008/12/21(日) 00:18:23 ID:6EVwfIUL0
発売まであと5日!
というわけで、流れも読まず、短編ネタ投下。終わりにはきっと「=了=発売まであと五日」をつけると思う。



 その時間は夢のようだった。
 今までの時間が辛かったわけじゃない。今まで嫌な事ばかりだった訳でもない。
 ただ、その時が幸せな時間だったんだ。
615 名前:エロ本[sage] 投稿日:2008/12/21(日) 00:26:04 ID:6EVwfIUL0

『新世界にて〜斗詩の場合〜』


「ほらほら、斗詩―!」
「遅いですよ〜! 秋蘭様〜!」
「あう〜、二人とも早いよ〜! 待ってよ〜」
 相変わらず、目の前にいる二人組は元気だ。
 この北郷さんに導かれた天の世界に来てもあの二人はやる事が変わっていない。ただ、二人揃っての馬鹿騒ぎと屋台の食べ歩き。
 私は、この二人のように元気に騒ぐことが出来ない。
 この世界で頑張っていけるのかが不安だからだ。
「はぁ……」
「そう、溜息をつくな。斗詩」
 隣では、私と一緒に文ちゃんと季衣ちゃんのお伴を任された秋蘭さんがいつものように笑っていた。
「ですけど……」
「まぁ……不安の種は分かる」
 ああ、良く見れば笑ってるんじゃない。苦笑いだ。
 よく考えれば、秋蘭さんは季衣ちゃんと春蘭さんの面倒を見てるんだっけ? そう考えると、ある意味で悟りきってるのかなと思えてしまう。
 でも、それもいつもの事だ。
 この世界に来てから。
617 名前:エロ本[sage] 投稿日:2008/12/21(日) 00:40:25 ID:6EVwfIUL0



 私達はいつも一緒にいた。 それが普通のことだった。
 いつまでも一緒にいると思った。それも普通のことだった。



「と〜し〜」
秋蘭さんと話していると、いきなり文ちゃんが抱きついてきた。手には屋台で買った串焼きを持っており、いい匂いがあたしの鼻孔をくすぐる。
「あうう、何?文ちゃん」
「秋蘭さんと話してさ、そんなにあたいが嫌なの?」
「そ、そんなことないよ! 私は文ちゃんの事が……」
 大好きだ。麗羽様と文ちゃんは他の誰よりも。
 二人のうち、どっちが大好きかといえば……ううん、比べるのは野暮なことだと思う。
「あー、いっちーってば、こんなとこでもラブラブだー」
「へへーん」
「あぅぅ……」
 季衣ちゃんにからかわれると、耳まで真っ赤になる。隣の秋蘭さんも助け船を出してはくれない。
「ぶ、文ちゃ〜ん」
 私は涙目になったが、いやな気持ちではない。いや、むしろこんな事を言えるのが幸せだった。
618 名前:エロ本[sage] 投稿日:2008/12/21(日) 00:45:24 ID:6EVwfIUL0



 私達はいい友達になった。獲物を向けた間であったのに。
 あの時はなれなかったのに。なれないのも当然だと思ってたのに。


「ふぅ……妬けるな」
「しゅ、秋蘭さ〜ん」
 隣の秋蘭さんもからかい始める。
「なに、気にすることはない。斗詩と猪々子の仲の良さは、会った時から見せつけられていたからな」
 そんなに秋蘭さんの前でやってたっけ?
 疑問に思うが、反論はできない。だって、北で馬賊をやってた頃からの知り合いだ。そして、あんなことまでしてしまった。
 普通に思えること、秋蘭さんにとってはそんな風に思えたのかもしれないし。
「で、でも……本当に楽しいですよね」
 必死に話題を変えようと、全く当たり障りのない話題を振った。
「ああ、全くだ」
 そう、平和だった。こんな風に4人で食べ歩きができるくらいに。
619 名前:エロ本[sage] 投稿日:2008/12/21(日) 00:50:12 ID:6EVwfIUL0



 何で怖いのか?それは簡単な理由だった。
あの頃の常識が常識じゃないから。 こんな幸せな日々が来るとは思ってなかったから。



「じゃあ、斗詩。あたい達はもう少し先に言ってるから」
「後で付いてきてね〜」
「はーい。ふぅ……」
 私も文ちゃんも季衣ちゃんも秋蘭さんもたくさんの屋台を食べ歩いたが、あの二人は未だに元気だ。とてもじゃないけど付いていけない。
 そういう理由で、あたしは近くのベンチに腰をおろした。
「疲れたか?斗詩」
「ええ、あの二人についていける方が変ですよ」
「まったくだ」
 秋蘭さんも同じように疲れたのか、私の隣に腰をおろした。
「さっきも言いましたけど、本当に平和ですよね」
「ああ……まさかこんな日が来るとは思いもしなかった」
 ああ、秋蘭さんも同じなんだ。
「私もです」
「あの時、斗詩が普通の店員だったら、良き友人になれたのにと言ったが……」
「私も、秋蘭さんがただのお客さんだったらよかったのにって言いましたけど……」
 そして、二人で同じことを言った。

「本当だったな」「本当でしたね」

 そして、お互いが言い終わると、お互いに笑った。
620 名前:エロ本[sage] 投稿日:2008/12/21(日) 00:56:10 ID:6EVwfIUL0



 だからこそかもしれない。
 怖いから願ってしまうのかもしれない。でも、それはあの時と変わらなくて。
 ただ、一緒にいたいから。少しでも長く続いてほしいから。



「斗詩―!大丈夫か?」
「秋蘭様―!」
 少し休んでいると向こうから手にいろいろ食べ物を持った文ちゃん達が走ってくる。
 よくあんなに食べられるものだ。
「ああ、私は大丈夫だが。斗詩は大丈夫か?」
 そんな事言われると、私の言葉は決まっている。
「大丈夫です」
 ちょっと苦しいけど、別に普通に付いていく分には支障はない。だから、私は立ち上がる。
「今行くよ」
 いつまでも、いつまでもいたいから。
 この幸せな空間に。

                    =了=発売まであと五日



……あと、5日も待てないよ……orz

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