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527 名前:三美姫の武闘会1/24 午後四本投下[sage] 投稿日:2008/11/15(土) 14:05:11 ID:yF2qpQ9UO
 「一刀、これで全部なの?」
「……うん」
執務室で一刀が山と積まれた請求書を前に蓮華と穏の前でうなだれていた。
内容はすべて麗羽が洛陽で散財した物だ。
洛陽に来た当初はあてがわれる給金で買い物をしていた麗羽たちだったが、一ヶ月もしないうちに麗羽がツケで買い物をし始め、その請求書が丸々一刀の処にくるようになっていた。
 驚き問いただすと、どの商人も「袁紹様は皇后に成られるお方とお聞きしましたので、ご請求はすべてそちらに〜」と異口同音に言われる始末。
みなに知れるとまた大騒ぎになるのがいやで、最初のうちは一刀が自腹で清算していたが、次第に数と桁が増えていき支払い引き延ばすため、それぞれの商人に頭を下げていた所をたまたま市に来ていた蓮華達に見つかってしまったのだ。
「あら〜これ全部、本気で朱里ちゃんらにバレずに払えると思ってたのですか〜?」
請求書をツマミながら穏がのほほんとした口調で問うと、一刀の肩が一段と下がった。
「バレバレでしょ〜浅はかですね〜大体ですね〜」
のほほんとしているがキツイ指摘にますます一刀の頭は下がっていく。
「穏、やめなさい。」
「え〜でも蓮華さま〜こういうのは〜」
528 名前:2/24[sage] 投稿日:2008/11/15(土) 14:06:44 ID:yF2qpQ9UO
「一刀も反省しているわ。それに第一、悪いのは一刀じゃないわ…」
クシャ…
持っていた請求書を握り潰すその碧眼に小さく怒りの焔が揺らめいている。
「(あの女、一刀にこんな迷惑をかけて…)」
先程の店で主人に謝る一刀の姿が脳裏に甦る。
「一刀、貴方は権にかさらない素直さが良いところだけど、あんな風に簡単に頭を下げるものではないわ。権勢に立つ者が一度侮られるたら、とことん侮られ利用されるものよ。特に商人は利に貪欲だから気をつけて…」
「あ、ああ、気をつけるよ…」
すっかり元気のない一刀の様子に蓮華の胸奥がキュンッと切なく疼く。
「(あぁ…あんなに落ち込むなんて、少しきつく言い過ぎたかしら。どうしよう…)」
一刀の様子に戸惑う蓮華を横目に穏はひそかにほくそ笑んだ。
「(ふふ、うまくいきそうですね〜ではもう一押し。)」
請求書をわざとらしく放り、穏は蓮華を淡々と出口に誘う。
「ま〜頑張って金策してくださいね〜 さ、蓮華さま、そろそろ戻りましょう。」
「え、でも…」
ちらちら一刀を見て迷う蓮華に、呉のおっぱい軍師は巧みに言葉をかけた。
「この借金は〜ご主人様と袁紹さんの問題ですから〜蓮華さまが関わる必要は全然ありませんよ〜」
「だけどこのままじゃ一刀が…」
529 名前:3/24[sage] 投稿日:2008/11/15(土) 14:08:45 ID:yF2qpQ9UO
「袁紹さんを洛陽に連れてきたのはご主人様なんですから〜まあここの商人の取り立ては厳しいらしいですけど〜そうだ、ご主人様〜曹操にでも借金したらどうです?身体で払うとか〜♪」
「! だ、ダメよっ!」
穏の計算ずくの軽口にぱっくり蓮華は食いつく。みるみる碧眼に強い意志があらわれた。
「穏、これすべて、すぐに立て替えるわ。良いわね!」
「え、いやそれは…」
驚く一刀を蓮華が軽く制す。
「いいのよ、一刀。いえ、こうしなければダメ。貴方がこんなことで苦労してはいけないわ。私に任せて。なにも心配しなくていいから…」
「しかし…」
まだ抗弁しようとする一刀におっぱい軍師が止めを刺した。
「ただで立て替えてもらうのが心苦しいなら〜一筆、誓紙を書けばよろしいじゃないですか〜無利子無期限有るとき払いで〜」
「う、う〜ん、そんなに都合良く甘えていいのかな…」
 「いいのよ一刀、甘えても。それとも私じゃ頼り甲斐がないかしら…」
 「そ、そんなことない、蓮華。」
 「かずと…」
 手を取り合う二人に、穏は己の策の成功を確信する。
 「(ふふ、ご主人様が最近、市で借金返済に走り回ってると情報を聞いて試してみましたが…うまくいきそうですね〜)」
・・・
・・

「穏、貴様!どういう事だ!」
自室で誓紙を眺めてほくそ笑む穏の所に思春が怒鳴り込んできた。
533 名前:4 24[sage] 投稿日:2008/11/15(土) 16:35:24 ID:yF2qpQ9UO
「ん〜なんですか〜」
「なぜ蓮華さまが、あの女の散財の尻拭いをせねばならん!まるで都合の良い女ではないか!お前がついていながらなんで…」
「それはですね〜そうなるように仕向けたからで〜」
「なんだと…お前まさかわざと…」
そこまで言って思春は口を閉ざし穏を見つめ直した。
「穏、何を考えている。」
「ふふ、思春ちゃんは〜袁紹さんの事どう思います?」
「どうでもいい、蓮華さまの邪魔になるならさっさと殺すだけだ。」
「ん〜じゃあ曹操は?」
「奴は…手強いな。配下に猛者が揃っているし、荀或のずる賢さも油断ならん。だがそれと袁紹の借金とどう関係がある!」
焦れる思春にくすくす笑うとくいっと鼻眼鏡を直した。
「その曹操が袁紹を嫌ってます〜私はこの状況を好機だと思うんですよ〜♪」
いつもののほほんとした口調だが眼はしっかり思春を見据えていた。
「蓮華さまは〜はっきりいって押しの強い性分ではありません〜むしろ愛する人を支え尽くすことに喜び勇む性格ですね〜曹操や袁紹とは真逆と言ってもいいかと〜」
「あの方はお優しいからな。だが今に始まったことじゃないだろう。」
「ええ〜でも曹操は用心深いから蓮華さまの格上げになるような失点は滅多に出さない。荀或ちゃんもいるし〜」

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