[戻る] [←前頁] [次頁→] []

485 名前:9/21[sage] 投稿日:2008/11/10(月) 20:45:11 ID:EswF2a+mO
「関雲長、趙子龍、、、貴女がたは何も反省していないのですか、、、」
「う、、わ、私は……」
「は、反省は、もちろんしておる。」
「だったらぁ!どうして喧嘩なんて出来るんですかぁーっ!ご主人様は、もう少しで死んじゃうとこだったんですよっ!
生き延びたのだって、運よくお馬さんが賢く逃げてくれたおかげですぅ!状況は全く好転してないんですよっ!
それなのにぃ〜二人とも猛省してくださいぃぃっ!!」
涙目でふるふる全身を震わせて睨むちびっこ軍師の前で、愛紗と星がぐぅの音も出せずにしゅんと座り込む。
「(朱里って怒ると、こ、怖いのだ。)あ、そうだ。朱里、質問〜!」
すっと挙手する鈴々を朱里が指す。
「はい、鈴々さん、なんでしょう。」
「あのさ、奴らなんであのままなのだ?」
「え?」
「いやだから、いくら切り立った険しい山でもあれだけ人数いれば足場組むなり何かやりようがあるのに、ずっと遠巻きに麓を固めたまま動かないのだ。何してんのかな?」
 「そういえばそうですね……」
 鈴々の疑問に朱里が顎に手を当てて自問自答を始めた。
486 名前:10/21[sage] 投稿日:2008/11/10(月) 20:46:36 ID:EswF2a+mO
「兵糧攻め?いえ、全軍を山頂に追い詰めてない彼らにとってそれは不利になりこそすれ、有利な材料ではないわ。後背を我々に突かれる隙が増えるだけだもの。じゃあ一体何を……」
う〜んと唸って朱里が悩んでいる頃、左慈たちも悩んでいた。
「ったく、ウザイ結界だ!なんとかしろ、于吉。」
「無理を言わないでください、左慈。これ以上近づけば傀儡はおろか私たちもただではすみません。」
「奴があの山頂に一人でいるのだぞ。確実に殺せるというのに指を喰わえていなければならんとは!」
「南方の野盗を餌に引っ張りだして、うまいとこ英傑たちと分断出来たところまでは計算通りなのですが、まさかあんなに脚の早い馬だとは。しかもこの山の結界……」
山頂を見上げ于吉はため息をつく。
「この結界は宝貝封じですね。聞いたことがあります、我ら道士でも危険な宝貝を封じた結界の話を。こんな処にあったとは。」
「道士でも…そんな凄い宝貝なのか、魔槍か神剣の類か?」
 「いえ、張り形だと聞いています。」
 「・・・は?」
 「張り形ですよ、男根を模写した宝貝だそうですよ。」
 「なんで宝貝にそんなものを…」
 「さあ?でも凄いらしいですよ。一度手にすると性豪と化して身近の者をよがり狂わせるらしいです。ふふ、総攻めの左慈ですか…案外良いかもしれませんね♪」
 「何を言っているかさっぱり分からんが…なぜそんな淫靡な眼で俺を見る!殺すぞ貴様。」
・・・
・・

「なるほど。確かにうじゃうじゃシロアリがいますわね。」
十重二十重の左慈たちの白装束軍団を見下ろし鼻を鳴らす麗羽の後ろで、猪々子が絶影を嬉々と撫でている。
487 名前:11 /21[sage] 投稿日:2008/11/10(月) 20:58:59 ID:EswF2a+mO
「いや〜いいよなーやっぱ!見ろよ斗詩、この肉づきの綺麗なこと。いーよな〜♪」
「うん、そーだね、こんなに綺麗な馬、なかなかいないね。」
「そーだよ、コイツだからこの断崖絶壁も上がってこれたんだぜ。並の馬じゃ無理無理。ご主人様落とさないようにするなんざ、なんて賢い奴だ♪」
 「そうなんだ、俺は必死にしがみついてただけでどうやってここまで上がってきたかわかんないんだ。」
 「ふふん、こいつみたいな名馬はちょいとした出っ張りがあれば岩から岩へピョーンと上がっちまうさ。」
絶影にほお擦りをする猪々子に、麗羽がさらりと言う。
「ではその馬を使えばここから降りられる訳ですわね♪さっそく私が華麗に…」
「あ!姫!そうやって自分一人だけっ……」
「なんてこと言うんですのっ猪々子!私がそのような卑怯な真似する訳ないでしょう。」
 「ダメですよっ、ぜっーたいダメっ!俺が行く!」
 「まあ〜猪々子さん!貴女、主であるこの袁本初になんて無礼な!」
憤慨する麗羽と猪々子の間を斗詩がなだめる。
「あの〜麗羽様、いま下に降りるとあの白装束軍団に突っ込む事になりますよ?」
 「え?」
 「文ちゃんも降りた後の事って考えてる?暴れまくる事しか考えてないでしょ〜」
 「え?そ、それはぁ〜」
 斗詩の指摘に気まずそうにテンションダウンする二人を見て、一刀は感心した。
495 名前:午前三本 12/21[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 07:24:14 ID:ODepSgk+O
 「(へぇ〜彼女がこの三人の安定剤なのか…)」
「そ、それもそうですわね。で、どうしますの、顔良さん。」
 「そ、そうそう。考え事は斗詩に…ん?!」
 と、猪々子がピクリと鼻を動かし崖っぷちに駆け寄る。
 「戦(いくさ)の匂いだ、お、やってるやってる♪あの旗は張飛か。」
 猪々子の見下ろす麓を見ると確かに『張』の旗印を掲げた一軍が車輪のように回りながら白装束の壁の一辺に当たっていた。
 「張飛さんだけなんて、威力偵察かなぁ?」
 「いやーあの辺に戦気が漂ってるから、守り崩して飛び出してきたら伏兵で叩く気だろ。関羽辺りが伏兵してんじゃね?」
 「でも守り固めちゃってるからあれじゃダメだね。」
 「だな、あぁ〜あ、ほら、あきらめた。引き鐘が鳴ってら。」
 「ホントだ、あ、文ちゃんの言ったとこからも伏兵が引き上げてる。失敗だねぇ〜孔明ちゃん焦ってるな〜」
 冷静に戦場を俯瞰する二人を眺め一刀は感心する。
 「へ〜さすが三国に名を成す名将だな〜なんか感動。」
 「ホホホッ、とーぜんですわ。二人はこの三公を成した名門袁家のさらに華麗で優雅で美しいこの袁本初に仕えているんですもの♪」
 手で口を隠し高らかに笑う麗羽を見て、一刀は二人の苦労が見えた気がした。
 「む…」
 急に高笑いした麗羽がなにやら、いぶかしげに地平線を睨み眼を細める。
「…なにかしら、なんだか嫌な気配がしますわ。」
496 名前:13/21[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 07:25:50 ID:ODepSgk+O
「へ?姫、なにか見えるんですか、、、おっ?!」
麗羽に並んで地平線に眼を細める猪々子がなにかに気づく。
「斗詩ぃ、あれ戦気じゃね?」
「え!……ホントだ。砂埃の上がり方からすると一万弱くらいの旅団かな。戦気がガンガンに上がってるね。」
二人が遠望する地平線を一刀も眺めるが、特になにも見えない。
「戦気とか砂埃って、なにも見えないけど?」
「おバカ。素人はお黙りなさい。ワタクシにもわかりますわ。最悪凶悪な敵が近づいているのが、、、あぁ、戦場で鍛えた百戦練磨の勘が危機を教えるのですわ。」
 よよっと悩ましげに自分に酔う麗羽を横目に、猪々子は斗詩にヒソヒソ囁いた。
「(なあ、いつも鈍い麗羽さまの勘が働く敵って、、、)」
「(う、うん、それにあの方向って洛陽のある方角だよね?)」
「(……ってことは、まさか?!)」
二人が同じ答えにぶつかった頃、地平線の砂埃がかなりはっきり見えてきた。
「ホントだ、やばいぞ!もし白装束の援軍なら愛紗たちが挟み撃ちになる!?」
もうもうと上がる砂埃で見えないが、かなりの数の軍団が近づいているのだろう、地鳴りのように足音が響いている。
「いや〜それは大丈夫じゃね。」
「え?」
「ほれ、関羽たちも出撃準備してるし。」
猪々子が指差すほうを見ると、確かに愛紗たちがテキパキと陣形を整えていた。
「それに私たちが考えてる人なら敵にならないと思いますよ。」
497 名前:14/21[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 07:33:04 ID:ODepSgk+O
意味ありげに斗詩が一刀を見て笑う。
「?」
「そーだよな〜絶影といい、なんでこんなのがいいんだろ?」
猪々子も絶影を撫でながら、不思議そうに一刀をじろじろ遠慮なく見ている。
「(な、なんかバカにされてる?)と、とにかく敵じゃないのか?」
「ワタクシにとっては不倶退転の敵ですわっ!あのクルクル小娘っ!」
麗羽が砂埃から現れた軍旗を見て吐き捨てるように言い放つ。
「え?あ!」
風が砂埃を一掃するとそこには『曹』の大旗を旗めかせ、蒼い軍団が駆けていた。
「か、華琳……」
遠目にもその中央にいる小さな姿がわかる。左右に駆けるのは春蘭と秋蘭だろう。
「あ、あいつら、なんで?」
「なんでって、んなことわかってるくせにぃ〜このスケコマシぃ〜♪」
ニヤニヤ笑いながら猪々子が脇をつつく。
「うふふ、北郷さんって、噂で聞いてる以上に愛されてますねぇ〜あれ?文ちゃん、あっちからも軍が近づいてるよぅ?!」
猪々子に真似て一刀をつついていた斗詩が、魏軍とは別の方向から近づく一軍に気づく。
「へ?あ、ホントだ!こっちは紅いな?旗印は〜えっと?」
「『孫』だねぇ……」
「え!?」
猪々子たちの声に一刀が目をこらすと東の地平に紅い一軍が『孫』の大旗を旗めかせながら近づいていた。

 [戻る] [←前頁] [次頁→] [上へ]