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461 名前:3馬鹿アフター[sage] 投稿日:2008/11/08(土) 20:59:04 ID:vfYrg4v/O
「参ったな〜完全に囲まれてるぞ。」
頂上から麓を眺め入り、びっしり取り囲む白装束たちに一刀はため息をついた。
「まあ、ここまで逃げおおせたのはお前のお陰だ、あんがとよ。」
振り返り傍におとなしく立つ馬に礼をいう。
「って言うか華琳・桂花に感謝だな…」
馬の顔を撫でながらつい数日前に思いを馳せる。
・・・
・・

「なんだ?徹夜じゃなかったのか、桂花。」
出陣の用意をしていた一刀の所に桂花が一頭の馬を引いて現れた。
「うるさいわね。華琳さまのいないとこで真名呼ぶなって言ったでしょ!バカ!」
少し眠いのか不機嫌に桂花は答えると手綱を差し出す。
「? 馬ならあるけど?」
「あんたバカァ?そんな駄馬と絶影を一緒にしないでよね!」
「絶影?それって確か華琳の馬じゃ……」
「そーよ、華琳さまが大事にされている名馬よ、、、今度の出陣に貸してあげるそうよ。大切に乗りなさいよ。」
「え、、、」
手綱を受け取り絶影を見る。気立ての良さそうなつぶらな瞳がおとなしく一刀を見つめている。
「……華琳さまが愛馬を貸すなんてよっぽどのことなんだから、、、それじゃ!」
用は済んだとばかりに踵を返す桂花に慌てて一刀は声をかけた。
462 名前:3馬鹿アフター[sage] 投稿日:2008/11/08(土) 21:03:08 ID:vfYrg4v/O
「あ、桂花サンキュー!」
「! また呼んだ!ホントに学習能力ないヴァカね!だいたい礼なら華琳さまに……」
「いやそれだけじゃなくて、こないだの酒の礼だよ。何日も徹夜したんだってな?すげー旨かったぜ!」
「ぅ、、、ば、バカじゃないっ!アレは華琳さまが造った酒よ!アタシは管理してただけなんだからっ!……///」
真っ赤な顔で反論する桂花に笑いを堪えながら一刀はあやまる。
「はいはい、じゃあ華琳にもよろしくな。」
絶影を引いて去ろうとする一刀に桂花がぽつりと継ぎ足す。
「ぜ、絶影の脚は影も留めないくらい速いんだから、あ、危なくなったらとにかく逃げんのよ。あんた弱いんだから……」
「あれ?心配してくれんの?」
「バ、バッカじゃないっ!絶影が返ってこなかったら困るからよっ!バカ!」



 「(助かったよなーホントに。絶影じゃなかったら、とっくに死んでた。華琳、桂花、ありがとな。)」
心の奥で感謝を述べながら一刀はさきほどの危機を思い出しブルッた。
南方の野盗の組織を征伐するため、愛紗たちと出陣したはよかったがそれは左慈たちの罠だった。
罠にはまり愛紗たちと分断された一刀は、ぎりぎりの所で絶影の神速に助けられ虎口を脱したのだ。
飛ぶように駆ける絶影の首にしがみつき気がついたときには、どこかの山の頂上だった。
 まわりをびっしり囲む白装束たちは、なぜか麓を固めて登って来ない。
463 名前:3馬鹿アフター[sage] 投稿日:2008/11/08(土) 21:08:45 ID:vfYrg4v/O
「なんだよー兵糧攻めか?そーいや腹減ったな〜朱里のとこにはたっぷり糧食があんのに〜」
ぐーぐー鳴く腹を押さえていると、どこからか旨そうな匂いが漂って来た。
「あれ?この匂い……」
匂いに惹かれて草木を分け進む。
「おぉ、焼鳥?!」
焚火で焼かれた鳥の串焼きが三本香ばしい煙を漂わせている。
「(誰か居るってことだよな?)」
キョロキョロ見回すが人影はない。グゥ〜と高らかに腹が鳴る。
「(い、一本くらいいいよな?)」
パクリと串焼きを一本喰う。
「っ! う、うめ〜!」
口一杯にじゅわっと肉汁が広がり食欲を増進された一刀は、
パクパクパクパク・・・・
あっという間に三本とも平らげてしまった。
「ふぅ〜喰った喰った。」
満足気にげっぷをする一刀だったが、その背後には三つの影が近づいていた。

ドガッドガッドガッ!

「このヤローッ!斗詩がアタイのために作った愛情テンコ盛りのメシをよくもっ!」
「よろしくてよ!よろしくてよ、文醜さん!やっておしまい!」
「あー三本とも食べられてる。文ちゃんがやっと捕まえたのにぃ〜あれ?」
思いっ切り猪々子にボコられる一刀に斗詩が気がついた。
「ち、ちょっと待って、文ちゃん!やめてっ!」
「大丈夫だよ斗詩、こんなのすぐぬっ殺しちゃうから待ってな。それからたっぷり慰め……」
「ダメだよ!殺しちゃ!この人……」
464 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2008/11/08(土) 21:10:40 ID:vfYrg4v/O
「あら?なんですの、顔良さんお知り合い?」
「え、お知り合いって、、、姫、覚えてないんですか?」
「な〜んで、このワタクシがこんなブサイクを。知る訳ありませんわ。」
「そんな自信満々に、、、文ちゃんも覚えてない?」
「え?んー?そーいやどっかで見たような?んーどこだっけ?」
「も〜二人とも。貸して、文ちゃん。」
猪々子から引きはがすと斗詩は一刀を覗き込んで尋ねる。
「あの〜北郷さん、ですよね?孔明ちゃんとこの。」
「きゅ〜……」
しかし一刀は、すでに気を失っていた。
「あー!関羽とこの!思い出した!」
「なんですの、顔良さんだけでなく文醜さんもお知り合い?」
「やだな〜アレですよ、反董卓連合で会ったじゃないすか。」
「? 董卓?ああ、あの時の弱小部隊の隊長でしたわよね?」
 形の良い顎に指を当てて首を捻る麗羽の自信無さげな様に猪々子と斗詩がため息をつく。
「はぁ〜姫、今は弱小どころじゃないですよ。三国一の大国の王様なんですから。」
「そーですよ。魏も呉も併呑して今じゃ天下統一も時間の問題。それくらいアタイでも知ってますよ。」
「まあ!魏と呉が併呑?じゃあ、あの成り上がりのクルクル小娘は、惨めに、無残に、みっともなく、あっさり、くたばりやがったのですわね♪」
「いや、なんか(季依の)話じゃ、曹操元気らしいっすよ。」
「うん、アタシも(秋蘭さんに)聞いた話じゃ、お酒造ったりして楽しく暮らしてるって。」
「まさかっ!ホホホ〜貴女たちからかわれてるんですわ。併呑された国の王なんて、すぐみせしめに処刑されるに決まってるでしょう。」
手の甲で口元を隠し、のぞけり笑う麗羽。
465 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2008/11/08(土) 21:43:46 ID:vfYrg4v/O
「や〜普通そうなんだけど、でも、ホントに、なあ〜斗詩ぃ。」
「う、うん、曹操だけじゃなくて孫権も一緒らしいですよ。捕虜とは名ばかりで、毎日楽しく暮らしてるって。」

 「・・・」

「な〜んか二人ともほとんど愛妾のように贅沢放題な毎日を……姫?」

「ジョーダンじゃありませんわっ!キィー!!」

「うわ、びっくりしたぁ〜」
突然キレた麗羽に斗詩と猪々子は目を丸くする。
「どーゆうことですの!」
「いや、どうって言われても……」
「やっぱあれじゃないすか、女の武器つーかなんつーか。やー麗羽さまも南皮で負けたときに逃げないで捕まっとけば良かったかも知れないっすね。アハハ♪」
「あ、バカッ!」
斗詩が止めたときはもう遅かった。
「南皮?・・・あぁっ!このブサイク、幽州のバカ男じゃありませんの!」
「(うわー今まで気づいてなかったのか……)」
「(ってか、負けたことマジで忘れてたぽいね。)」
ヒソヒソ話す二人に麗羽のツッコミが入る。
「そこっ!何話してますの!」
「「ハイッ!!」」
「さっさとこのバカ男を剥きなさいっ!」
「へ?」
 「はぁ?」
同時に気の抜けた返事をする二人に麗羽の金切り声があがる。
「何をマヌケ面してますのっ!このバカブサイクに食い物の恨みと冀州での借りをまとめて返してあげますわ!さっさと剥いてチッチキチンのプーで両脚羊にしてしまいなさいっ!」
気絶した一刀を蹴飛ばしながら悪態をつく麗羽を斗詩が止める。
「え、袁紹さま食べるつもりですか!?それってまずいですよぅ、人としていろいろと……」
466 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2008/11/08(土) 21:46:38 ID:vfYrg4v/O
「そ、そーですよぉ、アタイもやだなー筋ばってて固そうだし、きっとまずいっすよ。」
「いや、そーいう問題ぢゃないから文ちゃん。北郷さん殺しちゃたらアタシたちこの中華に居場所無くなっちゃうよぅ。南の楽園どころじゃないわよ、地の果てまで追われるんだよ。」
「うーん、そーかー、、、あれ?」
そこで猪々子がなにやら気づく。
「どうしましたの?」
「いや、姫、アタイたちって確かこの山から降りられなくて鳥とかメシにしてたんですよね〜」
「なにを今更。元はと言えば猪々子が唯一の抜け穴を岩で埋めてしまうからでしょう。それがどーしましたの。」
「あーアタイのせいすか。ぜ〜んぶわりいのはアタイなんすか。」
「まあまあ文ちゃん、、、姫、文ちゃんが言いたいのは、なのにどうしてここに北郷さんがいるのか?ってことです。」
「あら?そういえばそうですわね。まわりは切り立つ崖ばかりでとても人の歩ける道なんてありませんし、、、どういうことかしら。」
「ね!だから殺しちゃたらまずいでしょう。どうやって来たか聞かないと。」
斗詩の説得に麗羽はちょっと小首を傾げる。
「そうですわね、、、いいでしょう、猪々子起こして頂戴。」
 「へーへーおりゃ!」
猪々子が、ガンッと一刀をひと蹴りすると一刀が意識を取り戻す。
「ん・・・」
「さあーさっさとワタクシを案内なさい。」
「へ?、、、あれ?お前袁紹じゃん?何してんの?」
「キーッ!このっ〜おバカ!やっぱ殺して……」
「まあまあまあ〜押さえて。」
「そーですよ、ちょっと私に任せてくださいね。」
猪々子が麗羽をなだめてる間に斗詩が一刀に屈み込む。
467 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2008/11/08(土) 21:59:41 ID:vfYrg4v/O
「あの〜北郷さんですよね?なんでこんなとこに一人なんですか?関羽さんや諸葛亮さんはどうしたんですか?」
「あ、うん、痛てて、、愛紗たちは近くにいると思うけど、、、あ、さんきゅ。」
腕を引かれて立ち上がると改めて三人を見回す。
「(袁紹に、、確か文醜と顔良だっけ?あの焼き鳥はコイツらのだったのか、、、なんでこんなとこに居るんだろ。)」
「あの〜それで、ここにはどうやって上がって来たんですか?アタシたちここから早く降りたいんですけど、道がなくて……」
「へ?道がない?そんなバカな、じゃあ絶影はどうやって……」
「ぜつえい?!絶影ってあの絶影か?名馬の?」
一刀と斗詩の会話を黙って聞いていた猪々子が絶影の単語に反応する。
「え?ああそうだけど……」
「どこ?どこにいんのさ!見たい、触りたい、乗りたいぃぃ〜!」
胸倉を掴んでブンブン振りまわす猪々子の嬉々とした様子に、麗羽は斗詩に耳打ちする。
「ちょっと顔良さん、なんですの猪々子のあの取り乱し様は?」
「あはは、文ちゃんは馬に目がないから。まあ馬賊はみんなそうですけどね。」
ポリポリ頬を掻きながら苦笑する斗詩に猪々子が声をかける。
「行こ、斗詩ぃー!あっちに繋いであるって!絶影だよ絶影!」
ずるずる一刀を引きずり歩き出す猪々子に二人は呆れ返りついていく。
・・・
・・

「ぐずぐずしてる場合ではないっ!今すぐご主人様をお救いせねばっ!」
愛紗の怒声が、天幕内に響き渡る。
「落ち着け愛紗。ここを焦っては敵の思う壷だ。」
「星!キサマ、そんな悠長なことを言っている場合かっ!ご主人様の危機なのだぞっ!一刻も早く駆けつけねば、あの白装束の連中に……」
「そんなことはわかっておるっ!今すぐ駆けつけて救えるものならこの趙子龍、とっくにお救いしておるわっ!」
睨み合う愛紗と星を見て鈴々がたらりと冷や汗をかく。
468 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2008/11/08(土) 22:39:50 ID:vfYrg4v/O
「(うわー、愛紗はともかく星も余裕ないのだ〜いつものらりくらりすかしてるのに、、、さすがに愛紗と一番槍競ってこんなことになっちゃったから…)」
言い争う二人。どちらもこの最悪の状況を自分たちの勇み足が招いたことを自覚しているのだろう。余裕のない表情で口泡を飛ばしす。
 「もういいっ!星、キサマはそうやって出もしない知恵を絞っておれっ!私一人で行くっ!」
 「ほ〜キサマ一人であの白装束どもを片付けるだと?笑わせるなっ!先程も伏兵に横っ腹を突かれて泡を噴いておったではないか!私がいねばその自慢の青龍偃月刀も泥に塗れておったわっ!」
 「なっ!き、き、キサマ〜愚弄するかっ!」
 憤怒に顔色を変えた愛紗が青龍偃月刀を手に立ち上がると星も槍を手に立ち上がった。今にもつかみ掛かからん勢いだが、

「いい加減にしてください……」

低いが凛とした叱責が二人の勢いを止めた。
「朱里……」
「軍師殿……」
 静かに佇む朱里の様子に愛紗も星も何事かを感じて注目する。

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