- 380 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2008/07/06(日) 09:05:59 ID:ikstN0n10
-
初めまして、今回初めてSSを投稿します。
原作では語られなかった漢王朝で起こった内乱の事を描いてみようと思います。
ちなみに、登場する敵である十常侍は全員女の子にしちゃいました。
ベースは「三国志〜萌え武将百花繚乱〜」の十常時の項を元にしています。
- 381 名前:乱れし漢王朝〜十常侍の暗躍[sage] 投稿日:2008/07/06(日) 09:07:26 ID:ikstN0n10
-
前に戦いによって、幽州を塒にしていた黄巾党の大部分を排除できた。
その効果か、俺たちの陣営に庇護を求める街が相次ぎ、いつのまにか幽州の半分以上が陣営に加わることとなった。
慕ってくれるのは嬉しいけれど、守らなければならない人たちが増えたことで、俺の責任はより一層大きくなってしまった。
みんなが俺を頼ってくれてるんだから、それに答えなくちゃいけないよな。
…と、まぁそんなこんなで、幽州の半分を治めることになった俺は、これからは内だけじゃなくて外にも目を向けなくては
いけなかった。
ちなみに、前の戦いで功績を上げた人達には、朝廷からそれぞれ恩賞として官職をもらえることになってるらしい。
公孫賛は、「今回一番手柄が大きいのはお前達だからな。期待できるんじゃないか?」と言っていた。
でも、朝廷からの使者は一向に訪れる気配がない。
既に他の軍も出払った後の陣地でずっと待っている。
- 382 名前:乱れし漢王朝〜十常侍の暗躍[sage] 投稿日:2008/07/06(日) 09:08:36 ID:ikstN0n10
-
「ご主人様…もう2日になりますね」
「いい加減にもう待てないのだ〜!」
愛紗が俺に尋ねた。
鈴々もパタパタ足をばたつかせている。
「慌ててもしょうがないよ。とりあえず、気長に待とう」
「はぁ…」
その時、一台の馬車が通り過ぎようとしていた。
多分、朝廷の誰かが乗っているんだろう。
「ん…?すまぬ、ちょっと止めてくれ」
馬車に乗っている誰かが、御者に馬を止める様に言う。
馬車の窓から顔を出したのは、一人の中年の男性だった。
「失礼ですが、北郷一刀殿ではございませんか?」
「は…はい、そうですけど…」
「やはりっ!あなたが天の御使い様ですか!お噂はかねがね伺っております」
男性は馬車を降りた。
「私は朝廷の老中で、名を張鈞と申します。それにしても…どうしてまたこの様な所に?」
「えぇ、それが…」
俺は張鈞さんに事情を説明した。
それを聞いた彼は、驚愕の顔を見せていた。
「何ですと!?では、あれから全く恩賞の沙汰がないのですか!?」
「そうなんですよ」
「なるほど…。分かりました、この事は私にお任せ下さい。実は、私はこれから帝のもとに向かう途中なのです。
あなたの事も、帝にお話しておきましょう」
「そんな、悪いですよ。そんな事…」
「いやいや、気を落とさずにお待ち下さい。この張鈞、必ず吉報を持って参ります」
そう言うと、彼は再び馬車に乗り、宮中の道へと去っていった。
- 383 名前:乱れし漢王朝〜十常侍の暗躍[sage] 投稿日:2008/07/06(日) 09:35:43 ID:ikstN0n10
-
そして、漢王朝の宮殿…。
その謁見の間では、張鈞が霊帝に対面し、一刀の事を話していた。
「天の御使い・北郷一刀か…。その噂は聞いておる。その者への恩賞がまだだと申すのか?」
「はい、恩賞候補から除外されたものと思われます。啄県にて決起した義勇軍の頭領にして、逃亡した托県前県令に変わって、その任に就いた若者です。
人徳武勇を慕って豪傑が集まり、悪戦苦闘を重ねながらも官軍を助けた功績は、公孫賛将軍の認める所でございます」
「ふむ…そんな大功あった者がもれていたとは…」
「お願いでございます。黄巾の乱落着を機会として、十常侍の悪政を暴き、明朗な政治を」
「クスクスクス…私達も随分と嫌われたものですね」
後ろから声が聞こえた。
張鈞が振り向くと、そこには、メイド服を思わせる漆黒の衣装を羽織った10人ほどの少女が立っていた。
彼女達こそ、漢王朝の乱れの元凶・十常侍である。
皇帝に仕える侍女に過ぎない彼女達が、本来宦官の最高位である「中常侍」の座に着いた事で、王朝が乱れ始めた。
「き、貴様ら…十常侍!」
「随分とひどい仰り様ですね、張鈞様。ご自分の出世を図るのに、それほど私達がお邪魔なのですか?」
中心にいるセミロングの黒髪の少女が一歩出て、張鈞に言う。
彼女の名は張譲、この十常侍のリーダー格である。
張譲が取り巻きの中常侍達に顎で合図すると、そのうちの二人が張鈞を取り押さえた。
- 384 名前:乱れし漢王朝〜十常侍の暗躍[sage] 投稿日:2008/07/06(日) 09:36:38 ID:ikstN0n10
-
「な、何をする!」
「ふふふ…私達で真実を調べて差し上げようと思いまして…」
「張鈞様も一緒に来てもらいますよ〜♪」
そう言うと、彼女達は張鈞を強引に連れ去った。
その光景に、霊帝は唖然としてしまう。
「ちょ…張譲、これは一体何とした事か」
「ご心配には及びませんわ。張鈞の言った事は嘘ばかり…全部作り話ですから」
「張鈞が…出鱈目を申したと申すのか?」
「えぇ、お若い陛下を誑かそうとなさったのです。その様な者への聞く耳を持ってはいけません」
「な、何をする!放せ!私は帝にもう一度…」
「あ〜もう煩いなぁ、ホラ!」
張鈞を連れ去った二人…赤髪のツインテールが特徴の候覧と緑がかった髪をお下げで結んだ曹節が
張鈞の腕を放し、突き飛ばす。
「それと…これはオマケです♪」
そう言うと、曹節が手に持っていた箒…否、箒に仕込んであった仕込み刀を抜いた。
そしてそれを…
「さようなら、張鈞様」
張鈞の心臓に突き立てた。
「み…帝、こ…これがこやつらの…本性…!」
そう呟くと、張鈞は床に倒れ、そのまま事切れた。
「おーい、誰かいないの!」
候覧が大声で誰かを呼ぶ。
その声を聞いて、一人の兵士がやって来た。
「候覧様に曹節様…どうなされたのです?」
兵士がふと下を見ると…そこには張鈞の亡骸があった。
「こ、これは張鈞様!?一体…何が…?」
「さぁ?あたし知〜らない」
候覧が肩をすくめて、わざとらしくとぼける。
曹節が兵士に言う。
「コレさっさと片付けちゃってくれません?通行の邪魔ですから」
- 385 名前:乱れし漢王朝〜十常侍の暗躍[sage] 投稿日:2008/07/06(日) 09:41:31 ID:ikstN0n10
-
「張譲様、張鈞は仰せの通りに始末致しました」
「ご苦労様…。ああいうお邪魔虫は早めに駆除しておかないとね」
「あの北郷一刀とか言う奴の恩賞はどうします?手柄の噂が高いから、厄介ですよ?」
候覧が張譲に尋ねる。
「そうね…ま、ちっこい官職で良いんじゃない?」
数日後、俺の所に一人の女の子がやって来た。
メイド服を思わせる黒い服と、黒いセミロングの髪が綺麗な女の子だった。
どうやら、朝廷の使者としてやって来たらしい。
「あなたが北郷一刀殿ですね?」
「そうだけど…キミは?」
「私は帝の身の回りの世話をさせて頂いている、張譲と申します朝廷の使者として、あなたに恩賞を取らせる為に参りました」
「え?でも、張鈞って言う人が来る事になってるんだけど…その人はどうしたの?」
「あぁ、張鈞殿でしたら…お亡くなりになりました」
「えぇ!?」
「持病が突然発生して、そのままポックリと…。軽はずみな行動がいけなかったんでしょうね。クスクス…」
- 386 名前:乱れし漢王朝〜十常侍の暗躍[sage] 投稿日:2008/07/06(日) 10:24:36 ID:ikstN0n10
-
張譲が可笑しそうに口を押さえながら小さく笑う。
人の死を話しているのに、どうしてこの子はこうも笑っていられるのだろうか…。
「では、本題に入りましょう…。北郷一刀殿、この度の功績により、あなたを安喜県の県尉に任命します」
「そ、それだけですか!?」
朱里が声を上げた。
「ご主人様の功績があんなに高いのに…片田舎の県尉とは」
「不公平なのだ!やり直しを要求するのだー!」
「二人とも落ち着いて」
張譲に抗議する愛紗と鈴々を宥める。
「別に良いよ。俺は官職が欲しくて戦ったわけじゃないんだから」
「ですが!」
「俺は、仲間と俺を慕ってくれる人達が守れれば、それで十分なんだから」
俺は再び張譲に向き返る。
「その県尉、引き受けるよ。帝には宜しく伝えておいてくれるかな」
「分かりました…。それにしてもあなた、変な人ね」
「え?」
「官職欲しさに戦ったわけじゃないなんて…。今の時代、そんな人いませんよ?」
「そうかなぁ?」
「あなた、金銀財宝が欲しいと思った事はないの?もっと豪勢な暮らしをしたいと思った事はないの?
民から税を搾り取ってでも富と名誉を手に入れたいと思った事はないの?」
「うん、全然」
別に俺は、金持ちになりたいとか、そんな事を考えた事はない。
確かに生きていくためにはお金は必要だけど…。
- 387 名前:乱れし漢王朝〜十常侍の暗躍[sage] 投稿日:2008/07/06(日) 10:25:09 ID:ikstN0n10
-
「所で…君さっき、民から税金を搾り取ってでも富と名誉を手に入れたくないのか?って聞いたよね」
「それが何か?」
「そういう考え方は間違ってると思うな」
俺の言葉に、張譲が頭に?マークを浮かべる。
「自分ひとりの利益のためだけに、誰かを平気で犠牲にしたり苦しめるなんて…人として絶対にやっちゃいけない事だ」
「じゃあ、あなたは何の為に義勇軍を結成してまで黄巾党と戦ったの?」
「もちろん、俺を慕ってくれる仲間や街の人達を守りたい。ただそれだけさ」
「……」
その後、しばらく沈黙が続いたが、張譲が口を開いた。
「ま…まぁ、ともかく、例の恩賞は確かにお渡ししました」
「あぁ、わざわざありがとう」
「では、私はコレで」
そう言うと、張譲は馬に乗って去って行った。
それを見送ると、愛紗が口を開いた。
「あやつが例の十常侍の筆頭・張譲か…」
「漢王朝が廃退したのも、やっぱり彼女達が原因なのかも知れませんね…」
そうだ、思い出した!
張譲と言うのは「三国志演義」では、自分の身分と帝の威光を悪用して、私服を肥やしてた宦官のリーダーだ。
その宦官チームの名前が、確か「十常侍」。
「ねぇ愛紗。一応聞くけど、その人達ってそんなに評判悪いの?」
「えぇ…最悪といっても良いでしょう」
愛紗の答えに朱里が続く。
「十常侍の人達は、当初は帝に仕える一介の侍女に過ぎなかったのですが、欲に目が眩んで、当初幼かった帝を誑かして、本来宦官の役職であるはずの”中常侍”の位を特例として彼女達に与えたそうです」
「それ以降、漢王朝は今の様な有様になってしまったのです…」
そうだったのか…。
改めて思うけど、人の欲望って怖いな。
俺も気をつけないと…。
- 388 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2008/07/06(日) 10:26:07 ID:ikstN0n10
-
今回はここまでです。
次回はもしかしたら…督郵ボッコボコのイベントをやるかもやらないかも…。