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315 名前:エロ本[sage] 投稿日:2008/04/29(火) 22:44:20 ID:q7qc13mn0
祝!アニメ化!……まぁ、私は忙しくて見れんよ。きっと。
というわけで、以前、投下した『サイド呉』の続きを投下。実は続けてたんデスヨ?
おそらく、オリキャラが出てくるとうpロダ使うかも……。正直うちのネット環境じゃ厳しいが……。

なお、本編とかぶったり、戦闘のみのシーンはカットしてあります。
316 名前:恋姫†無双〜サイド呉〜 エロ本[sage] 投稿日:2008/04/29(火) 22:48:09 ID:q7qc13mn0
 行く度かの死闘が続いた後に、黄巾党はバラバラになっていっていた。所詮は烏合の衆でもあった為か、孫尚香が白虎に跨っての突撃をはじめとして、一刀の兵法知識も微力ながら助太刀となっていた。
 また、呉軍の方も先に不意を衝かれたとはいえ、黄巾党の目が孫尚香達へと向くと、さっと言う間に隊形を持ち直して、そのまま反撃へと出る。
 そして、呉軍と山賊に挟み撃ちになり一気に戦局は終局へと向かっていったのだった。

 だが、そんな中で孫尚香の隣にいる一刀は気分がすぐれていない。
「一刀……大丈夫?」
「ああ……」
 目の前にあった映像ではない感触も伴う殺し合い。それを見たときでも、逃げ出そうと感じつつも決して逃げなかった少年は、ただその場で今にも胃の中のものをぶちまけたかった。
「大丈夫……」
 殺しあいに慣れるはずなどない。だが、それでも彼は逃げ出すことはしなかった。
「俺は見なくちゃいけないからな。必死に戦っているみんなのためにも」
「一刀……」
 耐えている一刀の肩に、孫尚香はゆっくりと手を置いた。その小さな手はぬくもりに満ちている。
「優しいね、一刀は」
 そう、口にしながら。
317 名前:恋姫†無双〜サイド呉〜 エロ本[sage] 投稿日:2008/04/29(火) 22:53:07 ID:q7qc13mn0

 悲惨な骸の転がる戦場に響き渡る雄叫び。それは戦が勝利に終わった証であった。

「一刀!」
 戦の終わりと同時に孫尚香が一刀へと抱きつく。
「勝った……のか?」
「うん、黄巾党のやつら、皆どっかに逃げちゃったもん」
「そうか……」
 だが、それでも気分が晴れる事はない。目の前には血を流しながら笑っている者もいれば、意味の分からない事を言って、すでに息絶えたものを切り刻んでいる狂人もいる。
 それは、彼の世界で感じる事のなかった殺し合いの産物である。それが、実際に触れるような距離にあった。
「……一刀?」

「なぁ……」
 一刀が敢えて聞きたくなったこと。
 それは、彼女がこの風景をどう思っているかだ。この年端もいかぬ少女が……。
「この風景を見てさ……怖いって感じないの?」
 普通ならば、この地獄絵図を見て正気でいられるものなど、彼の世界ではいないだろう。だが、彼女は違った。
「……怖くないもん」
「えっ?」
「シャオは呉のお姫様なの! こんな事で怖いなんて言ってたら、母様や雪蓮姉様の作った呉のみんなに申し訳が立たないもん!」
 その瞳はまっすぐにそれを見ていた。
 それを見れば分かる。彼女には一刀にはない覚悟と決意がある。
 呉の姫として、決して逃げない決意が……。
318 名前:恋姫†無双〜サイド呉〜 エロ本[sage] 投稿日:2008/04/29(火) 22:58:18 ID:q7qc13mn0
「そうか……そうなんだ」
 そこまでの決意があるのだから、このような事にも耐える事が出来る。
「凄いな」
「凄いのは、シャオだけじゃないもん。穏も思春もお姉ちゃんもみーんな凄いんだから!」
誇った様に、彼女が言った瞬間であった。

「小蓮さま〜〜〜〜」
 この雰囲気を一気にぶち壊すような間延びした声。
 その声のした方向に振り向けば、そこには眼鏡をかけた女性が大きい胸を揺らしながらよたよたと走ってくる。
「あっ! 穏!」
 どうやら、彼女の知り合いらしい。そして、孫尚香も白虎から降りると、彼女の元へと走って行く。
 そして、彼女が穏と呼ばれた涙目な女性の前までくると……。
「ご無事で何よりです〜〜〜〜〜」
「むぎゅ! く……苦しい」
 ギュッと彼女の豊満な胸の顔を押し付けられていた。
 少しだけ羨ましいと感じたのは、一刀だけではないのだろう。
「へ? あわわわわ!」
 同時に穏は自分の胸が彼女をあの世へ誘おうとしているのを知ったのか慌てて彼女の顔を解放した。
「ぷはっ! も〜、穏ったら」
「ご、ごめんなさい〜」
 そんな事を言いながら、ぺこぺこと謝る穏。傍から見れば、良き友人と言えるのだろうか?
「えっと……」
 目の前の少女たちの再会にあっけをとられつつも、ちなみに決して穏の胸に見入っていたわけではないはずの、一刀がゆっくりと手を挙げ自分の存在をアピールしようとする。だが、
「あぅ〜、小蓮さまが居なくなってから、大変だったんですよ〜、黄蓋さまは倒れちゃうし、程普さまはお怒りになるし……」
「それで、穏は、探しに来てくれたの?」
「はい、丁ちゃんが小蓮さまを探しに行くようだったので、付いてきたんです〜」
 結局、二人だけで話が進んでいた。後ろの方で、これもまた少女がこっちに向かって手を振っている。おそらく、あれが『丁ちゃん』なのだろう。
319 名前:恋姫†無双〜サイド呉〜 エロ本[sage] 投稿日:2008/04/29(火) 23:02:03 ID:q7qc13mn0
「もしもし〜?」
「あれ?どちらさまでしょうか?」
 さすがに、そろそろ自分の話題も切り出さないといけないと思ったのか、一刀は再び会話に参加しようとした。幸いにも、穏はこれに気づいたようだ。
「あっ、そう言えば一刀にも紹介しなきゃ……穏!」
 孫尚香もそれに続くように、穏の後に言葉を続ける。当然ながら、一国の姫なのだから、その意は絶対的な物なのだろう。
「ああ、自己紹介ですか〜。初めまして〜、私、性は陸、名は遜、字は伯言っていいます〜」
「はぁ、陸遜さん……って、えええええええ!」
「ど、どうしたの?一刀」
 彼が驚くのも無理はなかった。陸遜 伯言。その名は呉の総大将も任されたことのある三国志内でも有名な武将である。
 しかし、彼の前にいる性が、その陸遜であるというのだ。少なくても、そのような事実は彼の聞いた範囲ではない。
(て、言うと……)
 彼の頭に浮かんでくる言葉が一つ存在する。

 平行世界
 決して交わることのない世界。
(そう言えば……)
「なぁ、あの『丁ちゃん』って言うのは?」
「丁ちゃんですか〜?丁ちゃんは、性は丁、名は奉、字は承淵ですけど」
「やっぱり……」
 思ったとおり、あの後ろにいる少女も武将の一人、しかも、三国志時代の武将の名を冠する少女なのだ。
 女性である陸遜や丁奉。そして、城から家出した孫尚香。
 それを平行世界という名で括ってしまえば、一応説明がつくのだろう。だが、そんなアニメやゲームのような出来事があるのか?そして、どうしてその中に一刀がいるのか?
 疑問はいくつもあった。
320 名前:恋姫†無双〜サイド呉〜 エロ本[sage] 投稿日:2008/04/29(火) 23:06:24 ID:q7qc13mn0
「ところで、あなたは?」
「ああ、俺は……」
「一刀だよ。将来、私のお婿さんになる人♪」
 そう、彼女のその言葉で思考が吹き飛ばされるまでは。
「「えっ?」」
 二人で信じられないという顔をしている。
「だ・か・ら、シャオのお婿さん」
 停止時間が何秒だったかは知らない。そして、その後にあったのは、

「な、なんだってー!」

 とりあえず、一刀の叫び声であった。
 しかし、そう言う風に言うのも無理はないのだろう。
「まままま、待ってくれ! 孫尚香さん!」
321 名前:恋姫†無双〜サイド呉〜@エロ本[sage] 投稿日:2008/04/29(火) 23:09:43 ID:q7qc13mn0
「小蓮!」
「へっ?」
 彼女の言葉の真意を正そうとした瞬間に、彼は再び言葉を区切られていた。
「私のことは、真名で呼んでくれないと駄目!」
「真名?」
 思わず聞きなれない言葉に鸚鵡返しに聞く一刀だったが、その疑問には陸遜‐もとい、穏が答えていた。
「真名というのは、自分の親しい人だけに呼ばせることの出来る名前のことじゃないですか〜。何言っているんですか〜?」
 そんな風習は一刀の世界にはなかったのだが、穏がそれを知る由もない。
「じゃ、じゃあ、小蓮さん、お婿さんって何を言ってるんだ?」
「だーかーらー、『さん』もいらないの! それに、文字通りの意味じゃない。シャオと将来結婚するの」
 その言葉で、自分の耳が決して聞き違いを起こしたわけではないのが確定する。
「そ、そんな重要なことを……それに、俺と会って、まだそんなに経ってないだろ?」
「時間なんて関係ないわよ! シャオは一刀の事が気に入ったんだから。それに、度胸も優しさも持ってるし」
「あら〜。そうなんですか〜。では、私の事も、穏とお呼びください」
 「止めろよ」と思わず穏に小声でツッこんだが、どうやら、この勢いは止まらないらしい。
「という訳で、これで万事オッケー♪ あとは、お姉ちゃん達に紹介するだけ」
「いや、全然大丈夫じゃないよ」
「がんばってください〜」
「無茶苦茶だー!」
 だが、一刀の声が届くのは、ただ上に広がる青空だけであった。

                          【続くかも】
322 名前:エロ本[sage] 投稿日:2008/04/29(火) 23:21:11 ID:q7qc13mn0
弁解
・丁奉は初期プロットでは出番があったが、ある既存キャラにその役割を譲ったため、名前だけの存在になりました。
・本当は存在も消したかったんだけど、すでに序章は投下したので、変更できなかったのでこんな処置をしました。
・なお、セリフのないキャラはオリキャラには数えませんので……。

 ある既存キャラのおかげで董卓戦が一気にプロットの展開変わったからなぁ……恋と詠が仲間にならないし……。
 まぁ、期待しないで待っててください。

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