- 128 名前:恋と一刀と朝のひと時[] 投稿日:2008/01/05(土) 02:23:38 ID:YCUfk1yl0
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雪は降らずとも冬の寒さの厳しい朝。
休日をこれ幸いとし、平日より怠惰なひと時を過ごしていた一刀。
持っているはずの無い抱き枕を抱き寄せ布団の中で暖かく夢見心地なひと時。
きっと「……ご主人様?」という少し困ったような声も聞こえなかったに違いない。
- 129 名前:恋と一刀と朝のひと時[] 投稿日:2008/01/05(土) 02:24:11 ID:YCUfk1yl0
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「……」
北郷一刀は困っていた。
怠惰なひと時からいざ抜け出そうとした矢先に温かい枕と赤い髪。
淡赤のパジャマに犬のマークがあちらこちら。頭には犬が噛み付いているようなナイトキャップまで着けている。
これらから推測するに犯人は相当の犬好きだな。
俺の交友関係にここまでの犬好きは一人しかいないはずである。
動物大好きの恋と一緒の布団で寝ている。
一緒に寝たっけ?いや、そもそも昨日は一人で寝たはず。
まさか、記憶も無いのに抱いてしまった?いや、酒は飲んでいない。
目が覚めたにしてはなかなかに冷静な自問自答を繰り返す一刀。
しかし、どれもまったく的を射てない。
「恋、起きて。恋」
無意味な自問自答を繰り返しても仕方ないので、恋を起こしにかかる。
「ぅぅん?………………ご主人様?」
恋は寝ぼけ眼を擦りながら目を覚ました。
たっぷり固まったところを見ると恋も状況を把握しきれてないようである。
「…………(こくりこくり)」
どちらかというと朝に弱いだけのようだ。
「あ〜……うん。とりあえず朝ごはんだな」
自分も恋も目を覚ますには、とりあえず朝の活力との判断。
「…………朝ごはん?」
恋は耳ざとく朝ごはんという単語に気づく。
「恋も一緒に食べる?」
せっかくの返事をここで絶やすわけにはいかない。
「朝……ごはん……食べる……一緒に」
眠気と戦っているのだろか、言葉は途切れと途切れだ。
一刀もいつまでも寝ぼけているわけにはいかない。
両頬をパンッと叩き目を覚ます。
「よし。さあ恋、起きて起きて」
ベッドから移動させるべく声をかけながら、いわゆるお姫様だっこでリビングへと向かう。
- 130 名前:恋と一刀と朝のひと時[] 投稿日:2008/01/05(土) 02:27:55 ID:YCUfk1yl0
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「で、恋はなんで朝から俺の部屋で一緒に寝てたの?」
自分と少し大目の恋の朝食を作って食べながら話しかける。
「……手料理」
こちらに目を向けそう答える。まさか朝食もご馳走しなければならないとは思わなかった一刀。
「……」
予想出来なかった答えに思わず黙り込む。
「……(もぐもぐ)」
しかし、一刀は自分の作った料理を幸せそうに食べている恋を見るだけで何も言えなくなってしまう。
「はあ……」
幸せが逃げそうな、しかしどこか楽しげなため息。一刀は恋にはとても甘いようだ。
考えてもしかたないと中断していた朝食を食べ始める一刀。
朝はシンプルに、トーストに目玉焼きにソーセージである。
一刀は目玉焼きを食べる時は焼くときに塩コショウをかける以外は後にはなにも加えずにトーストで挟む派である。
「……♪」
恋もどうやらトーストで挟むようである。
違いというほどでもないが恋は目玉焼きにマヨネーズをかけるようである。しかし、全部を一緒に挟んでいて見た目危なっかしそうだ。
「……あ」
頬張ろうとしたらソーセージを落としてしまったようだ。床の上に落ちたソーセージをじっと見つめている。
「恋、俺のぶんあげるから、いつまでも床を見ないの」
解決にはこれが一番だろうと思う。
「……いいの?」
そうは言ってるものの、恋の顔は早くも喜色に染まっている。
ソーセージ一本でこの顔のが見れるなら安いものだと思う俺は恋に甘いのは間違いないようだ。
「……ありがとう、一刀」
恋は普段はご主人様としか言わない。なぜかは知らないが三国時代のご主人様に慣れているせいだろう。
だから、意識して名前で呼んでくれるととても嬉しい気持ちになってくる。
「いいよ、かわいい恋の頼みだから」
わかってて言っている。たまにはいいじゃないか。
「ん……うん(こくこく)」
頬を赤くして俯き加減の恋。ぎゅうっと抱きしめたいが、如何せん食事中である。
朝から恋の少女の部分を垣間見れる日はきっといい日なのだろう。
- 132 名前:名無しさん@初回限定[] 投稿日:2008/01/05(土) 02:33:44 ID:YCUfk1yl0
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落ちません。ごめんなさい
今度は昼のひと時かな、と
恋を愛でて行きたいと思います