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772 名前:ある夜 1/2[sage] 投稿日:2007/09/17(月) 00:40:17 ID:2x9xoZNa0
どかっ、と公孫賛はソファーに身を預ける。
今は視界の隅にちらちらと映るテレビだけが騒がしい。
もっともてれび、なんてものを見て理解できるほどには時間はたっていないので
とりあえずつけているだけである。
冷えたビールを冷蔵庫から取り出して栓を開け、ゆっくり傾ける。
やっぱり酒っていうのは変わらないもんだな、としみじみ思う。
何もかもが変わって見えるこの世界で、酒というものだけは唯一変わっていないように思える。
公孫賛の前、部屋に備え付けられている机の上には大量の酒瓶が並んでいる。
当然一人で飲んだわけではなく、今の所一緒の部屋に住んでいる翠が
同居人に断りもなくいきなり一刀や他の連中を連れてきては飲み明かしたなごりである。
散々どんちゃん騒ぎをしたあげく、周囲から苦情が何件も舞い込んだために
一刀の家や他のあちこち、詳しくは覚えていないがまあ色々とハシゴして帰ってきたのが
今から1時間ほど前だっただろうか。
酔いつぶれた翠を家まで運び、そのままベッドに投げ捨てて部屋の片付けとシャワーを浴びたら
もう夜中の3時を回っているというわけだ。
明日が休日でよかった、と思う。
見ているわけでもないテレビを消すと、寝室から翠の幸せそうな寝息がグァグァと聞こえてくる。
そしてなんとなく部屋のカレンダーを見つめている自分を発見し、目を閉じる。
カレンダーにはこちらの世界の日付と、どこかの風景の写真が映っている。
773 名前:ある夜 2/2[sage] 投稿日:2007/09/17(月) 00:40:51 ID:2x9xoZNa0
とにかく、全てが以前と違う。
生活も、物も、人も、色々な概念すらすっかり様変わりしてしまっている。
笑ってしまうほど、この世界はあの世界から時が進んでいるというわけだ。
理解の限界などとっくに通り越してしまっているこの世界はむしろ公孫賛にはありがたかった。
理解しようなどという気すら起きなかった。
一刀や翠達と一緒にさえいれば、しばらくはなんとでもなるこの平和な天国を解明しようと試みた
名だたる軍師達が雁首揃えてダウンしてしまったのを見ると本当にそう思う。
彼女らに今隣で寝ている翠の姿を見せてやろうか、と思うと笑いがこみ上げてくる。
とはいえ先のことを考えれば、不安がないと言えばウソになる。
一刀ですら、今はただの一人の学生であり将来を考えねばならない時期である。
いつまでもアイツにおんぶにだっこ、なんてできないしなぁ……。
いつの間にか忍び寄ってきた睡魔に身をゆだね、ソファーに横になって思いをめぐらせる。
ああ、でも一人くらいはずっとアイツの傍にいられるんだろうなぁ。
誰だろう。
やっぱり関羽かな。いっつも一緒にいるしな。
でも孫権も曹操もがんばってるし、ああ、そういったらほとんど全員が狙ってるか。
俺は……まあ、ないだろうけどさ。
そういやアイツ、とんでもないスケベだったんだな……驚いた。
こっちにきた連中のほとんどがアイツに抱かれたっていうから心底ね。
人が死んでる間に何をやってたのかと。二刻(約1時間)ほど問い詰めたい。
あ、そういえば俺なんで死んだんだっけ?……あれ……思い……出せな……
眠りに落ちた公孫賛の手から、ほとんど空になったビール缶が滑り落ちる。

カレンダーには、赤ペンで丸のついている日がある。
今から一月と経っていないそこには、「この世界ができた日」と大きな文字で書いてあった。
774 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2007/09/17(月) 00:42:49 ID:2x9xoZNa0
おしまいじゃ

ハムをちょろっと書いてみた。保守代わりってことで。

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