小腹がすいたので厨房にやってきた一刀。なにやら騒がしい。
「腹減ったなー。ん?」
見れば愛紗がエプロン姿で厨房に立ち、それをまわりで春蘭などがはやし立てている。
春蘭の他にも三国の英雄達が結構集まっているようだ。皆愛紗の料理している様を見物しているらしい。
鉄鍋と格闘する愛紗の横には「チャーハン作るよ!」という題の本があった。
最近愛紗の料理が上達しているのは知っていたが、影でこんなことになっていたとは。
これ幸いと、一刀は愛紗に話しかけた。「愛紗、炒飯作ってるのかー」
出来上がったら食べさせてくれよ――そう続けるつもりだった。
「ひゃっ!?」
だが愛紗はそれに驚いたらしく、その拍子に炒飯はゆっくりと宙を舞い……愛紗に降りかかった。
それを見てギャラリーから笑いが起こる。顔を真っ赤にして震える愛紗。
愛紗に謝ろうと近づいた一刀は、愛紗の目にうっすらと涙がたまっているのが見えた。
一刀は、かわいいエプロンを着た涙目の愛紗の姿に耐えられなかった。
いきなり愛紗を抱き寄せその肩口に顔を寄せると、そこにあった炒飯の粒をついばんだ。
「ご、ご主人様!」急のことに驚く愛紗にかまわず、顔や手、胸などあちこちに口を寄せる。
その様子にギャラリー達は何故か敗北したような面持ちで厨房を去ってゆく。
「おいしいよ、愛紗。すっかり上達したんだな」
もはや炒飯はついていないが、愛紗の頬にくちづけながら言う。
「な、何をいうのです!それにもう炒飯はついてませんよ!」
「えー。ついてるって」「つ、ついてませんったら!」「ついてる」「ついて……んッ」
ごちそうさまでしたとさ。