- 435 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2007/06/24(日) 17:42:08 ID:bNgLpAm50
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すまん、/20だったのが/19になってるのは仕様だ。仕様だと思ってくれ、すまない。
今度があれば、そんなことはないように気をつける。
で、お詫びってわけじゃないんだが、もう一つ花火を打ち上げていく。
投下するから、踏み潰されないようにしてくれ。
- 436 名前:王様ゲーム 1/14[sage] 投稿日:2007/06/24(日) 17:43:07 ID:bNgLpAm50
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(おおむね)平和な午後のはずだった。
(だいたい)平穏な夜を過ごして、朝に目が覚めるはずだった。
だっていうのに、聞いてくれ。
今、俺の決して広いとはいえない部屋に25人。
ハーレムだなんだとか、そんな事を言っている場合じゃない。
「お兄ちゃん、お菓子は?」
「はいはい、部屋の隅の冷蔵庫の裏にあるよ」
「はわわわわ……な、なんでこんなに……」
…何でこんな事になったかっていうと。
「王様ゲーム?」
「そういう遊びだよ。番号のついたくじを引いて、王様になった人が番号を指定して何かをやらせる事ができるんだ」
「なるほど、個人は指定できないのですな」
「面白そうなのだ!」
「じゃ、早速やろうぜ。あたしは朱里も呼んでくるよ」
…という話だったのだが、どうやらイモヅル式に引っ張ってきてしまったらしい。
今や璃々ちゃんを含めた全員が俺の部屋に集結して、輪になってわいわいがやがや。
どうでもいいけど、女子寮は男性不可侵のくせに男子寮はフリーなのな。
「それにしても暑いわね。ちょっと一刀、もう少し風当たりをよくしなさいよ!」
「無茶言うなよ華琳……。もう窓も一杯一杯だって」
「この邪魔な壁を取り壊せばいいじゃない」
ぱんぱんと、窓側の壁を手のひらで叩く華琳。無茶言うな。
「我慢してくれよ、そのうち気にならなくなると思うから。…じゃ、みんな始めるぞー!」
即席のくじは割り箸を割って印をつけ、不透明なコップの中に入れたものだ。
中央に差し出すと争うようにして取り合い、あっという間に一本を残してなくなってしまった。
最後の一本は、俺が引く。
「それじゃ、いくぞみんな。せーのでよろしくな」
『王様だ〜れだっ!!』
- 437 名前:王様ゲーム 2/14[sage] 投稿日:2007/06/24(日) 17:44:13 ID:bNgLpAm50
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次々と自分の割り箸を覗き込んでいくみんな。さて、俺も……あ。
「…俺が王様だ」
途端に、えーーっ! といった感じの声があちこちであがる。
「なによそれ、あんたがなってどうするのよこのち○こ!」
「お兄ちゃんはそもそも王様やってたんだから、また王様なんてずるいのだ!」
「それで何をするつもりよ、この外道! 鬼畜! 変態!」
なんでここまで言われなくちゃならないんだろう?
涙が出てきちゃう。だってまだ男の子だもん。
「詠ちゃん……ゲームなんだから……」
「そうだぞ鈴々、見苦しい。一刀、どうかお気になさらず続けてください」
「あ、ああ……。それじゃ、そうだな……」
…気を取り直して、考える。
うーん、命令……命令なあ……強制力を持ってて、なおかつ俺が得するようなもの。
…そうだ。
「じゃあ、15番はこのゲームが終わるまで体操着でいること」
……。
「……」
「……」
……。
あれ、何この沈黙?
というか視線が痛い。冷ややかなとか蔑んだとか、哀れむようなとか矢のような。
ダメだった?
「……ああもう、いいじゃないかとにかく! 今は!」
「ごしゅじんさま、へんたいー」
うぐ。
俺は悪くない、……悪くないよな?
「とにかく、15番は誰だ?」
「あら、それは私ですわ」
…割り箸を左右に揺らして、くすくすと笑っているのは紫苑だった。
- 438 名前:王様ゲーム 3/14[sage] 投稿日:2007/06/24(日) 17:47:04 ID:bNgLpAm50
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…よりによってそう来るか。
というか、しまった。つい学生が多いせいで、教師に当たる可能性を忘れてたぞ?
「あら、大丈夫ですよ。持っていますから」
「何で持ってるの……?」
「こんなこともあろうかと、ですわ」
どんなことだよ、とはっきり突っ込めない俺は悪くないよな?
そりゃ、考えなかったなんて事はない。男のロマンってやつだろ?
「では、少しお待ちくださいね」
早くも五分後、紫苑は体操服に着替えて戻ってきた。
「……って、ブルマ?!」
「あら、お嫌いですか?」
いや、いい。
それにしても、紫苑の体に対して体操服があまりにも小さめだ。
性質もあって全身のラインがくっきりと見えてしまう。上の方とか下の方とか、もう張り裂けそうな……
「どう思います?」
「すごく……大きいです……」
何が、とは言えない。
なぜなら、そろそろ周りからの視線が耐えがたいレベルまで発展してるからだ。
「……一刀、もう十分でしょう。そろそろ先に進めても構いませんか?」
殺人的な視線だな、愛紗。今度は愛紗も体操服を着せて可愛がってあげることにしよう。
「じゃ、次行くぞ。みんな、取った割り箸をコップに戻してくれ」
みんなが戻した後に、俺は後ろ手にして適当にかき混ぜる。
「よし、いいぞ」
また全員が引いて最後に俺が引き、みんな一斉に割り箸をみる。
『王様だ〜れだっ!!』
- 439 名前:王様ゲーム 4/14[sage] 投稿日:2007/06/24(日) 17:48:08 ID:bNgLpAm50
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「よっしゃあたしだーーーっ! いやっほー、今日はついてるぜ!」
高々と拳をあげて喜ぶ翠と、あちこちでため息が漏れるみんな。
この人数だと、自分が王様になれずに終わってしまう可能性は十分あるからなぁ。
「さーて、どうしよっかなー。あれにしようか、これにしようか、それとも……」
指折り数えて考えをまとめようとする翠。
「よーっし、決めたっ! 3番と12番は、さんべん回ってワンと鳴け! 王様の命令だぞ!」
えっへん、と胸を反らして命令する翠。俺は19番だから違うな。
それにしても、人によって恥ずかしさが違うような命令だ。
「こ……この私が、武人であるこの私が負け犬の真似事をしなくてはならないだと?!」
「……さんべん、回って……?」
驚愕の声をあげて悔しそうに唇を噛むのは……華雄か。
もう一人は、恋が不思議そうにしながら手を挙げた。
「何故私がこのような真似を……! 犬の真似事などと、私には似合わない…!」
いえ、この上なくある意味で合ってます……とは、表情を見る限りほとんど全員が思っているんだろう。
だがあえて口には出すまい。
「……ご主人様。…何をすれば、いい?」
「そうだな……恋。犬みたいに手足をついて歩いてさ、その場で三回回るんだ」
「……セキトの真似?」
「…そうだな、そういうことだ」
説明してやると、分かってくれたのか顔が僅かに綻んだ。
「わかった」
ぬぎっ。
「れ、れれれれれ恋ッ! 一体何をしているのだ?!」
「うわ〜……呂布っち、いい体してるなぁ」
何故脱ぐ?! 何で脱ぐ?!
「…ご主人様が、セキトの真似って言った。…セキトは、服を着ない」
「北郷一刀、貴様!」
俺のせいじゃねぇ! 俺のせいじゃヌェ!
「思春、いいから刀を納めて!」
「は、早く服を着ろ恋ーーッ!」
- 441 名前:王様ゲーム 5/14[sage] 投稿日:2007/06/24(日) 17:49:43 ID:bNgLpAm50
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恋には、セキトの真似ではなく華雄の真似をするんだよ、ということで納得してもらった。
そういうわけだから、先に華雄にやってもらうことになる。
「くっ……いいだろう、これも武人としての敗者の務めだ……。たとえ我が名が地に落ちるとしても、やらねばならないな……」
「…いや、そんな悲壮な覚悟を決めなくても」
ゲームなんだから、こんな時ぐらいそういうのは考えなくてもいいのに。
しかし全員の視線が集まる中で、華雄は痛々しいほどの悲壮さを持って四つ足をつき、その場で回り――。
「……わん!」
鳴いてみせた。
それを笑えるものは誰もいなかった。
いなかったけど、みるみる華雄の顔が赤くなっていくのが分かる。
恥ずかしいのか怒っているのか、最終的にトマトのように真っ赤になって――
「う……うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!」
耐え切れずに叫んだ後、部屋の隅にいってぐすぐすとのの字を描いてしまった。
…なんていうか、可哀想に。
後で一応、慰めてあげることにしよう。
華雄の犬で悲壮さを持った雰囲気を、恋がいつものように和ませ、笑わせる。
そろそろ盛り上がってきたな。
華雄はどうやら戦線離脱してしまったようだけど、慰めたら笑ってくれたし、後には引かないだろう。
ちょっと捻くれてるみたいだけど、悪い人間じゃないみたいだからな。
お礼も言ってくれたし。
「さあ、次にいくぞー」
全員から回収して、華雄分の一本である26番を抜いて混ぜなおし、もう一度引いていく。
来いっ! と叫ぶものや祈るものなど、その姿は真剣そのものだ。
うんうん、楽しめてるな。
『王様だ〜れだっ!』
- 442 名前:王様ゲーム 6/14[sage] 投稿日:2007/06/24(日) 17:54:54 ID:bNgLpAm50
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「あら、ようやく私に当たりが回ってきたようね」
満面の笑みで見せつける華琳の割り箸には、水性マジックで書かれた王冠マーク。
「やはり天運は私を選んだようね。まあ、遅すぎるくらいだけれど」
「さすがは華琳様です! さあ、どうぞご命令を!」
嬉しそうな顔をするけど、命令ったってお前にするんじゃないからな桂花。
周りが割り箸と華琳を交互に見て一体何が起こるのかと気にしている中、華琳はそうね、としばらく考えて……
「じゃ、9番と24番は両側から私の肩を揉みなさい。時間をかけて丁寧にね」
「……意外と普通なのだ」
「あら、私は揉みなさいといっただけで、それだけで済むかは分からないわよ?」
隣の愛紗がぷるぷると震えながら割り箸の番号を見て、ほっと息をついていた。助かったか。
さて、9番と24番……ん? 9番……?
「あ、9番は俺だ」
「なっ!」
「なんだってぇ?!」
あちこちで騒ぎが生まれる。
「あら、どうしたのかしら孫仲謀ともあろうものが。突然立ち上がったりして」
「う、うぐっ……い、いやその……何でもない……」
華琳がにやにやと意地悪いことを言うと、蓮華は声を詰まらせて座り込んだ。
なんか、全方向から華琳にうらやましそうな視線が降り注いでいる気がする。
「…なんでよりによって……くっ、私は8番……一番違いなら、ああ華琳様ぁ…」
桂花はやっぱり口惜しそうにしていた。
「さあ、早くしなさい。まさか断るとは言わないわよね?」
「はいはい、分かったよ女王様。精一杯やらせてもらうさ」
満足そうな顔で笑う華琳の後ろ側に回り込む。
ううむ、ここからだといっそう視線を感じるな……俺を睨まれてもどうしようもないぞ?
……あれ? そういえば……
「24番もいるはずだよな。誰なんだ?」
「はぁい。それは わ・た・し♪」
ぴしぃっ!
…まるで蛇に睨まれた蛙のように、一瞬で華琳の体が凍りついたのがわかった。
- 443 名前:王様ゲーム 7/14[sage] 投稿日:2007/06/24(日) 17:57:24 ID:bNgLpAm50
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「確か、時間をかけて丁寧にだったかしら? いいわ、久しぶりに本気出しちゃうんだから」
「……あ……あ、あ、わわ、ぁ……」
「…貂蝉だったのか」
あまりのことに華琳は言語中枢が傷ついてしまったようだ。
無理もないが…しかし命令がこんな形で裏目に出るとはなあ。
「まさか曹孟徳ともあろうものが、一度言ったことを取り下げるなどということはないでしょうな」
「ぐっ、趙子龍……!」
にやり、と笑って星が華琳の逃げ道を塞いでしまった……容赦ないな。
「王様がそんなことでは、私達としても命令を聞くわけにはいきませんね」
「曹孟徳。仮にも一国の主だった身として、護らなければならないものはあると思うぞ」
ここぞとばかりに愛紗と蓮華が一致して畳み掛ける。
気づいてないだろうけど蓮華、今すごく底意地の悪い笑い方してるぞ?
「わ……わかったわよ! さあ、来なさい! この曹孟徳の辞書に不可能という言葉はないのよ…!」
うむ、どう見ても強がりで可愛いな。
まあこういうことも経験だろう。
「じゃ、行くわよん」
「ひ……!」
「いやーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!」
かくして華雄に続いて華琳が戦線を離脱し、桂花も介抱役として離脱。
三人減ってしまったけど、まだゲームは続く。
「お前達はいいのか? 春蘭」
「我々は華琳様の仇を取る!」
仇って、そんな大げさな。
まあともかく、もう一度回収して今度はしっかり二人分を抜き、混ぜて差し出す。
『王様だ〜れだっ!!』
- 444 名前:王様ゲーム 8/14[sage] 投稿日:2007/06/24(日) 18:00:15 ID:bNgLpAm50
-
「……どうやら、私のようだな」
「冥琳?」
「冥琳様!」
いつも通りの落ち着いた声で割り箸を掲げたのは周喩だ。
俺としては、いずれ真名で呼べるくらい仲良くなりたいと思っている。
眼鏡に叶うのは予想以上に難しい。
「さて、どうしたものか……」
予想外の幸運を手に持て余すのか、目を閉じて思考をはじめる。
困るなら欲しいとか言っちゃダメだぞ鈴々。
何が出てくるだろうか……。
「…では、11番にここにいる全員に土下座してもらおうか。誰にでも一つ二つくらい、謝る事はあるだろう?」
「うわ、キッツ……」
思わず翠の声が漏れる。ううむ、周喩ならではの命令だな。
俺じゃなくて良かった。
俺だったら一体どれだけ掛かるのか予想もつかないからな。
さて、11番は……
「あ……私、です……」
「ゆ、月っ?!」
ようやく当たったことが嬉しいのか、こんな事にも関わらずほのぼのと笑っている。
「月……大丈夫?」
「大丈夫だよ、詠ちゃん……私、がんばるね」
詠が心配する中(俺も結構心配だ)、月はわずかに後ろに下がってぺたんと額を床につけた。
…その姿だけでもう、全部まとめて水に流したくなるくらいか弱く、まるで白いウサギのようだ。
「みなさん……ごめんなさい、月は悪いコなんです……いつも、いつも…」
…それを皮切りにして、月の謝罪は始まった。
- 445 名前:王様ゲーム 9/14[sage] 投稿日:2007/06/24(日) 18:07:13 ID:bNgLpAm50
-
ようやく月の謝罪が終わったとき、言い表せない沈黙の空気が場を支配した。
月が頭をつけた土下座の体勢のまま、いつも通りの儚い声で語ったのはなんかもう色々。
俺に拾われたことから、それなのにみんなに迷惑をかけてるとか、学校の金魚に多く餌をあげすぎたとかもあったっけ?
「ゆ、月ぇ……月は、ボクがこれからも絶対に守ってみせるからね!」
「ありがとう、詠ちゃん…」
謝られるたびに罪悪感が募って、単純な拷問とかよりよっぽど効くんじゃないのかこれ?
みんな意気消沈してしまっている。
「ちょ、ちょっと冥琳?!」
蓮華の声に引き寄せられてみてみれば、周喩が苦痛に顔を歪ませたまま、蓮華に支えられていた。
「……まるで胸を抉られるようだ……軽々しく言うものでは、なかったな……」
…どうやら、命令してしまった本人はダメージがかなり大きくなったらしい。
無理もないけどな……。
「すみません、蓮華様……私は……ぐっ」
「冥琳様、しっかりしてください〜!」
ついに冥琳が耐え切れずにダウンし、小喬と大喬が大騒ぎしだす。
それを月は、またもや申し訳なさそうな目で見ていた。
「……ごめんなさい、月が悪いコだから……」
冥琳が気を失い、小喬と大喬が介抱についたので今度は一気に人数が三人減ってしまった。
気にせず楽しんでくれという最後の言葉により、他の呉組は変わらず参加している。
「冥琳の分も私達は楽しまなくてはならないわ、思春」
「は」
気を取り直してみんなで暫くわいわいとやっている間に俺はくじを回収して、もう一度新しくいじる。
「じゃ、そろそろ行くぞー」
「待ってました!」
「今度こそ……来いっ!」
『王様だ〜れだっ!!』
- 446 名前:王様ゲーム 10/14[sage] 投稿日:2007/06/24(日) 18:09:48 ID:bNgLpAm50
-
「や、やった、やりました! 私のが当たりくじです!」
小さな体で力いっぱい喜びを表現したのは、朱里だった。
うーん、本当に嬉しそうだな。
「それで、朱里は何を命令するんだ?」
「えっ! …あ、そうでした…当たったのが嬉しくて、頭が真っ白になってましたよぅ…」
えへへ、と笑う朱里もつかの間。
「……」
何故か、一瞬で朱里は――例えば、戦場で相手に対して献策を頼む、と言われた時のような顔をし始めた。
な、なんだ? 一体何をそんなに考えているんだ?
そして何をするつもりなんだ……?
(…今までのゲームの中で、もうおおよその割り箸の特徴と番号は把握しました。
愛紗さんが今持っている裏側にちょっとだけ筋が入ってるのは6番。
月ちゃんが今持っている微妙に割った後のささくれが残っているのは18番。
そして、ご主人様…一刀さんが持っているのは、14番!
間違いありません!)
「でっ、でっ、ではですね! 14番の人が……14番の人は、王様の、王様のですね……!」
14番が何なんだろう。
俺としてはとりあえず、今にも自分の舌を噛んでしまいそうな朱里が心配なんだけど。
「14番の人は、王様の……! 王様のほっぺに、口付けをおねがいしましゅるっ!」
すげえ、最後何がなんだか分からなくなったぞ。
それにしても、朱里がそんな命令をするとはなあ。
「ほうほう、朱里にそのような趣味があったとは驚きだな」
「まぁまぁ、星。遊びなんだし、朱里だって何か考えがあってやってるんだよ」
「い、いえ、そんな趣味があるわけじゃなくてですね……! え、え……っ?!」
…なのに何でか急に朱里がうろたえだしたんだけど、突然どうしたんだろう?
驚いた顔でこっちをそんなに見られても困るな。
「…その、14番とは……私のことなんだが……」
おずおずと手をあげたのは、なんとも反応に困るとでもいいたげな蓮華だった。
「え、ええええええええええええええええええっ?! そ、そんなっ?!」
- 447 名前:王様ゲーム 11/14[sage] 投稿日:2007/06/24(日) 18:15:40 ID:bNgLpAm50
-
「しゅ、朱里?」
「待っていただきましょう、一刀。朱里、いったいその言い方はどういう事だ?」
「は、はわわわわわ……! う、うぅ……その、ですね……」
星が問いただすと、朱里は信じられないとばかりの顔であえぐ。
……その顔で、ピンときた。
「ひょっとして朱里、割り箸と番号を記憶してたんじゃないのか?」
「…は、はうぅ……そ、そうです……」
やっぱりそうか。
朱里がやけに何か真剣に悩んでいると思ったら、その記憶をたどっていたんだ。
「まあ、普通に考えたらありえないことだけど、この面子だから何があってもおかしくないしな。
…というわけだから、俺も一応準備はしておいたんだよ。…ほら」
そう言うと、俺は机の中から今あるくじと全く同じセットを二つ取り出してみせる。
策士、策に溺れる……ってところだな。
「そ、そうだったんですか……」
「さっき時間が余ったから、こっそり交換しておいたんだよ」
(う、うぅ……一刀さん、こんな時に限って気が利きすぎですよぅ!)
まあ、こんなハプニングもゲームには必要なことだろう。
「…なるほど。つまり当然、朱里が期待した本来の14番は一刀なのでしょうな」
「まあ、その辺りはともかくとして。そろそろ命令の執行に移ろうじゃないか」
別段そっちの趣味があるわけではないけど、興味がないわけじゃない。
この中でも屈指の内気タイプである二人による、頬へのキスだ。
「その……なんだ、すまない」
「い、いえ……こちらこそ申し訳ありません、蓮華さん。私の身勝手な謀略で傷つけてしまって……」
「…そう気にしなくてもいい。私も、出来ることなら同じことを考えただろうからな」
ふっと笑う蓮華に、ありがとうございますと改めて朱里が謝った。
そして、ついに命令の執行が始まる。
始まる、のだが……
「……む……」
「……は、はうぅ……」
どうも決心がつかないのか、恥ずかしいのか、蓮華は近づいて離れてを繰り返す。
蓮華自身も相当顔が赤くなっているが、いつ来るか来るかと繰り返す朱里も相当見た目ヤバイ。
- 448 名前:王様ゲーム 12/14[sage] 投稿日:2007/06/24(日) 18:20:42 ID:bNgLpAm50
-
悪循環じゃないか、これ?
時間が経つごとに恥ずかしくなり、恥ずかしくなればますます出来なくなる。
大抵の人は経験があるんじゃないだろうか。
もう二人とも顔が真っ赤な上に、朱里はなんだか息が荒くなってきた。
……と、そこで痺れを切らした誰かが動いた。
「あーーっ、もうじれったい! さっさと済ませてよお姉ちゃん、時間がなくなるでしょっ!」
「小蓮様、待って――」
慌ててとめようとする思春もほんの少し遅く、どちらかというと突き飛ばす勢いで小蓮が蓮華の肩を押した。
「ひゃっ?!」「はわっ?!」
結果として成功した。
成功したけど、二人は押された衝撃でくんずほぐれつ床に倒れる羽目になった。
「はわわわわ……」
「……う、うぅ……っ」
…二人とも緊張が限界に達したのか、あるいは限界に達した緊張が解けたのか知らないが仲良く気絶してしまったようだ。
というわけで、さらに人数が減った。
蓮華を看るために抜けた思春が、朱里の面倒も見てくれるというので減ったのは三人。
初めから数えると、抜けたのは合計で九人ってことになる。
…いつぞやのように叩いて防いでをやってるわけでもないのに、何故か人数がどんどん減っていくな。
「あ、蓮華様と朱里ちゃんに関しては問題ないですよ〜。すぐに目を覚ますと思います〜」
それなら良かった。
じゃ、そろそろ始めるとするか。
「おかしい……そろそろ私に来てもおかしくなさそうなものではないか……?」
「ううう、鈴々も早く王様をやりたいのだ!」
…この二人もそうだが、みんな待っているようだし。
「じゃ、引いてくれ」
『王様だ〜れだっ!!』
- 449 名前:王様ゲーム 13/14[sage] 投稿日:2007/06/24(日) 18:24:28 ID:bNgLpAm50
-
「やった、当たり! 小蓮が女王様だもんね〜!」
「同じちっこいのに、なんで鈴々には来ないのだ!」
「風格ってものが足りないのよ、風格がね〜。小蓮は元とはいえ、お姫様だもん!」
「にゃにをーーっ!」
どうやら、朱里に続いて小蓮が引いたことに気が食わないらしい鈴々が食って掛かる。
愛紗になだめられてようやく止まってくれた。
「さーて、じゃあどうしよっかなぁ……」
余裕たっぷりの小蓮が、じっくりと周りを見渡した。
こういう時の、余裕がある人を食うような見定めるような感じは星あたりに似てるところがある気がするな。
「き〜めたっ! 1番と6番の人が、12番の人の胸を揉む!」
「な、なんだそれはっ?!」
怒号にも思えるような、驚愕の声をあげたのは春蘭だった。
まあ、なんていうか……発想がどこかのオヤジみたいだぞ、小蓮。
「そ、それはいくらなんでもおかしいと思うのだが……」
「え〜っ、何で?! さっきのキスが許されるなら、胸を揉むのもアリでしょ! 減るもんじゃあるまいし!
決めたの! もう決定! 反論は許さないからね! ね〜一刀ぉ〜?」
いや、そこで俺に振られても?!
あちこちから突き刺さる視線に、針のむしろだ。
だから俺は答えた。
「いや、ルールだから。一応、危なくはないし」
ごめん、実は見たいんだ。
まあ、本気で嫌がっていたら止めるつもりではあるし、限度があれば大丈夫だろう。
「仕方ないですね……1番は私です」
「あ、9番はわたしですよぉ〜」
愛紗と穏が、それぞれ対照的に返事をする。
「…なんか、どちらかといえばするよりされる方が映えるっちゅう感じのする二人やな」
確かに。
ところで、そのされる方は……?
と視線を見渡していくと、ある一箇所で止まった。
「……」
縮こまって、控えめにぷるぷると手をあげる姿は普段からは想像できない姿だ。
……おずおずと手をあげているのは――季衣だった。
- 450 名前:王様ゲーム 14/14[sage] 投稿日:2007/06/24(日) 18:28:49 ID:bNgLpAm50
-
…いかん、空気が。空気が言葉にならないくらい、何か凄い悪いぞ。
涙目にすら見えなくもない季衣の両隣で、春蘭と秋蘭すらしばらく絶句していた。
「しゃ、小蓮様〜? や、やっぱりこの命令は無効ということで……」
「そ、そうだな。小蓮、こういう事は良くないぞやっぱり」
いち早く動き出した穏に合わせて俺も同調すると、さすがに小蓮も微妙な顔をし始める。
よし、もう一押しだ。
「そうだなー、シューマイチビはぺたんこおっぱいだから仕方ないのだ」
鈴々、押す方向が! 押す方向が違うよ?!
「うわあああああんっ!!!」
「ああっ、季衣ーーーーーーっ!」
一瞬で堰を切って泣き出した季衣が、扉を突き破って外に出て行ってしまった。
「…鈴々にはしっかり言いつけておきました。本人も反省していましたし、そう悪いことにはならないでしょう」
そうか。
あのあと季衣を春蘭と秋蘭が追いかけていってしまい、すぐ後に愛紗の怒号に叱られた鈴々が出て行った。
こうしてまたもや、今度は4人が消えてしまったことになる。
これで残っているのは……13人か。
「これで魏組は全滅ということですな」
「いや、戦争やってるわけじゃないんだからさ……」
「いえ…ようやく今分かりました。これもれっきとした戦いなのです!」
息が荒いぞ、愛紗。
「そうそう、人数が減れば最終的に一刀を狙いやすくなるんだしね〜」
火をつけないでよ小蓮……。
張り詰めるぴりぴりとした空気にしかし俺は、思わず笑いがこぼれているのだった。
…結局、俺も楽しんでるんだな。
「じゃ、始めるぞ。用意はいいな?!」
『王様、だ〜れだっ!!』
〜おわり〜(支援ありがとう)