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298 名前:この新たなる世界で……@エロ本[sage] 投稿日:2007/05/30(水) 00:42:11 ID:HQJgGGBG0
 という訳で、写真ネタ第3弾を投下。トリを飾るのはこの軍勢でございます。
 なお、終わりにはー了ーをつけるはず……


 彼女にとってはそれが普通の出来事になったのかもしれない。
 あの日を境に変わってしまった運命。いつまでの続くと信じていた日常。
 その変化は彼女にとってはどうだった?
299 名前:この新たなる世界で……@エロ本[sage] 投稿日:2007/05/30(水) 00:47:06 ID:HQJgGGBG0
「で、写真を撮りたいと?」
 いつものごとく、騒がしい聖フランチェスカの教室。その日の放課後での詠の一言がそれであった。
「また、唐突やな〜」
 隣では、上級生である霞も呆れた顔をして立っていたりする。
 彼女たちがこの外史に来てから、早2ヶ月が経ったものの、彼女たちがこの世界の常識になれるのには少しだけ時間がかかっていた。
 当然、写真というものの存在も彼女たちにとっては、まだ未知の存在であり、使ったことすらなかったのである。
 そして、いちばん驚くべき事は、それを提案した人物が、
「……(コク)」
一番常識知らずの恋であったことだった。
「つーか、呂布ちん。何でそないな事する気になったん?」
 恋の事を比較的よく知っている霞みでさえも、思わず聞いてしまいそうな出来事。しかし、その答えは意外にあっけないものである。
「……ご主人さまに聞いた」
「ああ、なるほど……」
 要約すれば、一刀が恋に何かを知らず知らずの内に吹き込んでいて、それに恋が興味を持ったというところなのだろう。
「えっと……どういう風に聞いたんです?」
 今まで黙っていた月もそれには興味を持ったようで、思わず口を開いている。
「思い出……形……残る」
300 名前:この新たなる世界で……@エロ本[sage] 投稿日:2007/05/30(水) 00:52:21 ID:HQJgGGBG0
「へぅ?」
「はっ?」
 だが、その回答に月と詠は理解できなかったようで、目を丸くしていたりするが。唯一理解できた人物は霞だけのようだ。
「つまり、思い出を形にして残す、ってことやな?」
「……(コク)」
 その霞の代弁ようやく理解できた月と詠。なお、この時に北郷 一刀は額から血を流しているのを発見されたとか、されていないとか。
「で、それでボク達も同じことをしろって言う訳?」
「……(コク)」
 恋の無言の頷きは、肯定を何よりも率直に表したものだ。しかし、詠と霞はこの後の色々な用事がある。当然ながら賛成できないと思っていた。そう、彼女の一言があるまでは。

「あの……撮りましょう。皆さん、一緒に……」
301 名前:この新たなる世界で……@エロ本[sage] 投稿日:2007/05/30(水) 00:56:31 ID:HQJgGGBG0
 月の一言は正に彼女たちにとって勅のようなものだった。
 最初に詠が態度をひっくり返したようになり、そして、霞も元董卓軍の軍師である賈文和の説得には勝てずに、結局彼女たちは近くの公園に集まっていた。
「お〜い、賈駆っちはもう少し右や」
「分かってるって!うう、狭い」
「へぅ……詠ちゃん……」
 そんな事を言いながら、月、詠、恋は木陰の下に並んでいる。
 しかし、そんな少ない人数でも混雑したようになっているのには理由があった。
「て言うか、恋! 何で動物達も連れてくんのよ!」
「……セキト達も一緒」
 簡単にいえば、人間以外のセキトは始めとする動物達も一緒に入っていたのである。そのせいで、スペースがかなり狭くなっているのだ。
「だからって、こんなに連れてきて……て痛たっ! つつくな! 焼き鳥にして食べるわよ!」
 何故か、詠に至っては小鳥におでこを突かれていたりもする。
「でも、詠ちゃん。恋さんの言うとおり、皆で撮った方がいいと思う……」
 隣では、詠と違って動物に懐かれている月がゆっくりと諭している。
「ううう〜、月〜。分かってるから、そんな顔で見ないで〜」
 こうかはばつぐんだ。
 そんなテロップが出そうな雰囲気を醸し出しながら、詠は涙目に成りながら、鳥におでこをまだ突かれていたりする。
「ほな、撮るで〜」
 そんな状況になりながらも、霞はシャッターのスイッチをセットする。
「世に謳われし張文遠の神速、とくと見てみい!」
 そう言って自分の位置に走り出す霞。
「……」
 いつものように無口でセキト達と一緒にいる恋。
「痛たたたたたた!」
 小鳥の恨みでも買ったのか、それともいつもの不幸なのか、でこが赤くなるまで突かれている詠。そして、
「……」
そんな光景を幸せそうに笑っている月。
 その4人が揃うと、シャッターは自らの役目を知ったかのように下りた。
302 名前:この新たなる世界で……@エロ本[sage] 投稿日:2007/05/30(水) 01:02:02 ID:HQJgGGBG0
 それから幾日が経つ。
 霞の持っていた一眼レフのカメラは確かに彼女達を鮮明に捉え、彼女‐月の手元の写真に焼き付けていた。
 その光景を見ながら、月は微笑を浮かべていた。
「どうしたの?月」
「あっ……詠ちゃん」
 隣から、おでこに絆創膏を貼った詠が写真を覗いてくる。
「ううん……ただ、これを見ていて、幸せになったの」
「幸せ?」
「うん」
 彼女の言う、幸せ。それは詠がよく知っていることだ。
「皆が笑顔になってる世界……か」
 外史云々の話を詠も一通りは聞いていた。だが、結局のところ、ここは一刀の願いが反映さえされた外史だという事しか彼女には分らなかったのだ。
 だが、
「ボクは、月が笑っていられれば、それでいい」
それが、詠の結論だった。
 月はこの世界で笑っていた。あの洛陽に閉じ込められていた時とは違い、そして、北郷 一刀と暮らしていた時と同じように。
 何もなければ、月は田舎で過ごしているはずの時間。それが消えてしまっても、一刀と共にいた彼女は笑っていたように。
 霞や恋なども、洛陽の城にいた頃のように、いや、さらに優しく月や詠に接してくれていた。この写真にはそれが如実に表れている。
「これも、あのちんこのおかげか……」
 そして、彼女もこっそりと笑みを浮かべていた。それは、詠にとっても喜ばしいことだから。
303 名前:この新たなる世界で……@エロ本[sage] 投稿日:2007/05/30(水) 01:06:49 ID:HQJgGGBG0
 彼がこの外史に何を願ったのかは分からない。だが、彼の願ったことの一部はこの写真に月が書き込んでいた。
『皆、笑顔の世界で……』

                         −了ー

 こんなFD希望……という事で、写真ネタ3作でした。
 ちなみに、カメラも3作+αで全部変えてあります。
 最後に……今まで読んでくれてありがとう……orz(←違うけど土下座)

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