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172 名前:羊 叔子[sage] 投稿日:2007/05/13(日) 12:14:19 ID:L3M5pU4U0
比較的過疎なので仕上がったSS投下したいと思います。
また長文ですがよろしくお願いします。


どうやらどの世界でも性根の腐った奴はいるものだな。
弱気を助け、悪者を挫くのが強き者の使命だというものを、
奴は逆に弱者に対して何か金子でも恐喝しているようだ。
都合がいいことにここは路地裏。
変身中に誰かに見つけられることはまず無いだろう。
それでは今日も行くとするか。
この世の弱きを守るため、
正義の使者として華々しく舞う美々しき蝶
華蝶仮面となって----
173 名前:羊 叔子[sage] 投稿日:2007/05/13(日) 12:15:19 ID:L3M5pU4U0
「一刀様、大変です!!」
そう大声で呼ぶ愛紗の声はただ事ではないことを予感させた。
「一体何がおこったんだ?」
「先程、近くの路地裏で我が校の生徒が隣の男子校の生徒に」
「恐喝でもされたのか?あの学校ガラ悪いからな〜」
「言いたいことはそこではありません!確かに恐喝はあるまじき行為ですが」
「じゃあ何?」
「簡単に申し上げると、この世界でもあやつが現れました」
「・・誰?」
「華蝶仮面です」
「何だって?」
そういえば星は部活にも入らなかったし、
授業が終わるとそそくさとどこかに行ってしまう。
何やってるのかと思えば、こっちでも華蝶仮面をやっていたのか。
「まぁ別に放っておけば良いんじゃないか?俺たちはもう施政者じゃないんだし」
「それはそうですが、あちらでもそうだったようにこちらの秩序を乱されてはいても経ってもいられません。しかも、聞くところによれば奴は我が校の生徒だという噂も立っております。私が所属している風紀委員の委員長も奴の存在に遺憾の意を表しておりました。それに」
「それに?」
「奴とは、1度決着を着けておかなければいけないと思っていたところです。早速現場に行きましょう」
風紀委員の使命+武将としての血が愛紗を駆り立てているようだ。
こうなった愛紗は止められない。
結局俺は愛紗に引きずられ華蝶仮面捜索を手伝わされることとなった。
174 名前:羊 叔子[sage] 投稿日:2007/05/13(日) 12:16:11 ID:L3M5pU4U0
「一刀様、あれを」
現場に着くとそこに隣校の制服を着た茶髪のニイちゃんがのびていた。
たぶんこいつが俺の高校の子を恐喝していた奴だろう。
とりあえず、こいつを起こさなければ情報も入らない。
水をぶっかけて起こすとするか。
175 名前:羊 叔子[sage] 投稿日:2007/05/13(日) 12:24:10 ID:L3M5pU4U0
「もしもし、大丈夫か〜」
俺はニイちゃんに水をぶっかけて、むりやり意識を起こさせた。
「う〜ん、一体何が起こったんだ?」
「それはこちらが聞きたいことだな。こちらに変な仮面をかぶった奴を見なかったか」
「変な仮面・・ひぃぃ」
記憶がフラッシュバックしたんだろう。
みるみるうちにニイちゃんは怯え丸くなっていく。
果ては「もうしません、もうしませんから」とまでつぶやいている。
176 名前:羊 叔子[sage] 投稿日:2007/05/13(日) 12:24:57 ID:L3M5pU4U0
「状況を詳しく話してくれるか?」
一応落ち着いたニイちゃんに問いかけてみる。
「い、今起こったことをありのままに話すぜ。俺は確かにお前の学校の奴を脅していた。
そしたらいきなり仮面をかぶった女が生意気にも口を出してきた。
だから俺様は力の差を思い知らせて黙らせてやろうと思ったら
逆にボコボコにやられてしまった。信じられない強さだったぜ。
空手とか剣道とかちゃっちじゃものじゃねえ、恐ろしいモノの片鱗を味わったぜ・・・」
「で、そいつはどこ行ったかわかるかい?」
「たしかあっちだと思うが。忠告する。奴に挑むのはやめておいたほうがいいぜ」
「あ、ありがとう。」
とりあえず、華蝶仮面の行った方角はわかった。
177 名前:羊 叔子[sage] 投稿日:2007/05/13(日) 12:25:56 ID:L3M5pU4U0
「いませんね、一体どこに行ったのでしょうか?」
捜索を続けて1時間。未だ華蝶仮面には会えないでいた。
周辺の表街を細かく捜索し、人にも尋ねてみたが、
華蝶仮面を見つけるどころか見かけた人もいないようだ。
・・切羽詰ってしまった。
「う〜ん、もし愛紗が華蝶仮面をやっているとしたら今頃どこにいると思う?」
「私はそんなことしません!しかし、そういう輩は得てして隠れるもの。ですから、あ!」
「そうか!」
そうだ、なんで気づかなかったんだろう。
ヒーローってのは退場した後は身を隠すものだ。
としたら、裏道にいる可能性が高い。
よくよく考えたらいくら星とはいえ仮面をつけたまま不必要に人前に出ないもんな。
表街を捜してもみつからないわけだ。
「愛紗、裏道をしらみつぶしに探そう」
「ええ、行きましょう」
178 名前:羊 叔子[sage] 投稿日:2007/05/13(日) 12:34:09 ID:L3M5pU4U0
「ほう、この私を見つけるとはなかなかなものだ」
とうとう俺たちは華蝶仮面を見つけた。
そんな俺たちに華蝶仮面が感心したようにそう言った。
「そんなことはどうでもよい。
なぜお前までこの世界にいるのか問いたいものだな」
「ふ、いるのだからいるのであろう。それ以上も以下も無い。
それより、貴公らがなにゆえ私を探しているのかが腑に落ちないがな」
「お前が動くことによって我が風紀委員会は迷惑している。それに加えてあちらでは私は貴様に苦渋を舐めさせられた。あの落とし前をつけようと思ってな。その仮面、今日という今日こそ剥ぎ取らせてもらうぞ!!」
「取れるものなら、取ってみな!」
と、両者はそう言い合うと早々に勝負を始めてしまった。
179 名前:羊 叔子[sage] 投稿日:2007/05/13(日) 12:34:57 ID:L3M5pU4U0
彼女たちの打ち合いは凄惨極まるものだった。
愛紗の重い一撃を華蝶仮面が華麗にかわし、華蝶仮面の鋭い突きを愛紗が受け止める。
一閃、鍔迫り合いが起きたと思えば、次の瞬間では互いに素早く後ろに飛んで間合いを取る。
打ち出される木刀の速さはおろか、彼女たちのフットワーク、技術、体力はやはり常識を超えている
真剣じゃないにせよ、ものすごい迫力だ。
金取れるぞ。この試合。
と、そんなことを思っていると
「あっ・・」
華蝶仮面の足元にある拳大の石が華蝶仮面を躓かせた。
同時に
「覚悟〜!!」
と、愛紗が猛々しく木刀を振り下げる。
----その時、俺は何を考えていたんだろうな。
自分でも分からない。
俺は愛紗と華蝶仮面の間に割って入っていた。
ごん、と頭に鈍い音がする。
・・ああ、目の前にお花畑が見えるぞ。
逝ってしまう前にこれだけは言っておかなければ。
「華・・面、逃げ・・・」
ばたっ。
180 名前:羊 叔子[sage] 投稿日:2007/05/13(日) 12:35:41 ID:L3M5pU4U0
「一刀様、大丈夫ですか?」
「まったく、一刀殿も無茶なさる」
ぼんやりと意識が起きた俺にだれかが心配そうに問いかける。
ええと、ここはお花畑。
じゃなくていつのまにか俺の部屋になっていた。
「う〜ん、愛紗と・・・星か?」
「はい、大丈夫ですか?」
「ああ、愛紗たちが運んでくれたのか?」
「はい。道中星に会いましたゆえ二人で交互におぶりながらお運びしました」
むう、女の子におぶされる俺、ちょっと恥ずかしいぞ。
「それにしても一刀様」
「なにかな?」
「なぜあの時華蝶仮面を庇われたのか、ご説明いただきたい。もう一歩というところで、奴を討ち取れたというものでしたのに」
「あ〜、あれね。え〜と、向こうにいた時もそうだったけど華蝶仮面も一応悪い奴じゃなさそうだし、そもそも、ああいう不慮の事故なんかで決着を着けたいとは、愛紗自身も思ってないだろ?あたた・・頭が」
「それは・・そうですね。まだ痛みますか?お薬を買ってきますゆえ少々お待ちください。星、一刀様の看病を頼む」
「承知した」
そう言うと、愛紗は近くの薬局まで薬を買いに行った。
181 名前:羊 叔子[sage] 投稿日:2007/05/13(日) 12:46:00 ID:L3M5pU4U0
愛紗が薬を買ってきてくれる間、しばらく俺と星の間に沈黙の空気が流れていた。
そんな空気の下、ふと星が口を開いた。
「一刀殿、申し訳ない。私の不覚ゆえにこんなことになってしまって」
「いや、いいんだよ。星が無事なら」
「一刀殿・・・ありがとうございます。ところで一つ問うてもよろしいか?」
「ん?」
「私を庇われた本当の理由をお聞かせ願いたい」
そう問いかける星の顔は真剣そのものだった。
「あぁ、愛紗にはああ言ったけど本当は自分でもなんであんなことしたのかはっきりとわからないんだ。それこそさっき愛紗に言ったようなことが理由になっていたかもしれない。でも、今思えばもう一つ無意識に考えた事があるように思うんだ」
「ほう、それは?」
「華蝶仮面ってのは星が向こうの世界からやってきたことなんだろ。だから華蝶仮面はこの世界ではない、向こうの世界としての星自身だと思うんだ。ゆえに星から華蝶仮面という一面がなくなってしまったら、向こうにいたときの星がいなくなっていくような気がしてね」
「一刀殿・・」
「もちろん、華蝶仮面がなくなっても星は星だっただろうし、なにも変わらないだろう。でも、なぜか俺はそう思ってしまって。おかしいよな」
自嘲した俺に、今度は優しい笑みを返してくれた。
「・・いいえ、一刀殿のお心、重々嬉しゅうございます。一刀殿にはまたしても借りができてしまいましたな」
「またしても?ああ、星が向こうで華蝶仮面やってて、俺が人質になったときに貸したんだっけ。あのときの返しは・・」
「左様、だからあの時と同様に・・」
「わわっ星!?」
意地悪に笑う星は俺と唇を重ねようとする
その時、
「遅くなって申し訳ございません。お薬を買ってまいりました」
と、愛紗の声が聞こえると同時にノックを数回し、彼女は入って来た。
ぎりぎりで俺たちは顔を離した。
「お、おかえり愛紗。早かったね」
「一刀様のお怪我ですから、全速力で行って参りました。ところで星よ、一刀様の容態に何か変わりは無かったか?」
「ああ、変わりは無かったぞ。逆にいつもどおりの一刀殿になされたようだ。ふふ」
「・・なにか含みのある言い方だな。まぁいい、一刀様、お薬です」
「う、うん。ありがとう」
この後、愛紗と星は暗くなるまで看病してくれた。
182 名前:羊 叔子[sage] 投稿日:2007/05/13(日) 12:47:23 ID:L3M5pU4U0
「では、今日は十分静養なさるように。」
愛紗と星は俺が十分回復したのを見て、お暇することになった。
「愛紗も星もこんな時間まで看病してくれてありがとな」
「いえ、もともとは私が無理矢理一刀様を引きずって華蝶仮面を追おうとしたしたばかりにこういうことになってしまったのですから」
「はは、そんなに気負わなくていいよ。じゃ、愛紗、星、また明日ね。」
「はい。また明日」
2人はそう言って俺の部屋から出て行こうとする。
それにしても惜しいことをしたな。
もしあの時愛紗がタイミングよく帰って来てなかったら・・
と、そんなことを思っていると星はこちらを振り返って
「借りはまたいずれ返しますゆえ」
と俺に聞こえるかどうかの小声で言い、颯爽と自宅へ戻って行った。

183 名前:羊 叔子[sage] 投稿日:2007/05/13(日) 12:55:07 ID:L3M5pU4U0
今回は星中心で書いてみました。
他のキャラも今後書いてみようかなと思います。
どのキャラを書こうかな?
それとも、三国時代を舞台としたSSを書こうかな?
・・愚痴でした。すみません。

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