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110 名前:変わりゆく物、変わらぬ物@エロ本[sage] 投稿日:2007/05/02(水) 01:01:31 ID:ocbn3x3M0
 どうも、エロ本の人です。小ネタを投下します。
 今回はちょっと特殊なため名前を付けさせていただきます。
 なお、終わりには〜了〜を付けますので。



 それを手に入れたのは、単なる偶然だったのだろう。
「カメラか……」
 友人からもらった少し古いポラロイドカメラ。型が一昔前の物のようで、随分と汚れていたりする。
「とは言っても、俺にはそんな趣味はないんだけどな〜」
 及川にでも渡せば、きっと面白い反応が返ってくるだろう。だが、彼はそんな気にもなれない。
「……そういえば」
 そこで、彼は一つある事を思いついていた。
111 名前:変わりゆく物、変わらぬ物@エロ本[sage] 投稿日:2007/05/02(水) 01:05:53 ID:ocbn3x3M0
 一刀がその話を彼女たちに持ちかけたのは、授業も終わり、皆が外で集まっている時だった。
「集合写真?」
 ここ、フランチェスカ校内で愛紗が疑問の声を上げた。隣の鈴々と朱里、翠も意味が分からないらしく目を丸くしていたりする。
「ああっ、まだ撮ったことが無いなって思って……」
 彼らがこの外史に来てから、まだそんなに日が経っていない。だからこそ、そんな機会がなかったのかもしれない。
「というか、『しゃしん』とは何ですか?」
「あっ……」
 この世界の常識をまだよく知らない愛紗達にはまずそこから話さなければいけないらしい。
「えっと……」
 どうすれば話せるのか?
 構造や仕組み云々を言っても、おそらく、主に翠が理解できないだろう。それ以前に一刀自身もそんなに仕組みについては詳しくなどない。
「ん〜」
 だからと言って、いい加減な事を言えば、矛盾点に朱里や星が食いついてくるだろう。少なくても一刀にそれを対処するほどの頭脳は備わってなどいない。
 だから、彼はぼやかすことにした。
「思い出を形にする機械かな?」
 歯が浮くような、恥ずかしい台詞で。
112 名前:変わりゆく物、変わらぬ物@エロ本[sage] 投稿日:2007/05/02(水) 01:10:06 ID:ocbn3x3M0
 その後、小1時間ほど一刀が頭を壁に打ちつけた後、彼女らは木を背景に並び始めた。彼女たちの服は、あの外史で着ていたものと同じだ。朱里以外に至っては、武器まで持ち出している。
「……何で、武器を持っていやがりますのですか?皆さん?」
「朱里が『しゃしん』なるものは魂を抜かれる危険性があると……」
「いや、それは江戸時代の逸話だし……」
 その話を朱里がどこで聞いたのかは定かではない。
「いざとなったら、あたし達が守ってやるよ、ご主人さま。そして、思い出をつかみ取ろうぜ」
「人の話を聞けよ……」
 翠はカメラと合戦でもして、思い出を勝ち取るものだと勘違いしているのだろう。準備体操がわりに槍を振り回して、いつでも準備万端という感じだ。
「言っとくが、写真に危険性はない。だから、安心してくれ」
「本当なのだ?」
「大丈
夫なんですか?ご主人さま」
 鈴々、朱里も完璧に勘違いをしている模様だ。
「本当だって!論より証拠!」
 とりあえず、このままだと話が進みそうにないため、実践しようとするも、結局その説明に30分ほど掛けたのはまた別の話である。
113 名前:変わりゆく物、変わらぬ物@エロ本[sage] 投稿日:2007/05/02(水) 01:15:06 ID:ocbn3x3M0
「お〜い、星。もう少し右に寄ってくれ〜」
「ふむ……わかった」
「紫苑、もう少し寄ってくれ」
「わかりましたわ」
 説得に疲れ果てた体を引きずりながら、一刀は彼女たちに指示を送る。まだ、未だに愛紗や鈴々、翠は武器を構えているが、それでも写真を撮るのには影響はないだろう。
「じゃあ撮るぞ!」
 そして、準備ができた処で、一刀はシャッターをセットして、急いで自分の配置につく。
「……いくぞ」
「いつでも来いよ!」
「我が主の魂、とれるものなら」
「とってみるのだー!」
そして、未だに朱里に話を信じ意気込んだ瞬間、

カチャ

「「「うわぁぁぁぁぁぁ!」」」
 フラッシュに腰を抜かす3人であった。
114 名前:変わりゆく物、変わらぬ物@エロ本[sage] 投稿日:2007/05/02(水) 01:19:57 ID:ocbn3x3M0
「お、お兄ちゃ〜ん」
「ご、ご主人さま〜」
「ほら、鈴々、翠。大丈夫だって言ったろ」
 未だに腰を抜かしつつ半泣きになって、膝に縋りついている鈴々と翠を宥めつつ、出来上がった写真を急いで取りに行く骨董品とはいえ、撮った写真がすぐに現像されるのは、このカメラの特徴だ。
「おっ、撮れてる撮れてる」
 そこにあるのは、間違いなく今とった光景だ。
 鈴々と翠、愛紗は腰を抜かして、その傍目で紫苑が慣れているのか、口に手を当てながら笑っていたりする。星は相変わらずの不敵な笑みを浮かべて、朱里はフラッシュの眩しさに目を瞑っている。
「おお〜、これは凄いものですな」
「はわわ……私、目を瞑っちゃってます」
「こ、これはまた面妖なる機械ですね」
「翠は腰を抜かしているのだ」
「なろー!鈴々だって同じじゃねえかよ!」
「あらあら……」
 各々の感想に盛り上がる愛紗達。だが、そこにあるのは紛れもなく、あの時から変わらない皆。
「……」
「どうしました?ご主人さま」
「いや、変わってないなと思って……」
 この外史に来てからも、彼女たちの居るこの光景は変わっていない。確かに慣れないこともあるが、それでも一緒に居られる光景。
 それが、この写真なのかもしれない。
「ご主人さま!もう一回やり直させてくれよ!」
「鈴々もやり直したいのだー!」
 後ろでは、相変わらずの声。
 そして、一刀はもう一つだけ思いついたことがあった。
「分かった。でもさ、やり直しに少し提案があるんだけど……」
115 名前:変わりゆく物、変わらぬ物@エロ本[sage] 投稿日:2007/05/02(水) 01:25:02 ID:ocbn3x3M0
 後日。
 北郷 一刀の部屋にあるアルバムには二つの写真が入っていた。
 一つは、初めて撮った写真。みんなそれぞれがあの頃と変わらない写真。
 そして、もう一つは対照的に皆が制服に着替えて並んで撮っている写真であった。
 そこにあるのは、ただ、二つ。

 このフランチェスカの世界で変わりゆく物、そして、決して変わらぬもの。

                     〜了〜


 『写真』をテーマにした蜀サイドの話でした。
 少し、ちんこが違うような気がしますが多めに見てください。

 最後に……同じテーマでほかの軍を描くかもしれないからごめんね……orz

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