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53 名前:白[sage] 投稿日:2007/04/26(木) 20:18:16 ID:W8UIXDqt0
妄想伝に送ったSSだけど、今見直したら粗すぎるやら短いやら(;´Д`)
ちょっと手を入れてこっちに投下してみまふ
54 名前:1/3[sage] 投稿日:2007/04/26(木) 20:18:57 ID:W8UIXDqt0
退屈だ。
校舎を抜け出し、舗装された道を横目に細い坂道を登って行く。
お世辞にも通行に向いているとは言えない道であるが、抜けた先には小さな池と
それを囲むようにして古めかしいベンチが並んでいた。
最近見つけた、お気に入りの場所。
静かで誰にも邪魔されない。華雄はそこが気に入っていた。
時に出くわす呂布も今のところは見当たらない。華雄はいつものベンチに横になる。
緩やかな木漏れ日と青い空、白い雲。
ゆっくりと目を閉じ、波立った心を落ち着かせようとする。
外史。
貂蝉、そして北郷から聞かされたこの世界の話。
そして関羽に斬られたはずの自分がこうしてここにいる理由。
不満はない。
一度は死んだ身、それどころか己があの関羽や曹操と同じく
この物語の演者として「選ばれた」という事はむしろ誇るべきとさえ思う。
ふと目を開き体を起こす。そうじゃない、と呟く。
今華雄の心にあるのはすでに起きてしまった事ではない。
風が木々の間をすり抜けていく。
どうやらこんな穏やかな世界でも染着いた癖は抜けないらしい。
無意識に、敵を探している。
かつての世界では生き延びる為に必要な……敵を、殺気を捉える感覚。
己の最期が戦場だったことも影響しているのかもしれない。
今はあの時以上に研ぎ澄まされているような奇妙な感覚を覚える。
そしてその感覚が告げる――敵は、いない。
55 名前:2/3[sage] 投稿日:2007/04/26(木) 20:19:35 ID:W8UIXDqt0
ただ華雄の胸にあるのは戦の日々。
一瞬のうちに散る命、閃く刃の輝き、雄叫びと、悲鳴。
確かに己がいた世界。
私はそこに、敵を殺し、矢傷に死ぬだけの覚悟を以って身を置いたのではなかったか。
武人としての華雄はただ、己が存在する確かな実感を求めていた。
ふらりと街に出る。賑わうそこは、かつての洛陽を思い起こさせる。
こうした暮しはいつの時代も変わらない。そんな喧騒を横目に華雄はあてもなく街を彷徨った。
赤信号で足止めに合う……こんな些細な事でやり場のない苛立ちが強まる。
ウィンドゥに映る華雄の目は、まるで飢えた狼。
気がつけば雑居ビルの並ぶ寂れた街外れまで来ていた。
敵を求める感覚が足を向けさせたのかもしれない。
ふと目をやると、まるで道を阻むように転がるゴミバケツ。
華雄は苛立ちにまかせてそれを蹴り飛ばす。
空のバケツは軽々と跳ね、派手な音を立てて裏路地に吸い込まれる。
そしてそのまま通り過ぎようとする華雄に後ろから掛かる声。
56 名前:3/3[sage] 投稿日:2007/04/26(木) 20:25:16 ID:W8UIXDqt0
敵か。華雄は振り返り瞬時に相手を見定める。男が三人、いずれも丸腰。
男達は制服のままの華雄を見て、家出をした不良少女か何かのように思ったのだろう。
ろくに警戒もせずべらべらと何かを話している。
その様子に、すぐに華雄は相手にもならないと判断する。
所詮丸腰では黄巾くずれの賊程にも恐れるものではない。溜息をつき、背を向け立ち去ろうとする。
すると男達は怒声を響かせながら華雄の進路を阻む。
三人のリーダー格であろう男がまくしたて、唾が華雄の顔に飛ぶ。
何かが、切れる。
華雄が二人を地面に寝かせる頃には、相手の仲間が駆けてきた。
騒ぎを聞きつけたのだろうか? なかにはバットを持っている者もいる。
だが、構う事はない――そのまま三人目を叩き伏せる。四人目は、華雄の左後ろ。
華雄の感覚は敵の動きを正確に捉え、少女とは思えぬ力で打ちのめす。
この時華雄はかすかに、だが確かに己の存在を実感していた。
立っている者が居なくなった頃には、華雄は幾分か落ち着きを取り戻していた。
地面に転がる、十数名。立ち去ろうとする華雄に、再び声が掛かる。
どうやら先程のリーダー格の男らしい。
さぞ黄色の巾が似合うだろうその男からは意外な言葉が発せられた。
「姐御と呼ばせてくだせぇ」
これは、華雄が地域一円を統一するまでの物語の突端である。
57 名前:白[sage] 投稿日:2007/04/26(木) 20:27:26 ID:W8UIXDqt0
終です(短ッ
それでも3連投で規制かかるんだねココ(´・ω・`)
その後の一枚です
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