某日某所
薄暗い寺院に怒声がこだまする。
「くそっ北郷め!」
「こちらは銅鏡の修復でクソ忙しいというのに、元凶のあいつは毎日毎日女共といちゃついているだと!?ふざけるなっ!!」
「あいつだけは絶対に許さん、考えうる限りの苦痛を与えて惨たらしく殺してやる・・・!!」
左慈は怒鳴る事で怒りを発散出来たのか、少し落ち着きを取り戻す。
「ふぅ、苛々していてもしょうがない。銅鏡の修復に集中するか・・・」
覗き道具(無断借用)を片付け、作業に戻ろうとするが、
ぐうぅ〜
「そういえば朝から何も食っていなかったな。干吉にでも用意させるか・・」
「干吉!!腹が減った、何か食い物を持って来い!!」
暗がりの奥に声をかけるが反応はない。
「おいっ返事をしろっ!干吉!!」
・・・・・・・
「チッ、あのゲイ野郎何してやがるっ・・・」
怒りをあらわに立ち上がろうとした瞬間、左慈の背後から鋭い風切音がきこえた。
「っ!?」
咄嗟に床に転がり回避し、その勢いを利用し起き上がる。
そのままバックステップで後退し、音の発生源を見る。
「(・・・なんだこいつは?)」
そこには全身を黒装束に包み、顔を仮面で隠した巨漢が立っていた。
「貴様、何者だ。此処に何のようがある?」
問いかけるが返ってきたのは沈黙だった。
「(くそっ!、なんなんだこいつは。寺院には結界を張ってある、侵入者が居ればすぐに気づくはずだ。こちらの探知を掻い潜り、背後につかれ、攻撃されるまで気配を感じさせない高度な隠密性。身のこなし、さっきの攻撃、
たぶん蹴りだろうが俺と同じくらいの鋭さだった。おそらく戦闘技能も俺と同等かそれ以上。)」
「(戦おうにも一人では厄介だな。干吉が来るまでなんとかもたせられるか・・?)」