[戻る] []

595 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2007/03/16(金) 00:11:58 ID:L18nPr6n0
 という事で、さらに流れも読まずに短編投下。
 なお、作者はハムが嫌いなわけではありませんので……。あと、終わりには〜完〜をつけます。


 この外史での生活が始まってから、早2ヶ月が経とうとしていた。
 もう、この外史に慣れたかというと、まだ、不自由があるものの生活には困らないといった程度だ。
 そして、公孫賛 珀桂もその1人だ。彼女が今やっていることは、
「いらっしゃいませ!」
とりあえず、生活資金を稼ぐ為のレストランでのバイトであった。
596 名前:ハム子の現代生活大予想[sage] 投稿日:2007/03/16(金) 00:16:42 ID:L18nPr6n0
「でも、世の中不公平だよな。曹操や孫権の奴はとっくに定住してるってのに」
 彼女がそう呟くのももっともな事だ。
 同じ境遇の孫権(正確には孫策冥琳コンビ)や曹操は、地上げやらネット株取引やらで大もうけし、今では自分の家を持つまでに成長していたりする。
 しかし、珀桂は未だにそのような資金を得ることも無く、ただアルバイトによって、日々の生活費と学費を何とか養っている生活だ。
 しかし、ここでのアルバイトを始めたのはほんの一週間前で、まだ、着慣れない水色のエプロンにお世話になっていたりする。
「しかし、本当に大変だよな……」
 そう言いながらも彼女は食器を下げ、テーブルを布巾で拭く。手馴れた手順でも掛かる労働力は同じだ。
「肩こったな〜」
 すると、再び来客を示すベルが音を鳴らす。
「いらっしゃいませ」
「あっ!珀桂じゃないか!」
「おっ!本当だ!」
 同時に聞こえてきたのは、彼女も聞きなれた声。
「おお、北郷に馬超じゃないか!」
 そう、それは彼女と同じ境遇の1人である翠と、その全ての始まりとなった一刀の姿であった。
597 名前:ハム子の現代生活大予想[sage] 投稿日:2007/03/16(金) 00:20:40 ID:L18nPr6n0
「ご注文は?」
「とりあえず、ミートソーススパゲッティーを」
「あたしは、この『かるぼなーら』ってやつを……」
 どうやら、翠はカルボナーラをまだ知らないようだ。
「ほいきた」
 そうすると、珀桂は厨房にいる係に注文表を渡す。そして、再びテーブルを拭く作業へと戻った。
「しかし、珀桂がここでバイトしてるとな……確かコンビニだと思ってたんだけど……」
「あれ?ご主人様はそう聞いたのか?あたしは本屋だって聞いたぞ?」
 しかし、その言葉を聞いた瞬間、珀桂の手は震えだしていた。同時に彼女の目尻から涙が零れてくる。
「お、おい、どうした?」
「確かに本屋もコンビニもバイトしてたけど……クビになった」
「……」
 その言葉を聞くと、2人は何も言うことが出来なくなる。
「最初はコンビニだったけどさ、その後にその大元の会社の株が買い占められて経営陣が入れ替わったからって……そのいざこざの中で潰れて……」
(そういえば、華琳がコンビニ業界の株を買い占めたとか言ってたな……)
 なお、そのコンビニの内の一つが公孫賛のバイト先である事を彼らは知らない。
「次の本屋はさ、真面目にやってたんだけど、馬鹿な客が立ち読みした後、いきなり変態行為をしやがって、それで評判が落ちてさ、経営難で、バイトを全員解雇されて……」
(そりゃ、穏だな)
 彼女の知的興奮は何度か問題になったと言われている。まぁ、周瑜たちが動いた関係で大っぴらにはなっていないが。
「大変だな」
「いいよ、同情なんて……」
 さすがの彼女もこれには参ったらしく、その横顔には疲れと悲しみが満ち溢れている。
「……え〜っと……」
 翠はかける言葉が無いのか、頬をぽりぽりと掻きながら、目線をあわせようとしない。どうやら、彼女は珀桂よりも華琳や穏と親しい分、事情を知っているらしい。
「まぁ、ここで頑張れば良いじゃないか!」
「そ、そうだぜ。全く……あはは……」
 もう少しマシな励まし方は無いのかと二人は模索するものの、良い案が浮かばないらしい。
「まぁ、オレだって頑張るよ……」
 しかし、そんな屈強にも負けない彼女の顔がそこにあったのは言うまでもない。
598 名前:ハム子の現代生活大予想[sage] 投稿日:2007/03/16(金) 00:25:29 ID:L18nPr6n0
 そして、十数分後、珀桂はお盆に熱々のスパゲッティー二つを乗せて、歩いてくる。
「ほい、ミートソースとカルボナーラ、お待ちどうさま」
 そして、それをテーブルに置くと、その瞬間に再び来客を知らせるベルと……。
「おーっほっほっほっほ」
既に彼女達には聞きなれた高笑いが聞こえてきた。
「げぇ!袁紹!」
 そこにいたのは、袁紹をトップとする6人組であった。
「あら、珀桂さんじゃありませんの?」
「おっ、ホントだ、ウィーっす!」
「あぅぅ……文ちゃん……」
「というか、何故高笑いをする……」
「まぁ、秋蘭さま、そんなのは気にしないで早く食べましょうよ〜」
「しかし、お前の言う美味い店ここなのか?季衣」
「はい〜、それだけじゃなくて、大食い挑戦もあるんですよ〜」
 明らかにめちゃくちゃな6人組であるが、それを見ると、彼女はゆっくりと後ずさっていく。
「珀桂……」
 ゆっくりと一刀はそのまま珀桂の肩に手をのせる。この後に起こることは容易に想像できるからであろう。翠に至っては、もはや考えるのが嫌になったのか、それとも彼女の不幸に目も当てられなくなったのか、目の前のカルボナーラを箸で食べていたりする。
「がんばれ……」
「ああ……」
 そんな返事をする中、彼女の涙は頬を伝っていた。
599 名前:ハム子の現代生活大予想[sage] 投稿日:2007/03/16(金) 00:27:37 ID:L18nPr6n0
 翌日、珀桂のアルバイト先のレストランは潰れていた。理由は経営難であるらしい。
 その日、無料就職情報誌を何冊も鞄に入れている珀桂が目撃されたのは別の話。
                         〜完〜

 最初は小ネタのつもりだったが、いつの間にか長くなっていた。
 ハム子が嫌いなわけではない。

 最後に……全国のハムファンを敵に回してごめんね……orz

 [戻る] [上へ]