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531 名前:詩歌侘/一刀[sage] 投稿日:2007/03/13(火) 04:22:55 ID:SroQDsd40
時の記憶の中に浮かぶ、二人過こしてきた日々が薄れていく。
いつか、愛紗と過ごした時間。
傍にみんながいた世界。
笑顔と共に、幾重にも折り重なった犠牲と想いと理想の上に立つ現実。
戦い抜いた果てに、少女たちが手にした笑顔。
その思い出が白く霞み、深い闇に覆われていく。
抗えない忘却は痛みにも似て。
俺の心は千々に引き裂かれ、涙が止め処なく溢れていく。
零れ落ちる雫。
しかし、それすらも外史の世界には届かず消える。

『消えないで! 約束したのに……この手を離さないって!』

愛しい少女の声が聞こえる。
でも、届かない。
伸ばした手が、彼女の許に届かない。
それでも俺は強く、指を絡ませるように愛しい少女を求める。
だから、想いを込めて詠う。
久遠を願う詩のように、その少女の名を。

『――――!』
532 名前:詩歌侘/愛紗[sage] 投稿日:2007/03/13(火) 04:24:01 ID:SroQDsd40
時を霞ませてく運命。
抗えないと突きつけられる現実に、私の心が折れそうになる。
一人濡れた瞳伏せて、唇を噛む。
ご主人様が行ってしまう。 
なのに、私の心は痛みに悲鳴を上げるだけ。
離れていく絆が、胸の奥にきつく爪を立てる。
狂おしいほどの痛みが、奥底深くまで私を壊す。 
誇りなんて、要らない。
理想よりも大切なものを、私はもう見つけてしまったから。
それを、消えていくあの人がくれたから。
だから私は手を伸ばす。
涙でくしゃくしゃの顔を拭うこともせず、みっともなく女を曝け出す。

『愛してる』

この声を届ける風よ吹け、あの人へ。
そう願いながら、私はありったけの声で愛しいあの人に呼びかける。
捨てられないあの時の誓いを胸に、私はあの人を想う。 
遥か彼方に広がる空を見上げて、語り合った理想は遥か。
千代を共に駆けると詠った言葉。
それは、いつしか私の理想をも越えてそこに存在した誓い。
片時も離れることなく共に在る。
それこそが、私が理想の向こう側に願った未来。
だから、私は叫ぶ。
愛を貫く、私だけの歌を。
533 名前:詩歌侘/終端[sage] 投稿日:2007/03/13(火) 04:26:23 ID:SroQDsd40
『消えないで……約束したのに!この手を離さないで!」

伸ばした手。
それがゆっくりと触れて、二人の想いが繋がる。
強く指を絡ませて、二人は“あなた”を求める。

そして、その名を呼んだ。
まるで想いを込めて詠う、久遠を願う詩のように。
千代に八千代に詠う、愛を貫く詩のように。

『一刀さま……っ!』

『愛紗……っ!』

届いた想い。
そして、視界を灼くような白光が世界を包み込んだ。
愛する二人を祝福するように。
そして、裁き難い罪を咎めるように。

それでも、二人は絡めた指をほどかない。
恋姫の想いは千里を越えて、確かにそこに在る。
そして、その想いは新たな世界を紡ぎ出す。

まだ見ぬ思い出を詠うように。
534 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2007/03/13(火) 04:40:05 ID:SroQDsd40
『久遠〜詩歌侘〜』が気に入りすぎたので徹底的に歌詞を流用して
終端部分をSS化してみた

やっちまった感はあるが、俺は絶対に後悔しない
…と思う

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