- 109 名前:華琳と星 1/5[sage] 投稿日:2007/02/25(日) 22:51:17 ID:27WoMbRF0
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曹操から趙雲へ酒席の誘いが来たのは、南方の乱より帰還した北郷軍にも弛緩した空気が訪れた頃だ。
遠征を終えた兵達の多くには休暇を与え、自身は槍で片付かぬ後処理に溜息をつく。
そんな折であったから、趙雲に出席を断る理由はなかった。
忙しないからこそこうした席は楽しむものであるし、曹操の酒は以前よりの約束である。
しかし……、と想像の中にまで出て来て小言を始めようとする愛紗を軽く追い払い、指定の東屋へ向かう。
「ふむ、遅れましたかな?」
燭台の明かりに照らされたかつての魏王、曹操へ趙雲は一礼する。
物思いにでも耽っていたのか、彼女は超雲の声で初めて存在に気付いたかのようにまばたきをする。
身振りで座るよう促すと夜空の月へ目をやり、眉を寄せうーんと唸る。
「……少し早すぎかしらね。 まだ、月が城楼に半分隠れているもの」
「ああ、それは残念ですな」
「ふふ、飲んでいるうちに見頃にもなるでしょう」
据付の卓に並ぶのは、いかにも彼女が好みそうな手のかかった食材と器。
酒器も趙雲の愛用する徳利と猪口とは違い豪奢なものだ。この酒盃は確か爵とか言うのだったか…?
そして、整えられている食器の数と酒盃の数は間違いなく2人分。
「今宵は差し向かいですか」
確かに鈴々や翠も参加するような宴会を想像していたわけではないが、不意を突かれた気がする。
自分と曹操は仲が悪いわけではないが、特に親交が深いというわけでもない。
趙子竜とは度を越した厚遇に物怖じする人間でこそないが、なにせ相手は元魏王。
ただ飲んで食べてごちそうさまと帰してはもらえまいな、と内心苦笑が漏れる。
「あら、取って食べたりはしないわよ?」
「……む。そんな顔をしておりましたか」
「……そうね。カマかけにさえ乗らなければ、きっと分からなかったと思うわ」
そう言って笑う曹操に、今度こそ隠さずにむぅと口を尖らせる趙雲だった。
- 111 名前:華琳と星 2/5[sage] 投稿日:2007/02/25(日) 22:52:38 ID:27WoMbRF0
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「ふふ。変に身構えて欲しくなかったのは本当なのよ?」
「……それにしては趣味がよろしくない」
「はいはい、機嫌を直して乾杯といきましょうか」
「…文字通りの無礼講、ですな?」
超雲の皮肉に笑いながら頷き、曹孟徳自らが片口を手に酌をして来る。
近年では北郷一刀以来の名誉となる事なのではあるが、一杯食わされた趙雲としては面白いはずがない。
かくなれば痛飲するのみと多少乱暴に杯を打ち合わせ、2人の酒宴が始まる事となった。
「…っ、ふ…。まさに甘露!」
趙雲は、一息に干した杯を力強く卓に叩き付ける。
「あらあら。 趙子竜の酒豪ぶりは噂以上なのね?」
彼女の口元から僅かに流れ落ちる酒を見付け、曹操は苦笑する。
「はいもう一献」
気負い無く趙雲へ酌をする姿は、一見では彼女がかつての魏王だとは誰も思うまい。
それは趙雲自身にとっても意外であった。酌を受けつつも、感嘆の息を漏らす。
「あの曹操殿の酌を受けられるとは、光栄な事ですな」
「あらそう。 本当にそう思っているのならば、次はゆっくりと味わってみることね」
「これは手厳しい。……では謹んで」
確かに曹操の言う通り、これはじっくり味わう酒に違いない。
ひとつ頷いて口中の酒を転がす趙雲へ、卓に両肘をついた曹操がしどけなく微笑む。
「……それでいいわ」
ただ酒を飲む姿を見られているというだけなのに、趙雲の肌には微かに粟立つ物があった。
有り体に言えば趙子竜という女が値踏みをされているのだが、不思議と不快感は無い。
将・軍師・官を集めてきた曹孟徳という人はこうして人材を愛でて来たのだなと納得もする。
北郷一刀とはまた違い、一挙手一投足に気がおけない王の視線。
合点さえいけばこれ以上気負うにも道理がない。それこそが趙子竜である。
趙雲は静かに広がる酒の甘みと沈黙に身を任せ、この夜初めて椅子に背を預けて瞳を閉じた。
- 112 名前:華琳と星 3/5[sage] 投稿日:2007/02/25(日) 22:54:14 ID:27WoMbRF0
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「……さて、これは申し訳ない。些か美酒に呑まれておりましたようで」
再び目を開いた時、そこにいたのは普段の飄々とした趙雲だ。
片口を手に取り、如才なく曹操への酌をしながらも口元には笑みが浮かんでいる。
「ふふ、私に疑心を向けた報いね」
「はて、何のお話やら」
見透かしたように言う曹操へ、今度は間違えずに韜晦する。
何とも厄介な人物だが、初めから悪意などまるでないと分かると可笑しみすら覚える。
趙雲には慣れぬ豪奢なしつらえも、彼女にとってはごく当たり前の事でしかないのだ。
「この際申し上げますがな。曹孟徳は何故もっと早くに道を違えて下さらなかったのでしょう」
「魏王よりも酒造りの方が似合っていたかしら?」
「ふむ。……無念ですが、それは絶対にありますまい」
神妙に頷くと趙雲はつまみに箸を伸ばす。
一見して高級な食材が並んではいるが、その中にメンマがないのが画竜点睛を欠く所だ。
折角洛陽に住んでいたというのに、メンマがいかに酒に合うかを知らぬのは実に不幸な事だ。
時を改めて是非とも世の真理を伝えねばと趙雲は内心決意する。
「しかし、これだけの物をただ馳走になっては、私がいたたまれませぬ」
「それは光栄だわ」
「とはいえこの無骨者に、この酒を購うだけの持ち物があれば良いのですが」
「あらあら? 趙子竜は気風が良いと期待させておきながらもう逃げ口上?」
「先程の醜態の通り、呆れる程に小心なのですよ」
「私としては、是非とも趙子竜の言い値を伺ってみたいところね」
「その手には乗りませぬ。そも真に希少なる物とは金銭にて購える物ではありますまい?」
「小利口に逃げるわね…」
そういえば主ともいつぞや似たような問答をした、と趙雲は一人ごちる。
あの時はそのまま枕事に及んだわけだが、流石にそうもいかぬと考え直す。
- 113 名前:華琳と星 4/5[sage] 投稿日:2007/02/25(日) 22:55:18 ID:27WoMbRF0
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「さすれば、逆に曹操殿の欲される物をお伺いするのは如何か」
「関羽が欲しいわね」
「……即答しましたな」
「欲しいのだもの」
童女が駄々をこねるような曹操の仕草は実に面白いものだった。
張遼といい曹操といい、関羽への執着を超えた崇拝ぶりには首を傾げざるを得ない。
張遼はともあれ、別に曹操は奥手というわけでもなかろうに。
「ふふ。やはり愛紗には手を出しあぐねておりますか?」
「駄目駄目、全然駄目。 笑ってもくれないのよ?あの堅物」
「それも道理。矢をつがえた狩人に心を許す兎もおりますまい?」
「………関雲長が兎というのは…ないわね」
関羽を兎に例えてみたのは確かに物の勢いだ。
だが、そうズレた認識でもないはずだと趙雲は首を傾げる。
やはり戦場の関羽しか知らない曹操とではそうした感覚の違いが生じるのだろうか。
「………ありませぬか? 主を想う愛紗は実に可愛らしくですな」
「……妬けるわね、それは」
「主、愛紗。いずれに?」
「趙子竜を含めた、どれにもよ」
「……ふむ。 すると、もしや私もご所望ですか?」
「ええ。 ただ、今日は酒席だもの。一応我慢はするけれど」
ならば話は早い。
酒盃に残った酒を一息に喉へ流し込むと、趙雲は席を立つ。
こうした事は早いに越したことはないだろう。
主とていつでも暇を持て余しているわけではなく、愛紗も説得せねばならない。
「承知。さすれば巧緻よりも拙速がよろしかろうと存じまする」
- 114 名前:華琳と星 5/5[sage] 投稿日:2007/02/25(日) 22:56:04 ID:27WoMbRF0
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「趙雲?」
趙雲は、話が飲み込めないといった顔の曹操に自信溢れる首肯を返す。
「曹操殿の念願を叶え、かつ私はこの美酒を恒常的に確保する妙策を思い付きました故。今宵はこれにて」
「……待ちなさい。割と嫌な予感がするわ」
「気のせいでは」
「…では、こんな時間に今からどこに向かうのか正直に仰いなさい」
「私も始めての人数となります故、貂蝉か紫苑にやり方を詳しく聞いておかねば、と」
「その名前で不吉さが億倍に増したのだけれど!」
慌てて立ち上がる曹操が杯を倒し、卓を濡らす。
別にこの期に及んで照れる道理もあるまいに、と趙雲は肩を竦める。
「ああ、ご安心を。主も含めて6人となれば流石にまだ私の手には余りましょうから」
「ちょっ、待ちなさい趙雲!」
「うむ、どうぞ私の事は星と。枕事に臨むに趙雲では無粋でしょう」
「あぁ……そうね。私も華琳でい……、いや何か違うわ!?」
「はて、主はお気に召さない?」
「そんな事は言っていないでしょう?」
「なれば、よろしいのでは」
「駄目、駄目よ!あの男に貫かれる様を関羽が見ているなんて恥だわ!」
「なに。心安んじてお楽しみなさいませ」
その後、いかなる手管を用いてか頬を赤らめた愛紗と曹操を引き連れた星が意気揚々と北郷一刀の
寝所へ押しかける事となる夜の話はまた別のアレがアレレしてソレである。
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習作。俺内再難関の星&華琳かつ星視点。 駄目だな…まだ俺の手には余るwwwwww
華琳様のお金持ち空間に包まれたまましっとりしたエロが書ける実力が欲しいぜーーーー。