- 596 名前:今日限定1[] 投稿日:2007/02/14(水) 16:56:40 ID:dr/7NjuLO
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月「ご主人様、お荷物が届きました。」
それはいつものように政務に追われ鬱屈してた一刀の元へ、月達が小さな荷物を持ってやってきたことから始まった。
一刀「ん?なんだろ。俺宛てかい?」
月「はい、市のお菓子屋さんからです。ご注文の菓子の試作品が出来たとかで…」
一刀「試作品…あぁアレか?!さすが姐さんもう出来たんだ。」
喜色を浮かべて包みを解く一刀を月と詠が覗き込む。
詠「ホントにお菓子なのかしら。また怪しい物を買ったんじゃないの?」
一刀「相変わらず詠はツン子だな〜へへっ、そんなんじゃないよ〜♪」
ご機嫌の一刀の手に小さな木箱が現れた。蓋の上には漢字四文字で『猪口冷糖』と書いてある。
月「いのくちれいとう?」
小首を傾げる月に一刀は苦笑して教える。
一刀「はは、チョコレートだよ。姐さんも聞いたことないから無理もないけどね。」
カパッと蓋を開けると小指大のチョコボールがごっそり入っている。
詠「何よ丸薬なんて。まがまがしい色してやっぱ怪しいじゃない。」
一刀「薬じゃないよ、見てな。」 ポイッと一粒取って口に含む。じわっと溶けて口一杯にチョコレート特有の甘味が広がる。
一刀「ん〜これだよこれ。久しぶりの故郷の味♪」
ニコニコと満面の笑みを浮かべる一刀を見て、二人は互いを見合う。
詠「故郷の味って、こんなの天界の奴らは喰ってるの?」
一刀「そーさ。特に今の時期になるとバレンタインで山ほど出回るんだ。二人とも喰ってみ、甘くて美味しいよ。」
箱を差し出されて二人とも怖ず怖ずと一粒口にする。
月「・・・ぁ!」
詠「・・・ぅ!」
二人とも瞳を見開き硬直したかと思うと、両手で頬を抑えてぷるぷる小刻みに身を震わせた。
月&詠「・・・はふぅ♪」
今まで食した中華菓子にはない独特の甘さとカカオ独特の味わいが、二人の味覚にかつてない刺激を与えていた。
詠「な、なんなのこの暴力的な甘さは!天界じゃこんな刺激の強い甘菓子食べてんの?!」
月「…すごいです。こんな甘さ初めて。」
一刀「はは、気に入った?慣れれば普通だよ。これはまだビターチョコぽいし。」
- 597 名前:今日限定2[] 投稿日:2007/02/14(水) 16:58:44 ID:dr/7NjuLO
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二人の過敏な反応に一刀は機嫌を良くした。
一刀「よかったらもっと食べてよ。」
差し出された箱を前に、月が恥ずかしげに怖ず怖ずしているとぐいと詠が箱ごと取り上げた。
一刀「あ!何すんだよ!」
詠「普段アタシたちに無理矢理やらしいご奉仕させてるご褒美として貰ったげるわ、ふふん♪」
一刀「なっ!?お前はジャ●アンか!返せ!」
詠「いやよ♪あんたにはもったいないわ。これはボクと月でありがたくいただくから、くひひっ♪」
一刀「ふざけんな、返せ。」
オロオロする月を中心に部屋を追い逃げる二人は三人目の侵入者に気づいていなかった。
星「主どの、なにをお騒ぎか?おや?これはなんでござる。」
ひょいと詠の手から木箱を取り上げ、星が中身をのぞく。
詠「あ!」
一刀「ありがとう、どらえも、、もとい、星。」
手を伸ばす一刀を尻目に星は箱の中から一粒つまんで匂いを嗅ぐ。
星「なんでござるか、この丸薬は?薬っぽい匂いがしませぬな。新手の精力剤ですか、主?」
一刀「どーしてみんなそっちに結びつけるかね。お菓子だよ、お菓子。」
星「お菓子?これが?・・・ふむ。」
じっとチョコボールをにらんでいたかと思うと、パクリッと口に含んだ。
星「む!ぬ、、、これは!?」
月や詠と同じ反応をする星に一刀はニヤニヤと笑わずにいられない。
- 598 名前:今日限定3[] 投稿日:2007/02/14(水) 17:04:32 ID:dr/7NjuLO
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月や詠と同じ反応をする星に一刀はニヤニヤと笑わずにいられない。
一刀「どうだ?星、初めての食感だろ。」
星「ぬぬ、、、これはなんというか、舌で蕩ける感触がたまりませぬな。ま、まあ、あのメンマに比べるほどではありませぬが。」
一刀「そういいながら2個目を口に放おるな。」
星「よいではありませぬか、こんなにあるのですから。」
詠「そーよ、ボクたちにもよこしなさい!」
詠が星に駆け寄るのを制して、すばやく星から奪還。
一刀「じゃあ、あと1個ずつやるからそれで我慢しろ。愛紗たちに分ける分がなくなるだろ。」
詠「むー」
月「詠ちゃん、独り占めしちゃダメだよ。こんなに美味しいんだもん、朱理ちゃんたちにも残しとかないと〜ねぇ、ご主人様。」
星「うむ、月の言うとおりですな。さっそく皆を呼んできましょう。」
一刀「え?あ、ちょっと・・・」
止める間もなく、星が姿を消す。途端に詠が月の手を引いた。
詠「あ、ボクたち用事思い出したから、、、いこ、月。」
月「う、うん。」
そそくさと姿を消す二人。
一刀「?」
詠「がんばってね〜ひひっ♪」
眼を細めて邪悪な笑いを残し詠が消える。
残された一刀は、箱の中をのぞいてため息をついた。
一刀「(まあ、いいか、、、また姐さんに作ってもらおう。)」
- 599 名前:今日限定4[] 投稿日:2007/02/14(水) 17:08:43 ID:dr/7NjuLO
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そうあきらめ気味の一刀の耳に、、、
ドドドドドドドドドドドドドドドドドーーーーーーー!
遠くから地鳴りが響いてくる。
一刀「う、、、ま、まさか」
背筋がゾクリとしたと同時に扉がぶっ飛びそうな勢いで開いた。
愛紗「ご主人様、星から聞きましたっ!い、い、いちばんの臣下にすごいご褒美をとっっ!!」
鈴々「お兄ちゃーん!ずるいよ!一人で美味しいの独り占めして!!」
翠「べ、べ、別に欲しいわけじゃねーぞ!ホントだかんな!!」
紫苑「若返る丸薬って、あらあら、うふふ♪」
星を除いた最強五虎大将軍がところ狭しと迫る。
一刀「せ、星のやつっ!!」
かくして外史では2月14日は受難の日として歴史を刻んだのであった。
(終 劇)