- 443 名前:勝手に華雄フランチェスカルート[sage] 投稿日:2007/02/11(日) 04:37:33 ID:us0MuTxo0
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戦斧が空気を切る音が聖フランチェスカ学園に鳴り響く。素早く、そして力強く。
その中心に立つのは一人の女性。銀の短髪に、情熱的な赤い目が印象だ。
だが、不意にその音が止まった。
「ふぅ……」
戦斧を振るっていた女性──華雄の動きが、溜息とともに不意に止まる。
その顔に浮かんでいたのは今までの彼女を知る者には信じられぬ表情……すなわち落胆や諦観、そういった感情を含んだ表情だった。
だが、そんな表情を浮かべていたのも一瞬の事。
再び戦斧を構えなおし、型稽古をはじめた所で──急に動きが変わった。
「そこに隠れているのは何者だ!」
向き直り一喝する華雄。
「ご、ゴメン! 別に覗き見するつもりはなかったんだ!」
一刀は驚いて立ち上がり、焦ったように声を上げる。
「ふん、貴様か……別に見ててもいいが邪魔をするなよ」
「あ、うん、ありがとう」
興味を失ったように一刀から視線を外して、型稽古を再開する華雄。
しばらくして、一刀が華雄に声をかける。
「ところでさ……さっき溜息ついてたのはなんでなの?」
「邪魔をするな、と言った筈だが?」
鋭い眼で睨みつけられる一刀。だが、臆しながらも言い返した。半ば以上は意地である。
「う……でも、悩み事を抱えながら稽古していても身に入らないだろ?
それに、話すだけでも楽になるって事もあるしさ」
「よほど私の邪魔をしたいらしいな、貴様は」
呆れたように溜息をつき、華雄が動きを止める。
- 444 名前:勝手に華雄フランチェスカルート[sage] 投稿日:2007/02/11(日) 04:39:56 ID:us0MuTxo0
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「まぁいい。これ以上邪魔をされるのも不愉快だ。話を聞いたらここを去れ」
「分かった」
そう返事はするがもちろん帰るつもりなどない。
なぜなら、かつては敵同士だったとはいえ彼にとって華雄は今やこの学園で過ごす「仲間」だから。
そんな事には気づかない華雄は静かに話し始める。
「この外史には私の居場所がないと考えていた」
「そんな事はないぞ。月や詠は君を必要としているし……」
「そういう意味では無い」
一刀の答えを途中で遮る華雄。
「彼女たち、いやその他の者たちも私の事を大切に思っている事は理解している。
だが、私は武人だ。
戦場の内でこそ生を感じ、戦場の内でのみ光り輝く存在だ。
それ以外の生き様など知らないし、知る気もない。……私には愛紗の様には生きる事はできぬ」
フランチェスカの校舎を見つめるようにして、話し終える華雄。
「さて、話は終わった。約束どおりどこかに消えろ」
華雄の生き方は潔く、また美しいと思う。でも彼女は一つ思い違いをしている、と一刀は思う。
「その前に、少しいい?」
「……貴様も相当にしつこいな」
「おかげさまで」
- 445 名前:勝手に華雄フランチェスカルート[sage] 投稿日:2007/02/11(日) 04:40:29 ID:us0MuTxo0
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悪びれずに言い返す一刀に呆れたのか、華雄は疲れたように一つ息を吐いて
「とりあえず話してみろ」
「俺の世界、たぶんこの外史にもだけど『常在戦場』って言葉があるんだ。この言葉の意味が分かる?」
「……貴様の世界の言葉など知っていると思うか? 私はついこないだまで『死んでいた』のだぞ」
華雄の物言いに思わず苦笑する一刀だったが、構わず言葉を続ける。
「意味は『常に戦場にあるように』っていう意味でさ……この言葉の解釈には色々あるんだけど、華雄が武人ならこう考えるべきじゃないかな。
『戦場のごとき勇壮な心構えであらゆる事象に立ち向かうべし』って。
……戦場から逃げるのは、武人として恥ずべき事だろ?」
「……無論だ」
思わず唇を噛み潰す華雄。
何たる恥辱、何たる惰弱、そして何たる愚鈍さか。
『武人』という形に拘るが故に『武人』として持つべき心構え──即ち『武人』の本分から外れていたとは。
そして、そのような事を『武』とは程遠いこの男から教えられるとは。
「己を知らず敵を知らずば百戦百負す──か。私が愛紗たちに敵わぬ訳だ。フフ、ハハハハハハ」
「お、おい、華雄?」
突然笑い出した華雄を心配したのか、慌てた様に声をかける一刀。
「すまん、私にそんな説教をした者は久しぶりなのでな」
そこまで言って、ニヤリと笑う華雄。
一瞬その可愛さに赤面する一刀だったが、その後に続いた言葉に今度は顔を蒼くすることとなった。
「そのお礼といっては何だが、この後少し稽古をつけてやろう。剣道場はまだ開いているようだしな」
「怒ってる!? 説教されて怒ってるだろ!?
つうか、死ぬから! 手加減されても確実に死ぬから! 助けて、ボスケテー!!」
(まぁこの位の意趣返しは許されるだろう)
空に視線をやりながら微笑を浮かべてそう考える華雄。
抜けるような青空には、一刀の悲痛な叫び声がひたすらに響いていった……
- 446 名前:勝手に華雄フランチェスカルート[sage] 投稿日:2007/02/11(日) 04:51:04 ID:us0MuTxo0
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というわけで、華雄フランチェスカルートなんぞやってみたり。
……というか、この娘戦場なくなったらレゾンテートル見失うんじゃねえか的な思いと「葉隠」がミックスされた電波が降ってきたのでカッとなってつい書いてしまった。
推敲? なにそれ? 美味しいの?
今は後悔も反省も両方している。