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258 名前:小蓮if話[sage] 投稿日:2007/02/07(水) 19:22:44 ID:AhSX83zB0
>>187からの続きの話。イベント二回目ってことで。


幽州というのは中国でも北のほうに位置する。緯度的には東北地方辺りな訳だ。
つまり何が言いたいかと言うと、冬は寒い。それが言いたかったんだよ。
「あ゛〜〜、寒い」
この時代ヒーターやエアコンなどという文明の利器は存在しません。
少しばかり元の世界を羨ましくも思ったが、そんな思いに馳せても意味なき事。
まぁ昔から剣道をやっていたからある程度は寒さにも慣れている。二、三枚上から羽織ればそれで十分。
「雪も結構積もってきたなぁ。こんなに積もってると少しワクワクしちゃうな。なぁ愛紗、あとで――」
「駄目です」
文字通り一刀両断。まだ何も言ってないのに…。
「主の威厳はいずこに!?俺はただ――」
「どうせ『雪遊びでもしようか』などと仰るおつもりだったのでしょう?そんな暇はありません」
うぐ、ご明察。さすが読みが鋭いぜ。…俺が単純なだけか?
「冬には冬でやらなければならない事があります。農作物が取れない時期なだけに兵糧の確保により力を入れなければなりませんし。
 まぁご主人様が意見して下された家畜の放牧などで多少は余裕がありますけれども」
もっともな意見である。民衆を飢えさせては元も子もない。だがそれだけ今の時期に内政を整える絶好の機会でもある。
259 名前:小蓮if話[sage] 投稿日:2007/02/07(水) 19:23:24 ID:AhSX83zB0
「と言うことはやっぱり魏の冬期侵攻はないみたい?」
「確定している訳ではありませんが…間諜からの情報と、積雪量から見れば可能性は少ないと思います」
冬の時期に軍を動かすなど愚の骨頂である。
相手だけではなく自然もが敵に回る。寒さは歩みを遅くさせるものだし、何よりも兵卒の士気は落ちるのみ。
かのナポレオンもそれを契機に没落していったものだ。
もっともそれは兵站を軽視していたという理由もあり、加えてロシアの焦土作戦があったからこそでもあるが。
「曹操がそんなミスをする筈もないがリスクを犯してまで攻め入ってはこない、か」
「? それに魏とてこちらだけに目を向けている訳にもいかないでしょうし」
ボソリと呟いたことは聞き流し、愛紗は現状を報告する。
「ん、そうだね。今更言う必要もないだろうけど、監視だけはよろしくね」
「勿論です。それではこれで失礼します。……しかし、今年はいつもより雪が多く、寒い気がします」
「そうなの?ま、女性はあまり体を冷やさないように。…何なら、一緒にお風呂でも入る?」
「ごごご、ご主人様!何を仰るんです!う〜、し、失礼します!」
ボンッと音でも立てそうなほど瞬時に顔を真っ赤にして部屋を出て行く。
「そんなに照れなくてもいいのにねぇ…」
260 名前:小蓮if話[sage] 投稿日:2007/02/07(水) 19:24:03 ID:AhSX83zB0
さりとて政務ばかりに没頭出来るほど自分は聖人君子ではありません。
息抜きをしなければ頭は沸騰、意気消沈。いえ、決して息抜きばかりしてる訳じゃありませんよ?
そんな言い訳を誰に言うでもなく、いつもの散歩コースへ。
雪は10cm程か。歩く分にはそれほど苦労というほどでもない。
白い息を吐きながら雪景色を眺めていると、いつもと変わらず動物達と戯れている恋を発見。
「…ご主人様」
発見したのは向こうも同じのようで、こちらに体を向ける。それと同時にいつもより元気一杯のセキトが猛ダッシュ。
「おっと、セキト。何だか嬉しそうだなぁ、恋と一緒に雪遊びでもしてたのか?」
ワン!と一声鳴き足元をグルグル駆け回る。やはり犬は雪が大好きなようだ。
「恋も大変だな、こんな雪の中連れまわされて。って言うか寒くないのかその格好?」
いつもの格好にコートのようなものを羽織っているだけ。
「平気。濡れないようにしてるだけ」
コートは防寒目的ではない模様。さすが野生児、寒さは平気ですか。
「ご主人様は寒い…?」
「ん?まぁ寒いっちゃあ寒いけどこんだけ着てりゃ十分さ」
「寒かったらその子に抱きつけばいい」
恋が指差した先には白黒模様のあの動物。
「おお、パンダ!お前もいたのか。ふーむ、パンダは寒いのは平気なのか」
「ぱんだじゃない。大熊猫」
そう言われても昔からそう覚えこまされたものだからそうそう直せませんよ。ってか名前ないのか!?
だがあれからパンダ君も慣れてくれた模様。ふむ、物は試しに抱きついてみますか。
そう思い、抱きついてみたのだが――
261 名前:小蓮if話[sage] 投稿日:2007/02/07(水) 19:28:03 ID:AhSX83zB0
「むぎゅ」
むぎゅ?何か変な音…声か?聞こえたのだがどこから?
と考えているとお腹の辺りがモゴモゴ動き始める。
「うおあっ!?で、出たな、妖怪モコモコ!」
「誰が妖怪よ!こんな可愛い子を掴まえて……くしゅんっ!」
「その声………シャオ、か…?」
端から見れば何かの着ぐるみにでも入ってるかのようにモコモコ膨れた物体。
しかしその顔の部分からはあの元気のいい蒼い瞳が見える。
「一体全体そりゃ何の格好だ?パンダに擬態してもいい事なんか何もないぞ?」
「寒いから抱きついてたの!う〜、何でこんなに雪が降ってるのよ〜」
そんなに丸々と膨れ上がってるのにまだ寒いんですか。というかこれはこれで可愛いな。
「そんなに寒いのが嫌なら部屋に居ればいいのに。何も無理して出かける必要はないだろうに」
「だってこの子が…くしゅんっ!外に出たがるんだもん。大体そんな薄着で寒くないの!?…くしゅんっ!」
俺のどこが薄着!?つーか、そんな可愛いくしゃみしないで!
「いや恋はともかく俺は普通だぞ?それはともかく寒いんなら無茶するなって。風邪でもひいたら大変だぞ?」
「う〜、でもぉ〜」
「パンダは恋に任せておけって。寒いの苦手なのは恥ずかしい事でも何でもないから。ほら、風呂にでも入って暖かくしようぜ」
そう言って物体モコモコを抱え上げる。ふ、服の分、重い…。
「じゃあシャオ連れてくから。恋、パンダの散歩よろしく!」
「…任された」
「あうぅ〜、顔に雪がぁ〜!」
少しは我慢しようよ!
262 名前:小蓮if話[sage] 投稿日:2007/02/07(水) 19:28:38 ID:AhSX83zB0
OK、北郷一刀。冷静にこうなった状況を考えてみようじゃないか。
なーに、そんなに難しい事じゃないぜ。クールになれ。みんな言うじゃないか。
冷静になる為には素数を数えろってな。
「ふぅ…極楽極楽。まさに身も心も暖かくなるよー。ねぇ、一刀も早く入ろうよぉ」
モコモコ小蓮を抱えて風呂場に連れていったんだよ。まぁ道すがら侍女たちに奇異な目で見られてたけど。
それで服を脱がして、ようやく小蓮本体を拝む事が出来たんだ。そこまではいい。
「なぁ、小蓮」
「な〜に〜?」
「何で俺まで裸なんだ?」
「一人で入るのつーまーんーなーいー」
「それだけ!?」
何てわがままなお姫様なんだ。孫権さん、妹の教育はしっかりしようよ!?
「あー……もしかしてシャオの裸見たいの?…いいよ、一刀になら見・せ・て・あ・げ――」
「浴槽から出ないで!?」
「ぶぅー、じゃあ早く来てよぉ。そうじゃないとそっち行っちゃうよ?」
これはもう観念するしかないようだ。…いや、決して嬉しがってる訳じゃありませんよ?
「はいはい、分かりましたよお姫様。………ふぅ、こりゃ確かに気持ちいいや」
雪やなんやで冷えた体に熱が染み込んでいく。凍った体の芯がほぐれていくようでついつい顔も緩むってもんだ。
「だよねー。こんなにお風呂がいいと思ったの初めてだよ。
 体が冷えてから入るのがこんなに気持ちいいなら、この雪や寒さもそんなに悪いものじゃないかもね」
「まぁ江南と河北じゃ気候が違うって言うしな。ま、その内慣れていくって」
「ホントかなぁ…。はぁ〜ん、でもホント夢気分」
263 名前:小蓮if話[sage] 投稿日:2007/02/07(水) 19:29:16 ID:AhSX83zB0
火照った顔と無自覚の色っぽい声。またもやドキリとさせられてしまい胸の動悸が早くなる。
「そ、そうだな、夢のような心地だよな」
少し声が上擦ってしまったか。悟られないように顔をあさっての方向に向ける。
それがいけなかったんだ。顔を背けなければ、小蓮がニヤリと笑ったのを見逃さなかったはずなんだ。
沈黙を不審に思っていると、ふとお湯の波紋が大きくなっていた。
「ふふっ、か〜ずとっ!えいっ!」
「のわああぁぁあぁっ!?」
小蓮の接近に気付いた時には既に後の祭り。体ごと乗っかられてる形になってはもうどうしようもない。
「わ、一刀って結構体つきいいね。胸板広いし…えへっ、スリスリ」
「しゃしゃしゃっ、小蓮!?いいい一体、なな何ばしよると!?」
「何か言い方が変だよ?でもこんな美少女にこんなことされてホントは嬉しいんでしょ?ほれ、もっとスリスリ〜」
オゥノゥ!そんな理性が吹っ飛ぶような真似はしないで!
「これだけじゃないよ〜?今度はこうだっ!」
ギャアー、当たってる、当たってる!?小蓮の潔いまでの小さな胸が(口には出せませんが)当たってるぅ!?
神様、これがいわゆる「あててんのよ」作戦ですか!?
「しゃ、小蓮!マズイって!女の子がこんな事しちゃ駄目だ――」
僅かに残った理性を総動員してやめさせようとしたのだが。
「…一刀はイヤ?シャオ……一刀以外にこんな事しないよ…?」
ハイ、もう無理ー。そんな涙目でそんな事言われちゃ残った理性は雲散霧消。つーか捨てました。
「ひゃんっ!?なんかお尻に当たっ…?……ははぁ〜ん、か・ず・と、興奮しちゃったのぉ?」
264 名前:小蓮if話[sage] 投稿日:2007/02/07(水) 19:35:22 ID:AhSX83zB0
吹き飛んだ理性で体は欲望に正直に。まぁ要は俺のマイ・サンが元気になったって訳だ。
「うわぁ…こんなに大きくて固いんだぁ…。ひゃうっ!び、ビクビク震えたー!」
触らないで、こすらないで、さすらないで!?もう本当に獣になっちゃうって!
(いいじゃねぇか、本能のままに赴けって。この子もそれを望んでるぜ?)
頭の中の悪魔が甘い誘惑を囁く。
(駄目だ駄目だ!男が流されてどうする!男子たるもの、女子をリードすべき!)
天使!言ってることはまともでも中身は同じじゃねーか!
あかん、脳内バトルもこの事態を解決するとは思えない。ならば力づくで逃げるべし!
「きゃんっ!逃げないでよぉ〜、もうちょっと観察させてよー」
だが乗っかられてる格好ではそううまく行くわけもなく。浴槽から這い上がった所で体はキャッチ・アップ。
「こ、こんなに大きいのが女の子の中に入るんだよね…ゴクン」
風呂場の床にあお向けになり、その体の上には濡れた髪が体に張り付いている裸の美少女。
もはや我慢は限界突破。ロリコンと罵られようが構うものかよ!
「小れ――」
「これはまた…お楽しみの真っ最中でしたか、主」
「政務をほったらかしにして…何をしてるのかと思えば…!」
「ひぃっ!せ、星に愛紗!?」
行動しようとした矢先に響く、楽しげな声と地獄の底から響くような怒りに満ちた声。
さっきまでの火照った体と興奮はどこへやら。一気に冷や汗が吹き出してくる。
「ち、違うんだ!こ、これは様々な偶然と必然が濃厚なスープのように絡み合ってだな!
 け、決して俺の中の『ビバ!ロリコン魂!』が炸裂した訳でもなく!」
265 名前:小蓮if話[sage] 投稿日:2007/02/07(水) 19:35:56 ID:AhSX83zB0
ああもう!何言ってるんだか!
「そうだ!シャオ、お前からも言ってやっ――」
「じゃ、お先に上がるね〜。ごゆっくり〜、か〜ずとっ!」
逃げ足早っ!?
「ちょ、ちょっと待てぇい!?こんな修羅場を作り上げてスタコラサッサかよ!?」
「他人のせいにするとは見苦しいですよ、ご・しゅ・じ・ん・さ・ま…!」
ど、どこから青龍刀が!?
「何となく事態は分かりますが…まぁ、こちらのほうが楽しそうですな」
星も槍を出さないで!?
「覚悟は…よろしいですね…!」
ハハ、ハハハ…逃げ道ナッシング。ああ、今まで敵さん、こんな方々と戦ってたんですね。見直しましたよ。
「ぎゃああぁぁああぁぁAAAHH!!」
ざんねん!わたしのぼうけんはこれでおわってしまった!

<二回目・完>
266 名前:小蓮if話[sage] 投稿日:2007/02/07(水) 19:37:13 ID:AhSX83zB0
まぁまだ終わらないんですけどね。ではまた後程。
読んでくださった方どうもです。

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