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73 名前:星[sage] 投稿日:2007/02/05(月) 03:20:54 ID:7WCT34k20
空を見上げる
冬空に輝く月は美しく、そして冷たい

「・・・・・・」
あの日、月明かりの下で交わした約束からどれほどの月日が経っただろうか?
「・・・主」
鏡が割れ、主と愛紗が消えても私たちの世界は消えなかった。剪定者とやらの言葉を
信じるなら、まだこの世界が消えることを願わない人々がいるということか。
だがそれも詮無いことだ。この胸の空漠を埋める足しにはならない
「主も夜空を見上げているのでしょうか?
 主のいる世界の月は、ここより綺麗に輝いていますかな・・・?」
74 名前:星[sage] 投稿日:2007/02/05(月) 03:41:17 ID:7WCT34k20
誰もいない川辺で、一人呟く
「私は決して諦めませぬ。皆と共に主と愛紗のいる世界にたどり着いて見せます。
幸い豹蝉も未だこちらの世界にいる。手がかりは零ではない」
そう、決して手の届かない夢物語ではない。きっといつか、主と再会できる日がくる
はずだ
しかし・・・
「寒いのです、主
 あなたがいないこの世界が
 あなたを求めるこの心が
 まるでこの世が明かりを、色を失ってしまったかのように寒々しいのです」

ああ、今日の私はどこかおかしいようだ。いつもなら、例え一人きりのときにも
涙をこぼすことなどないというのに

この月夜のせいだ
きっと、あの日の月にあまりにも似ている夜空が私の心を素直に吐露させているのだ
75 名前:星[sage] 投稿日:2007/02/05(月) 03:55:28 ID:7WCT34k20
「主・・・っ!主ぃ・・・っ!」

ならば今日は特別だ。心の内に秘めた想いを、すべて吐き出してしまおう
たまにはこんな夜があってもよいだろう

「会い・・・たいっ!お会いしたいです主っ!!
 主っ!主っ!主ぃっ!
 ある・・・じっ・・・」

あの方の顔を覚えている
あの方の手を覚えている
あの方の声を覚えている
あの方のぬくもりを覚えている

ですが私は怖いのです。いつか時が流れ、あなたのことを忘れるかもしれぬ未来が!
あなたと再び見えることのできるかもしれぬ未来が!
76 名前:星[sage] 投稿日:2007/02/05(月) 04:04:49 ID:7WCT34k20
だから───

さあ、涙を拭こう。そして顔をあげよう
そしていつもの強い私に戻ろう

「この日の月夜に、もう一度誓います
 主、あなたのもとへと必ずたどり着いてみせると」

私を川面に映す月明かりは、あの日と同じ
美しく、そして冷たかった───

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