夜の帳も下りた頃。
城の奥にある一際大きな宮、その最上階にある本郷一刀の寝所。
コツコツ、と扉を叩く音がする。
「誰?入っていいよ」
一刀はそう促したが、誰も入ってくる様子はない。
不審に思い、扉を開けてみるが廊下には人の気配はない。
空耳か、と扉を閉め振り返ると寝床に腰掛ける星の姿があった。
「うわっ!びっくりした……星か。驚かせるなよ」
「ふふ、ご容赦を。主の気が抜けているようでしたので、つい悪戯心が首をもたげましてな」
ふと見れば窓が開いている。どうやらまた窓から侵入したようだ。
「夜くらい、気を抜かせてくれ。今日はずっと根を詰めて仕事してたんだ」
「おや、お疲れですか。それでは、無理をなさることもありますまい」
「いや、まあ」
「よいのです、主。ここで主に倒れられるのは私の望むところではありませぬ。
今宵はおとなしく主を想い、月夜に独り寂しく慰め果てると致しましょう」
「またそんなことを……。今日は楽しみにしてたのに」
数日前からの約束事である。わざとらしく拗ねた様子をみせる星の隣に座り、身を寄せる。
「何と言っても、今日は逃さないぞ」
瞳の奥にどこか挑発的な光を宿した星に、ゆっくりと顔を近づけ、止める。
「それとも星は、俺とは嫌なのか?」
「……そう言われましては、仕方ありませぬな?」
いつもと同じ。こうやって言葉遊びのような事を繰り返しながら、お互いの気持ちを高める。
星の腰に手を回し、愉快そうな眼差しに答えながら、そっと唇を重ねる。
「ん……ちゅっ……」
湯浴みをしてなお、匂い立つような女の香り。口の端から漏れる甘い吐息。
目を閉じ、舌を絡ませ、星の柔らかさを、温もりを、味を楽しむ。
星の口の中はまるで溶けてしまいそうなほどで、とても温かかった。
ほのかに甘く、味わい深く。すこし塩っぱい、癖になるような味。
一度口に含めば忘れられず、ついつい再び、それを求めてしまう。
その歯ざわりも申し分なく、食欲をそそり、ご飯が進む事間違いなし。
ラーメンにのせるもよし、酒のつまみにもオススメ。
―――そんなメンマを、貴方にもお届け。