淯水は紅しの章
前章で降伏した張繍の元へ華琳が赴く話だな

これはに駐屯してる張繍曹操の間に起こったことが長々と語られた前半部ね
勿論、曹操軍がメインだったわ

謀略の士の不在についてはこっちの曹操が物語中でも触れていたわね
確かに、あそこにボクがいたら違う結果となったでしょうね

聞こえない聞こえない……っと。
そういえば、本来ならこのエピソードで足りない人物がいるよな
曹操を追い詰めた謀士賈駆

こっちでは郭嘉が釘指したからか元からその気がなかったのか……
鄒氏にのめり込むようなことはなかったみたいね
もっとも、結果としては女色によって危機に瀕してはいたようだけど
あんたも危なそうだし、気をつけなさいよ

あら、面白そうね。聞かせてもらえるかしら?

そ、曹操!?

まあ、あんたの場合、存在自体が失態のようなものだしね

むしろ、あんたたちに代わって我々が説明をしたほうが良いかもしれないわね
とうわけだから、さっさと退いてもらえる? というか、失せなさいよ
あとは華琳さまと私の二人による愛の授業を始めるんだから

これは曹操に関する歴史の中でもかなりの失態として知られてることね
この時、張繍より受けた反逆によって曹操の長男、曹昂甥の曹安民そして悪来の異名を持つ典韋が絶命したわ

・宛城の戦い

一九七年のことだな。
えっと……曹操に攻められ、いったんは降伏したんだよな。この張繍って人
結局、こっちでも春蘭相手に降伏してたみたいだけど

ええ。だけど、曹操が叔父である張済の未亡人を妾にしたことで張繍の反感を買い
結果として張繍は反逆を起こしたのよ

確か鄒氏だっけ? 結構な美人さんだったらしいな

まさに絶世の美女で当時勢いに乗っていた曹操も落ちたっていうし、相当だったのでしょうね
ちなみに、吉川三国志ではその奏でる胡弓もまた曹操の気を引いた理由となっていたわ
……とういか、あんた何かよからぬ想像をしてない?

HAHAHA! まさか、そんなことあるはずないだろ?
大丈夫だろ。俺は女の子関係が元で失態を演じたりはしないさ

ふふ、冗談よ。だから、そんなに身構えないでちょうだい。
ただ、折角私たちに起きた事を話してるのにその当事者を除け者はないのではなくて?

なんでいつも無茶苦茶言うかなぁ……

ちょっと! 何こっち見てんのよ! 妊娠しちゃうじゃないっ!

俺は妖怪か何かか!

いい加減、話が逸れてるから修正するわよ
もし、これ以上邪魔するようなら……容赦なく退場してもらうわ!

ざまぁないわね。甘さなんて見せずにさっさと追い出しちゃえばいいのよ!

い、以後気をつけます……

貴方もよ。桂花

そんなあ、華琳さまー

さて、それじゃあ話に戻りましょうか
そうね、まず典韋の武器を盗んだ兵士だけど……あれが胡車児なのはわかるわね?

さあ?
でも、結果として春蘭の左目を奪ったのだから生き残っていたとしても頸が躰と繋がったままという保証はできなかったでしょうね

なんとなくはな
胡車児って典韋の最後とセットなイメージがあるしな
中には典韋を討ったのが胡車児なんて作品もあるくらいだし

一説には、張繍が再度反乱を起こした原因だとも言われているわね
あらゆる才能を好んだ曹操が胡車児の武勇に眼をつけ黄金を与えた
張繍はこれを曹操が側近を手なずけて自分を暗殺しようとしてるものだと疑ったのではってことらしいわ

演義では五百斤の重量を背負って一日七百里を歩く怪力の持ち主とされていたわ
この胡車児が流琉とは似ても似つかぬ典韋を騙し、武器の鉄劇を奪う役割を担ったのよ
ふふん、あんたにはそんな芸当到底無理ね!

一々、一言が余計なんだよななぁ……

実際の所どうなの? 胡車児は見所がありそうだったのかしら?

怖っ、顔怖っ!

ところで張繍だけど、正史にせよ演義にせよ、この反乱で曹操を取り逃した末
官渡の戦いにおいて曹操側へとついたのよね

ま、それも賈駆が説いたからこそって話らしいけどな

ちなみに、正史だと張繍は柳城の烏垣征伐へ向かう途中に没したのだけれど
一説として、曹丕に曹昂を死に至らしめたことを口頭で責められ、悩んだ末に自ら命を絶ったとも言われているわね

流石は華琳の子供だな……恐ろしいもんだ
桂花だって、もし相手が華琳だったとしてもこういうのは嫌なんじゃないか?

馬鹿じゃないの!
華琳さまに言葉責めされて最後を迎えるのなら本望に決まってるでしょ!

……そんなことに悦びを感じて悶死とか嫌すぎるだろ

ホント、理解に苦しむわね
でも、まあこいつなら空箱贈られても究極の責めだとかなんだとかで悶死しそうね

でもでも、わたし負けないんだからぁ!
……というわけで、貂蝉ちゃんのおまけコーナーよん

この章で春蘭ちゃんが左目を失ったのだけれど
一応ご主人様が大局に逆らったことで存在を失うって話の縮小版となるのよねぇ……実は
失われるはずの命を救い、運命をねじ曲げたことで本来と違うタイミングで左目を失ったということなのよ、わかりにくかったでしょうけど

ご主人様~、お、ま、た、せ♪
貴方の愛しい貂蝉ちゃんが来たわよ~ん

て、あらん? どこにもいないじゃないのぉ~
んもぅ! 約束の時間通りに来たっていうのにぃ~ひどい御方……

今回はこれだけかしらね……
さぁて、ご主人様を追いかけなくっちゃーっ!

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結局、正史とは違って華琳はすぐに宛を奪い返したんだよな

張繍も後がなくて必死だったからよ
もし、あれを諫め、深追いさせない軍師がいたのなら、私も日を改めなければならなかったでしょうね

……………………

そこで俺を凝視されても困るんだけど
えっと……詠がいたらきっと華琳も
――――

私も……何かしら?

いえ、なんでもありませんです。ハイ

ちょっと! 一度言いかけたんなら最後まで言いなさいよ!

お? どこからともなく胡弓の音が……というわけで、俺は行ってくる!

あら、ホント! って、こらーっ! 逃げるなーっ!

そ、そういえば、張繍は今回の話だと、朝廷と秘密裏に繋がってたんだっけ?

ええ、そうらしいわね。私の頸を献上することで天子を奉戴できると信じていたいみたいね
あの腐臣たちが誓約を守るとは思えないけれど……

ちなみに、演義でも張繍は天子を奉戴し、天下に号令をかけようとした

結果、曹操に討伐され降伏。その後に今回のような反乱へと繋がるわけよ

なるほどな、時間軸のズレはあるにしても、そういった野心はあったわけだ……

さ、これで疑問は晴れたわよね?
それじゃあ、さっき濁した言葉をはっきりと言ってもいましょうか

………………

…………

……

仕方ないわね……私たちも行きましょう、桂花

はい、どこへなりともついて参ります!

まあ、本来のタイミングといっても、夏侯惇が左目を失った時機について明確にわかるような記述自体が見受けられないから微妙な判定になるのよねぇ
せいぜいおおよその時機を推測できるくらいね

ちなみに、左目を失ったタイミングは三国志を題材とした作品ごとに違うわ
早くは対徐栄戦。遅いものだと関羽の五関突破時よ

おまけ