【五章】 「お兄ちゃ〜〜んっ!」 廊下から庭でくつろいでいる一刀が見える。 鈴々がブンブンと手を振ると、一刀もこちらに気づき手を振った。 「お兄ちゃんっ…お兄ちゃん…」 鈴々がダッシュで駆け寄り、ジャンプして一刀の胸に抱きつく。 「きゃふ〜!」 がしっ。 お日様の匂いががする…。大好きなお兄ちゃんの匂いなのだ…。くんか…くんか…。 「や。鈴々。今日も元気だね。いいこいいこ…」 「ふにゃぁ…。いいこいいこ好きぃ…なの……だ…」 一刀が頭を撫でてくる。 優しい笑顔で…。 「何してたのだ? お兄ちゃん」 「丁度休み時間でさ…。ここに居れば鈴々に会えると思って」 「そうなの!?…鈴々も…鈴々も、お兄ちゃんに会いたくて探してたのだ…!」 お兄ちゃんも鈴々に会いたがってくれてたのだ…にゃはは♪ 自然と横になってじゃれあった。かれくさがくすぐったくて、土の匂いが心地よかった。 そして、お兄ちゃんの胸が…暖かかった。 「お兄ちゃん…鈴々の事…好き?」 一刀から甘い言葉が聞きたくて、真正面から顔を合わせて質問をした。 「好きだよ…。愛してる。」 鈴々は聞いたのはいいものの照れてしまい、一刀の胸に顔をグリグリと押し付ける。 真面目な顔で言うから…照れちゃうのだ… ドキドキしちゃって…ぅぅぅ………けど……嬉しいのだ…。 「鈴々…」 一刀は照れている鈴々を胸から優しく引き離し、 見つめ合った後…唇にキスをした。 「…んっ…ちゅぅ…んn…ぁ……ちゅ…ん…ちゅぱ…」 抱きしめられながらのキス。 ボーっとなって…頭が蕩けそうなのだ…。 一刀がふいに唇を離す。 舌と舌で唾液の橋ができる。 「やめちゃ…嫌なのだぁ……。もっと、もっと頂戴…なのだ」 鈴々がおねだりをする。 それに応じて、一刀ももう一度キスを始める。 今度はもっといやらしく…多くの唾液の交換をする…。 「ずっと一緒なのだ…ずぅっと…ずぅっ…と…」 この時間が…終わらなければいいのに…。 ずいぶん長くキスを続けてた…。 『ご主人様〜!』 遠くの方で一刀を呼ぶ愛紗の声がする。 「…ぷは………いけねっ…愛紗が呼んでる…」 ……ぅぅぅう。鈴々はまだまだ甘えたらなくて、もっともっとキスしていたいのだぁ…。 『ご主人様〜!もう休憩は━━━』 「鈴々…! そろそろいかないと…」 「うん…わかったのだ…」 渋々お腹に馬乗りで乗っていた鈴々が降りる…。 「それじゃあ…な。鈴々…」 「あ…お兄ちゃ…」 鈴々が向こうへ行こうとする一刀の袖を掴む。 「鈴々も…鈴々も……そのっ……あ……い…あい…あ…」 俯いて顔を真っ赤にしている鈴々を見て、一刀が不思議な顔をしている。 「あ…い……あ……い……。こっ今度…パンダの愛愛ちゃん見にいきたいのだっ…!」 「? …いいよ?じゃあ今度予定あわせて一緒にいこうな。よしよし」 一刀が頭をなでて愛紗の元へ去っていく…。 愛してる…って…言いたかったのだ…。お兄ちゃん…。 好き…で良かったのに、愛してるって言ってくれたお兄ちゃんに…鈴々も…。 鈴々は一刀の後姿を見ながら思った。 前はお兄ちゃんが他の女の人と仲良くしてても気にならなかった。 だけど…今は…悔しい。こんなにも…胸が苦しい。 【六章】 「お兄ちゃぁぁぁぁ…ん……ふぐっ…ぅぅうぅぅっ……ぐすっ…お兄ちゃぁぁ…ん…ぅぅっ…」 お兄ちゃんが死んじゃったなんて……嘘なのだ…嘘、嘘なのだぁ… 泣きじゃくる鈴々を見て、桃香がゆっくりと冷めた口調で言う。 「鈴々ちゃん。これから呉に報復に行くよ…?」 「ぐずっ…ぅっ、ぅぅ…。ほぅ…ふ…く…?」 「そうだよ。復讐だよ鈴々ちゃん。 アイツらにも同じ苦しみを味わさせてやるんだ…。」 「そうだぜ鈴々!呉の…アイツらの大切な人を……同じように八つ裂きにしてやるんだ!」 翠がヒステリックに叫ぶ。 そして愛紗が鈴々の手を掴みこう言った。 「さぁ…ゆくぞ…鈴々……。お前の力が必要だ」 グイッ!と鈴々の身体を引っ張り上げるが、だらん…と前のめりになってしまう。 ぅぅぅ…ぁぅぅ…嫌なのだ…もう……… 「行くよ。鈴々ちゃん」 桃香がそう言った瞬間、 「もう…嫌なのだ…」 と鈴々が呟いた。 「かかさまも……ととさまも……鈴々から居なくなった…。 やっと会えた…お兄ちゃんも…居なくなっちゃって…     もう、これ以上一人ぼっちは……嫌なのだぁ…」 焦点の合ってない目で、涙をぼろぼろ流しながら言った。 「…もう…戦いたくない…のだ……っ…」 「ちィッ!この糞ガキっ……!」 パシンッ━━━ 桃香が鈴々の頬を張った。 鈴々のトラの髪飾りが吹っ飛ぶ…! 「いいから来ればいいの。ね?」 「ぁう……! 桃香おねえちゃ…」 愛紗が強引に鈴々をベッドから引き摺り下ろす。 「嫌…嫌なのだ…!」 抵抗する鈴々に桃香がもう一発顔に足蹴にを喰らわそうとした…その時━━━ 部屋のドアが開いた! 【七章】 「天知る…神知る…我知る…子知る…!」 「悪の蓮花の咲くところ…って星…それはいいからっ!」 「恋華蝶…」ボソッ 部屋に入ってきたのは…星と一刀だった! 後ろにも愛紗、桃香、翠、朱里、恋と蜀のメンバーが居る! 「あ……ぉ…お兄…ちゃ……ん?」 一刀は鈴々の無事を確認すると、こう言った。 「お前ら、俺の大事な娘に手をだして…ただで済むと思うなよっ…!」 愛紗が我先にと偽の蜀メンバーに飛び掛る。 「我が妹によってたかって……貴様等っ!」 愛紗が青龍偃月刀を横一線にぶん回す。 その瞬間、部屋に居た桃香以外の偽者全てが白装束の傀儡に変わった! そして全員散りぢりになって傀儡に攻撃を始める! 「ククク。一番メンタルの弱そうな女を嵌めて、呉との連合を断ち切ってやろうと思ったのだけどな…」 偽桃香がいやらしい笑みを浮かべた。 「これ以上ここにいても何も成果は望めません…それでは。」 そういうと偽桃香は暗闇に紛れて消えた。 傀儡は蜀のメンバーの手によって既に砂と化した。 「アイツが主犯格だったか…くそぉ…!」 翠が悔しそうに偽桃香の姿を探すが、すでに居なかった。 「鈴々…!!」 一刀が鈴々に駆け寄る…。 「あぅ…あぅ…あぅ……ぅ”ぅ”ぅ”ぅ”ぅ”…!」 鈴々は焦点のあっていない目でキョロキョロと挙動不審に周りを見ている… 「錯乱しておるな…」 「あぁぁぁ…鈴々、鈴々…」 星と愛紗がアワアワと心配そうに鈴々をみる。その時、一刀が鈴々を抱きしめた。 「鈴々…もう大丈夫だから…」 「おにいちゃ……おにいちゃn……」 「よしよし…いいこ…いいこ…」 抱きしめながら頭を撫でる…。 「お”兄ぢゃ…ん…ひっく……うわあぁぁぁぁぁあぁあぁあぁん!!」 鈴々の目に生気が戻り、大声で泣きじゃくる。 その様子を見て愛紗と星も安心した。 「鈴々も歳相応の女の子ということだな。ふふっ」 「ああ、鈴々…良かった…」 鈴々が落ち着くまで一刀は延々と抱きしめ続けた。。。 【最終章】 「…はぁ…はぁ……鈴々さん…その…重いんだけど…ちょっと…離れて…」 「嫌、嫌、なのだ…!」 ベッドの中で鈴々が一刀の胸から抱きついて離れない。 あれから鈴々が泣き止むまで一緒に居た一刀は、案の定 淫古宴座(インフルエンザ)に感染した。 これ以上感染が広がってはマズイので、一刀の部屋に二人一緒に隔離されている。 「もう…離したくないのだ…!」 「重い…重い…苦しい…くるぢぃ…」 今回のことを、一刀から事情を聞くとつまりこうだった。 昨日の夜、政務から逃げ出した一刀は近くの川で酒を嗜んでいたという。 起きたら翌日の昼過ぎで、コソコソ戻ると愛紗が怒っていて怖かったので、恋の部屋に隠れていた。 そして夕方になり、部屋に来た陳宮に見つかり愛紗に差し出されたという。 (本当は、夜中に月と詠の部屋に忍び込んで、淫等三昧…なんて言えないよな…) 「なんで鈴々の部屋に来てくれなかったのだぁぁあああああ!!」 ギリギリギリ…… 「グぅエエェ…っ…! だって…鈴々が病気に掛かってたなんて…知ら…… 知ってたら…俺…だっ…て……」 鈴々が一刀の首を絞める。 「そう…だ…! 鈴々、なんか忘れてるものないか!?」 一刀がごまかすように話を変えてきた。 「ん? なんなのだ?」 鈴々が一刀の首元に抱きつく。 「髪…飾り…」ボソッと呟く。 「ああぁぁぁ!!鈴々の大切なトラの髪飾りが無いのだぁああ!!」 鈴々が一刀の上で頭を抑えて暴れる。 一刀がそれをニヤニヤと眺め、その後、優しくなだめて頭をなでた。すると… 「ほら…やっぱり鈴々はこれがなくちゃな…」 すっ、と鈴々にトラをつける。今まで無表情だったトラに笑顔が戻った。 「ああ!トラ…良かったのだ………。  お兄ちゃん…見つけてくれてたんだ…ありがとう…」 「ん…よしよし………鈴りn…」 一刀が鈴々にゆっくりと顔を寄せる…。 「んっ…ちゅぅ…ちゅぱっ…んn…んぅ、ちゅ…ぷはぁ!」 鈴々が頬を赤く染める。 「お兄ちゃ…」 一刀の耳元まで口を寄せる。 あの時、言えなかった言葉…言うのだ…。 「あのね…お兄ちゃん…あい…あ……い……━━━━━ こうしてまる一週間、一刀を独占した鈴々はとっても幸せだったとさ。 おわり