玄朝秘史 番外編  ひとつのあなた と ななつのわたし  真名って知ってます?  その人の本質を現す大事な名前。心を許した者しか口にしてはいけない、仰々しく言えば聖なる存在ですね。  私の真名、七乃っていうんですけど、これって珍しいんですよ。なにしろ、真名に数字が入ってるなんてなかなかありません。  だって、真名っていうのは、その人そのもの……いわば、生き方を示すものなんですよ。  それが、いくつもあったらおかしいと思いませんか?  だから、普通、真名に数字なんて入らないんです。  けれど、私の真名には、七という数が入ります。変ですよねー。あ、別に七女とかじゃないですよ。いくらなんでも。  七乃の『乃』も不思議な字です。  あなた、という意味もあれば、私という意味もあります。すなわちと読むこともあれば、そこで、とか、だというのに、という意味にもなります。要するに、言葉と言葉を繋ぐ字なので、単体ではっきりした意味はないんです。変幻自在ってわけです。  だから、私の真名は、いくつもの意味を持ち得ます。  七人のあなた。  七人のわたし。  私――七乃は、相手によってどんな姿にでもなれる。そんな生き様を運命づけられているようです。  おかしな話、ですよね?  ――ひとつ  やっぱり落ち着くほうがいいかな。  そう思い出したのは、色々あって北郷さんの保護下に置かれて、一月も経ってからのことでしょうか。  魏のみなさんはちょーっと堅苦しいところあるんで、適当な頃合いを見ておさらばするかとも考えて、それまで、周りの様子を窺ってみたりしてたんですけど、さすがは覇王の軍。  隙がないんですよね。  北郷さんの保護を受けると決まった途端、それまでの軟禁状態からは解放されて、仲間みたいな扱いされはじめたのはいいんですけど……。逃げたら大変なことになるんじゃないかっていう重圧も同時に感じるんですよ。  そもそも、一刀さんへの信頼感がありえないほど強くて……たぶん、いま逃げたら一刀さんを裏切ったとみなされて……。それ以上は考えたくありません。  美羽様の無茶につきあって逃げ回る程度で済む話じゃなさそうなのが困りものですよね。  それに、正直、こうしているほうが楽ではあります。戦乱の時代も終わって、傭兵で食べていくのは難しくなる一方でしょうし、華雄さんは一刀さんべったりになっちゃったし。  ああ、そういえば、華雄さんをなんとかさんとか言ってからかっていい雰囲気でもないんですよね、魏って。本気で忘れてるおばかさんなら許されそうってのが、面白いところですけど。  それに加えて、美羽様も気に入っちゃったみたいですからねえ、この都も、一刀さんも。  なにしろこの洛陽は曹操さんの治める場所。美食でも世に知られた彼女の住む所ですから、城で出る食事も、城下のお店も、どれも美味しいんです。まあ、美味しければ人が集まってくるし、そのために流通が増えるのはいいことだし、国全体を考えてのことなんでしょうけど。  そう、そんな都だから、蜂蜜も当然美味しいものが揃っているんですよ。しかも、大陸中から色々と集まってくるものだから、それなりにいいものが適正な値段で手に入る。  しかも一刀さんはお金にあまり頓着しないようで、蜂蜜を買うくらいならすぐに出してくれます。美羽様がねだったら、ついでに自分も街に出て歩く言い訳にするくらいです。  これで気に入らないわけないですよね。それになんと言っても命の恩人ですし。私もそのあたりは恩義を感じてるんですよ。本当に。  そんなわけでここに落ち着くのが良いと思ったわけですが、そうなると次に必要なのは保障ですよね。  私たちは曹操さんの臣下ではなく、一刀さんの保護下。仕官してたって、上の機嫌でどうなるかわからないものだっていうのに、さらに曖昧な状況です。  だから私言ったんです。 「私を抱いて下さい」って。  ええ、それはもうはっきりと。  そうしたら、なんと答えたと思います? あのふにゃまら野郎。 「……風にでも吹き込まれたの?」  絞め殺してやろうかと思っちゃいましたよ、ほんと。 「違いますよ?」  同情するような目で見てくる一刀さんは、私が否定しても納得していなさそうです。 「まあ、誰に聞いたのでもいいけれど、美羽を守りたいっていうなら、そんなことしなくていいよ。蓄え……はあんまりないけど、幾人か養うくらいの給金は出ているし」 「それはそうでしょうけど」  一刀さんのお金のことなんか心配していません。さらに言えば、一刀さん自身の身がどうなるとも思ってません。曹操さんの様子を見ていたら、この人を手放すわけないって十分確信できますから。  どちらかというと、問題は、それをあっさりと私たちに使うと言い切っているところかもしれませんね。 「私、魅力ありませんか?」 「そんな莫迦な!」  急に声を張り上げる一刀さん。 「七乃さんはかわいいよ! いや、実に魅力的な女性だ。スタイルはいいし、眼もぱっちりと大きくて綺麗だし、引き締まりすぎてない肉の感触が触れたら心地よさそうだし、絶対領域の太腿が、それはもうおいしそうだし、特に背も小さいわけじゃないのに、なぜかコンパクトにまとまってる感じで、ぎゅうってしたくなるしね! いつもにこにこ笑顔で、その裏でなにを考えてるのかわからないところとか、とぼけた風味で毒を吐くのも面白いし、あと、美羽への歪んだ愛情とかも!」 「う、うわー」  なんですかこの人、すごい勢いで力説してますけど。しかも、たぶん天の言葉なんでしょうけど、さっぱりわからない単語も混じってますよ。 「でもね」  急に声を切り替えて、一刀さんは続けます。 「いま言ったように、七乃さんは実に魅力的だ。けれど、いま言ったのも、少し見てわかるくらいの要素がほとんどだったろ? 要するに、七乃さんと俺はまだよく知り合っていない」 「だから、抱けませんか」 「遊びで抱くつもりはないからな」 「……そうですか」  優しい笑顔でこんなことさらっと言うんですから、もてるはずですよね。  普段はちょっと押せば転びそうなのに、これだけ強い意志を示されちゃうと……諦めるしかありませんでした。  ――ふたつ  体の関係でつなぎ止められないなら、どうやって保障を得るのがいいでしょう。一番いいのは弱みを握ることなんですけど、脅迫は危険度も高いんですよねえ、などと考えつつ中庭を歩いていると、不意に声をかけられました。 「おう、七乃」 「はい?」  声の主は、四阿でこの昼間っからお酒を飲んでいる祭さん。黄蓋さんの真名を呼ぶことになるとは昔は思いもよりませんでしたけどねえ。ともあれ、四阿まで寄ってみます。 「主、時間はあるか?」 「んー、まあ、あるといえばありますけど……。なんです?」 「ちぃと昔語りでもと思うての」  お嬢様は季衣ちゃん流琉ちゃんと遊びに行っちゃってますし、お酒くらいつきあってもいいんですけど、なんでそんな辛気くさい話をこんな天気のいい昼間にしなきゃいけないんですかね。 「私とですかあ?」 「しかたあるまい。堅殿を知っておるのなぞ、主と華雄くらいのものではないか」  それはそうなんですけどねえ。孫家の人たちの文台さん好きには呆れますね。 「ほれ、儂の秘蔵の酒を分けてやろうというのじゃ、少しはつきあえ」  鬼の面を被った祭さんは、立ったままの私に、新しい杯を揺らして見せます。固辞するよりは、適当に相手しますか。酔っ払いはしつこいですから。  観念して座ると、早速酒が注がれました。 「そもそも、儂がはじめてお主を見たのは、堅殿について袁家の城に赴いたときじゃった」  あら、もうはじまっちゃった。 「俊童として名高い主を手に入れたことを、袁家の先代はよほど嬉しかったのであろうのう。大々的なお披露目の宴を、よう覚えておるわ」  うっわ、また古いことを。そんなの忘れちゃう方がいいと思うんですけど。 「もちろん、主は末席の儂のことなんぞ気づきもせんかったろう。じゃが、年端もいかぬ童女が名にし負う文人どもを言い負かすのは実に痛快じゃったぞ」 「あれ、大人げなかったですよねぇ。まあ、元からいた無能な方々は、最初にやりこめちゃうつもりだったんでしょうけど」  うむうむと頷く祭さん。それにしてもおっぱい大きいですよね、この人。ぶるんぶるん揺れてるんですけど。 「見事な手並みじゃった。じゃが、まさかそれと同じように堅殿の軍を接収されるとは思うてもみなんだわ」 「あれは、孫策さんが悪いんですよ。しっかり豪族たちをまとめておいてくれないから。袁家としても、孫家が江東をまとめてくれて、友好的にいてくれるなら、そのほうがよほどいいんですから」  にやりと獰猛な笑みを浮かべて言う祭さんに、私ははっきりと言い返します。正直どうでもいいことではあるんですが。 「豪族どもを唆した張本人がよう言うわ」  あらら、ばれてましたか。そりゃそうですよね。でも、祭さんは怒っている風でもありません。 「じゃが、儂らがしくじったのも事実。いかに煽動されたとて、土地の力ある者たちをまとめきれんかったのはたしかじゃからな」  忸怩たる思いはあるのでしょうけど、今更ですよね。なにしろ、孫呉は三国の一つとして成立しちゃってるんですし。 「しかし、解せぬ」 「なにがですかぁ?」 「ああも見事に儂らをやりこめておいて、結局は背かれておることが、じゃ」  鋭い視線が飛んできます。仮面ごしとはいえ、先ほどよりさらに真剣になった顔つきに、私はさらににっこりと微笑んでみました。 「うまくいってご不満ですか?」 「たしかに策殿は王者の器じゃ。公謹は天下の知謀じゃ」  祭さんは、杯を持った手を私に向けてひたと構えます。 「それでも、悪知恵ならば、主が勝つ。策殿も公謹も、悪にはなれても邪悪にはなれんからの」 「なんだか、それって私が悪の権化みたいじゃないですかー」 「そもそも、袁術の代になってからの主の行動は、先代の時分に比べれば、はるかに劣る。そこが、わからんのじゃ」  私の抗議にまるで構わず、祭さんはずいと身を乗り出して来ます。  否定してくださいよ、悪の権化。 「……求められませんでしたからね」  ごまかすことも出来たはずです。あるいは、彼女も、明確な答えなど望んでいなかったかもしれません。全ては過ぎたことなのですから。  でも、なんででしょう。昔の私を覚えているなんて言われたからでしょうか。 「なに?」 「お嬢様が求めなかったからですよ。そういう私を」  私は、本当のことを話していました。 「お嬢様は、あなたたちが独立しようとしているなんて思ってもみませんでした。それどころか、自分が言いつけることを嫌がっているとも思っていなかったんですよ」 「じゃから、放置しておったというか」 「私にとってその時大事だったのはお嬢様を輝かせることでしたから」  見逃していたんじゃありません。ただ、その時の私にとって、美羽様にとって、それは特に重大なことではなかったというだけで。 「はっ」  驚いたような声が、彼女の口から漏れました。 「儂らのことなんぞより、江東の地より、袁術の世話が大事じゃったか!」 「ええ、もちろん」  当たり前じゃないですか、そんなこと。  祭さんはすっぱり答える私の顔を見て、なにかを探るような顔つきになりました。たぶん、悔しさとか虚勢とか、そういうものを見つけたかったのかもしれません。けれど、彼女はそれができなかったようで、逆に笑い出してしまいました。 「なるほど、なるほど」  身体全体を揺らす大きな声で笑った後で、彼女は息を整えるように酒杯を傾け、一人頷きます。 「それでようわかったわ」 「そうですか? じゃあ、そろそろ……」  あんまり話していると、変なことまで話しちゃうような気がして、席を立とうとしたんです。  でも、次の言葉で、その力も抜けてしまいました。 「このところの主がなにか居心地悪そうにしておるわけがの」 「……はい?」 「求められずに寂しいわけじゃ」 「はあ?」  なにを言い出すんですかね、いきなり。私は彼女のことを見つめるしかありません。 「袁術のこのところの成長はめざましいものじゃ。必要にかられてというのはあるじゃろうが、旦那様に与えられたことを成し遂げようと努力しておる様は、儂から見ても、ようやっておると感じ入るくらいじゃ」  美羽様を褒められるのはいいですけど、なんだか……。 「反面、お主に頼る場面は減ってきておる。あくまで以前に比べれば、じゃがの。しかも旦那様によう懐いておる。これでは、寂しがるのも当然じゃな」 「……なんだか、それじゃ、嫉妬してるみたいじゃないですか」 「やきもちをやいておるじゃろ? どちらにも」  私がなにも言わないのを肯定とみたのか、祭さんは、一人でどんどん話します。私は呆れてものが言えないだけなんですけどね。 「仕える主は成長して手がかからなくなり、庇護を与えてくれる者はなにも要求してこない。お主のような気性なら、それは不安にもなろう」  不安、って意味では間違いではないですけど。いまの状態は、一刀さんに得な部分ってあんまりありませんからね。なにがしかの対価を払う方が安定すると思うのは当然ですよね。  それにしても、美羽様に嫉妬って意味がわかりませんよ。 「ふふ」  祭さんは小さく笑います。そして、こっそりと耳打ちするように、囁いてきます。 「旦那様が美羽やお主、そして、儂ら全てに求めておるのはの。それぞれが心安らかであることじゃ」  ――みっつ  結局、あの時、祭さんはなにが言いたかったんでしょう。  一刀さんにくみしかれながら、私はそんなことを思い出します。  こうなるのに、そう難しいことは必要ありませんでした。  ただ、夜中、一緒に仕事をしている時に、ぽつりと 「まだ私たちよく知り合ってないんですかね?」  って訊ねただけで、あれよあれよと事が進んじゃってました。  最初に切り出したときと、果たしてなにが変わっているのか。彼の体温を膚と唇で感じながら考えてみたのですけれど、よくわかりません。  強いて言うなら、祭さんと話した後、妙に彼女の言葉が記憶に残っていて、美羽様に嫉妬するってどういうことだろうと、美羽様と戯れる一刀さんをじっくり観察したり、色々と話してみたりしたことくらいですか。  なんでそんなに一生懸命なのかとか、ぽんぽんと女の人ばかり保護すると誤解する人が出ますとか。  そのどこかに感じるところがあったのでしょうかね。  それとも、私自身がなにか変わったところがあるのでしょうかね?  そりゃあ最初よりは、情は感じていると思いますけどね。  そんなことを考えている間に、裸ん坊にされてました。一刀さんの膚も、私の膚も、上気して柔らかな赤になってます。  そうして、いよいよ彼が入ってきます。  おかしな格好ですよねー。  潰れた蛙みたいに足を広げて、男の人を受け入れるなんて。しかも、たいていの男の人はただつっこむことしか考えてないらしいですし。屈辱的ですよ。  幸いなのかなんなのか、一刀さんは無闇とうまいんですけどね。  こうして繋がるのはおかしな蜂蜜で生えちゃった美羽様のものを受け入れて以来で――男の人とははじめてだっていうのに、とろけさせちゃうくらいですものね。  魏の皆さんをものにしているらしいですし、経験人数からしてみれば当然のことなのかもしれませんけど、でも、経験したからって学べるとは限りませんからね。どれだけの人とふれあったって自分勝手な人ってのはいるものですし。  私のことじゃありませんよ?  その点、しっかり相手のことを考えて色々対処している一刀さんを褒めてもいいのかもしれませんね。本人は自分も気持ちよくなるためだって言うでしょうけど。  ……はい、白状します。  こんなこと考えているのは、余裕があるからじゃありません。  逆です。  一刀さんにあっという間に快楽を引きずり出されちゃって、莫迦なこと考えるしか出来ないからです。  だって、口からはろくに意味を成さないあえぎしか出ないし、体はすっかり力が抜けちゃって彼の膚とこすれる度にびりびりしびれるみたいになっちゃってるんですよ。  どうしろっていうんですか。  こんなこと考えてないと、正気なんてすぐに手放しちゃいます。  そうなったら、一体何を口走るやら。  こういう時の会話や約束なんてあてにならないものだっていうのは、一刀さんならよくわかっているでしょう。けど、そんなんじゃなくって、なんか悔しいじゃないですか。  負けたみたいで。  そりゃあ、他の皆さんはいいですよ。みーんな、一刀さんにべた惚れですからね。普段の立場なんて全部忘れて、一刀さんの、一刀さんのためだけの牝になればそれでいいでしょう。  でも、ねえ。  私は違うじゃないですか。  嫌いとかはないですけどね。そりゃ、こうして膚を重ねるんですから、情くらいありますけど、でも、じゃあ、一刀さんのことだけ考えられるかって言ったら、それはないんですよ。  私にとって美羽様という存在がある以上、一刀さんはそれよりは劣るわけですから。  それって、心底から一刀さんを好きでいる人たちに対して、ずるしてることになると思うんですよね。  愛してるなんて言えません。まして、おぼれきるなんて許されるわけもないです。  だから、私は必死に意識をつなぎ止めようとします。あの人の指が動く度、彼の舌が膚をこする度、一刀さんのものが私の中でびくびくと蠢く度、手放しそうになる意識の手綱をなんとか取り直して、私は彼に抱かれるんです。  そう、これでいいんです。  これで、安心。  私は体の中で爆発する快楽に、精神の安定を重ねてほっと息をついていました。  ――よっつ  もう、二年になるんですね。  涼州での活動の報告をまとめ、日付を最後に記して、ふと私は思いました。  私と美羽様が捕らえられ、そして、一刀さんに助けてもらって、二年と数ヶ月が過ぎています。  その間、色々とありました。  蜂蜜のために蜂から育ててみたり、歌を歌ってみたり……。  んー?  あれ、たいしたことしてませんね。  一刀さんは大変だったみたいですけどね。主に女性関係で。  ふと彼の事を考えて……疑問が湧きました。  そうして、それを解消しようと、とある人物を訪ねてみたのです。 「……なぜ、わたくし?」  女の私から見ても艶美な仕草で紫苑さんは首を傾げます。 「ご迷惑でしたか?」 「いえ。ただ、なぜなのかしら、と思っただけで」  はい、それをいまから説明します。 「いま、一刀さんに会えないじゃないですか」 「愛紗ちゃんが頑張ってるものね。少し困ったことだけれど……」  私は、最初の最初から語り始めます。いま、一刀さんは、女性陣と会うことを制限されています。どうやら関羽さんが、女性関係をすっきりさせるために彼を『矯正』しようとしているのだとか。  無駄どころか、大変な害悪だと思いますけどね。 「それで、なんだか変なんですよ」 「変って?」 「こう……ふとした瞬間に空しいというか、夜中とか、妙に部屋が冷え冷えとしてるように思ったり」  美羽様を寝かしつけた後、柄でもなく星を見に行ったりするくらい、なんだか妙なんです。 「で、思ったんです」 「なにを?」 「私、実は一刀さんのことを好きなんじゃないかなー、って疑問に」  紫苑さんは、呆れたように私を見ます。 「あなたたちは既にそういう関係なのだと思っていたけど?」 「あ、体の関係はとっくにありますよ? それこそもう二年以上」  それから、彼女が口を挟む前に付け加えました。 「でも、好きとかってなかったんですよ」 「……本当に?」 「そこなんですよー」  覗き込むように訊ねかけられるのに、私も首をひねります。 「いまひとつよくわからなくって。なにしろ、男の人って一刀さんしか知らないですし。周りもそうですよね? 特に魏の人なんて、一刀さん以外は男なんて寄せ付けようともしない人も多いじゃないですか」 「ああ……そういうこと」  紫苑さんは大きく二回うなずきました。 「わたくしは、未亡人だし、豊富な経験から判断もできようと、そういうわけかしら?」 「有り体に言いますと、そうですー」  ついでに言えば、一刀さんへの信頼が盲目的な人は避けたかったというのもありますが、これは黙っておくことにしましょうか。 「そうねえ……。桔梗もいれば、もっとよかったんでしょうけれど……」  紫苑さんは頬に手を当てて少し考えた後で、ゆっくりと話し始めます。 「男女の仲というのは、これはこれで一筋縄ではいかないものなのよ」 「はあ」 「愛と一言で言っても、その関係は、様々なの。同志のような愛情もあれば、家族とほとんど同じような愛情の形もある。たとえ肉体の関係があっても、ね」  この言い方からすると、どうやらそういう関係も経験がおありのようですね。 「もちろん、燃え上がるような恋情が主となる場合もあるわね。よく話題に出て来るのは、こういうったものでしょうね。お話の中でも、たくさんとりあげられるでしょう」 「そうですね。いわゆる女の子が憧れるような類ですよね」 「そう。でも、それだけが恋というわけでも愛というわけでもないの」  紫苑さんは私をゆっくりと眺めながら続けます。 「あなたも一刀さんに抱かれているならわかるでしょうけれど、膚を重ねるというのは、これはこれでなかなかに重要なことなのよ。もちろん、無理強いするようなのは論外としても、肌を許すだけの思いがあるなら、抱かれることで、それは間違いなく深くなる。たとえば、それが友情であったとしても、ね」  逆に完全に駄目になってしまう場合もあるけれど、今回はこれは関係ないわね、と紫苑さんは呟きます。  それはそうですね。私は一刀さんに抱かれて、それで彼が嫌になったとかはありませんから。 「だから、最初は膚を許す程度しか――といってもこれも十分深いものだけれども――思いがなくとも、それがだんだんと育つということはあると思うわ」 「私はその手なんですかね?」  紫苑さんは、けれど、自分が話してきたことを否定するように首を振ります。 「わたくしは……もっと前からあなたは一刀さんに心を許していると思っていたし、いまでもそう思うわ。自分では気づいていないかもしれないけれど」 「なぜです?」 「なぜ? 荊州であんなことをしておいて、なぜ、と?」  彼女が言いたいのは、蜀と呉の人たちを虚仮にして回った時の事でしょう。あれは楽しかったですねえ。 「あれは美羽様が頼まれたからですよぉ。お嬢様は一刀さんの頼みならきいちゃいますしー」 「ええ。美羽ちゃんはそうでしょう。けれど、あなたは、それがもたらすものを理解していたはず。それなのにやった。自分の命も危険にさらしながら」  大げさですね。蜀の人たちは、どうもこのあたり余裕がありません。 「楽しければいいんですよ」 「そこよ」  我が意を得たりというように、彼女は一つ手を打ち合わせます。 「あなたは、そして、美羽ちゃんはそうやって言ってのけられる。これまでも、これからも。そして、そんな自分たちが一刀さんには必要だと、あなたは理解している」 「必要とされてますかね?」 「愛と理想、どちらをとるかと言われて」  突然なにを言い出すんでしょう。私は彼女がなにを言いたいのか理解できませんでした。 「桃香様なら愛こそが理想だと言うでしょう」 「はあ……?」 「けれど、一刀さんは両方を取ろうとする」  比較するというなら、そうなのかもしれません。一刀さんはあれでかなりの欲張りですからね。でも、諦めも早かったりするのが、面白いところですけど。 「でも、両方を取るためには必要なものがある」 「美羽様や私のような人間が必要、ですかぁ? 飛躍してると思いますよぉ?」 「理屈だけではなく、理解できることというものはあるものよ?」  それはそうかもしれませんが、そうなると、これまでの論は一体なんだったのだという話になってしまいます。 「簡単なことよ」  私の不満そうな表情を読んだのでしょう。紫苑さんは優しい笑みで問いかけてきます。 「自分に訊ねてみるといいわ。誰とご飯を食べたいかしら? 誰と寝たいかしら? 誰と笑いたいかしら? あなたの場合なら、美羽ちゃんともう一人は?」 「……そういうことですかねえ、やっぱり」  その人の顔を思い浮かべつつ、私はそう言うしかありませんでした。  ――いつつ  一刀さんは、その夜、私の部屋に来るなり、こう言いました。 「皇帝、やることにしたよ」 「……はあ」  そういう話は聞いていましたし、特に驚くこともないんですが、しかし、なぜそれを決意しておいて、いまここにいるのか理解できません。 「で、なんで、私の所に来てるんです?」 「あれ、だめだった?」 「いえ、別にそんなことはないんですけど……。でも、それ決めたの、今日、ですよね?」 「うん。まあ、そうだよ?」  そう。私の知っている限り、一刀さんが決断したのは今日のはずなんです。  なのに、なんでここに? 「こう、覚悟を決めたのなら決めたで華琳さんのところに行くとかー、癒やしを求めて恋さんとか、静かなのを求めて華雄さんとかー。逆に騒がしいのを……とか……」 「んー」  明らかに私よりふさわしい人がいるでしょうに、今後のことを考えても。  でも、彼はまるで顔色を変えません。逆に不思議そうに見つめられました。 「そうだね。七乃さんの言うとおり、そういう選択もありだったかもしれないな」  一刀さんは言われてみてようやく気づいたとでもいうように、呟きます。 「でも、今晩は七乃さんに会いたかったんだ」 「そ、そうですか……。べ、別にそれならいいんですけど……」  真っ直ぐ見つめて、視線を外せないくらい強い光を込めた瞳と真剣な顔でそうやって告げるのは反則だと思うんですよ。 「あ、そうだ。美羽さま、まだ起きてると思うんですよ。最近、夜更かしが……」 「七乃さん」 「はひっ」  彼の熱い視線から逃げるように早口で言ったのを遮られて名前を呼ばれた途端、変な声が出ちゃいました。 「俺は、七乃さんに会いに来たんだ」 「……ずるい人」  こう言われたら……どうしようもないですよね。  一刀さんのことを好きなんじゃないかと自覚してからの睦み合いは、それまでのものとは、明らかに異なるものに変わりました。  だって、恥ずかしいじゃないですか。  一刀さんに見られるのも。  一刀さんに触れられるのも。  あの時って、好きな人に見せるには、ありえないような顔をしていると思うんですよ。体だって、綺麗だって言ってくれますけど、一刀さんのお相手の中では平凡なほうですしね。  でも、抵抗できないんです。  むずかるように動いても、懇願するように呻いても、許してくれないんです。  私の涙とよだれでぐちゃぐちゃな顔を、一刀さんは愛おしそうに両の掌で包んで観察します。その間も、彼のものが私を貫いていて、もちろん、喉からは嬌声が出っぱなし。  こんな無様な姿を、あの人はいとおしんでくれるんです。  なんて惨い。  なんて嬉しい。  矛盾した感情で、私の頭の中はぐちゃぐちゃになります。体の中も、頭の中もいっしょにかき混ぜられて、まるでどろどろのとろけた煮汁のように感じます。  この人になんとでもされちゃうんだと思います。  この人の好きなように変えて欲しいとも望んでます。  そのまま――つながったまま、扉に背中を押しつけられた姿で犯され続けることもあります。いえ、もしかしたら、それは私が望んだことなのかもしれません。  廊下を通る人の気配を感じ、外から聞こえる声に体を震わせながら、迸りそうになる叫びを押さえつつ、一刀さんのもの突かれる度、眼の奥でちかちかと光が瞬いて、意識が飛びそうになります。  けれど、意識を失うなんて、許されません。  だって、一刀さんが見ているんですから。  ずっと、私の眼を見つめて、私の体を味わってくれているんですから。  たとえ意味のある言葉を発せなくても、まるで力が入らず、彼に全て委ねるような姿勢になっても、一刀さんの眼から視線を外すなんてしちゃいけません。  だから、私は本当にみっともない、どうしようもないくらいとろけきった顔を一刀さんに晒すんです。  外に聞こえるくらい声が出そうになった時は、彼の唇が私の唇をふさいでくれる、そんな絶対的な安心を覚えながら……。  ――むっつ  漢中へ、漢中へ。  皇帝御料車を中心に、十万の軍は進んでいきます。  たったの十万。  ただの蜀だった頃の成都を落とすために、曹魏は五十万の兵を投入したっていうのに、蜀漢の治める漢中に向かうのは、たった十万に過ぎません。  いくら先鋒に華雄、呂布の二人がいて、中軍に江東軍三人組がいて、後詰めに詠さんたちがいるからって……ちょっと無謀なんじゃないですかねえ  だって、この御料車に乗ってるのは、私たち袁家の五人なんですよ。  戦上手とは……ねえ。  そんな不安もよそに、御料車『玄武』は進んでいきます。ごうごうと唸る炉で熱せられた蒸気でその車輪を回して。 「一刀、さっさと燃やすのじゃー。速度が出ておらんぞー」  玄武の展望席に私と二人で陣取っている美羽様が、内部に向けて叫びます。 「了解っ!」  やけくそ気味の声が反響しながら返ってきました。覗いてみれば、せっせと木炭の塊を炉に放り込み続けている一刀さんの姿が大きな歯車や金属の筒の間に小さく見えます。  あーあー、顔も腕も真っ黒にしちゃって。 「ほら、一刀さん、がんばってー」  炉に近いせいでしょう、汗まみれで一刀さんは木炭をかき出しては炉に放り込んでいます。たまにぶわっと炎が吹き出てくるのを避けながらなので、必死の形相です。 「……俺、皇帝なんだよね? ねえ?」 「なにを言うておるのじゃ。当たり前じゃろ?」 「炭まみれで働く陛下ってば、かっこいー!」 「絶対、そんなこと思ってないだろ、ちくしょーっ!」  皇帝陛下の絶叫は、私が覗き窓をぱたりと閉めてしまったので、その向こうからかすかに聞こえるだけでした。 「あら、もういいんですか?」  しばらく後、展望席に上がってきた姿を見て、私は訊ねます。さっきまで真っ黒だった顔も全部綺麗にして、『ぽりえすてる』に身を包んだ一刀さんがそこにいました。 「真桜の部下が代わってくれたよ。そろそろ真っ黒に汚れてばかりじゃいられないし、油を使って実験もしたいようだから」 「炉がもう一つあるとか言ってましたね、そういえば。でも、残念ですね、気晴らしの場を奪われて」 「……なんのことやら」  とぼけるのにも、慣れた方がいいですよ、そろそろ。 「美羽は寝ちゃったか」  私の膝の上で寝息をたてているお嬢様を愛おしげに見下ろして、一刀さんは呟きます。 「しかたありませんね。行軍は大変ですから。疲れもします」 「行軍じゃないさ。巡幸だよ」 「はいはい」  誰も本気になんてしていない名目を述べる一刀さんをいなして、私は手近にあった金属の鼓を引き寄せました。こういう儀礼用の小物が、いくつも転がっているのが、御料車っぽいですよね。  実態は、すごい音をたてて蒸気を噴出する不気味な車なんですけど。  鼓を小さく打ちながら、私は声を張ります。  十字掲げた御遣いさんは  降した兵は千万騎  落とした娘は百億万  はー、ちゃかぽこちゃかぽこ 「……なにそれ」 「戯れ歌ですよ。最近流行ってて」 「無茶な数だなあ」  恐れ入ったというような一刀さんの顔を見て、私は意地悪したくなります。 「ご不満ですかー。じゃあ、こうしましょう」  十字の旗の御遣い様は  落とした将は五十人  漢の将軍、魏の将軍、三四がなくて呉の将軍  はー、ちゃかぽこちゃかぽこ 「勘弁してくれ……」  でも、一刀さん。  あなたは、その五十人全てを受け入れるために、全員を納得させるために戦いに行くんですよね。  本当に、莫迦な人。  ――ななつ 「……七乃さん」  彼の前に立つと、小さな声で言われました。 「行かれるんですか。口説きに」  ここは本陣。まるで似合わない言葉ですが、こう言うしかありません。 「はは、そういう言い方されるとあれだけど……まあ、そうかな」 「ひどい男ですね。こーんなに可愛い奥さんがいるのに、まだ足りませんか」 「ん……ごめん」  そこですぐに頭を下げられちゃうのが、この人のすごいところで、狡いところですよね。 「否定しないってすごいですよねー」 「うん。でもね、俺にとっては一人だって欠けちゃだめなんだ。国を建てるから、それもあるけど、それだけじゃなくて……。一人一人が、かけがえのない俺の大切な人なんだ。俺が……」  そこから先は言葉になりませんでした。二人ともわかっていますから。  私は大きくため息を吐きます。 「だからって、ご自分が出なくても。ここで一刀さんが死んだら、なんの意味もないんですよ? 将たちはともかく、兵たちは本気で偽帝だと思ってるんですから」 「ここで俺が出れば、死者が一万は減る」 「でも、失敗すれば、全滅させなくちゃいけなくなりますよ。皇帝直言に逆らう立場になっちゃうんですから」 「……ああ」  全部引き受ける気なんですよね、この人は。  幾人もの手を借りて。  何人もの力を頼って。  それでも、最後は自分で決めていく。  そういう人です。 「私、知ってるんですよ」  だから、私、言わずにはいられませんでした。 「一刀さんが大事な決断を思い出して、げーげー吐いたりしてること」 「……そうか」 「ある程度勘が鋭くて、政治の世界を垣間見たことのある人間はみんな知ってます。でも、言えない。言っちゃいけないことも知っている」 「それでも七乃さんは言うんだね」 「ええ、だって、私は悪人ですから」  そう言った途端、一刀さんは、笑いました。 「優しいね、七乃さん」  楽しそうに、本当に優しい笑顔を浮かべました。 「ええ。もちろん。でも残酷ですよ。そうして吐いたり、悪夢にうなされたり、夜、一人眠れずに亡霊たちに責め立てられたって、私はなにもしません。出来ません。ただ、その後で、抱きしめて眠ってあげるくらいならしてあげてもいいですよ。美羽様と一緒に」 「はは、たしかに残酷だ。でも、本当に優しい」 「……行かれるんですね」  別に止められるとは思っていません。  けれど、そう、けれど。  一刀さんがそこまでやることはないんだと言ってあげる人がいてもいいじゃないですか。だって、本当に、この人が背負う必要はないんですから。  それでも。 「ああ、行く。決断を後悔することはある。それを下す重圧に負けそうになることもある。だが、決断を下した以上は事を成し遂げる。それが俺の仕事だ」 「そうですか。では、参りましょうか」  恭しく差し出した手を、一刀さんはじっと見ます。その視線の熱さで、背中に芯が通ったような気がしました。 「行くの?」 「もちろんお供しますよ。我が良人の晴れ舞台。美羽様も、麗羽様もここを譲る気はないでしょう」 「まあ……そうか。猪々子たちには悪いけど退いてもらわないとだめだね」 「相手を警戒させますからね。その点、私たちなら……。それでも、肉の盾にはなれますけどね」 「……させないよ」  決然と、彼は言います。この人に死ぬ気なんてありません。彼が死んだら、私も美羽様も傷つくと知っていますから。  だからこそ、死なせないでも死なないでもなく、させないと、そう言うのです。 「信じてます」 「行くぞ、七乃」  はじめて、真名を呼び捨てにされました。  なにか、恐れるような。  なにか、壊れてしまうんじゃないか、そんな不安と。  そして、とんでもなく強い意志が同居した呼びかけ。  あ、駄目だな、ってこの時、思いました。 「はいっ」  だって、こんなに嬉しそうに返事してるんですもの、私。  ――かなた  あの人が……大陸を統べる皇帝としてあの人が行くその横を歩きながら、私は思い出していました。いつのことだったか、もうよく覚えていない、けれど、その出来事だけはなぜか切り取ったように鮮明に覚えているある時間を。 「俺の世界の算用数字だと、一と七はこんな感じでさ」  そう言うと、一刀さんは、紙の上に縦棒を一本書きます。ほんのわずかに斜めになっているでしょうか。その横に頭に横棒をつけた縦棒。  まあ、似ていると言われれば似ていますかね。 「刀と乃も似てるしね」  これも紙に書いていきます。たしかに似ている方でしょうが、それがどうしたんでしょうね。 「で、こうやって並べて書くと」  一刀と七乃。  二つの名前が並べられます。  上下に並んだそれを彼は、満面の笑みと共に掲げました。 「ほら、そっくりだろ?」 「……ええと、それ、嬉しいんですか?」  嬉しいのでしょうね。  なにしろ、幸せいっぱいの表情で私に差し出してくるんですから。  まるで、世界に横たわる重大な真実を発見したみたいに。 「うん。どうでもいいことだけどさ。好きな人の名前と、自分の名前が似てたら、なんとなく嬉しくない? しかも、七乃さんのほうは真名だしさ」 「そう……ですね」 「そうそう、一と七を足すと八だけど、俺たちの世界じゃ、この数字を横向きにすると無限を意味してて……」  楽しそうに、本当に楽しそうに、私と自分の名前からこじつけて、いろんなことを語る一刀さん。  まったく、莫迦みたいですよね。  そんな、あの人の姿がおかしくて、おかしくて。  私……泣いちゃいました。 「え! あ、え? い、嫌だった? ご、ごめ……」 「……違いますよぅ」  慌てて紙をしまおうとする一刀さんに、思わず泣き笑いになりながら言います。言われた途端、筆で全部消したりはしないんですよね、この人は。 「嫌で泣いてるんじゃありません。でも」 「でも?」 「なんで泣いてるかは教えてあげません」 「ええぇっ」  これくらいの意地悪許されると思うんです。  こんなにも人の心を掻き乱す人には。  私の真名、おかしいと思いませんか。  いくつもの姿を持つ女なんて、真名に刻まれて。  でも、わかったんです。  それでいいんだって。  だって、あの人は一人なんですから。  この世にたった一人。  あの人の私だけじゃない。美羽様のための私も、私を全部受け止めてくれると思える人。  ええ、受け止めて下さいよ。いろんな事に気づいちゃった責任、とってもらいますから。  覚悟してください、一刀さん。      (了)