「無じる真√N57」  日が地平へと沈み、夜の時間に世界が慣れ始めた頃。  賈駆は、張遼の自室にて、彼女と共にいた。今夜決行すべきことについての話合いのために。  それは、この烏丸族の士気向上を図るのと同じ……いや、それ以上に彼女たちにとって重要なこと。  そもそも今回の件における裏の理由がそれだった。  切欠は……親友の変化。  些細であるようで、非常に大きなものだった。また、賈駆にはそれを見過ごすことができない理由もあった。  大切な友であり家族でもある董卓。  芯の強さはあれど、どこかあどけなさの残り香が感じられる少女だった。  ある日を境に、その穏やかな少女の何げない仕草や表情に大人びた、というよりはむしろ女の色が入り交じるようになっていた。そして、それは賈駆に彼女をより一層輝かしく見せていた。 (置いていかれたような……そんな気がしたっけ)  爪などの手入れをしている様子、一刀を見る瞳の色、笑顔の質、そんな些細な部分にも違いが現れていた。長く共に居た賈駆にはそれがよくわかった。 (月は……きっと) 「どないしたん?」 「え? 何でもないわよ。ちょっと、考え事をね」  目の前にぬっと現れた張遼の顔に若干驚き、椅子から転げ落ちそうになりながらも賈駆は首を横に振る。 「ふうん。もしかして月に先超された思っとる……とか?」 「なっ!? 何を――」 「どうも最近、月の様子が変わった感じするもんなぁ」 「……本当にそう思ってるの?」 「ん? そうやな、なんか以前以上に一刀にぞっこんちゅうのがこう雰囲気というか表情というか……ちょっと仕草の感じっちゅうか、ま、そういうところからこう伝わってくる気がするんや」 「やっぱり、そうなのかしら」 「理由はやっぱ、女になったっちゅうことやろうな」  頭の後ろで手を組むような体勢で背もたれに大きく寄りかかると張遼は天井を見上げる。 「なんか、月。凄く幸せそうよね」  もっとも、これまでが不幸であったというわけではない。少なくとも、一刀に救われてからの日々において彼女の親友を自負する賈駆が見る限り、董卓はとても一日一日を楽しみ、穏やかな生活を送っていた。  だが、そんな董卓も今は更に一段と嬉々とした空気を身に纏っている。これまでとはまた違った大きな幸せを手に入れたとでもいうような感じが賈駆にはしていた。  べ、別に羨ましくなんか――。  董卓の変化を見抜いた当初に抱いた感想がそれだった。  だが、徐々にそれは違う気がした。 「ま、そもそもの話、今回はその遅れを取り戻すためにやってきたんやけどな」  賈駆へと視線を降ろすと、張遼はニシシと笑う。 「それはそうだけど……って、ボクは違うわよ!」 「かぁーっ! この期に及んでまだそんなこと言うとるんか」 「何よ」 「あんたが正直になれんからこうして他のやつらがおらん状況を作ったんやろ?」 「ぐっ、そ、それはその」  真っ当な意見に賈駆は息を呑みそうになる。  張遼は厳しく問い詰めるような表情から一転して、憂いを含む瞳で賈駆を見つめる。 「それとも、このまま月との距離が空いてもええんか?」 「っ!? そ、それは……そうね、あくまで月と一緒にいるためのことよね! うん、そうなのよ」 「はあ、とことん素直になれんやっちゃなあ。ま、ウチとしても正直なとこ、ちょっぴり恥ずかしゅう思てたわけやし、ええ機会やったんやけどな」 「なによ。結局、霞自身が望んでたことなんじゃない」 「そうや。ウチは自分の想いに正直に生きる。それだけや」 「…………そう」  何故だろうか、賈駆は心の何処かで目の前の女性に対して一瞬ではあるが、敗北感を覚えてしまった。  †  さすがに夜中とあって、一刀は自分に割り当てられた部屋の中、寝台で横になっていた。  手元には書簡。なんとか得ることができたここでの仕事に関する書類である。  やはり、休みは有り難いが忙しさから急に解放されると落ち着かないのだ。  うっすらとした灯りの中、書類へと目を通していると外で何か揉めているような気配を察知する。 「ん? こんな遅くに何だ?」  上体を入り口の方へ向けると、一刀は枕元に隠してある短刀を手にとって足音を忍ばせながらそっと扉へと歩み寄る。 「一刀! 邪魔するで!」 「うわっ、びっくりしたぁ!」  唐突に扉を開けて入ってきたのは張遼だった。おさげを揺らしながら現れた彼女の片腕は何故か外に伸びたままである。  急な来訪で早鐘のように鼓動を打つ胸を押さえながら一刀は一先ず短刀を仕舞う事にする。  張遼は、以前入り口に立ったままでいる。 「いい加減、観念しい!」 「……ちょ、ちょっと! 引っ張らないで……い、いや……っ!?」 「…………え?」  一刀は何度も瞳を瞬かせる。目の前にいる賈駆の姿を網膜に焼き付けようとじっと見つめる。 「そ、そんなに見るな! ちょ、ちょっと……その視線はなんかいやー!」  張遼の姿を見たときから予想は付いていた。だが、これは流石に一刀としても何も言葉が出てこない。  賈駆は、頭の天辺から足のつま先まで全てを張遼に真似ている。服装から髪型までそっくりだった。  丈が余り気味な袴は、本来は下駄を履いているであろう足下を隠してしまっている。その代わりにぱっくりと空いた股立ちからは張遼が履いていた時以上にきわどい光景を見受けられる。  膝近くから腰まで横から見たらもろ出しの状態。しかも大きさが合わないために隙間からチラチラ覗く禁断の三角地帯は鏃以上にえぐい角度の布が見え隠れしている。 「……か、可愛やらしい」 「はぁ!? 意味分からない言葉を発してるんじゃないわよ――う、うわわっ!?」  高揚した顔で怒鳴る賈駆だが、こちらもだぶだぶになっている羽織がずるりと肩から床へと落下しそうになる。慌ててそれを抑える賈駆の胸元がよりしっかりと目に映る。  ぎちぎちに巻かれたサラシによって隠された胸部だが、そこ以外は素肌が露わとなっている。  へそまで出ている彼女を見た一刀には違和感を覚えていた。 「…………詰め物してないか?」 「っ!? こ、この馬鹿ぁ!」 「年頃の娘にそういうツッコミはあかんて!」 「ぱっど!?」  賈駆の蹴りと張遼のぐーのどつきに挟まれて一刀は奇声を上げてきりもみしながら床に倒れる。 「どこ見てるのよ、このド変態! しかも、そういうこと普通言う!?」 「悪い悪い。いや、詠も俺を意識してくれたのかと思ってさ」  一刀は照れ隠しに笑みを浮かべて頭を掻く。 「か、勘違いするんじゃないわよ! に、にやにやするなー! もう……」 「なはは、しゃあないって。何と言っても一刀やで、そら期待したらあかんわ」 「何を!?」 「決まっとるやん。そら、なあ?」 「ボクに振らないでよ。それに、詰め物っていうけどねぇ、たまたま、布がボクの体型じゃちょっと……」 「なるほど、余ったんだな。サラシの持ち主とのおっぱいの大きさにおける差がそれだけ」 「ふん!」 「――っ!?」  賈駆の放つ低めの蹴りが一刀のすねを捉える。 「ぐあぁぁぁぁ!」 「学習せんやっちゃな」  一刀に呆れた眼を向けながら張遼が肩を竦める。 「そ、そういえば、霞もまた珍しい格好を」 「どや? 似合っとる?」  張遼は眼鏡をくいっとあげてにやりと笑う。  紺色のメイド服に白い前掛け。  三つ編みにしたおさげもゆらゆらと揺れており、今の彼女は髪型までもがまさに賈駆そのものである。  ただ、服は賈駆から借りたのだろう。寸法が全く合っていない。 「なんというか、メイド……うん、一応メイドなのかな」 「えー、どっか変なんか?」  首を傾げると張遼は不思議そうな顔でくるりと一回転する。ふわりと腰布が舞うのだが……賈駆に合わせたものを着ているために短い丈からは眩しいほどの素足と下着が丸見えだった。 「詠の格好か……だけど、ストッキングはどうしたんだ?」 「あー、あれ? あれなあ……ちょっと、ウチにはあわへんからやめた」 「そ、そんな……」  あまりの衝撃に一刀は膝を突き項垂れる。 (ストッキング越しのきめ細やかな肌にはロマンが……夢が……) 「何してんの、こいつ」 「な、なんやろ……凄い罪悪感が……」 「にしても、霞も詠も……交換するだけでそれだけエロチックになるとはな」 「切り替えはやっ!」 「……えろちっく?」 「ま、色っぽいとでも思ってくれ」  落ち込んでいても仕方がない。せめて現実として目の前にある幻想のような映像を目に焼き付けようと一刀は熱い眼差しで二人を見つめる。 「本当にあんたってそういう方面にしか意識が向いてないわよね」 「…………それは流石にあんまりだろ」 「まあまあ、ええやん。何も思ってもらえへんよりは断然マシやろ?」 「そ、それはまあ……そうだけど……って、ボクは違うからねっ!」  渋々と頷きかける賈駆がすぐに訂正を入れる。照れからだろうか微妙に頬が赤くなっている。  †  一頻り普段と違う格好、所謂〝いめちぇん〟というものを行ったのを一刀に見せると、彼は満足そうに笑みを浮かべた。  それだけでも張遼としては成功だった。やはり恥ずかしいという想いはあれど、それ以上に一刀に喜んでほしかったから。  内心、ほっとしている張遼たちを見ながら一刀は緩んでいた表情を落ち着かせる。 「それで、結局のところ、何の用があって来たんだ?」 「そ、それは……ボ、ボクは知らないわ」 「ちょっ、詠!」  ぷいっとそっぽを向いて惚ける賈駆に張遼はぎょっとする。 「し、知らないったら知らないの! し、霞が勝手にしたことなのよ」 「……ふうん。ま、ええよ。それでも」  ぴんと思いついたことがあり、張遼は賈駆の言葉に訂正はせず、一刀との距離を詰める。 「ど、どうしたんだ……霞?」  じりじりと後退する一刀を更に追い詰め、寝台の前へと追い込む。  そこまできて、緊張感が張遼の心を締め付ける。  回らなくなりそうな口をなんとか動かしてぼそぼそと言葉を発していく。 「その……な、ウチって女らしゅうとこあんまないやん? ……けど、けどな」  頬が熱くなり、胸の鼓動が速まっていく。一刀から視線を逸らしたくなる。それでもちらちらと彼を見ながら張遼は思いきって想いを伝える。 「一刀の事、むっちゃ好きなんよ」  恐る恐る彼の反応を伺うと、一刀は真剣な顔をしている。  その瞳に宿る真っ直ぐな眼差しが、張遼の話をちゃんと聞くと物語っている。  内心に迷いを抱えながらも張遼は言葉をさぐりさぐり紡いでいく。 「正直な。ウチ、ちょっと不安になってもうてん」 「不安?」 「その……ほら、一度、一刀に迫ろうとして約束したやろ? それから、一刀ってばその話全然してこうへんかったやん」 「まあ、そう……だな」  一度、一刀に口付け以上の事を求めようとしたことがあった。  それで彼には自分の思いは伝わったと信じていた。それでも、あまりにも普段通りに生活している彼を見て張遼の中に、小さな不安の種がまかれた。  やがてそれは青州へと赴いた彼とスレ違いになったことで芽を出した。 (あんとき……やな。本当に一刀に心奪われたの自覚したんは……)  あの時、張遼は無性に腹が立った。そして、同じくらい悲しかった。自分を頼ってほしいと思った、彼の力になりたかった。なのに、彼は一人で突っ走ってしまった。  だから、つい暴れてしまった。  わかっている。自分は彼が動くとき、別の仕事で立ち会っていなかったのだから仕方の無いことだと。 (理屈じゃ……ないんや)  頭では理解しているつもりでも心はどうしても御せなかったのだ。これだけは自身でもどうしようもない。  そして、あの運命の日。  袁術が引き起こした大騒動の中、刃を交えた関羽の見せた表情、言葉……それらが、張遼に一つの決意をさせることになった。  それでも張遼には一歩が踏み出せなかった。何故なら――、 「……せやから、ひょっとしたらウチ嫌われてもうたんかなって」  悪い方へと考えてしまってどうしようもなかったのだ。 「そんなことあるわけないだろ。霞は、とても魅力的だ。だから、絶対嫌いになんてならないよ。むしろ、はっきりしない俺の方が愛想尽かされてもおかしくなかったと思う」 「一刀がウチをどう思うとるかなんてわからへんよ。やっぱりな、ちゃんと言葉にして欲しいんや。態度で示してもらいたいねん」 「……そうか。そうだよな。ごめん」 「阿呆。ホンマに寂しかってん」 「本気なんだな。霞」 「当たり前や! いくらウチかて冗談でこんなこと長々語ったりせえへんわ!」  あまりにも鈍い彼に張遼も流石にむっとしてしまう。  本当にわかっているのだろうか。張遼が心の奥底に隠していた想いを、それによる悩み、迷いを。  一刀は、静かに数度頷くと張遼の瞳をのぞき込んでくる。 「なあ、霞。ずっと気になってたんだが、本当に俺のことを……その、良く想ってくれてるのか?」 「意味がようわからへんな」 「いや。正直、俺のどこを良いと思ったのかさっぱりでな」 「理由か? そうやな……確かにウチ、どっか興味引かれとった。せやけど、せいぜいおもろいやっちゃなあ、くらいにしか思っとらんかったよ。初めの頃はな」  そう言いながら張遼は腕組みして深々と頷く。 「でもな、一緒におるうちに一刀がどういうやつなのか理解してきたんや。するとな、じわじわと染みこんできたっちゅうんかな……その、一刀の持っとる決して計ることの出来ひん魅力が」 「俺の魅力、ねえ」 「あー! さては、信じとらんな」  歯切れの悪い一刀に、張遼はニブチンな彼は理解出来ていないのではと疑いを抱く。 「とにかく。ウチは色んな事を一緒にやって見て聞いて、一刀のことを好きになった。それは間違いないで」  張遼がそうハッキリと言い放つと一刀は何やら沈思しだす。  一体、彼は何故そこまで慎重になっているのか不思議だった。その様子は、まるで何かを危惧しているかのようですらある。  ひょっとしたら、そんな想いに心を震わせて張遼は口を開く。 「あ、あんな。実はウチ……いや、これはやめとくわ」 「え? なんだよ。気になるじゃないか」 「まあまあ、後へのお楽しみや。何しろ、ウチの一存では話せへんからな」  つい告げてしまいそうになる自分を抑えると、張遼は賈駆の方をちらりと見て小さく頷くと、誤魔化すように笑うのだった。  その後、一刀の追求をのらりくらりと交わしていると、彼は諦めがついたのか深く息を吐いて張遼をじっと見る。 「何にせよ。霞の気持ちはわかった。俺も男だ、正直に返答しよう」  静かな間がゆっくりと流れていく。 「霞のこと……その、好きだよ」 「そっか。うん、そっか……うんうん」  同じ言葉を繰り返し呟きながら張遼は口元を綻ばせて一人頷き続ける。 (好きだよ……か)  心の中を一刀の言葉が何度も反響するようにして満たしていく。  一頻り言葉を堪能すると、張遼はメイド服の裾を指で弄りながらもじもじとしながら一刀に次を切り出す。 「な、なあ……それでなんやけどな」 「ん?」 「抱いてくれへんか、今」 「そうだな、霞がそれを望むのなら。受け止める気はあるよ」 「なんか、それやと仕方ないから……みたいやな」  頬をぷくっと膨らませて不満の意を露わにするような顔で意地悪すると、一刀は苦笑混じりにやれやれと肩を竦める。 「……俺は霞が抱きたい。霞とエッチなことしたいなー」 「にひひ。ほなら、しゃーないから相手したる。その代わり、たーっぷり愛してや」  一刀はふっと息を漏らすと、どうしても頬が緩みニヤニヤとだらしのない笑みを浮かべてしまう張遼を後ろから抱え込むようにして寝台の上へと腰掛けた。  †  張遼は人形のように一刀の膝の上へ腰掛けさせられる。彼の急な行動に驚きはしたが、張遼はされるがままにしていた。  一刀の胸に背を預けるようにして座ると、向かいで突っ立ったままそっぽを向いている賈駆と対面することになる。 (詠……)  ここまできても素直になれない少女を一瞥すると、張遼は腰から回される一刀の腕にそっと触れる。  張遼のお腹の辺りで手を組むと、一刀は彼女の肩にしなだれかかってくる。 「こうやってみると霞もやっぱり女の子なんだなって改めて気付かされるな」 「な、なに言うとるんや。そら、性別は女やけど……ウチ……全然女らしくないし……」  一刀の言葉に頬を掻きながら張遼は応える。 「いやいや、メイド服もよく似合ってるし、十分女の子だと思うよ、俺は」  一刀に耳元で柔らかく囁かれ、張遼は口をもごもととさせてしまう。 「そ、その……ウチな、ええと――っ!」  一刀によって半ば強引に振り向かされた張遼の唇へ、暖かく柔らかいものが重なねられる。 「んむっ……ん……ちゅっ」 「……っ、あっ……ん」  肩越しの接吻。  張遼の脳内は口付けを交わしているだけでとろけそうになる。まるで、甘いエキスを口から口へ注ぎ込まれているかのようだ。  一頻り、互いを貪り合うような口付けをすると、一刀が顔を離す。  銀の架け橋が唇同士の合間に架かる。 「んはっ……はぁ、はぁ」  荒々しく意気を吐き出す張遼の襟元をごつごつとした掌が解いていく。その手は、隙間ができるやいなや、なめらかな動きで忍び込んでくる。  張遼の口元からは「ん……」という声が漏れる。  寸法があっていないメイド服がぴっちりと張り付いた胸元、その表面をもぞもぞと蠢き、徐々に下降していく手の姿がくっきりと浮かび上がっている。 「ん……っ、はうっ! くぅ……んっ」  肌の上を這う指の感触にぴくんと撥ね、張遼は思わず目をきゅっと瞑ってしまう。  蜘蛛のようにわさわさと動く手が普段のサラシとはまた異なった布地に包まれている張遼の撓わな果実をわしっと掴む。 「ん……やっぱ、窮屈だな。霞の肌とぴったりくっついたままだ」 「く……っ、んぅ……あっ、う、ウチのおっぱい鷲掴みにされとる」  布地を盛り上げる乳房とそこに纏わり付いている大きめの手によって張遼は欲情を焚きつけられる。  静かに丁寧な胸への愛撫。  手を差し入れる余裕のない場所で動く手は常時、張遼の肌に触れたままでぽかぽかと暖かくなってくる。 「なかなか……動かしにくい……な」 「はぁ……んっ……」  張遼の口から溢れる吐息が熱っぽくなっていく。不自由ゆえに無骨なものとなる手の動きがもどかしく、それでいて焦らされる事による快感を呼び起こす。  徐々に速まる鼓動、潤む瞳。  高まる感情に支配されつつある中、張遼の視界には少女の姿が映る。  先程までと同じくそっぽを向いているが、その目線だけはちらちらと張遼たちの様子を窺っている。  見られている。その事実が張遼に気恥ずかしさを抱かせ、また同時に優越感のようなものを覚えさせる。 「は……んっ、え、えい……」 「っ!?」  張遼は彼女と視線を合わせてかすかに微笑む。自分が今とても幸せな気持ちに満たされていることを見せつけるように。  賈駆は一瞬、驚いたようだが、すぐに顔を逸らした。だが、その瞳は揺らぎ、未だに張遼の方と余所を行き来している。  その間にも一刀の手は緩急を付けながら張遼の胸を揉み続けている。  徐々にほぐしていくように丹念にぐにぐにとこねくり回されて形を変える自分の胸。布地ごしでもくっきりと浮かび上がるその姿が妙にいやらしく感じられる。  先端で硬みを帯びていく蕾の辺りをブラ越しに爪で擦られるたびにぴりっとした刺激が脳まで走る。 「くぅ……んっ、んあぁっ」  段々、張遼の頭の中から賈駆のことが薄れていきそうになる。 「ん……はっあっ、ん……」  張遼が身もだえする隙に、ブラの中にまで滑り込む掌。  乳首を一刀の力強い指が挟み込みぐりぐりとねじるように弄くり回す。 「くぁっ……ふぅ……ん」  歯を食いしばりながら声を堪えようとするが、ふうふうと鼻息の荒さが増すだけだった。  †  しばらく張遼のハリのあるおっぱいを堪能し続けた一刀は、片手を静かに彼女の腰へと下ろしていく。  ほとんど、下着が丸見えな状態になってしまう程に丈の短い腰布、その裾をつまむと一刀はゆっくりと持ち上げる。  上昇していく腕に張遼の手がそっと添えられる。 「どうしたんだ?」 「や、やっぱ……恥ずかしゅうて……そのもう少し待っ――んんっ!」  抵抗しようとする張遼だが、服の中に入ったままの手で蕾を転がすと彼女の動きがぴたりととまる。 「それじゃ……」  そう言うと、一刀は腰布の上昇を再開していく。そろそろと持ち上げていくと、ほんの僅かにめくるだけで下着が露わとなってしまった。 「なんというか……この格好だと淫乱メイドって感じだな」 「い、いんら……んぅっ。う、ウチ……そ、そんな……」  一つ段落を終えた一刀の掌は張遼の腿へと触れる。すいつくような肌は非常に手触りが良く、一刀はほうっと感嘆の息を漏らす。そのまま、膝の方から腰へと向かってすっとなぞっていく。  普段賈駆の下半身を覆っている薄手な編地の長靴下は残念なことに彼女は履いていない。そのため独特の感触は味わえなかったが、代わりに張遼と肌同士での触れあいをじっくりと楽しむことができる。 「戦場に出たりしてるはずなのに、霞の肌、すごくきめ細やだ」 「……はぅ。そ、そないなこと、あらへんよ……ウチなんて結構がさつやし……」  ぼそぼそと応える張遼の様子が普段の豪快な彼女との差異を生み出して一刀の心に訴えかけてくるものがある。 「……ふ……んっ……くぅ……っ」  きつい上着の中で掌を器用に動かしながら、胸に絡みつくようにして愛撫をしていく。  太腿をさする手を何度も往復させて、段々と中心を足の付け根へと移動させる。 「そろそろかな」 「……っ」  張遼が息を呑む。肩越しに彼女の顔をのぞき見ると、頬を真っ赤にして口をつぐんでいる。  少しだけ一刀はこの部屋にいる第三者でもある少女が気になったが、今は張遼のことだけを考えることにして意識から外した。  一刀はすっと伸ばした手で張遼の秘部を覆い隠す布地へと触れる。ほんのりと湿り気を帯びたそこは布地の上からでも十分に指を濡らした。  †  一刀に女の子と言われて嬉しいのに無性に恥ずかしく、胸がドキドキと高鳴る。  動悸が一向に収まらない、血流が激しくなったかのように全身がかっと熱くなっていく。  徐々に迫りくる一刀の手。期待しているようで不安でもある。  そんな感情の起伏に振り回されている張遼の頭からすっかり抜け落ちつつあった少女の姿が再度目に飛び込んでくる。 「…………」  賈駆は一言も発していなかった。  そのために張遼は彼女の存在を忘れかけていた。  賈駆はいつからなのか、そっぽを向くことを止め、目を真開いてじっと張遼を凝視している。頬は赤く染まり、口から漏れる吐息が艶めかしい。その喉が唾を飲み込んでこくんと動く。 (……え、詠……)  真剣な視線に晒されているという事態が張遼の身体を奥の方からきゅうきゅうと切なくさせる。  桜のつぼみのような先端を摘まれ息を呑む。  布地越しに秘部を指でさすられて吐息が漏れる。 (え、詠に聞こえとるんかな……)  そうとわかっていても張遼自身にも止めることが出来ない。口からは止めどなく吐息が溢れ続ける。 「は……あっ、んぅ……はっ」  肉体を弄られることによる直接的な快感と第三者の視線による緊張感によって張遼は板挟みにされる。 「ふぅ、ん……っ」  悶える彼女の胸元をこねくり回す一方で、一刀の手が下着をぐいとずらして秘唇を外気に触れさせる。  ひんやりとした感触に張遼はぞわりと背筋を震わせる。  下着がずれて露わと成った箇所に指がねじ込まれ、徐々に湿り気を帯びてきた花弁の戸口を一刀の指が優しく撫でる。 「あ……っ、んくっ……」  一刀だけでなく、賈駆にまで見られている。そう思えば思うほど、一刀に弄られている陰部の奥底がうずき、熱を帯びていく。 気持ちが昂ぶり、頭に血が集まっていく。 「ふ……っ、うっ、ん……っ」 「霞のここ、大分濡れてるな……」 「……一刀と触れ合ってるからやよ」 「そう言って貰えるのは、男として光栄だよ」  柔らかい声で一刀がそう応えると彼の口から漏れる息が耳元に掛かる。  くすぐったく感じるはずのそれはぞくりと背筋から頭へと快感の電流を走らせ張遼の身体に快感の波を起こし一瞬身体が静止する。  その一瞬の間をつくようにして、つぷっと着水するような音をさせながら一刀の指が張遼の中へと入りこんでくる。 「ん……っ、は……うぅ」  これまでに感じたことのない感覚に張遼は酔い始めていた。  思いを寄せる男にこうして抱きしめられながら愛して貰っている、少なくとも、この世界での道を張遼が歩み始めて以来、これ程幸せだと思えた経験はないだろう。 (女として……男を求める……ってことなんやな)  止めどなく溢れる荒く弾んだ息を何度も吐き出す張遼、その熱っぽくなってきた頭でもそのことがわかる。  一刀が指を奥へと進める度にくちゅという音が張遼の耳へと届く。 (は……あぁ……な、なんかぼうっと……ふぁっ)  朦朧とする意識。  張遼は、既に賈駆に見られていることなどどうでも良くなってきている自分にすら気付かなかった。 「霞の中、大分熱くなってるな」 「んぁっ……い、一々……は……っ、伝えんでも……ええぇ……っ!」  ゆっくりと動き始める太い指。張遼の蜜壺を掻き回すようにして蠢く。 「は……あっ、ん……くぅっ……つっ、う……」  完全に吐息を堪えることは不可能となっていた。激しい息遣い、宙を浮く視線。張遼の意識は既に彼女の制御下から外れている。  こりこりとした乳首が転がされる度に切ないほどの快楽の波が押し寄せ、膣内のあちこちを刺激される度に電流のように衝撃的な快感が全身を走り、張遼の脳からあの甘い何かを放出させる。  こねくり回された乳房はもう完全に一刀の掌に順応して、まるで元から一つであったかのように収まっている。  下腹部からはくちゅくちゅと湿った音が発せられ部屋中へと飛び交う。 (……も、もう、何も……わからへん)  張遼は自分をここまで追い込んでいるのが一刀であるということ以外、もう何もかもを意識の外へと投げ捨ててしまっていた。 「あ……あんっ、も、もう……あか、んぅ! くふぅ……っ!」  一刀の指がとどめとばかりに包皮の上からクリトリスをつねった瞬間、張遼の瞳に無数の星が瞬き、瞬間、彼女の目の前は真っ白になった。 「あ、うっ、も……あぁぁぁ!」  がくがくと震える張遼の身体。一刀の意外とがっしりとした腕に支えられたまま何度も震えると、彼女はやがて事切れたように彼に全体重を預けるようにしてもたれかかった。  †  賈駆は目の前で行われた行為に顔中を真っ赤にしていた。  初めのうちは賈駆の方へ意味ありげな視線を向けてきたりと余裕を見せていた張遼だったが、次第に一刀からの寵愛を受けて性に溺れていくかのように一意専心に悦びに身も心も任せていた。 (だけど、最後の瞬間に見せた霞の顔、綺麗だったわね……)  張遼は吐息も視線も乱れていたはずなのに、最後の瞬間を迎えた彼女はとても艶やかで普段の彼女からは想像出来ない程に美麗な表情をしていた。  ただ、そんな中でも一貫していたのはどこまでも幸福感に充ち満ちた空気を発散していたこと。 「……なによ」  賈駆は、不思議と無性な腹立たしさを覚えていた。  その理由が親友どころか張遼にまで先を越されかねないということを認めたくはないと思ってしまっていることであることもまた彼女の苛立ちを起こさせる。  賈駆にはもう既に自分がどうなっているのか全くわからなくなっていた。 (なんでよ……なんで、こんな悔しくて……切ないのよ!)  二の足を踏んで、傍観に徹するだけにしてしまおうかとすら思っていたのに賈駆は胸の内が妙にざわつき始め、同時に呼吸も弾み気味になっていた。 「……ふぅ。さて、詠はどうするんだ?」 「え? ボ、ボク……あ! そ、そうよ、ボ、ボク……まだ用事が」  この期に及んで、まだ気持ちが後ずさりしてしまう。 「えーいー」  戸惑う賈駆の真名を地の底を這うようなおどろおどろしい声が呼ぶ。驚いてそちらを見ると、荒い息と混じり合って妙な迫力を滲ませる影がゆっくりと近づいてくる。  怪が発したかのような声色に身を竦ませた賈駆の腕を一本の手が掴む。 「ひっ」 「はあ、はあ……あかんなあ。逃げる機会はいくらでもあったはずやのにウチが果てるまでおった。それやのに未だに逃げようなんて……なあ、詠? ウチもあんたにかわええとこ見せて貰わんと割に合わへん。そう思わへんかなあ? はあ、はあ」 「そ、そんな……い、いや待って……というか、その乱れた息がなんか怖い――アッ!」  賈駆の腕を掴む手に力を込められる。  彼女は張遼によって引きずられていく、その指は二の腕に食い込み到底賈駆には振り解いたり逃げたりはできそうにない。  そうこうしているうちに賈駆は一刀の元へと差し出されてしまう。 「さ、可愛がってもらい」  張遼に背中をどん、と押されて賈駆はよろめきがちに一刀の胸へと飛び込むようにしなだれかかってしまう。 「なあ、詠……どうなんだ」 「な、何がよ!」 「だから、詠の本当の気持ち、だよ」  一刀がしっかりとした声で訊ねてくる。  その落ち着きぶりは、先程まで張遼の乱れる姿に鼻息を荒くしていた人物とは思えない程だった。  賈駆は少年と眼を合わせることが出来ず、白い上着の開いた胸元に顔を埋めて表情を隠す。 (汗かいたからかしら……ちょっと湿ってる)  かすかな湿り気と同時に、賈駆の鼻腔に雄独特の匂いが染みこんでくる。きゅうっと中心部が疼き、どくんと強く脈打つ。 「詠は俺のこと……嫌いか?」 「そ、それは……その……。あぁ、もう! どうせボクもあんたにやられちゃったわよ! 惚れてるわよ!」 「そうか……」 「な、何よ。笑いたければ笑いなさいよ!」  妙に静かな声になる一刀に賈駆は彼の胸に埋めたまま顔がかっかっと熱くなってくるのを感じる。それは怒りからかはたまた別の……胸の中にうずまく感情によるものか。 「……凄く嬉しいよ。詠」 「……そんなに強く抱きしめないでよ」 「ごめんごめん」  口では謝罪の言葉を述べていても賈駆の背中に回された腕の力は一向に緩まない。 「……もう」  ため息混じりにそう呟くと賈駆はそっと彼の背に手を回して眼を閉じると、一刀の感触をじっくりと味わう。  どくどくという心臓の音が耳に届く。それは一刀のものか、それとも賈駆のものか今はもうわからない。 「詠。聞こえるか、俺の鼓動。拍子が早くなってるだろ。詠に告白してもらって俺の心が飛び跳ねてるんだ」 「こ……こくはっ!?」  言葉にされることで顔を覗かせる羞恥の心。 (そ、そうか……ボクとしたことが……ああ、なんて恥ずかしいことを!) 「なあ、詠」 「…………何?」 「さっきの霞みたいにしても……いいか?」 「ふん。好きにしなさいよ」  勝手に潤む瞳を見られたくなくて賈駆はぎゅっと一刀に抱きつく力を強める。  先程の張遼とは真逆に一刀と向かいあうよな体勢で寝台へと腰を落としてく。 「詠、あまり固くならないで俺に委ねてくれ。大丈夫、だからさ」  一刀は囁きつつも賈駆を自分の腿をまたがせるようにして抱える。  賈駆は小さくもがいてしまう。それでも、一刀のがっちりとした抱擁には無意味で逆に一層強く抱きしめられてしまった。 「ん……」  縋り付くようにした肉体、その胸板に賈駆はぺったりと顔をくっつけたままだった。先ほどから漂う彼の匂いは賈駆をまどろみへと送りつつあった。  だが、そうして気が緩み始める中、賈駆は臀部に違和感を覚えて意識をはっきりと取り戻す。 「ひゃう……な、なに……んっ」 「ん、やっぱり小柄だな。それでも、すごくハリがあって触り心地が良い」  袴の股立ちから差し入れられたごつごつした手が賈駆の尻朶を弄ぶ。  お尻を揉まれるだけでもぞわっと背中の産毛が逆立つような感覚がする、賈駆はそれに耐えようと一刀の背中へと回していた手をぎゅっと強める。 「ほ、ほんと、あんた……手の動きまでいやらし……はぁ、あんっ」  なで回すように動いていた掌に急に力が籠もり鷲掴みにされ、賈駆の背筋がぴんっと伸びてしまう。 「すべすべだな」  強弱を付けての揉みしだきにむずむずとし始める賈駆のお尻、その割れ目へと指がすっと通っていく。 「ひゃんっ」 「やっぱり、面積が小さいな、この下着。エッチなんだな……詠は」 「ふぁっ、ちがっ……うぅ……うるさい……はぅっ」  張遼と服を交換した際、袴からは太腿の殆どが露出し、寸法が合わないがためにそれ以上に肌が見えてしまっていた。  それらを考慮すると、どうしても履くのは過激な形状の下着に限られてしまっていた。  だが、実際に履くのと誰か……特に一刀に指摘されることでは意味合いが違う。 (ボク……そんないやらしい……なんて……違うわよ、ね?)  何故か賈駆はひょっとしたら自分はこの下着を履くことにさほど抵抗がなかったのではないか、やらしい女なのではないかという疑惑が芽生え始めていた。 「くぅ……あ……んぅ」  一刀の手が腰付近の丁の字になっている箇所を掴みぐいと引っ張る。それによって下着のお尻部分が割れ目に一層きゅうっと食い込む。 「んっ……はぁ……くっ」  丹念に何度も尻肉を撫でられ、ぐっと手がめり込みそうなほどに強く掴まれる。徐々に賈駆の臀部が熱っぽくなっていく。 「んん……いい匂いだな」  ふいに頭部にほんのりとした温もりが伝わってくる。それが一刀の体温と吐息によるものであると気がついたのは重量感を覚えてからだった。  軍師服の際に被る帽子、めいどの格好をするときの頭飾り、のようなものはなく、今の賈駆はせいぜい後ろ髪を纏るために張遼が普段使用している髪飾りを使っているくらいである。  そのため一刀が顔を埋めているのが明確に伝わってくる。 (そ、そんなに頭の匂いを嗅がないでよぉ)  手入れはしているが、それでももしかしたらというのもあって無性に恥ずかしい。  賈駆は一刀の胸へ一層顔を埋めて熱くなる顔をぐっと隠す。  きゅっと目を瞑ると逆に他の神経が研ぎ澄まされ、聴覚を通して一刀のすんすんという鼻の音が彼女の内側へと染み込んでくる。 「これが詠の匂い、なんだよな……」 「うぅ……も、もうやめて……ひあっ」  お尻を撫でていた手の片方がすっとむき出しの背中を通り、賈駆はぞわっと毛が逆立つような感覚に襲われる。  そのまま一刀は片手で器用に羽織を浮かせ脱がしていく。 「サラシだけっていうのもよく考えると凄い露出だな」 「ろ、露出って……うぅんっ……」  張遼の髪型を真似ているため、賈駆の背中は現在丸見えの状態にある。そして、そこには肌と申し訳程度に撒かれている布だけがある。  露出が高いと言えば高いといえなくはない。そして、それを考えると身体の芯からぞくぞくと寒気にも似たものが全身へと駆け巡る。 「は、あぁっ! く……んっ」  お尻への愛撫や匂いを嗅がれるという行為、言葉によって駆り立てられる羞恥心、それらが賈駆を悶えさせる。  一刀の手は自然の流れであるかのように静かに袴へとかかる。  するすると帯を解かれると、袴と肌の間に大きな空間が出来上がる。一刀は、そこに手を差し入れてくる。 「やっぱり、すごい際どい。大胆だな……詠」  その言葉が指すことを考えれば、彼には賈駆の下着がよく見えているというのがわかる。理解すればするほど、賈駆の頭は沸騰したかのようにぼっと熱くなっていく。 「ち、違うわよ。馬鹿! これは、霞の袴だと色々あって、こんなのしか合わなくて……」  賈駆は叫ぶようにそう言うと真っ赤に染まる顔を俯かせる。彼女の秘部を覆っている布は非常に面積が小さく股間の渓谷をなんとか隠している程度しかなくそれを見られてると思うととても一刀の顔を見ることはできなかったのだ。  †  俯いてしまった賈駆の柔らかい尻へと手を戻し、計十本の指へぐっと力を込めて鷲掴みにする。  彼女のお尻は掌を押し返してくるほど弾力があり、触っていて非常にさわり心地が良い。思わず、その感触に酔いしれてしまいそうになるのを堪えて一刀は何度もぴくっと撥ねる賈駆の身体を持ち上げ、互いの腰の距離を開ける。 「ふ……んっ」  ぐにぐにと揉んできたからかすっかりほぐれて柔らかくなった尻朶は触れているだけでも賈駆の唇から声を漏れさせる。 「詠はえっちな下着付けてるから触りやすいな」  そう耳元で囁きながら一刀は、両者の腰と腰にできた僅かな隙間へと手を滑り込ませる。  布地も少なく、角度も非常に際どい下着は簡単にずらすことができ、賈駆の恥裂を外気へと晒すことも容易だった。そこに馴染ませるように指を這わせていくと、くちゅっという音がする。 「へえ、もう濡れてきてるんだな……」 「は……んっ、く……そ、そんなはずは……」  弧を描くようにして花弁の周りをなぞりながら一刀は空いている手で賈駆の頬にそっと触れ、顔をくっと上げる。 「……はあっ、ん……っ!?」  熱い吐息を漏らしていた賈駆は、瞳に一刀を捉えるやいなや瞳孔を開き即座に視線を逸らしてしまう。 「詠……照れることないんだぞ」 「う……んぅ……っ、うるさいわね」  余所を見ている賈駆が不満を露わにするが、その声色は艶っぽさが混じっている。 「そっか、言葉はいらない……か」  そう呟くと、一刀は拗ねたように尖らせている彼女の唇へ口付けをする。 「んっ……むぅ……ふぁっ」 「ちゅ……ん……んむぅ……」  下の口は手で、上の口は唇や舌で愛でていく。賈駆は瞼を閉じて一刀の愛撫を受け入れてくれている。  一刀は目一杯想いを伝えたいと強く想い、念入りに彼女を愛していく。  †  気がつけばあるがままに一刀を受け入れていた。  先程までささくれ立っていた心が非常に落ち着く。それでいて自分の身体がどこまで昂ぶりを見せるのか不安になる。  指が秘唇へと侵入してきて彼女の身体はぴくんと小さく撥ねる。  すると、今度は彼の舌が門をこじ開けて口腔内への侵入を果たし、賈駆の身体は強張る。 「はむ……んっ、く……ふぅん……っ」 「ちゅ、じゅじゅ……んむぅ……はっ」  顔同士の距離はほとんど無い。  賈駆から漏れる息を一刀が、彼の吐息を賈駆が、自然と吸い込んでいた。  それはつまり、互いの息を交換しあっているようなもの……賈駆の中に芽生えている官能的な気分がさらに増長していく。 「はぁ……ふ……んぅ……あっん」  身体の中心線をぴりっとした電撃のような物が走り賈駆は閉じていた目を見開く。  一刀の指が、丹念に蜜壷の内壁を撫でたり前後へ滑ったりと自由に動き回る。賈駆は片手を一刀の首に力を込めて巻き付け、迫り来る快感に耐えようとする。  徐々に大きくなる手の動き、賈駆の腰が連動するように震え始める。  息が詰まる。それでも口腔内に居座っている彼の舌を一心不乱に貪るのはやめられない。  力なく首にしがみつくが、指先だけは必死に食らいついている。それこそ爪が食い込んでしまいそうな程に。だが、今の彼女にそれを気にする余裕はなくぶるぶると震え続ける。  背が弓なりに曲がり、瞬きができなくなる。 「んぅ……ぅぅぅぅ! ふあぁ、あぁぁっ!」  がくがくと身体が跳ね回った末一刀の腕の中で彼女は果てた。  †  賈駆が絶頂を迎えた後、二人は一刀と対するように寝台に乗る。  二人が今にも布地を突き破ってしまいそうな程ぱんぱんに腫れ上がってしまった股間をじっと見つめてくる。  二つの視線が息子に向いているのが気恥ずかしくて、一刀は寝台の上で少しだけ腰を引く。 「あ、あんまり凝視しないでくれよ」 「ふふ、ウチらを気持ちようさせてる間、自分もめっちゃ興奮しとったんやな」 「むしろ、これで何も無かった方が屈辱でしょ」 「そらそうやな」  いきり立ったそれを見ながら淡々と交わされる会話。半ば異常とも言える光景に一刀が言葉を失っていると、張遼と賈駆が距離をあっという間に詰めてくる。  二人は、一刀のズボンへと手を伸ばすと留め具を外してその過程までも堪能するかのようにゆっくりと脱がしていく。  下着すらも剥ぎ取られると、一刀の息子が勢いよく天へ向かって突き立つ。 「うわあ……これ、ね」 「こういのをまさにビンビンっちゅうんやろうな」  そう言うと、張遼は若干引いている賈駆を尻目に猛る熱棒をぎゅっと握る。 「んっ……」  先程の行為で、ほんのり暖まった掌が気持ちよくて一刀は声を漏らしてしまう。 「なんや? 触れられるだけで気持ちええん?」 「ま、まあ……な」 「ふうん。ほなら、こう上下に……」  ゆったりとした口ぶりとは裏腹に手は俊敏に横滑りするようにしゃっしゃっと上下する。 「くぅ……ん」 「もう我慢しきれんって感じやな……ほな、お返しといこか」 「取りあえず、その舌なめずりはやめてくれ……ところで、詠はしてくれないのか?」 「え? ボ、ボク? そ、それは……その、えっと」 「あー無理無理。おねんねな詠には出来ひんよ。な、詠」 「そんなわけないでしょ! し、霞が難なくできるならボクだって」  そう言い放つと、賈駆も張遼と左右対称となるように肉棒越しに並んで一刀の息子へと手を怖じ怖じしつつも伸ばしていく。  顔を背けながらもぐっと握る賈駆の姿に一刀は嬉しくなる。そして、それに比例して 「な、なんや。一段と固くなっとる……」 「何に対して、興奮してんのよ?」 「い、いや……ふ、二人がしてくれるって思ったからかな」  頭を掻きながらそう応えると、二人は頬を赤くする。 「にゃは。そう言われると俄然やる気が出てくるなぁ」 「ふ、ふん。おだてたって何も出ないんだから」 「まあ、出るのはこっちやもんな」  そう言って張遼が亀の頭部を親指でさする。 「霞……あんた、オヤジっぽいわよ」 「そんなことあらへん。な? 一刀ぉ」  猫なで声で上目がちに訊ねる張遼に一刀は小さく頷く。 「ふふん。一刀のお墨付きやな」 「…………ふん」 「痛たたた、つ、強く握らないでくれ」  ぎゅうぎゅうと締め付ける賈駆に半分涙目になりながら一刀は懇願する。 「ふふ、可哀想にな……ぺろ」  びくつく性棒に顔を近づけると、張遼は亀頭の付け根にそっと舌を這わせる。 「くぅ……っ」 「ふふ、可愛い声だすんやな」  愛おしげに一刀の分身を見つめると張遼は絡ませるように亀頭を舐め始める。  ざらりとした舌の感触が這っていくのがまた刺激となって一刀の頭へ痺れにも似た感覚を与える。 「悪かったわよ……これくらいかしら?」 「そうそう、そのくらいで頼む」  僅かに緩められた賈駆の握力が程よく一刀のオトコを圧迫する。 「あ、そや。折角やから……」 「ん?」  一刀は、自分の腰にある荒々しくもそそり立っている肉の塔から口を離した張遼を不思議そうに見る。  彼女は涎でぬらぬらと艶めく口元を舌で拭うとにこりと微笑む。賈駆の眼鏡を掛けているためか、その色っぽさは非常に増量されている。 「ご奉仕させて頂きます。ご主人様」 「っ!? し、霞?」  一刀だけでなく、賈駆までも手を止めて張遼の方を見る。 「にしし、こないな格好しとるのにそれらしいこと言わんのは勿体ないやろ?」 「あー、その、も、もう一回聞かせて貰えないかな?」 「はい。たっぷりご奉仕させてただきますね。ご主人様」  言葉遣い、表情。どちらも普段の彼女とは違い、一刀の琴線に触れる。  もちろん、彼の分身もまたしかり。 「な、なんかまた大きくなったような……」 「ホンマ、スケベやな。ご、しゅ、じ、ん、さ、ま」 「むう……」 「別にスケベやから嫌いになるなんてことあらへんから、そんな困ったような顔せんでええって」  その言葉が真実であることを証明するように張遼は一刀の精龍刀を口に頬張る。  普段の賈駆のように三つ編みにした髪を片手で掻き上げながらもう片方の手で指をからみつかせてくる。強くなく、かといって弱くもない、絶妙なさわり心地で一刀はぞくぞくと背筋を震わせる。  ぬめぬめとした唾液の粘膜成分と張遼の体温がほんのりと残る温もりが亀頭を中心にじわじわと広がっていく。 「ん……むぐっ……おおひい……ちゅる……ん、ふぅ……」 「く……うぅ……」  武器の持ち方を習うときのように丁寧な動きで小指から順に確かめるように力が込められていく。  それだけでも一刀は痺れにも似た快感を覚える。 「ちょ、ちょっと、ボクだけ放置はないんじゃない」 「……くぅ……じゃ、じゃあ、ね、根本の方を……」  一刀がそう懇願すると、賈駆はおずおずと醜悪な男根へと顔を近づけていく。眼鏡を駆けていないためかしげしげと見つめている。 「そ、それじゃあ……」  意気込むように深呼吸すると、賈駆は張遼の口と手でも抑えきれていない剛棒を掌へとおさめる。 「ちゅ……じゅじゅっ……」 「くぅ……し、霞……うぁっ」  頬をすぼめて吸引していく張遼。一刀は思わず腰に力が入ってしまう。  竿の部分を上下にさする二種類の手。  亀頭をしゃぶりつくす口。  そのどれもが快感を与え、一刀の全身に広がる快楽の波を幾重にも折り重ねる。 「ぷはっ、なんか……れれきた」  顔を話した張遼の唇から亀頭にかけて透明の橋が架かる。まるで口付けを交わした後のようだ。  亀頭からは尚も先端から透明な液を分泌している。 「そ、それは……先走りっていって。気持ちよくなってる証……みたいなものだよ」 「ま、まあ。ボクの手に掛かれば当然でしょうね」  胸を張る賈駆だが、その手は未だに上下して絶妙な動きで一刀に快感を送り込んでいる。 「ほら、こうやってええもんが出てきてるんやから、詠も舐めてみい」 「え? えぇと……すぅぅぅ、えいっ!」  一瞬だけ考える素振りを見せた後、踏ん切りをつけて賈駆は舌を竿の部分から亀頭にかけて長々と舌を這わす。  ざらついた感触が背筋を通して一刀の脳へ快感を駆け巡らせる。 「ん……れろ……ちゅっ……んむ……っ」 「ぺろ……む、んっ……ちゅるるっ」  左右から舐め回す二人は互いの視線で通じ合っているかのように見事な連携を見せる、一刀の分身は大いなる悦びにむせび泣いている。 「ぺろ……んちゅっ……先走り一杯やな……」 「ちゅる……ん、凄い……どくどくって……ふぁっ、脈打ってる……れろ」  手で竿をしごきながらも先走り液を一滴残らず舐め取ろうとするように丹念に舌で嬲ってくる張遼。  逆にぎこちなさが中々なくならない賈駆。だが、それはそれで新鮮な感覚を一刀に与えている。  二人の異なる愛撫に一刀の腰もびくつき始める。 「ちゅぱっ、んぅ……もう、我慢出来ないんちゃうか?」 「凄く……はあっ、暴れて……るぅ……んあっ」 「あ、ああ。そろそろ……出そう……だ」  一刀は留まることのない荒んだ呼吸のまま小さく首を縦に振る。 「ほなら、もう一度……」  張遼は大きく口を開けると亀頭を丸々口の中へとくわえ込んでしまった。 「あむ……んっ、ちゅ……ぱっ、ふぅ……ちゅぅぅ!」 「くっ……い、いきなり……」  張遼が先程以上の吸引力で吸い上げようとしてくる。一刀はそのあまりにも強烈な衝撃にのけぞりそうになる。  敏感な亀頭部分がしゃぶられる快感に悶える。興奮に漲っている勃起が震え、陰嚢が縮こまる。徐々に大きくなる絶頂の足音が一刀の頭の中に響いている。 「れろ……ふぁ、霞、凄い……ちゅぱっ」  張遼の口による奉仕に感心している賈駆も徐々に動きが激しくなっている。  そうした二人の行為によって一刀は段々と熱いものが根本の方から込み上げてくるのを感じていた。 「くぅぅぅ……うぅぅ」 「ぢゅろ……じゅっちゅ……れろ……ずちゅっぢゅ……ちゅぅぅ」 「うあっ、やばい……も、もう……くぁぁぁぁ!」  目の前がちかちかと点滅し白く染まっていき、腰を突き出しながら一刀は一気に性を放出した。  耳には張遼が喉を鳴らす音しか聞こえない。 「んごっ……ぐぅ……んぐぐ……ずっ……ごきゅ……くふぅ」  息が詰まりそうになるのも構わずに無我夢中に一刀の出す精液を飲み干そうとする。  その隣で賈駆が呆然としている。 「の……飲むのね、それ」 「んふぅぅぅぅ……ぢゅぼっ! ん、はぁぁ」  一刀は放出を終えた息子から顔を離す張遼の顔を見る。口元に少しのこった白濁液をぺろりと舐め取ると艶っぽい表情を浮かべる。 「はぁ……濃かったわぁ……一刀の精液」 「そ、そうか……」  感想を述べられると無性に恥ずかしくなるのは何故だろうかと一刀は疑問に思う。 「さて、一刀のはまだまだ元気なようやし。お次は……詠やな」 「え? ちょっと、待て……本気か?」 「本気と書いてマジっちゅうやつや」  張遼の瞳が真剣であると語っている。 「え、えぇっ!? ボ、ボクもするの?」 「当たり前や。ここまできて、詠だけせえへんっちゅうのは空気読めとらんよ」 「うぅ……そ、そうね。それじゃあ」  渋々感を残しながらも賈駆はそろりと一刀の竿を握る。  まだどこか恐れのようなものがあるのか、顔を先端部に近づける賈駆の動きはぎこちない。 「詠……無理にしなくてもいんだぞ? 慣れないうちにってのはやっぱり無茶――」 「ば、馬鹿にしないでくれるかしら! ボクは賈文和よ。これくらいで怯むはずないでしょ!」 「ぐむ……そ、そうか」  きっと一刀を睨み付けると、賈駆は勢いよく男刀を口に含む。勢いを付けすぎたのだろう、喉に先端が当たったのが伝わってくる。 「げほっ……ごほごほ」 「だから、言っただろ。無理するな――っ!?」  咳き込んでいた賈駆が急に口を閉じて一刀の肉棒をゆっくりとしゃぶり始める。 「んむ……ちゅっちゅぅぅ……っ」 「く……っ、うぁ……」  一度射精したにもかかわらず賈駆のぎこちない舌の動きが先程までとは僅かに異なる快さをじわじわと感じさせる。  辿々しさは、もどかしさとなり、もどかしさは切なさとなっていく。 「ちゅる……ぢゅっぢゅぢゅ、んっ……ぴちゃ、はっ、んぅ」 「……え、詠」  呻くように真名を呼ぶと、一刀は彼女の後頭部に手を添えて動きを補助する。 (みょ、妙に焦らされてるようで……くぅ)  張遼のように勢いよくされるのもたまらなかったが、賈駆のようにじわじわと嬲られるのもまた格別だった。  快感に支配されつつある思考はやがて本能へと手綱を譲渡していく。  賈駆の頭をがっしりと固定したまま腰を動かし、快感を貪る。 「むぐぅ……んぅ……」 「はぁ……くぅぅ……んぅ」 「すっかりケダモノやな……くく」  苦笑混じりの張遼の声によって一刀の頭に霧散しかけた冷静さが戻る。 「わ、悪い……詠。え、詠?」 「ぢゅっぢゅ……じゅるる……ちゅぱ、ふぅ、んぅ……ぺろ」  慌てて手をどけた後もなお、賈駆は一刀の豪槍から口を離そうとしない。  賈駆は口元をびちゃびちゃにしながらも一心不乱に一刀の分身を貪っている。 「ぴちゃ……むぅ……はむっ……ん、れろ、ぢゅる」 「うあっ、また……キた……」  先程と同様の昂ぶりが迫りくるのが感じられ、一刀の中心からは力が漲り男根は一層突っ張る。 「むぐぅ……んあっ、ぢゅっちゅちゅ……ぴちゃ、ちろ……んっ」 「うぅ……出したばっかりなのに……もう」  腰ががくがくと震え、一刀は再び獣のように腰を激しく動かし、賈駆の頭を押さえ込んで全てを吐き出した。 「んぐぅ! むぼっ、ご……ごきゅっ、んぐ、じゅ……ちゅる」  先ほどの張遼ほど順調ではないにしても賈駆もまた一刀の性欲の塊を口で受け止め、喉を通していく。 「な、何も詠まで無茶しなくても……」 「んぐっ、んっ……ごく、んっはぁ、熱い……はぁ、はぁ」  口元から白いものを垂らしながら顔を上げた賈駆は非常に扇情的だった。  笑みを浮かべながらもその瞳は妖艶な色をして一刀のオトコを誘惑しているかのようだ。  †  とろんとした表情を浮かべたまま惚けている賈駆を正面から抱えながら張遼が一刀の方を見る。  賈駆は余韻に浸っているのか熱によって浮かされたようになっている。 「どうやら、詠も乗り気になっとるようやし、ウチは後でええから……」 「……霞」  くいっと眼鏡の位置を調節しながら微笑む張遼の顔は普段以上に大人びて見えた。  賈駆を抱えたまま、張遼は下着を脱ぎ去り、下半身をあらわにした扇情的な格好で敷布の上にあお向けで横たわる。 「さ、詠からや」  張遼は自分の上に引き寄せた未だ顔を真っ赤にしてうつろな様子の賈駆に語りかける。  賈駆の方は、先ほど脱がしかけた袴がずり落ちて際どすぎる下着とサラシという露出度の高い姿になり、ぷりんとした丸出しのお尻を突き出して体勢になっている。二人の姿は艶めかしく、一刀の心を昂ぶらせる。 「二人とも、なんだか色っぽいな」  ぱつんぱつんのメイド服、しかも下半身は丈が短く中身がほぼ丸見えな張遼、サラシに紐のような下着しかない賈駆、どちらも魅惑的な雰囲気を醸し出している。  何よりも、二人とも一刀の愛撫や口での行為を通して秘部をびしょ濡れにしている。  ごくりと唾を飲むと一刀はゆっくりと二人との距離を詰める。 「……それじゃあ、詠からいくぞ」 「き、来なさいよ」  正気に戻った賈駆が強気に応えるが、声にはまだ力が入っていない。 「詠……あまり、身構えない方がいいぞ」 「わ、わかってるわよ」  眉を吊り上げて睨み付けてくる賈駆だが、その瞳は既に秘部と同じく蕩けている。  蜂のようにくっきりとした腰を両手で掴むと一刀は自分の分身を賈駆のオンナの門へと狙いを定める。 「もし、痛かったら言ってくれよ」 「だ、大丈夫よ……ひゃっ、こ、こんな大きかったっけ?」 「後ろから見た詠の姿が扇情的だから興奮してきたのかもな」 「…………うう。どう返すべきか思いつかなかった」 「なはは。素直に喜べばええんちゃう?」  下側から賈駆を見上げている張遼が笑いかける。二人は視線を交わし、賈駆がふっと息を吐き出すと、強張っていた腰回りの筋肉の緊張が緩和される。 「ふぅ……少し、無駄な力が抜けたみたい。今のうちに、さっと始めてよ」 「ああ。わかった。入れてくぞ」  気合いの入り具合はやはり初めて故ということなので仕方がないだろう。今更、そこに記憶の有無を問うほど一刀も野暮ではない。どちらにせよ、彼女を愛すと決めた以上それを貫き通す。  賈駆の下着を腿の付け根まで降ろすと、ゆっくりと肉棒を彼女の蜜壺へと侵入させていく。 「んぅ……くぅ……」  愛液によって滑りは良くなっているがそれでもきつく、突き進めようとするたびに賈駆が苦しそうに声を漏らす。 「きばりや、詠」 「くあぁぁっ……ひぅっ……やっぱ大きいわよ」  痛みを堪えようとしているからか、賈駆の下半身に抜けていた力が再度こもり始める。  強引に押し込もうとするのもどうかと考え一刀は挿入を一度止める。 「んっ……はあ、は、入った?」 「半分ってところだな」 「ま、まだ半分なの?」 「まあな。やっぱり、きついか?」 「当たり前じゃない……あんだけ大きいものが入ってきてるんだから」  余程、痛みが堪えているのか賈駆の言葉はどこかたどたどしく、力がない。 「なんならウチが代わってもええよー」 「馬鹿言わないでよ。ここでやめたら女が廃るわ。というか、それ以前にボク自身が絶対嫌よ!」 「そんなに一刀を離しとうないんやなあ。ちょっと、妬けるで」 「いやあ、そこまで想ってもらえるってのは男冥利に尽きるな」 「……くぅっ、調子に乗るなぁ!」  叫びながらも体勢的に一矢報いることも叶わない賈駆はただ足をばたばたとさせることしかできない。一刀はその様子が可愛らしく思え、ますます胸の高まりを覚えた。 「もう、ええんちゃう?」 「そうだな。大分ほぐれたようだし……」 「え? それって……」 「それじゃあ、再開といくか」  不思議そうに張遼と一刀の顔を交互に見る賈駆を余所に気分とともにほぐれた淫肉を掻き分けて性棒を突き入れていく。  †  ムリムリという音をさせながら押し入ってくる熱い棒。  それは、愛撫の時の指とは比べものにならないほど大きく、逞しい。 「ぐぅ……また、入って……ああっ、熱……い」 「ん……さっきよりは割と簡単に入っていくな」  張遼や一刀とのやり取りで大分気が楽になっていたこともあってか、先程までよりは一刀を受け入れることができているが、痛みが完全に消え去ったわけではない。 「お、お腹の中が……ぱんぱんになってく……ひあぁ……くぅ……んぅ、はあっ」  挿入される一刀の肉棒は熱く、それでいて賈駆の体内を非常に強く圧迫する。彼女は息が詰まりそうになり腹部のこともあって苦しくなる。  体内で燃えさかる炎は一段と温度を増し、ズキズキとした疼きは強さを増している。  そんな中、一段と勢いをつけてずぶっと一突きされた瞬間に賈駆の中にある膜が破ける音が脳内に響き渡る。 「うぅ……つぅ……ん」 「大丈夫か? 詠」 「……あ、当たり前でしょ。くっ!」  破瓜の痛みはまだ秘部に残っている。それでも、口元からかすかに香る先ほど飲み干した一刀の精液の匂いを嗅ぐと不思議なことに落ち着きを取り戻せているような気がする。 (これでやっと……ボクも)  もうろうとしかける頭で感慨にふけりそうになるだけで賈駆の胸はどきどきと高鳴る。 「詠……すごいたっぷりだな……。もしかして喜んでくれてるのか?」 「皆まで……言う……な」  息苦しくて言葉が上手く出ない。それでも、胸には暖かい気持ちが訪れ始めている。 「どうだ、詠? まだ、痛いか?」 「……ん、痛みはないけど……じんじんとした痺れみたいなのがあるわ」  初めは裂けるのではと思うほどの痛みしか感じられなかった膣内も今では一刀のオトコの象徴から伝わる暖かさが大きく伝わってきている。  一刀と共にいるのだと実感が湧いてくる。 「よし、少し動く……ぞ」 「ん、いいわ。遠慮無く来なさいよ」  あくまで強気に返すが、一刀は挿入している肉棒を激しく動かすことはせず、ずずっと膣壁をこすりながらゆっくりと引き抜いていく。  内壁の襞が一刀の亀頭に絡み引きずられることで賈駆の全身がかっと熱くなる。 「んぅ……あっ、くぅ……こ、この感じ……あ、もしかして……んっ、これが……あうっ」  堪えることも叶わず賈駆の口からは艶やかな声が漏れ出てしまう。 (そっか、……いまボク……繋がってるのね……)  朦朧とし始める意識の中、賈駆は密かに口元を綻ばせてしまう。 「詠の中、凄く気持ちがいい……もう少し動いても?」  賈駆はちらりと振り返ると、黙ってこくりと頷く。これ以上声を出してしまわないよう唇を噛みしめる。  返答を受け取った一刀が先ほどまでよりも強い勢いで腰を強く押しつけてくる。 「はぁっ! んぅ……う、くぅ……な、なにコレ。す、凄っ……うぅ」  閉じようとしても口を塞ぐことが出来ない。喘ぎが息とともに出続ける。  一刀の分身はいつの間にか大きさを増している気がする。 「く……はぁ、はっ、う、んぅ……な、なんか太くなって……うあっ」 「ふ、うん……くぅ……詠の反応が嬉しくて……くっ、詠の中、きつくて、気持ち……いい」 「はうっ、んあぁ……ほ、ホント? うぅ……はっ、あんっ」  もう我慢しようなどと思わない。賈駆は一刀と同じ時を刻むように素直に乱れていく。 「なんや、暇やな……」  賈駆の下から呟きがするがそれを気にする余裕も無い。  二人分の喘ぎ声と吐息が混じり、肌と肌のぶつかりあう音が響く中、賈駆のサラシがほどかれていく。  快楽を象徴するかのようにお世辞にも大きいとは言えない乳房の先端で堂々とそそり立つ蕾が外気に触れ、そのくすぐったさにも似た甘い痺れが賈駆の意識をそちらへ向けさせる。 「はっ、はっ、んっ、あん、ちょ、な、なにを……」 「折角や。ウチも詠を可愛がらせてもらうわ」  舌なめずりすると、張遼は賈駆の胸元へと手を伸ばしてくる。  つんと勃起した乳首をくりくりっと指で刺激されると、むず痒い感覚と一緒に甘い刺激が全身にひろがる。それは一刀から伝えられる快感と混ざり合い賈駆の身体を責め立てる 「ふあっ、らめ……そ、そんな……ち、乳首まで……くぅっ」 「なんやぁ? 感度ええんやな。ほれほれ」 「ひあっ! はっ、くっ、んっ……」  言葉が上手く出ない。目がかすむ。背筋がぴんと張ったまま戻らない。 「かっ、はっ……うっ……も、らめ……うあっ」 「ふっ、んっ……え、詠……」  口から涎が飛び散るのが視界に映るが何も考えられない。ただ夢中で腰をくねらせていた。 「い、いくぞっ、くぅぅ……で、出る……」 「あ、あぁ……んぅぅぅぅ!」  身体がびくんびくんと小刻みに揺れ、賈駆は全身から力が抜けていく。どくんと脈打つ性欲棒から熱い液が注ぎ込まれるのを感じながら、がくっと上半身を倒れ込ませた。  †  ぐったりと脱力しきった賈駆の身体を下から受けとめた張遼が腰をうねらせて淫らなおねだりを見せる。紺のメイド服と健康的な肌に薄く彩られた期待と興奮による紅潮の組み合わせが美しく、そして卑猥だ。 「はあ……詠、見てたらもうウチ、辛抱たまらなくなってもうたわ」 「うーん、こっちも大丈夫そうだな。まだ俺もいけそうだし、今度は霞だな」 「……あ、あんた……ぜぇ、はぁ……どんだけ……はぁ、まさに性欲の……ひぃ、塊ね」  息も絶え絶えの賈駆のツッコミに自分の事ながらに確かにと内心で頷きつつ、一刀はずるりと賈駆の中から分身を抜き取る。「ひあっ」と可愛らしい悲鳴を上げてびくんと賈駆の身体が撥ねた。  その様子に締まりのない笑みを浮かべながら一刀はそっと剥き出しとなっている張遼の渓谷へと指を這わせる。賈駆同様、彼女のそこも十分すぎるほどに潤んでいる。 「ん……っ、んぅ」 「どうやら、霞も準備万端って感じだな……というか、さっきよりも更に凄くなってないか?」  そう呟きながら秘唇をほぐすようにそっと挿入した人差し指は熱を帯びた粘膜によってぐいぐいと奥へと引き込まれていく。  咥えるべきものを今か今かと待つように一刀の人差し指を狭孔がきゅうきゅうと窄まって締め付けてくる。 「だって、ウチも早く一刀に抱いてもらいたくて……。詠の姿を間近で見てたらもう我慢出来ずにこんななてもうた。なあ、一刀の猛った飛龍刀……やなくて、精龍刀をウチに……はよう」  早く挿れろとばかりに大きく開いた張遼の股に腰を近づけ、抑える手がなければ腹まで反り返ってしまうほどの勢いが残っている若さ溢れる肉刀を一刀はゆっくりと蜜孔へと宛がう。  賈駆のとき同様、なるべく負担を掛けないよう注意を払いながら腰を突き出していく。 「んっ……くぅ……こら、おっきいなぁ……」  張遼の言い方は若干、茶化しているようにも聞こえるが、それは飽くまで気を紛らわすために敢えて口にしているように一刀には見える。  そんな彼女を労りながらも一刀は徐々に前へと進んでいく。  熱く燃えたぎるような膣壺内の肉が一刀の肉棒を締め付ける。  刺激されることで、既に三度は射精しているはずの家宝にどこから来るのか不思議でならない程に性欲が滾っていく。 「ふ……んぅ、くぅ……ごつごつして……るぅ……ふぁ」 「大丈夫か……霞」 「かま……んっ、かまへん……よ」  なんとか口端を吊り上げて脂汗が滲む顔で張遼はぎこちなく笑う。 (霞もか……気合い入って……)  だが、それも自分に対する想いに比例している。そう考えるだけで一刀は躍り上がりそうになってしまう。 「もう少し、動かしていくぞ」 「んっ……はぁ……んぅ」  身を小さくよじる張遼の秘部からめりと何かが突き破られる感触が伝わってくる。  ゆっくりと動かしていくと、結合部から純血を捧げた証が滲み出てくる。 「んぅぅ……んっ」 「霞……大丈夫よ。落ち着いて匂いを……」  そう言うとようやく回復したらしい賈駆が張遼に口付けする。  水音をさせながら絡み合う唇。それによって張遼の瞳はとろんと微睡み落ち着きを取り戻している。 「ふぁっ……ん……ちゅっ」 「霞?」 「ぷはっ。大丈夫よ、きっと……ね、そうでしょ?」 「ふあ? らいじょうぶ……うん、一刀ぉ」  眼鏡のずり落ちた瞳でぼおっと宙を見つめている張遼がこくりと頷く。 「それじゃあ……」  必要以上に張遼に痛みを与えないように気をつけながら少しずつ腰を動かしていく。  †  賈駆が口付けしてくれた途端、張遼の口、鼻腔などから一刀の匂いが充満してきて彼女はうっとりと蕩けていた。  まだピリピリとした痛みの残る膣内を一刀の棍棒が粘膜をまくりながら動き始める。 「ん……っ……ぁっ……ふぅぅ」  痺れの残るものの、そこに走る衝撃は痛みではなく甘い快感へと変わりつつある。 「霞……平気か?」 「当たり前……やんっ、くぅぅ……」 「やっぱりまだ痛いんじゃ」  心配そうにのぞき込む彼に張遼は静かに首を横に振る 「ううん、大丈夫やよ。ウチ、一刀にいーっぱい、気持ちようなってほしい」 「俺も……霞にはちゃんと気持ちよくなってほしい」 「なら、気持ちようなるんは――」 「一緒に、だな」  しばし見つめ合う二人。張遼の胸に快楽とは別にこしょこしょとくすぐられるようなこそばゆいものが生じる。 「一刀」 「ん?」 「好き……やで」  そう小さく告げると張遼はすっと瞳を閉じる。受入れ体勢になったことを示すように。 「もっと激しく動かしていくぞ」 「ええよ。受け止めたるから……ばんばん来てええ」  再び一刀の分身が張遼の中を動き始める。その振り幅が徐々に大きくなっていく。 「んぁっ……はっ、はっ、みんな……みんな掻き出されてしまいそうや……んぅぅ!」 「霞……締め付けられて……凄く……うあっ……気持ち良い」 「あぁ、すごぉ……くぅぅ……ん、はぁっ」  じっとりと汗の滲む掌をきゅっと握りしめて快感に流されてしまいそうになるのを堪える。 「はっ、ん……っ、ふっ、霞っ、我慢しなくて……いいんだぞ。もっと、乱れても……」 「ちゃ、ちゃうねん。はっ、くぅ……んっ、少しでも長くな……一刀と一つになっとるんを実感していたいんやぁ!」 「霞、俺も感じる。くっ……ふ、んぅ……霞と繋がってる……」 「うあっ、一刀の先が……子宮を……こん、こんって……ふあぁぁ!」  激しくなる前後動作、子宮口を小突かれる度に張遼の背筋を通って頭の中にまで電流が駆け抜ける。 「そろそろ、さっきのお返ししようかしら……」  張遼に被さるようにして乗っかっている賈駆が、メイド服を襟元から解き、上着を二の腕付近まで下げる。 「ふえ? んあっ……にゃ、にゃにするん」 「ちゅぱっ……やっぱ、あんたの胸……結構ある方よね……ちゅ」 「ひ、ひくび、ひゃっ、くわえらあかん……ぴりぴりってクりゅ!」  乳房にかぶりつくように口を付けた賈駆の舌の上で乳首が転がされ、歯で甘噛みされる。段々とぷるぷると震えていく身体。吐息が一層の熱を帯びていく。 「霞っ、俺、の、こと……忘れるなよおぉぉ!」 「ひいっ、ちょ、あん、は……ふぁ、激し……うあっ」  賈駆に意識を向けたのが不満だったらしく一刀が獣のようなうなり声と共に強めに突いてくる。それでも手加減が加えられているあたりは一刀らしいというところだろうか。  しかし、微強の勢いで刺された衝撃で張遼の眼の中に星が瞬く。 「はぁ……ひぅっ……んぅ……」 「霞……ふ、ぅん……締め付けが強くなってる……同じ女の子に弄ばれて興奮してるのか」 「ちょっ!? んあっぁ……そないなこと、言わんといて……えぇ。はっ、はっ、あん、くはぁ」  一刀の言葉が不思議と張遼の心を揺さぶる。内面、奥底から込み上げてくる恥ずかしさと、昂ぶり。  張遼の上昇は既に最高潮に達しようとしている。 「し、霞……俺、これでもう……」 「う、ウチも……やから、いっ、一緒に……」  速まっていく動き。愛欲水の音が一層はげしく部屋中へ響き渡っていく。 「く、あっ、い、いってま……うぅぅぁぁぁぁぁっ!」 「う、あ……し、あ。霞ぁぁぁぁぁぁぁ!」  世界が白くなる。彼女にはもう、彼しか見えなくなっていた。  一刀が、熱く猛る濁流と成って流れ込んでくる。  それを感じながら張遼は敷布をきゅっと握りしめてそれらを全て彼女の持つ器で受け止めていった。  †  行為を終えた三人はどっと押し寄せる疲労に身を任せて寝台で川の字になって横になっていた。  その真ん中を務める一刀は、自分の隣で余韻にひたってか間延びした顔をしている張遼に声を掛ける。 「そういえば、霞……さっきは何を言おうとしたんだ?」 「んんぅ-、なんのことやろ?」 「一存ではとかなんとかで言葉を濁してたろ」  額に人差し指を当てて張遼がしばし逡巡する。眼鏡はもうかけていない。 「ああ、あれな。詠……もう、ええよな?」 「いいんじゃない。どちらにしても告げた方がいいと思うし」 「だから何のことなんだよ?」 「実はな、愛紗が変やなぁ……とか、思っとるんや」 「へ?」 「そうね。何かとご主人様、ご主人様だった彼女にしては……ね」 「え、ええと……まさか」  一刀は急激に汗がどっとあふれ出てくるのを明確に感じる。 「そのまさかよ。久しぶりね、〝ち●こ太守〟さん」 「はあ、〝愛紗〟との甘い日々が今も瞼の裏に……」 「つまり、記憶を思い出したってことなんだな」  せわしなく左右に首を振って確認する一刀。二人は口元に微笑みを称えながら大きく頷いてみせる。 「マジかよ……」  額に手をやって一刀は前髪を掻き上げながらうなり声を上げる。 「もしかして、迷惑……やった?」 「…………」 「あーもう! そんなことないって、ほら!」  一刀は証明するように二人の方を抱いて自分の胸板に引き寄せる。 「そもそも、いつからなんだよ……記憶」 「んー、ウチは徐州で〝関羽〟の異変を眼にしてからかな」 「そうか。で、詠はもしかしてもしかするのか?」 「そうよ。例の日、ボクと月以外は基本的に知る者はあの場にいなかった。なのに、あんたは知ってた。そのことに対する疑問から一気に思い出したわ。確証はなかったけれどね」 「なんというか。驚きだな」 「それは超常現象に出くわしたボクたちの台詞だと思うんだけど?」 「ごもっともです……」  一刀は気持ち一回り身体が小さくなる。 「にしても。あんた、ホント下半身無人格男よね」 「ひ、ひどっ!?」 「事実でしょ。忘れたの? ボクはもう思い出しちゃったのよ。あんたの女性遍歴」 「…………あ、あはは。ナンノコトヤラ?」 「とぼけても無駄や。それに、現時点ではウチらと……恐らくはあの娘もそうやろうから、少なくとも三人は一刀のこととか思い出しとるんやから間違いっちゅうことはないはずやで」 「その上、再びボクたちを手籠めにしてるんだからね」  左右からの責めに一刀は半ばやけになる。 「あはは、ですよねぇ……。あぁ、そうですよぉ、悪いかよぉ、みんな好きなんだからしょうがないだろ」 「逆切れしないでよ……そうだってわかってるから……ボクだってあんたを――」 「どうせち●こ脳だよ! ……え? いま何か言ったか?」 「……し、知らない!」  聞き逃したため訊ねるが賈駆はぷいとそっぽを向いてしまう。 「くくく、こら勿体ないことしてもうたな」 「え? え?」  苦笑混じりの張遼の言葉に一刀は困惑し、首を捻る。 「ま、ええからええから。それよりも、ウチな……」 「ん?」 「深く、ふっかーく思ったことがあるんよ」 「へえ、それってどんなことなんだ?」 「ふふん、ウチ、一刀のこと今まで以上にめっちゃ好きになってもうた!」  にぱっと陽気な笑顔でそう告げる張遼からは一刀に対する想いがぎゅんぎゅんに伝わってくる。 「何だよ急に?」 「ほら、昔はあんま仲良うしきれんうちにお別れやったやん。でも、今は違う。あん時のだけやなく色々と一刀を知れた……せやから、ウチは大好きなんや」 「面と向かって言われると気恥ずかしいものがあるな」 「何言うとるん? ホンマのことやから全然、恥ずかしゅうないもん」  その割には頬が朱に染まっているのは一体どういった理由からなるものなのだろうか。 「ふあ……流石に眠くなってきたな……」  眼をしょぼつかせながら一刀はこの先のことを思う。  徐々に広がりつつある無印と仮定した外史に関する記憶の表出。  この真でありながら無印である世界――無じる真という世界――において、一刀は董卓に続いて張遼、賈駆との〝再会〟を果たすことができた。  その二人は両脇に陣取ったまま一刀の腕を抱きしめるようにしている。 「一刀、むっちゃ好きやでー」 「ま、まあ、ボクもあんたのこと……好――嫌いじゃないわね」  二人の声を子守歌に一刀は瞳を閉じる。 (……こっちに来てて良かったかも……な)  普段だったら仕事の山が待っているところだが、幸い一刀には大した仕事はなくゆったりと休息を取れる。少し、ゆっくりと眠りたかった。  意識がまどろみ夢うつつへと沈んでいく中、一刀は両頬に柔らかい感触とほんのりとした温もりを感じた気がした。