「無じる真√N52」  臣下の夏侯惇を引き連れて厨房で典韋の料理に舌鼓を打った曹操は二人を共として庭園を歩いていた。  なお郭嘉は未だ眼を覚ましておらず今も医務室にいる。どうやら曹操の予想通りもうしばらくは気を失ったままとなりそうだ。  郭嘉の事から典韋が振る舞ってくれた品々へと曹操の思考は切り替わっていく。  何品もの名料理が曹操らの前に提示されたが、その中でも荊州で主に食卓に上がる魚である川魚を用いた料理が印象的だった。  ほぐされた白身が唐辛子の汁と程よく絡み合い、口にする者の食欲を次々と誘い一口二口と曹操も食を進めざるを得なかった。  辛みの強い汁が胃を刺激しながらも淡泊な川魚が中心となった具材は逆に優しく胃腸をもてなし、決してもたれさせることもなく、非常に合致した組合せだった。  曹操としてもなかなかの高評価を出してもよい出来映えだった。 「はあ……満腹満腹。美味だったぞ流琉」  膨れた腹を片手でさすりながら夏侯惇がまったりとした声を出す。辛みによって普段以上に増した食欲の赴くままに掻っ込むようにして料理を片っ端から平らげたのだから満足もするはずだろう。  曹操も夏侯惇ほどではないにしても少し食べ過ぎた気もする。 「そうね。また一段と腕を上げたのではなくて?」  典韋に視線を送りながらそう問いかける。 「ありがとうございます。実はここに来てから食堂のお手伝いに行くことがあったので、腕を磨く機会には事欠かなかったんです」 「そう」曹操は、苦笑混じりながらもどこか嬉しそうな典韋に軽く笑みを作ってみせる。 「その土地に根ざした料理というものは少なからず存在するわ。ならば、店で働いてみるというのも料理人としての質を高めるのに役立つことなのでしょうね」 「はい。その通りですね。とても勉強になりましたし、今でも参考になっています!」  典韋は満面の笑みで頷く。きっと新たな料理などを知ることが楽しくてしょうがないのだろう。  曹操自身も料理の腕は大陸全土の料理人の中でもかなりのものであると自負しており、それゆえに未だ見ぬ食材、調理法に興味はあり典韋に語りながらもそれらに想いを馳せていた。 (この大陸を治めたとき、未知なる存在と出会えることでしょうね) 「それでは、わたしは警備に戻りますので。ここで失礼します」  そう言うと一礼してその場に留まる典韋。そんな少女に一言声をかけると曹操と夏侯惇は先へと進んでいく。  建物内部へと入るとしばらく廊下を歩いていく。  急に夏侯惇が「それにしても」とふと感慨にふけるように話を切り出してくる。 「流琉の料理は本当に良かったですね。ううむ……いっそのことわたしも何か覚えてみるべきでしょうか?」 「挑戦することは否定しないけれど、方法はよく考える事ね」  ちらりと眼だけを向けながらそう言うと、夏侯惇は腕組みをしたり表情を微妙に険しいものにしたりと考える素振りを見せる。 「はぁ。……そうですね。秋蘭に会ったら色々と相談してみようかと思います」 「それよりも春蘭」  彼女の妹がどう対処するのか想像して心の内でほくそ笑みながら曹操が声をかけると夏侯惇は微笑を称えたままの顔を向けてるくる。 「はい、なんでしょう?」 「お仕置きのこと、よもや忘れていないでしょうね?」 「あ……。も、もちろん忘れておりません!」  びしっと背筋を伸ばす夏侯惇。  曹操はそんな彼女が一瞬だけ見せたぼけっとした「なんのことやら?」という無防備な顔を見逃していなかったが特に指摘はしないでおいた。  内心で素直な反応の夏侯惇に苦笑しつつ至って無表情を貫いたまま顎で自室の方角を指し示す。 「そう。なら、この後直接部屋に来なさい」 「は、はい!」  ぶんぶんと何度も首を振る夏侯惇を見ながら曹操はどんなことをしてやろうかと思案を巡らせるのだった。  †  典韋と別れてから優に百や二百を超える案件を片付けるのに彼女が要する程の時間が経過していた。  一部を除き、暗く沈んだ部屋の中にぴちゃぴちゃという水飴をなめるような音が響き渡っている。  その水音以外は沈黙という空気と同等な目に見えないものが部屋に充満している。  曹操は一人、寝台の端に腰掛けていた。  縁に腰掛けている彼女は組んだままの脚を一本だけ僅かに軸足から浮かせている。  腿から始まり、膝、すね、つま先とほっそりとした自らの生脚に視線を巡らせていった先、そこに卑しい音の発信源があった。  灯りに照らされている夏侯惇の顔。  漏れに漏れた唾液によってすっかり口元は濡れそぼり、艶めかしい輝きを放つ唇は絡みつくようにして曹操の足先をくわえ込んでもごもごと動いている。 「んっ……はむ……んむんむ……ちゅぱっ」  瞼は閉じられ口に含まれる一部と鼻腔に漂う匂いだけで曹操をじっくりと感じようとしているかのようだった。  下半身はむき出しで彼女の秘部を覆っていた質素な純白の布は既に床に丸まった状態で放置されている。だが、腿靴下に関してはそのままにしており夏侯惇は秘部のみを露出している状態にあった。  上半身もはだけており、半脱ぎとなった胸元からは憎らしいくらいの肉らしい塊が一つぽろんと惜しげもなく外に出されていて先端にある桜色の蕾は外気に触れ続けたためか膨張している。  そんな肉付きの良い女体の持ち主は膝を突いた姿勢で差し出された曹操の足先にむしゃぶりつくように遮二無二食らいつきすっかりその行為に酔いしれている。 「ちゅ……っ、んっ、ふ……ん」  口腔内を犯している曹操の足先……その更に先にある指を丹念に舐めていく夏侯惇。  爪の付け根から縁取るようにして夏侯惇の舌がなぞっていく。その動きは曹操にざらりとした感触を与え、彼女はその何とも言えないものを感じるたびに背筋を一瞬だけ震わせる。  曹操はそんな感覚から受ける痺れに似たものを隠すようにして無反応を装いながらただ夏侯惇の行為をねっとりとした視線で見下ろし続ける。 「ふぅ……ん……っ、じゅっちゅ、ちゅ……う」 「骨を与えられた犬のようね……ふふ、まさに雌犬といったところかしら?」  冷めた仕草で熱く見る曹操に気付くこともなく無我夢中で彼女の足に舌を這わせては咥え、咥えては舐める夏侯惇の姿を見下しながら曹操がそう表現すると、夏侯惇はぴくりと震えて動きを鈍くさせる。 「んぅっ! ふんふん……ん……ぅ」 「何? 違うとでも言いたいのかしら? ふ、誰が見ても同じ答えが返ってくる……覆しようのない事実なのよ、雌犬」 「くぅん……っ、じゅる……ふぅ……っ」  夏侯惇の眉尻が急降下する。よほど衝撃だったように見えるが、それでも彼女の瞳にはまだ否定したいという思いが見え隠れしている。  それすらもひねり潰すように曹操は言葉を投げかける。 「こうやって、美味しそうに私の足を味わっているのだから……反論の余地などないのではなくて?」  長距離を移動するに辺り曹操が具足を履いていた時間もまた相当なものだったのはまず間違いない。  つまり曹操の素足は通常時以上に蒸れていたのもまた間違いのないこと。  しかも、到着してからの曹操は自身の承認待ちとなっていた案件などをはじめとする仕事による多忙に次ぐ多忙で脚の後処理などする暇は一寸ばかりもなかった。 「……んぅ……っ、……ちゅぅ、くちゅ……はむっ、ん」  だが夏侯惇はそのあたりを気にする素振りなどこれっぽっちも見せず、ただただ舌と口を動かし続けることに熱中している。  そう、夏侯惇は長い間このままだった。  彼女を閨に連れてきたときから曹操がそう命じたからだ。 「足を貴女の舌で……口で綺麗にしないさい。ただし、それだけよ」そう告げて舐める、若しくはしゃぶるという行為のみを彼女に許可していた。  行為に差し支えるからといって手で曹操の脚を掴むなどということなどもちろん論外である。馬鹿犬なのだから巧みに前足を使うことなどあってはならない。  もっとも夏侯惇にはそんなことなど関係なかったようだ。  普段のおおざっぱさと違い彼女は器用に頭を動かして曹操の足先を逃さないようにしながら舐め続けている。 「はぁ……華琳さまのおみ足……綺麗……ん、ちゅっ」  曹操はもうすっかり夏侯惇の口腔内から伝わってくる温もりにもなれてきていた。それでも足を舐められることによって背中に走るぞくりとした甘い衝撃は消えない。  定期的に来る刺激は曹操に切ない感覚を積み重ねていき、彼女はそれに興奮を覚えながらもまだ夏侯惇を解放するつもりにはなっていない。 「ほら、まだ残っているわよ」 「ふぐぅ……ん……っ、ふぅ……ん」  一切足を動かすことなく言葉のみを与える。  今の夏侯惇は手足を動かすことも曹操と言葉を交わすことも許されてはいない。  これは仕置きなのだから当然のこと。  時折わざと脚から力を抜いて重力に従うようにして降ろすと、それを追うように夏侯惇の頭も動き必死に食い下がろうとしてくる。  また、その度に彼女の口元から涎が零れ落ちて本当に犬のように見える。 「あむ……ふぁ……んっ……ちゅっぱ……」  一本、一本じっくりと舌で嬲られる指。  指と指の間という普通なら躊躇してしまうような箇所すらも余すことなく舐めていく。  熱を帯びた口腔内にて指の腹を舌の上に置くと、あめ玉のように転がされ曹操はぞくぞくとした恍惚を感じてしまう。  汗だらけの……それも、匂いなどがもっとも充満しているであろう足先を綺麗にしていく舌。そこから夏侯惇の体温が直に伝わってくる。  そんな夏侯惇の行為によって徐々に生じ始めている快感を曹操はじっくりと堪能していく。  じわじわとせまる痺れにも似た感覚に曹操が酔いしれる中、夏侯惇に異変が生じ始める。 「どうしたの春蘭? ……身体を厭に落ち着きが内容だけれど?」  夏侯惇は床に付いていた膝をいつのまにかくっつけ太腿をすりあわせている。彼女の下腹部、その奥までもが発するうずき。その快楽という名の蟲が所在なく彼女の身体中を這いずり回っているのだろう。  曹操はそれを察しながらも何も言わずにそのままにしておく。 「ふ……ぅん……っ、か、華琳さま……そ、その……」 「会話を許可した覚えは無いわよ」 「っ!? ……ちゅ、ん……っ、ずず……ふぁっ」  足先から口を離したところを嗜めると夏侯惇は慌てて再びしゃぶりだす。  彼女のそわそわとした態度は一層動きを増している。一度、気を緩めさせたことによってうずきをより強く認識してしまったのだろう。  夏侯惇のむき出しの額には汗がにじみ、頬は朱に染まりきって夕空のようになっている。それはきっと灯りの影響だけではない。 「まったく……これじゃあ、お仕置きにならないわね」 「じゅ……っ、ん……ぅ。ふ……んっ」 「蒸れている足の臭いすらも昂ぶる理由になるなんて、とんだ変態ね」 「くぅ……うんっ――ふぅ、ちゅ」  しばらく夏侯惇の動きを黙って見つめる。なんとか曹操に次の段階を許可してもらおうと必死にくわえ込んだ足先を舌で愛撫していき、その動きは徐々に激しさを増していく。  荒々しくも黙々とこなしていた夏侯惇だが、何度も大きく肩を撥ねさせている。  その度にそろそろと手を動かして自らをなぐさめようとするが曹操がそれを見逃すはずもない。 「手は動かすなと言ったはずよ? 勝手なことはするなと何度言えばわかるの?」  眉間に皺を寄せて曹操は力を込めながらぐっと脚を前へと突き出す。その足先が夏侯惇の口腔内を一層ぱんぱんにして大あくびをするのと大差ないほど絶大な開口を強制する。 「……げえっ……ごふっ、けほ、けほ」  夏侯惇は一気に曹操の足を吐き出して盛大に咳き込んでしまう。 「仕方ないわね」  せわしない呼吸と厭らしい涎をだらだらと垂らして咳き込み続ける夏侯惇を視線の隅へと追いやると、曹操は夏侯惇の唾液で濡れたままの足でぺちゃっぺちゃっと音を立てながら彼女の背後へと回り込む。  その際、夏侯惇が咳を漏らしながらも瞳を輝かせているのを曹操はちらりと見た。  恐らく曹操の言葉を許しに基づくものだと思い込んだのだろう。  だが、そんな甘い話があるわけはない。 「どうしても言うことがきけないなら……矯正しなくてはね」 「へ? か、華琳さま……」  背後にいる曹操の様子を窺おうと首を捻る夏侯惇を無視して曹操は作業へとうつる。  夏侯惇の両腕を後手に回すと、手首を純白の布で縛り上げる。  既に脱がし済みだった彼女の下着だ。そのとある一部分は湿り気を帯びて染みとなっている。それは曹操が連れてくるときから期待に満ちあふれていた証拠。  曹操は一瞬だけふっと柔らかな笑みを零しつつもさっさと行動を終える。 「できたわ。これで、もう勝手に手を動かすことはできないわね」 「こ、これは一体……」 「ふふ、わがままな娘にはちゃんとわからせるべきでしょう?」  そう言って口元を邪に歪ませると曹操は背後から夏侯惇の上半身を俯せるようにして倒す。  お尻を突き出すような体勢となり、両脚の中間にあるぬめぬめとした液体により光を放つ溝が曹操の目の前に堂々公開される。 「ふぅーっ」  ひくひくとしている菊のような後ろの穴から、渓谷にそっていくようにして秘唇へそっと息をかけていく。  他の箇所に吹きかけてもむずがゆくなるだろう程度に制御しての息。 「くっ……ひゃんっ」  敏感となっている夏侯惇の中心は一層それを顕著に感じ取っているのだろう、びくびくと全身が痙攣気味な反応を見せている。 「ふっ」 「ふぁっ!?」  息をかけるたびにびくんと撥ねる夏侯惇の腰。徐々に巨大な桃のような臀部が弧を描くようにふりふりと動き回る。 「はぁっ、……華琳さま……も、もっと……ちゃんと」 「黙りなさい」  一言の元にぴしゃりと切り伏せると曹操は人差し指を立てて夏侯惇の尻溝へと這わせていく。排泄物を外へと投棄するための部位へ到達すると、ぴたっと動きをとめこねこねといじくり回す。 「そ、そこは……ふ……うんっ」 「ふふ、逃げちゃ駄目じゃない」  穴の縁を指で円を描くようにして動かしている一方で空いている手でぷるんと震える夏侯惇の尻肉をぐっと鷲掴みにして彼女の動きを制御する。  指が付近をなぞる度に夏侯惇の狭穴がきゅうっと締まり、そこから距離が空くと緊張がほぐれてひくひくと別の生き物のように鼓動する。 「は……っ、ひうっ……そ、そんなところ――んぅっ! 止めて……ください」 「何? こんなところを弄られても感じているの?」 「そ……ふうぁぁっ、くぅ……ち、違いま――はぅっ」  ぐにぐにと尻朶を揉みしだきながら尻穴を弄る指を人差し指から親指へと交代させる。  扉の中心部を親指の腹でぐいぐいと押していくとめり込みそうになる。だが、本来ならあってはならない侵入者に括約筋という名の門番が必死に抵抗の姿勢を見せる。  もう一押し力を込めてしまえばズブリといきそうだが曹操はやめておく。それをしてしまえば夏侯惇がふっきれてしまうだろうから。  そうなってしまえば夏侯惇が望まぬ所を弄られることに羞恥を感じる度合いが弱まってしまう。 「ふふ、強情ねえ……。でも、その方が虐めがいがあるというものよ」  曹操はふっと息を吐き出すと、臀部を抑えていた腕も位置を中心寄りにする。  尻溝を中心に両手で左右対象の位置取りをする。そのまま指に力を込めると尻肉をぐっと掴みあげて夏侯惇の桃尻を城門のように左右へ開け広げていく。 「そ、そんなに広げないでくだ……は、ぁ……んっ」 「あら? そうやって嫌がるほどお仕置きに相応しいと思うのだけれど、違うかしら?」  身をよじりながらも色を感じさせる声を漏らす夏侯惇に曹操は嗜虐的な昂ぶりを覚え、それを歪んだ笑みへと変換する。 「ふふ、ここ? ここがいいのかしら?」 「ひぃ、う……っ……くはっ」  尻を鷲掴みにしている両手の親指で先ほどから弄り続けてきた菊紋の皺を伸ばすように左右へぐいぐいと何度も引っ張る。後ろの穴と同じように夏侯惇は口を開けて熱っぽい息を漏らしている。  本当に曹操の指を求めているのはもっと下、オンナの部分なのは間違いなく既に朝顔のように花弁を強調し、中からは花の蜜がだらだらと出続けている。 「苦しそうね、春蘭」 「へ? ……あっ、くぅ……は、はい……っ」  床に頬をひっつけたまま夏侯惇が微妙に首を上下させる。 「そう……どうしてもシテ欲しいのならば今の貴女がどんな状態なのか言ってみなさい」 「え? そ、そんな……」 「あら? 嫌なの? 別にいいわよ、もう何もするなと言うならこのまま置いておくわ。貴女の身体は見ているだけでも十分にその価値を堪能できるもの」  嫌味っぽく笑うと曹操は菊蕾をいじくり回していた手を止めて、夏侯惇の正面へと回り込む。  上半身に力が入らないのか未だうつぶせになっている夏侯惇が瞳をせわしなく動かしている。その滑稽な姿を見下ろしているだけで曹操は自らの内面が昂ぶっていくのを感じる。 「……ふふふ」  夏侯惇はゆっくりと瞳を動かして曹操を上目づかいで見上げる。その引き締まった肉体は愛撫のみ続けられたことですっかり火照りを覚え、じっとりと汗を掻いている。 「ふ……うん。そんな、あんまり……です華琳さまぁ」  下腹部のうずきがもどかしいのか夏侯惇は弱々しくもんどり打つ。  その度に己の重みによって潰れて形を変えた乳房とすっかり硬くなっている突起が刺激されるのか言葉の合間に入る呼吸の拍子が狂っている。 「……春蘭」  曹操はそっとその場にしゃがみ込むと夏侯惇の顎を持って顔を固定する。頬どころか顔全体を染めた夏侯惇、その光を歪んで捉えるほどに潤んだ瞳に曹操はぼやけた自らの姿を見いだす。  夏侯惇の瞳の中の曹操は満面の笑みを浮かべている。夏侯惇はそれに合わせるように安堵の笑みを浮かべようと痙攣気味の口を吊り上げる。  曹操は口端をにやりと歪める。 「――言うまでこのままよ」 「…………っ!?」  瞬間、曹操を映していた瞳の瞳孔が広がり、夏侯惇は息を詰まらせる。動けない彼女は曹操の返答に地団駄を踏むように力の入らない身体をぐらぐらと揺らし始める。 「ふぅ……っ、く、んっ」 「言うの? 言わないの?」 「わ、わたしは……」  夏侯惇がきゅっと瞼を閉じる。 「……い、今のわたしは華琳さまにお仕置きされているにも関わらず感じてしまう雌犬に成り下がりました!」  部屋の灯りを浴びているだけではあり得ない程に紅くなっている顔でか細いながらも芯の通った声で答える夏侯惇。  曹操はそんな彼女を見て口元に大きな曲線を描く。 「よくできました。うふふ」  曹操は嗜虐的な笑みを浮かべながら夏侯惇の上体を起こして半ば強引に口付けをする。  濃厚なエキスが交わり合い一つとなっていく。曹操は口腔内から彼女の全てをまさに支配しているのだ。  互いの滑りを纏う熱き獣が唾液だらけの空間を駆け回りじゃれつき合い互いを味わっていく。 「ん……っ、ずぅっ、ちゅ……っ、ん」  徐々に両者の鼻息も荒くなり、高ぶりが表に出始めてくる。 「……ちゅろ、れろ……んっ、ちゅぷ……ぷはっ」 「……んっ、はぁ……はぁ」  乱れた息の夏侯惇、大きく露出した額は朱色に染め上がり汗が浮き上がっている。  曹操はその汗を拭うように口を付けるとぺろりと額を舐める。 「ひゃう!」 「ふふ、いい反応よ。大分、彼方此方が敏感さを増してきたのかしら?」 「か、華琳さま……」  上目遣いでねだるようにして見つめてくる夏侯惇に微笑んで返すと曹操はむき出しとなったまま放置し続けていた夏侯惇の胸部にたわわに実った巨峰を手に取る。  自分の身体では決して味わえない感触を夏侯惇の胸で味わいながらもその中央で勃起している乳首を爪で引っ掻いたり摘んだりといじくり回す。 「ふふ、こりこりね……こんなにしちゃって本当に厭らしいわ」 「ふあっ、や、そんな……爪を立てた……らぁっ!」  かりかりと爪で掻くと夏侯惇の肉体がぴくぴくと小刻みに震える。  後ろ手に縛られている夏侯惇は上体を起こせば胸を突き出すような姿勢となる。つまり、憎たらしい程に豊満な乳房を曹操が虐めるのに丁度良い体勢となる。  曹操はぺろりと舌なめずりをして唇を濡らす。 「……ふふ、こっちも良い感じなのかしらね」  服の肩口を一気に手首の辺りまで降ろすと未だ姿を隠していたもう片方のおっぱいが皮を剥かれた果実のようにぷるんと外界へと晒される。 「んあっ……ふぅ……う」 「やっぱりね。こっちも……あむっ……ん」  曹操は、外気に触れたばかりの乳房へと顔を近づけ白桃を食べるかのように口へと含む。舌の上にカチカチに勃起した乳首が触れる。それは小さな果実の種のように転がしやすく感じる。 「か、華琳さまぁぁぁぁ……あぁ、んっっ 」  曹操がしゃぶりつくやいなや夏侯惇が嬌声を上げて身をよじろうとする。それを無視して曹操は強めの吸引力をもってきゅうきゅうと吸いつく。  ふわっとした甘い味がほのかに口腔内へと広がるのを曹操は感じる。 「ふぅ……うぁっ……つ、強く吸っては……あぅっ」  夏侯惇の鋭い瞳も今では完全に蕩けきっている。  徐々に高まる興奮をそのささやかな胸に密めつつ曹操は空いてる側の乳房を再び揉みしだいていく。掌で収まりきらないそれを陶芸の粘土のようにこねくりまわす。 「くぅ……んっ、いいです。あ、ん……」  夏侯惇が熱い吐息を漏らすのを耳にしながら曹操は乳首を甘噛みしていく。丁寧にくっくっと歯と歯で挟み込む。 「きゃ……んっ……くぅ……」  可愛らしい鳴き声を発した夏侯惇に曹操は内心でにやにやと笑みを浮かべる。同時にもう片方の乳頭を人差し指と親指でぎゅっときゅっきゅっと挟んだり、くりくりと頃がしたりして硬くなったそれをじっくりと嬲る。 「は、ぁ……っ」  止めどなく溢れる吐息。それが一層曹操の心に火を付ける。  指で弄ってる側だけでなく、口に含んでいる乳首も舌で撫でたりきゅうっと吸い込んだりと刺激を与える。 「ちゅ……っ、ちゅる……ぷはっ……じゅ……っ」 「くぅ……華琳さまの唾液が……ぬるぬるして……ふぁっ」  どこを見るでもなくぼおっと意識を放りかけた夏侯惇の意識を戻すように先程したのと同様に爪を立てるとかりかりとひっかく。 「うぁぁぁっ、くぅ……うぅぅぅー」  甘い呼吸を繰り返す夏侯惇がぴんとのけぞり一層高い声を絞り出す。  曹操は彼女の乳首をぎゅっぎゅっと強烈に摘んでは柔らかくほぐすようにくにくにと弄ぶ。緩急を付けた責めと同時に反対側の乳房を咥えた口の中では硬くなっている蕾を舌でころころと転がしていく。 「ふあっ……んぅ……っ、そ、そんな両方から……ひっ」  指の力を抜いては強く噛み、舌で優しく愛撫しては強く摘む。  強い刺激と弱い刺激。  緩急が交わったことで生み出される快感はどれ程なのだろうか。 「んぅぅぅぅぅっ、くぁっ、う……っ、ん……ふぁぁ!」  少なくとも夏侯惇を反応からすると相当なものだというのはわかる。  その証拠に夏侯惇は仰け反った姿勢のまま元に戻れないでいる。弱い刺激に乗じようと少しでも力を抜けば強い刺激に襲われるからだろう。  必死に迫りくる快楽と正気の合間でもがく夏侯惇の顔をそっと見上げる。 (ああ、今の貴女はとても美しいわよ……春蘭)  全身の血が集まったかのように紅く染まる顔。大きく開かれた大地のような額から滴る汗、充血し潤みを増す瞳、はっはっと犬のような呼吸を漏らす唇、ひくついている鼻、その全てが夏侯惇をより官能的に見せ、また洒落た服で着飾ったかのように彼女に輝きを与えている。  その姿を見つめている曹操は自分のオンナがきゅうきゅうと切なげにうずいてきたのを感じ始める。  曹操は思い切り吸引をしつつ自らの唾液でべちょべちょになった唇を自分にはない巨大な乳房から勢いよく離す。きゅぽんっという小気味よい音が立ち夏侯惇は一際大きく顔を反らせ天井を見つめる。 「ふあぁぁっ」  余韻にひたっているのかしばらく反り返ったまま口をぱくぱくと開いたり閉じたりを繰り返す夏侯惇。  曹操は未だ握ったままである白桃の乳暈をぎゅっと指で挟み込む。 「……っっ!」  びくりと震えると夏侯惇は艶やかな色を見せる唇をわななかせて停止していた熱い吐息を再度零し始める。  荒い息遣いの夏侯惇に胸を熱くしながらも曹操は長い間外気に触れたままで苦しげな恥部へと手を伸ばす。 「あら、もうすっかり出来上がってるじゃないの。卑しい雌犬」 「……ふぁっ……めす……いぬ……ふくぅ……」  耳元で囁く曹操にうつろな瞳を向けた夏侯惇がゆっくりとした口調で答える。言葉の意味すらも分からないほどに彼女の内部は弾けてしまったようだ。 「ふふ、まだまだよ春蘭。これからじゃない」  そう言うと、曹操は荒ぶる気持ちを自制しつつ遠慮無く指に愛液を絡みつかせてくる夏侯惇の秘唇へと人差し指をずぷっと挿入していく。 「んっ……ふ……あぁっ」  徐々に夏侯惇の瞳に再度光が戻る。快感によってまた意識が戻りつつあるのだろう。それを確認すると曹操は既に大方がほぐれている肉壷へ二本目の指をつぷと挿し入れていく。 「くぅ……っ、かりんさ……まの……指があぁ」  途切れ途切れに聞こえる夏侯惇の声に曹操も昂ぶりを抑えきれなくなってくる。秘部を弄ぶのとは別の腕で後ろ手に縛られた彼女の腕を掴み後ろへ引っ張り夏侯惇の背筋を半ば強制的に伸ばす。  丁度良い位置にある乳房の周辺へ唇を這わせていく。混じり合う二人の唾液が絡んだままの舌がねっとりと白い肌をナメクジのように這っていく。 「はぅん……くっ……あぅ……」  良い反応を返す夏侯惇に曹操は流石に息を荒げ始める。それでも快楽に酔いしれつつある彼女は気付かない。 「お次はどこがいいかしらね……」  最早夏侯惇の耳には届いてはいないだろう言葉を口にする曹操。そこにはもう快感に身悶える彼女へ語りかけようという意思はなく、ただただ嗜虐的な陶酔に浸ったために漏れた言葉だった。  嗜虐的官能に曹操は狂気にも似た瞳の色で夏侯惇の肢体を見渡しながら挿入している手の親指でクリトリスを器用に弄び始める。 「ぬぅ……んはぁ……ほっ……う……くぅ」  白い歯を噛みしめる夏侯惇。クリトリスを揉めば揉むほど彼女はたわわな二つの果実をぶるんと震わせるように全身をくねらせる。  また、弄られている肉豆は充血して固くなってきている。 「ふふ、強気ね……私の指を押し返してきそうじゃない」 「……ふぇ?」 「ここよ、ここ」  その言葉と同時に皮を剥き桃色の肉坪を露出させる。 「……はぅ……え、ふぁ、ふぁりんふぁま?」  何が何だかわからないと言わんばかりの瞳で夏侯惇が曹操を見る。口元からはだらだらと涎が垂れ続けているが縛られた両手ではそれを拭うことも敵わないだろう。 「仕方ないわね……」  苦笑混じりに舌なめずりすると曹操はその淫らさを兼ね備えてしまっている液の中心へ唇を添えて一気に吸い取る。 「ふぁ……っ、くぅぅ……す、吸われるなんて……はぁ……んぅ」  夏侯惇の口から溢れた粘液をちゅるちゅると吸いきると曹操は彼女の顔中を舐め取っていく。秘部を弄られているからか一層留まるところを知らぬ様子を見せる汗に覆われた肌からは僅かな塩っ気を感じる。  まるで夏侯惇が塩漬けにされたかのようだ。 「んぅぅ……ふ……ぁぁ……くぅ。ふぁあっ」  瞼をなぞり、眉毛の一本まで逃さずにしめらせる。鼻頭をかるく口に含み甘噛みする。適度な柔らかさと弾力が早々の歯を押し返さんとするが彼女は敢えてその天辺をぺろりと舐める。 「ひゃぁ……ひっ!?」  宙を漂っていた夏侯惇の視線がここに来て曹操を捉える。  曹操も青みがかった瞳でじっと見つめ返す。  そしてにこりと笑うと曹操は軽く口付けをして再度秘部弄りに意識を戻す。  曹操は身長差ゆえに口付けの反動で先っぽまで抜けていた指を再度第二関節程度まで入れていく。そこから更にぐいと押し込む。 「……っ」  夏侯惇が息を呑んで身体を硬くする。曹操が掴んでいる彼女の両腕からもその強張りが伝わってくる。  一度中まで突き入れた指を今度は腹部の側へと折り曲げるようにして動かす。 「ぅ……くっ、ひぅ……っ」 「ふふ、大分こなれてきたわね。ここも良い感じじゃない」  指の腹に感じるざらざらとした感触を大事に、そして丁寧に愛撫していく。夏侯惇はそこから快感が染み出していることをぴくぴくと小刻みに撥ねる艶姿で体現している。 「そう……ここがいいのね」 「そ……それはっ……んぅっ!」  曹操は反応を見るやそこが夏侯惇の位置であると判断すると、しつこく、それでいて労るようにして指で愛していく。  ぴちゃという水音と夏侯惇の悩ましげな喘ぎが部屋中を支配し尽くすように響いている。 「そろそろ……ね」  曹操はそれまで夏侯惇の強烈な部位を弄っていた指を更に動かしその奥にある膨らみを見つける。そこを曹操の指がくすぐるような優しさで触れる。  ぐいぐいと小さな力で押し込むのにつれてぷくっと膨れていく。曹操は誘うように合図を出したそこを徐々に速度を上げて段々と指を振動させていく。 「うぅぅ……あぁ……っ、くぅぅ……ふぅあっ!」  夏侯惇の呼吸の間隔が徐々に狭まる。瞳孔が開き意識が飛び立とうとしている。  曹操が手の動きを最高速へと変化させた瞬間、夏侯惇の動きが激しくなってくる。 「ふぁぁ……ひ、ひぅぅぅぅぅぅ!」  夏侯惇が嬌声を上げる瞬間、曹操はさっと手を抜く。すると、秘部から大量の液が飛び散り夏侯惇は腰をがくがくと震わせて陸にあげられた魚のようにぴくついてしまう。  段々と動きが小さくなり力が抜けた夏侯惇を抱え込むと、曹操は自らの腕の中で果てた余韻に浸り汗と朱に塗れた夏侯惇を凝視しながらふっと息を吐き出す。 「さあ、春蘭。まだ終わりではないわよ。むしろこれからが本番」  曹操はその夜空と青空が混じり合ったような色の瞳に宿る嗜虐的な光を一層深いものとして未だ息の整わない夏侯惇に笑いかけるのだった。  †  日が地平の彼方に姿を消してから大分経った。  今や辺りは暗黒の薄布によって覆われてしまったのではと錯覚してしまいそうなほど闇に満ちている。  典韋は腰に手を当てたまま仁王立ちしてどっしりと構えている。親衛隊としての職務である曹操の身辺警護に戻っているからだった。  伝磁葉々をその手に握ったままの彼女は神経を研ぎ澄ました状態で入り口前で立ちふさがっている。それこそネズミ一匹通さないとばかりに。  時折伝磁葉々を動かしたりして常に身体を温めて臨戦態勢を取り続けるようにしていると、同じく警備に当たっている兵士が慌ただしく走ってくる。 「典韋将軍! 将軍に用があるという街の者が」  報告をしている兵士の脇から、何やら慌てた様子で人影が転がり出てくる。  それは典韋が行きつけの食堂〝香辛堂〟の店主と懇意にしている商人。 「典韋将軍! すみませんが香辛堂の旦那を手伝ってもらえやせんか?」 「え、でも……」 「お願いしやすよ。このままじゃ旦那倒れちまう……。今日は異常事態なんだ。店から客が溢れそうなくらい大量に来てんだよ……いつもの比じゃねえ」  瞳の端に輝く雫を浮かべながら商人は必死に訴えかけてくる。それ程までに事態は深刻なのだろう。  いつもの典韋ならばここまで頼まれては代理を立てて手伝いをしにいく。  だが、今日は曹操がいる。親衛隊である以上、ここを簡単に離れるのもどうだろうか。  そんなことを典韋が考えていると共にいた守衛の兵たちが彼女の元へと寄ってくる。 「我らにお任せください。典韋将軍がおらずとも守り抜きましょう」  代表して一人の兵士がそう言うと他の者たちも「そうだ、そうだ」「ご安心ください」など典韋を後押しする声を上げている。 「そ、それじゃあ……いってきます!」  びしっと背筋を伸ばして典韋がそう告げると兵士は頬を綻ばせて笑う。他の兵士も皆それぞれが朗らかな笑顔を浮かべている。  そして、典韋同様……いやそれ以上に堅苦しさのある姿勢で礼をする。 「存分に腕を振るってください」 「ちくしょー、俺も行きてー。そんで典韋将軍の料理を食いたいぜ」 「馬鹿野郎。手助けしたいのならまだしも足引っ張りに行ってどうする」  やんややんやと盛り上がる兵士たちに典韋はにこりと微笑む。 「皆さん。ありがとうございます。それでは! さ、行きましょう」  そう言って迎えに来た商人に声をかける。成り行きをそわそわとした態度で見守っていたからか一瞬間を置いてから反応が返してきた。 「あ、おお。助かりますよ-、でも毎度すんませんねえ」 「いいんですよ。困ったときはお互い様です」  商人と言葉を交わしながら典韋は店へと急ぐ。 「お客さんを待たしては悪いですからね、急がなきゃ!」  日は沈み台頭するように現れた月も雲によって霞み漆黒に染まっている街。  そこに居並ぶ建築物の窓からぽつぽつと漏れている灯りが先に広がる夜陰と相まって道を歩く者を冥界へと誘う光のように明るく燃えさかっていた。