執務室に戻った一刀が見たのは以上に張り詰めた空気の中で険しい表情をしている公孫賛と陳宮の姿だった。 「…………」  陳宮も公孫賛も口を開く気配がない。ただただ、互いにきつくにらみ合っている。 「何があったんだ?」 「……あの、ご主人様」 「ん? 雛里。一体、どうしたんだ? これ」  いつからなのかは不明だが、部屋の隅で縮こまっている鳳統を見つけた一刀は歩み寄っていく。 「おほん!」 「……にゃ、にゃんでもありましぇん」 「いや、明らかにおかし――」 「か弱い乙女に触手を伸ばしてないで、仕事に戻るのです!」  一刀の疑問混じりの声を遮るように陳宮の怒声が降りかかる。どう考えても変である。 「触手じゃなくて食指な。……って、伸ばしてないから!」 「どっちでもいいから、はやく政務に戻れ」  公孫賛にしては非常に珍しいほどに重みのある声で促され、一刀はしぶしぶ自らの席へと向かう。 「……わかったよ。でも、その前に、どうして雛里が来たのか教えてくれよ」 「…………」  公孫賛も陳宮は急に黙り込む。しかも一刀と眼を会わそうとしない。 「どっちも知らないのはわかった。まったく、何してたんだよ……はぁ。それで、一体、どうして来たんだ?」  なんとなく事情を察した一刀は二人に呆れつつ、鳳統の方を振り返る。 「……あの、詠さんの代理で」 「まて、ねねが来ているのだぞ……どういうことだ?」  鳳統の説明に公孫賛が首を傾げる。陳宮も視線で問いかけている。二人の間の険悪な空気は新たな関心事によって消え去ったようだ。 「……その。実は以前、詠さんから頼まれていたんです。自分が何かの都合で仕事ができないときは代理をねねちゃんに頼んであるのだけれど、一人じゃ頼りないから補佐してほしいと」 「なんですとー!」  鳳統の説明に陳宮が両手を天井へ向けて突き出して憤慨を露わにする。 「詠のやつめは、この陳宮を舐めておるのですかー!」 「あ、あわわ……あぅ」  今にも暴れ出しかねない陳宮の様相に鳳統は一層身を縮こまらせてしまう。 「お、落ち着け、ねね」  公孫賛が宥めようとしているが陳宮の耳には届いていないようだ。 「人が親切心で代理を務めてやっているというのに……どういうつもりなのです!」 「なんで、そこで俺を睨むんだよ!」  何故か、敵軍をみるかのようにきっと睨み付けられて一刀はツッコミを入れる。 「黙るのです! 詠の主人であるお前の躾がなっていないからいけないのです!」 「んな、無茶苦茶な!」 「ええい、臣下の失態は主の失態! くらうがよいのです」  そう叫ぶやいなや一瞬で陳宮はそれまで座っていた席を後にする。  どう思考を巡らせても一刀が導き出すのは嫌な結末。 「ちょ、やめてとめてやめてとめ――」 「ちんきゅーーーーーーーーきーーーーーっく!」 「ったぁー!」  もろに陳宮の蹴りを受けた一刀は床へと倒れつつ転がっていく。  こんな状態でありながらも政務は滞りなく進むことになるのだが、それは助っ人陳宮の活躍か、はたまた真のお助け人鳳統のおかげかは不明である。  †  長い政務を終えた一刀は執務室を後にして自室へ向かって廊下を歩いていた。  気がつけば、既に夜も深まり空に浮かぶ星々が競うように瞬き、その輝きを最たるものせんとしている。 「すっかり遅くなっちゃったな」  普段床につく時間よりも遅い。そのためか、進める歩も一段と速い。  結局、賈駆の元を訪ねることはできなかったな、と思い明日行くしかないかと考えている間に部屋の前へと到着していた。  室内へと足を踏み入れたところで一刀は人の気配を感じる。 「誰だ!」 「…………」  威嚇するように叫ぶも相手は微動だにしない。一刀は正体を探るためじっと闇の中へと向けて目を凝らし続ける。 「……月?」  確かに、そこにいるのは董卓だった。  だが、普段とは違い、感情が感じられない。しかも、今来ている服がかつて君主をしていたときのものであり、前の外史での出会いを思い起こさせる。 「お帰りなさいませ。ご主人様」  董卓が口元を緩めて微笑む。  一刀には笑っているようには見えないが一応、普通に話を続けてみることにする。 「お、驚かせないでくれよ」 「……どうしたんですか?」 「それを言いたいのはこっちだよ。詠の看病はいいのか?」 「大分落ち着いてきて熟睡し始めていましたので、交代を申し出てくださった霞さんと華雄さんのお二人にお任せしました」  その返答に一刀は異常なほどに心臓をどきりとさせる。 (明らかにおかしい……。月が詠のことをいくら親しい間柄とはいえ他の誰かに任せるなんて)  妙な胸騒ぎを感じながらも一刀は平静を装って話題を変える。 「それにしても、随分と懐かしい格好をしてるな。どうしたんだ?」 「ちょっと、思うところがありまして。どうです? 思い出しませんか、私たちの出会いを」  小首を傾げながらそう訊ねる董卓に一刀は暗闇に覆われている天井を見上げる。彼女の瞳に普段と違う光があることに気がつかぬまま。 「そうだなあ……、あの時は霞がいてくれたから良かったと思うよ」  反董卓連合と董卓軍による戦乱の終焉の頃を思い出す。張遼がいてくれたからこそ、潜行してもらい董卓たちの身柄を無事に確保できたのだ。 「え? 恋さんのおかげじゃないんですか?」 「…………今、なんて?」  あり得ないことを述べた董卓に一刀は自分の耳を疑う。 「ですから、あの時、恋さんがいなければご主人様と私たちはきっとすれ違いになっていましたよね」 (……どういうことだ?)  少女の言葉で脳裏を過ぎるのは紛れもなく一刀が記憶している董卓との〝最初〟の出会いの場面。  あまりにも自然な話し方、どう考えても董卓の言葉に偽りも一刀をからかっている様子も感じられない。 「ゆ、月、どうしたんだよ……」  不安を大いに抱きながらも一刀はそっと灯りを付ける。 「お、おい、月! 大丈夫なのか」  よくやくはっきりと見えた董卓の顔色がおかしい。  暗闇に紛れていたために気付かなかったが玉のような汗がいくつも浮かび上がっている。  その姿を眼にして一刀は思い出す、賈駆が熱を出して寝込んでいることを。もしかしたらそれと似た症状なのかもしれない。  そして、それはすなわち、彼女の中にある記憶の表出が実現してしまったということである。 「大丈夫です。それよりも、ご主人様。ちゃんと私を見てください」  見た感じでは相当まいっていそうなのに瞳に込められる強さは揺るぎない。 「月、もしかして思い出してしまったのか?」 「…………」 「どうなんだ? 愛紗がいて、鈴々がいて、詠がいて……みんながいて、月と俺がいた、あの頃を」  とうとう思い出した少女が現れてしまった。あの日々を、本来ならば知るはずのない日々を。 「やっぱり、そうなんですね」  まったくぶれのない声、眼差しで董卓が一刀に詰問する。  数十秒、一刀は口を閉ざしたまま董卓を見る。心の内では迷い、考えている。 (話すべきか、それとも隠し通すべきか……決まってるよな)  自らの思考が結論を見いだすと、一刀は董卓へと一歩歩み寄る。 「月は俺に訊きたいことがあるんだろ?」  そう訊ねると、董卓は小さく頷いて肯定の旨を明示する。 「ご主人様は……ご主人様なんですか?」  普通に聞いたら意味がわからない質問。だが、一刀には意味が分かる。 「そうだよ。俺は、あの一件よりも前に月と一度出会っているんだ」  董卓はとくに反応を見せない。一体、何を思っているのかわからなく、それが一刀の不安を高まらせてしかたがない。 「つまり、俺は月をその……今まで騙してた最低なヤツだったということだ」 「…………」 「詳しく話した方がいいよな――」  一刀は独白を続けていく。  ――自分が董卓とかつての世界(外史については正直に語るわけにもいかないので割愛して説明)において出会っていたこと。  二人の間に特別な関係を築いていたこと。  この世界で彼女を救おうと思ったのにはそういった事情が起因していたこと。  董卓が自分に好意を抱いているのをなんとなくだが察していたこと。  そして……その想いはその〝前の世界〟の可能性があることを。 「ごめん。だから、俺は月にどう思われても仕方がない……そう思ってる。嫌ってくれてもいい。月の危機を事前に知っていながらあの体たらくだったこと、責めてくれてもいい。俺からは以上だ」  話し終えてからしばらく沈黙が続く。一刀にはそれがえらく長く感じられる。  実際のことなど関係ない。一刀は時間の流れに対してじわじわと首を絞められるような息苦しさを感じていた。そう、本来の長さとは関係なく、長く、重く一刀にのしかかる刻。  じっと見つめてくる董卓。その瞳からは彼女の考えていることを窺い知ることはできない。  沈黙。  沈黙に次ぐ沈黙。  掌がじっとりと汗ばんでいる。一刀がそれに気がついた頃になってようやく董卓が口を開く。 「許します。私は、ご主人様を許します」  その言葉は非常に柔らかく、一刀の心を落ち着けるには十分だった。別に笑顔というわけではない。  なのに董卓からは真剣でありながらも慈しむような想いが湧き出ているように思える。 「ご主人様がその、……御自分を責めてるのはよくわかりました」 「…………」 「きっと、私が抱いた以上の葛藤もあったことだと思います」  腰の前で手を組み背筋はぴんと張り畏まった姿勢のまま董卓は淡々と語っている。  だが、その目力は強く、ぐっと一刀の瞳を捕まえている。 「だから……、いえ、ただ言いたいのは一言です。私は、許します」  そう言ってようやく董卓は微笑んでくれる。  一刀には「許す」の一言が何よりも有り難かった。慰めの言葉を並べられてもきっと響いてこなかっただろう。  むしろ、より自ら心を打ちひしぐ事になったに違いない。  目の前の少女がそんな一刀の内心をどこまで察知していたのかはわからない。だが、間違いなく一刀のことを考えてくれているというのはわかる。 「それと、ご主人様は勘違いなさっています」 「勘違い?」 「はい。私がご主人様を好きになったのは別に前の記憶があったからとかではないんです。救っていただいてから共に生活を送るようになって、ご主人様を知っていくにつれてお慕いするようになったんです」  そう告げる董卓の顔には先程から浮かび続けている笑顔。感情が伺い知れないときと比べると一刀の精神的負担には天と地ほどの差がある。  気がつけば、不思議なことに先ほどまでと比べて董卓は顔色のほうも幾分かよくなっている。 「……月」 「ですから、そのよろしければ。もう一度。……かつてのように私をご主人様のものにしてくださいませんか?」  普段通りの大人しさを感じさせる声。そうありながらも強い意志が込められている。  直接的にぶつけられる想いに抗う術など一刀にはなかった。 「いいんだな。こんな俺で」 「御自分を卑下しないでください。私にとっては唯一無二でとても大切な方なのですから」  そう行って董卓は満面の笑みを浮かべる。文句なしの美少女にそう言われては一刀も納得せざるを得ない。 「だと、いいな」  一刀は彼女がいかに本気かわかりつつも照れくさくなり、うそぶくようにして答える。 「ふふ。だと、でなくそうなんです」 「俺にとっても月は掛け替えのない存在だよ」  一刀は全く偽りのない言葉を口にして微笑む。董卓の表情が一変して紅く染まる。 「あの……めいどの月のように、今度は董仲穎を……受け止めてくれますか?」  そう言うと、君主姿の董卓が一刀との距離を詰める。  もし短刀を隠し持っていて突き出されたらぶすりと刺さること間違いなしと言えるほどに董卓は接近し、一刀はそれを許す。  そうして、もう殆ど肉体どうしが触れ合ってもおかしくないほどに近づいてしまった。 「……ああ、もちろんだよ」 「…………ご主人様」  顔をついと傾け、空を見上げるような姿勢を取ると、そのまま背伸びをして一刀の顔と距離を縮めていく。  董卓は後数センチというところで動きを止める。  黙ったまま、ゆっくりと瞳を閉じていく。 (俺からキスしろってこと……か)  それは一刀からの証を求めているということ、董卓を再び自分のモノとするための儀式のようなものだろう……。  急激に湧き出てくる唾液を一刀は一息に飲み干す。  胸に添えられた彼女の掌から自分の鼓動が伝わってしまうのではと心配になる。 (なんだか、無性にドキドキするな)  何度も経験したはずのこと。  見慣れたはずの光景。  ……なのに心も身体も高揚していく。  そっと董卓の顎から頬にかけて手を添えると彼女はぴくりと僅かに揺れる。 「…………ん」  もう片方の手は少女の腰に回して背伸びによって不安定となっている身体を支える。  ゆっくり、それでいて迷いなく董卓の柔らかそうな部分へと顔を近づけていく。 「月……」 「ん……っ」  そして、二人の唇は重ねられた。見守るは窓から覗いている明るい満月だけ。  †  唇に伝わる温もり、そして僅かにかさついた感触。不思議と広がるなつかしさ。 (ご主人様と接吻を交わしちゃった……)  この味覚に伝わる一刀の味。  鼻腔をつき嗅覚を刺激する一刀の匂い。  掌から伝わる胸の鼓動と暖かさ。  それらは彼女の中にある想い出にあったため既に知っているはずのものだ。  だが、新鮮すぎるほどに董卓の全ての感覚器官を刺激し、彼女は身体を震え上がらせそうになる。  鼓動も早まる一方でその動きが緩まる気配はみせない。 (ご主人様……、本当にご主人様なんだ)  記憶の有無は関係ない。董卓の心は既に目の前で顔を上気させている少年に釘付けにされている。  そして、この嬉しさはかつての董卓が再会できたことによるものであり、今の董卓が念願を果たそうとしていることによるものだ。 (記憶が二つなら幸せも倍のはずなのに……、どうして、こんなに嬉しいんだろう)  鼻の奥がつんとして目頭が熱い。気を抜いてしまえば涙が出てしまいそうだ。この喜びは二倍どころではない。 「……ぷはっ」  どちらからともなく離される唇。だが、董卓は少年を離さない。  一刀の両頬を掌で挟むようにすると、今度は自分から口付けする。 「んっ……はぁ……っ、んん……っ」  先ほどよりも密着する唇。と、その時。 (んんっ!)  随分と濡れそぼった上下の唇を割るようにして一刀の舌が侵入してきた。 (ご、ご主人様の舌が……んっ、絡んで……くる)  お互いの唾液が混ざり合うことで水音が起こり、それが董卓の耳をも犯す。それにより彼女は一層昂ぶりを覚える。  深々とした接吻を交わしているのが聴覚、嗅覚、味覚、触覚を通して伝わってくる。  そっと瞳を空けて視覚でも堪能しようとする。だが、それは叶わない。 「あ……っ、んっ……はぁ……んんっ」  董卓は舌を思い切り吸い上げられる感覚に思わず瞳を閉じてしまう。唾液に混じり彼女の舌がすっぽりと一刀の口腔内へと引きずり込まれる。 (あ、し、舌が……へぅ)  獲物を捕らえた後の獣のように一刀の舌がじっくりと董卓の舌を嬲る。  ぬるりとした感触が舌に走る。  自分の一部が他人の一部となっていく感覚がこれほどのもだったかと董卓は身体を痙攣させる。  記憶という名の知識として頭の中にあっただけではやはり意味はなかった。こうして実際に好きな相手と実践することでその感覚を身体に取り入れることができるのだ。 「んっ……はぁ……っ、ちゅぱっ、んっんんっ、んん……っ」  段々と荒々しくなる一刀の動きに董卓は全身が痺れるような感覚に襲われる。  徐々にぼうっとしていく頭で思う。 (これ、夢じゃないよね……)  現実であることを確認するように一刀の首に手を回して一層引き寄せる。 (ずっと、このままでいたいな)  董卓はそんな意思とは裏腹には唇を離す。後ろ髪を引かれる思いもあり、頬を染めつつも少年の瞳をじっと見つめる。  二人の間にかかった唾液の橋がみょうにいやらしい。 「……あの、その」  俯きがちにしながらも上目で一刀を見る。普段着用しているめいど服よりも長く、足先まですっぽりと覆うほどの丈とゆったりとした直径の腰布の中では両腿を擦り合わせている。 「ご、ご奉仕いたします」 「ああ……」  熱気を纏う一刀を押すようにして寝台に座らせると、董卓は彼の両脚の間に割り込むようにして床に膝を突く。 (すごい張り詰めてる……)  一刀の分身はどうやら先ほどの口付けて元気づいたらしくパンパンに腫れ上がりその全身を治めている布地を盛り上げている。  董卓は顔に垂れてくる薄布をそっと手で掻き上げながらもう片方の手でズボンの留め具を外して、下着ごとずるずるとずらしていく。  そうして、足首まで下ろすと董卓はそっと解き放たれた一刀の分身へと目をやる。 「…………ん」  外気に触れた喜びからかぶるんと撥ねた肉棒がじょじょに定位置を築こうとしている。  動きが収まると、そこには呂布の方天画戟と見まがうほどの凶器がそそり立っている。  だけど、決して無機質という分けでもない。どくどくと脈打っているのがよくわかりまるで一つの生物のようである。 「…………」  立派にそびえる一刀の分身を目の当たりにした董卓は言葉を呑んで顔を俯かせて視線を逸らす。 「だ、大丈夫か、月?」  絶句する董卓を見て心配になったのか、上の方から一刀の気遣うような声が降り注ぐ。 「へぅ……。はい、大丈夫です」  記憶にあろうと関係なく、今の董卓が眼にするのは初めてのこと、やはり圧倒されてしまう。  肉色が窓から差し込む月明かりで強調されている。  董卓が躊躇している間も目の前に鎮座している巨大で強大な大蛇はぴくぴくと動き、その先端からテラテラと輝きをみせる液体を僅かにしみ出ている。 (す、すごい……。こんなに大きかったんだっけ?)  急激に押し寄せた記憶は未だ整理し切れていない。故に細かいところまでは思い出しきってはいなかったのだ。  緊張で震える小さな手を赤黒い肉の棍棒へと伸ばす。そして、片手を肉茎の根本をそっと握る。  気がつけば口の中にたっぷりと集まる唾をごくりと飲み干すと、恐る恐る瞳にそれを捉えながら先端をぺろっと舐める。 「ちゅっ……、んっ……ぺろ……っ」  たどたどしいながらも舌を使って口腔内に溜まった唾液を亀頭に塗りたくっていく。 「う……んっ」  僅かながらも一刀の口から吐息が漏れ始めている。  もっと彼の声が聞きたいと思い、董卓は少年の分身の口を舌先で思い切って刷く。それによって一刀の腰が僅かに浮き上がる。 「う……くっ……ぅうっ、それ……感じる」  その言葉に気をよくし董卓は勢いに乗って口を大きく開けてそそり立つ赤黒い肉鉾に対する受け入れ体勢を取る。 「…………い、いきます」 「ん……っ、ああ」  未だに安定しない声色の一刀が頷く気配を感じると、董卓は昂ぶりっぱなしのそれをぱくっと勢いよく咥える。  口腔内を圧迫されるような感覚に驚きつつも舌を左右にもごもごと蠢かせる。 「ちゅっ、んぱ……はぁ、んっ、ほほひい……ちゅぱ……っ」 (――ん……っ、おっきい、それに硬くて……んんっ、ビクビク動くぅ……っ)  何故だろう、どきどきしながら絶対的な主人と決めた人の肉茎をしゃぶっていると、身体がどんどん熱くなり、全身だけでなく心までも上気していく。 「れろっ……んっ、んんっ……はぁ……ちゅっ、ちゅぱ……っ」  丹念に一刀の男棒を舐め、しゃぶり尽くそうとしていると急に下腹部がきゅんと鳴る。 (へぅ、なんだか、ん、きゅって……ふぅん)  うずき始める身体の奥底。  董卓は片手を一刀の肉茎から離して秘唇へとそろそろと動かしていく。  自らの意思なのかどうかも不明なまま手は動き始める。切なげに涎を垂らす秘部をこしこしと布越しに擦り始める。 「ふ……ん……っ」  両脚の間から脳天に駆けて一瞬で刺激が走る。  とりわけ先ほどから全身をそわそわとさせる中心部への反響は凄く、董卓は身体をぶるりと震わせてしまう。  その振動によって口の中を占領している金剛棒の先に歯が擦れた。 「ん、お……う」  董卓の振動が伝わったかのように一刀も跳ね上がる。 「んっ、んっ……んんんっ……ちゅっ、ちゅる、ちゅるるっ……れろれろっ」  自らの指がもたらす快感に呑まれそうになりながらも董卓は彼の分身を舐め続ける。  どれだけ舐めとっても次から次へと出てくる先走り液によって、味覚ではない何かを揺さぶられる。 「ちゅ……ちゅるっ、ん……っ」  気がつけばよだれが溢れ、口の端から落ちて顎を濡らしている。  ほのかに匂う汗の混じった生々しい匂い、肉棒が発する熱、何を感じても董卓の昂ぶりは増長されていく。  快感の波と夢見心地へと陥っていく董卓、まるでもう一人の一刀にまで心酔していくようだった。  長いのか短いのかわからない時間が経過したころ。  もっと一刀の一部を感じたいという欲求に駆られ、董卓は喉の奥へ導くようにして肉茎をどんどん深く咥えていく。 「うっ、くっ……くぅっ」  一刀も大分キているらしくぶるぶると震えるようになってきた。  見ようによっては非常に苦しそうである。 「くっ……月、ごめん」  一言謝罪をすると、一刀のごつごつとした手が董卓の頭を左右から挟み込むようにして掴む。 「ん……っ、んうっ!」  半ば強引に前後される頭。それでも力任せというわけではなく、董卓が自発的に動くよう導くようだ。  董卓はその誘いに従って肉茎と唇でつくった輪を擦り合わせるようにして頭を動かしていく。 「んっ、ちゅぱっ、ちゅるるっ……んっんんんっ……はぁっ、はふぅ……っ」  蠢く暴れん棒の中でどくどくと脈打つものを出してしまおうとするように董卓はずずという音を立てて吸い始める。 「くうっ……! ゆ、月、も、もう出る……だから、んぅっ!」  必死に堪えるような声を上げる一刀を無視して董卓は一心不乱に頭部を前後させ、吸い取る力を一層強くする。  先ほどからひっそりと淫裂を弄りとおしていた手を一刀の腰へと回し、ズボンがおちないようにと留めている部分をがっちりと掴む。これで一刀は身体を逃がすことができなくなる。 「ん……っ、ご、ごめん、月……うっ!」  身悶えていた一刀が一層激しく腰を跳ね上げさせて董卓の喉奥深くを犯した。  ――その瞬間、熱くどろりとしたものが董卓の口腔内を覆った。 「げほっ……こほっ、こほ……っ」  想像以上の量に董卓の口端限界を迎え、むせかえる。そんな彼女の顔へ向けて一刀のかずとは未だに白濁液を放出している。  董卓の頭部を覆う透けている薄布……一刀曰く、ベールというものまでもが元のそれ以上の白さに覆われている。 「んぅ……ふ、う……んっ」  息を荒げている一刀に呼応するように肉棒がびくびくと痙攣している。  それを愛おしげに見つめながら董卓は残っている粘液の塊をごくりと飲み干す。 「んっ……んんっ、けほっ」 「む、無理しなくていいんだぞ」 「ふふ……。ご主人様の味……ごほっ、懐かしいです」 「え、えっと……」  徐々に鮮明さを増す過去の経験。少なくともこういった行為をしたときの喜びは分かった。思い出したのではなく、はっきりと実感した。自分の、今の董卓の経験として刻んだ。  紅く染まっている頬を掻いている一刀の下腹部では逞しいかずとが未だ熱く燃えたぎっている。 「あの……ご主人様。その、私もそろそろ」 「ああ、取りあえず、おいで」  そう言うやいなや、一刀の手が両脇へと滑り込みまるで書簡の束をずらすように董卓を寝台の上へと移動させる。  †  一刀は、寝台の上に両足首をそれぞれの腿につけるようないわゆる乙女座りをしている少女を見つめる。  ここまでは半ば受け身で来た。  だが、ここからは一刀が彼女に対して愛そうという意思を持たねばならない。  気分は昂ぶっている。その証拠に一刀から繋がっている董卓の唾液によって濡れて光り輝くもう一つの自分が力強くその存在を強調している。 「なあ、月……。本当にいいのか?」  それはまごうことなき本音。一刀の中に残る迷いの現れ。既に境界線は越えているのだからもう後戻りはできない。それでも一刀には不安が残っている。 「もちろんです。私はご主人様とともにいたいですから……いえ、ご主人様でなければ嫌です。……へぅ」  普段の彼女とは違う、凛々しい声色だったが、董卓は告げた言葉が恥ずかしかったらしい。  じっと揺らぐことなく一刀をそのくりっとした瞳で捉えていたはずなのだが、言葉を言い終えた途端についと視線をそらし、腰元で両手の指同士をくるくると回しているのを見始めている。 「そこまで言われたら俺も覚悟を決めよう。月の決意、しかと受け止めることにするよ」  そう言って微笑むと一刀は董卓へと手を伸ばしていく。  もこもこの付いた着物を留めていた帯が緩めると、あっという間に上着が半脱ぎ状態となる。 「そういえばさ、この格好……綺麗だよ。月」  このような状況で彼女の君主姿を見るのは初めてだった。メイド服姿の少女との記憶は多いが、この服装というのはまた趣が違う。 「へぅ……恥ずかしいです」 「別に恥ずかしがることないよ」  一刀は笑みを浮かべながら語りかけると、両手を董卓の肩辺りへと伸ばし、上着を果物の皮を剥くようにして二の腕辺りまで下ろしていく。  彼女の白く透き通るような肌が月明かりを受けて宝玉のように煌めく。  一刀を直視できないのか伏し目がちになっている董卓の肌を隠す着物の開いた部分から覗いている深紅の衵服を脱がそうと、彼女の懐へと手を滑らすようにして差し入れる。  中にある衵服を留める紐のような形状の帯を感覚だけを頼りに解いていく。 「あぅ……」  徐々に脱がされていくことで董卓の顔が衵服のように紅く染まっていく。  その間にも一刀は手を動かし続け、ついには上着を半脱ぎにしたまま中身を抜き取ってしまう。 「え……は、早い」 「まあ、こういうのは。コツさえ覚えればいけるもんだよ」  一瞬のうちに起こった手品のごとき手際の良さに目を丸くする董卓に口端を吊り上げて笑う。  その一方で、一刀の視線は中身がなくなり半脱ぎ状態の董卓が身につけている上下とも白みがかった薄桃色の下着に向けられているのだが彼女は気がつかない。  小ぶりながらも僅かな膨らみを見せる胸を覆う布地、先ほどの による影響なのか、シミができてびっちょりと濡れている。 「その下着もよく似合ってるぞ」 「……え? ――っ!?」  一刀の視線にようやく自分の状態に気付いた董卓が声にならない悲鳴を上げる。わたわたと両腕を振る。  もっとも、一刀が微妙なさじ加減で中途半端に脱がしているため一定以上は上にあがらないようになっている。  どこまでいくのかと思わずにいられないほどに赤みを増す董卓の顔、瞳には恥ずかしさのためかわずかに雫が浮かび始めている。  恐らくはその熟れたトマトのごとく深紅の顔を隠したいのだろう。 「へぅ~、み、見ないでくださぁい~」 「いやいや、仕草も相まって可愛らしいぞ」  そう言ってにこりと一刀は微笑む。もっとも、どちらかという心情的にはにやりに誓い気もするが。  流石にそれだけじゃどうかと思い一刀はそっと董卓へと口付けをする。ほんの数秒のことだが、董卓の腕の動きが静まった。 「殆ど接した状態でかわいい顔を見ちゃったから、もういいだろ?」 「……うぅ、ずるいですよ。ご主人様」  潤んだ眼で上目がちに睨むと、董卓は口をつぐんで両腕を交差するようにして両腿の間に手を置いた。ちょうど、胸と女の子と部分が隠れている。 「でも、落ち着いたろ?」 「そうですね。大分」  膨れ気味に頷く董卓に和やかな笑みを浮かべる一刀、実のところ彼自身もいつの間にか先ほどまでの不安などが消えている。 「さて、十分気もほぐれたところだし、さ、どうぞ」  そう言って一刀は胡座を軽く崩したような状態の腿を叩く。それに反応した董卓が「失礼します」と戸惑いがちにそろそろと座るのを見届けると一刀は後ろからその比較的小柄な身体を腕の上から拘束するようにそっと後ろから抱きしめる。 「…………やっぱり、月は子犬みたいだ」 「どういう意味ですか?」 「ふふ、さて……な」  惚けるように耳元で囁くとそっと申し訳程度の膨らみへと手を伸ばす。覆っているレースのついた山桜のように薄桃がかった白色の下着を上へずらして直に触れていく。  既に中は張り詰めた空気が流れていたかのように突起がピンと立っている。外気に晒された乳房から伝わってくる空気との接触に董卓の肩がぴくりと跳ね上がる。 「さっきので興奮したんだな」 「……へぅ」  わざと董卓の耳元で声に出すと、耳が紅く染まる。その熱さも相まってまるで炎のようである。  そんな反応を堪能しつつも一刀はまだ僅かに硬さの残る乳房を揉みしだいていく。 「ん……っ」  漏れる吐息、それに呼応するようにして一刀の掌を押し上げるようにして膨らみを増す乳首、それはまるで花のつぼみが開花を前にして一段と膨れるかのようだ。  さくらんぼの実を転がすように彼女の乳首を親指と薬指で弄ぶ。  そうしておせじにも豊満とはいえない感触を味わいつつ、一刀は片手を胸から脇腹を通って腰へと滑らせていく。なめらかな曲線、華奢でありながらそれなりの肉付きをした身体を楽しむように這わせていく。  そうして、未だ僅かに脚線を隠している着物の裾を捲っていく。白く美しい太腿が露わになる。そして、裾を腰回りまで挙げるとその雪山を覆う新雪のように真っ白な肌に手を沿わせていく。 「ふ、う……っ、んっ……んんっ」  胸と脚を同時に丁寧な手つきで嬲ると、それにつれて董卓の口から声と熱い吐息が漏れてくる。  董卓の肩に顔を置いていた一刀は、位置をずらして彼女のうなじへと鼻をめりこますように顔をうずめる。 「ん……良い匂いだな」  鼻腔に届く芳香。その中でも董卓の匂いがする。朝露に濡れる花のような儚さと花が時折見せる芯の強さを感じさせる匂い。 「ん……っ、そ、そんな嗅がないで……っ、下さい……へぅ」  逃れようとするように身悶えるが、彼女の身体は今や一刀の腕の中でそれは容易いことではない。  嗅覚を用いて董卓をしっかりと感じ、両の掌をもって少女の存在を実感する。 「ふ……んっ……んん……っ」  漏れ続ける董卓の吐息を聞きながら一刀は急に思いついたことを実行する。 「は……ぁ……っ、んんっ!?」  今まで濡れそぼった秘部を下着の上から弄っていた指を彼女の口の中へと侵入させる。  驚いた董卓は一度ぶるりと全身を震わせると一刀の腕を両手で掴む。  そんな彼女に一刀はできるだけ優しい声で訊ねる。 「どう? 月自身の味は……」  口の中をかき回すように董卓の愛液に染まった指を徐々に動かしていく。 「ん……わふぁりまふぇん……ちゅる、んっ……ちゅぱ」  口腔内で一刀の人差し指が董卓の舌で犯され嬲られる。舌のざらりとした感触が一刀の背筋に悪寒のようなものを走らせる。  調子に乗った一刀はさらに中指を足す。 「ちゅっ……んん……っ……ふっ……んうぅ……」  それでも構うことなく董卓の舌は二本の指をねぶってくる。 「なんだか、激しいな。どうしたんだ? 月」  一刀が知っている〝少女董卓〟以上に積極性があるように思える彼女、どういうことなのだろうかと驚きを隠せない。 「らって……んっ……ちゅぷ……ぷはっ。だって、嬉しくて仕方がないんです」 「嬉しい?」  舌の動きを止めた董卓の言葉を待つ。 「……はい。ご主人様とまたこうしていられることが、凄く嬉しくて。えへへ」  董卓の率直な想いが籠もった言葉が、天使のように極上の癒やしを与えてくれるはにかみ混じりの笑顔が引き金となった。  今まで愛撫し続けていた董卓の胸から手を離し、可愛らしい唇からはちゅぽんという音を立てて抜く。そして、そっと彼女の顔をのぞき込む。 「月。もう、いいかな? 俺……」 「はい。ご主人様」  瞳も声も蕩けている董卓が頷いたのを確認すると、一刀は彼女の腰へと手を伸ばし下腹部から下着を脱がしていく。  既に濡れていた秘唇は涎で溢れ、脱がした下着との間に卑猥な橋が架かっていた。  †  既にお尻から裏腿にかけて熱く、硬い一刀の一部を感じていた。董卓が艶姿を見せるたびにそれがびくんと撥ねるのまでも感じていた。 「それじゃあ、いいかな?」  はっきりと口にはせず、董卓は首を縦に振って答える。 「でも、この体勢よりは……」  そう言いながら一刀が董卓の腰を持って膝立ちになる。確かにそれまでの体勢ではごわごわとした着物が邪魔になってしまうだろう。  一刀の行動の理由を考えているといつの間にか董卓の下に入りこんで仰向けになっている。  ちょうど、董卓の正面側に一刀の顔がある。瞳同士で見つめ合いながら董卓は意図を察して彼の腰辺りをまたぐようにして位置取りする。 (こんなに大きいの……大丈夫かな)  かつての自分は、正確にはもう一人と言うべき自分はこの青筋だった凶器をちゃんと受け入れることができていたのだろうか、疑問を抱かずにはいられない。  だが、恐怖心はない。それ以上にこの愛しい人の逞しい分身で貫かれたいと、彼と一つになりたいという想いの方が上回っているからだ。  下腹部がうずき始める。口の中の唾液は留まるところを知らない。 (これが、ご主人様の……、んっ、何故だろ。我慢できない……) 「そ、それじゃあ……その行きます」  興奮した自分を抑えきることなどもうできない。ひょっとしたら自覚していないだけで涎を垂らしているかもしれない。そう思ってしまうほど分泌されてくる。  別の口もそれに劣らず淫らな涎をだらだらと溢れさせ、経験のない狭穴を濡らしている。 「ふぅ……。あの熱いモノが私のナカに……んっ」  手で自らの秘唇の花弁を左右に開きつつ、もう片側の手で一刀の肉棒を持って導いていこうとする。 「ま、待った。月、ちょっとだけ待ってくれ」  あとはもう指一本程度の隙間を残して董卓の降下は止まる。そして、ねだるような思いで一刀の顔を見る。 「……ど、どうしましたか? ご主人様」 「俺は、月を愛する……いや、愛してる」  それは一刀の口から聞きたくても決して申し出なかった一言だった。心、そして下腹部の奥底にある最も女性らしい部分にきゅんと震えるような感覚が走る。 「ありがとうございます。私も大好きですよ。ご主人様」  そう言って微笑みながらも董卓の腰は上下には動かないがそれ以外の方向へ動いている。 「ん……っ。……ふぅ」  董卓が腰を動かすのに応じて亀頭が膣口辺りにこすりつけられる。それによって発生する粘膜同士の摩擦、そして、その快感が彼女を一層熱くする。 (ん……っ、気持ち……イイ、こんなのを味わってたなんて……もう一人の私……ずるいよ)  今の董卓が実際に感じた感覚において、少なくともこれほどまでに強烈な悦びを与えてくれるものは知らなかった。 「ん、いいぞ、月」 「は……っ、んう……くはっ、はぁ、ん……っ」  まだ挿入まで至っていないのに董卓は身をよじりそうになるほどの快楽を感じ始めていた。 「はぁ、はぁ、……こ、こうして。んっ……また私はご主人様のモノになれるん……はぁ……っん、ですよね?」 「あ、あぁ……っ。月は……ん……俺のだ。もう手放すものか」  一刀も徐々に気持ちよくなってくれているのだろう。董卓の秘部に触れている棍棒がその強度を増しているのが伝わってきている。 (も、もう……っ、これいじょうは……はぅ)  完全に受け入れ体勢を終えている董卓の秘唇は早くしろと彼女を急かすように熱を帯びていく。その要請に応えるように董卓は腰を下ろしていく。 「あ、熱いです。それに……すごく硬くて……んっ、太い……!」  ずぷと水音が立つなか、亀頭の半分近くが膣へと収まっていく。先ほど弄られたことでほぐされており無理にさかれたわけでもないため痛みはない。  それどころかぞくりとしてしまいそうなほどの快感がある。  ここからが問題となる。董卓の中にある経験したことのない記憶でも相当の衝撃を覚えた出来事へと迫りつつあるのだ。  それでも、ちょっとずつ体重をかけていくが、やはり急に抵抗感が増して沈めていく動きが止まってしまう。  僅かに痛みも感じ始めている。  記憶便りでどうにかなるかとも思っていたが意外とそうはいかにらしい。 「あまり、焦らなくていいよ」  一刀が気遣うように声をかけてくる。 「いえ。大丈夫です。私は少しでも早くご主人様と一つになりたいんですから」  なんとか笑顔を作ることができた。だが、内心では彼の言う通り焦りを感じてもいる。  痛みだってどういうものか、ある程度は既に董卓の中にある。もっとも、実体験がないため正確には把握しきれてはいないのだが。  それでも堪えるつもりではある。ただ、たどたどしい動作となってしまうのは変えようがない。こればかりには身体が覚えなければ意味がない。 「っ……ん、ふ……ぅっ、ん。ご、ご主人様ぁ」  一刀を見つめていた瞳を閉じて深呼吸をすると、結合部に体重をかけていく。 「ひうっ!? い、痛……っ、あ、ああっ、さ、裂けちゃいます……うぅ……きつ……」  自分では気付いていなかったが先ほどの一刀の愛撫によって董卓の秘部はよくほぐれている。こんな状況にありながら彼女は改めて一刀の経験値と、それから導かれる世界を超えた愛を実感してしまう。  はじめの戸惑いとは異なり、すんなりと一刀の熱い棒を根本まで呑みこんでいくが勢いがついたことで子宮口まで突き抜ける衝撃に襲われて堪えきれぬ悲鳴を漏らす。 「ぐぅ……っ、んんんん、んぁぁぁぁーっ!」  純潔を証明する存在が一刀によって取り払われる痛みが董卓の中を駆け巡る。 (うぅ……き、記憶にあるのと、実際じゃ……ひぅっ!? ちがい、すぎて……っ)  なんとか歯を食いしばり記憶している中で二度目の破瓜による痛みを堪えようとする。まるで全身を通すように突き立てられた一本の槍が激しく振動して神経にぶつかってくるような衝撃が彼女を襲っている。 「あっ……ああ、はぁ……っ、は、ああああ……っ!」  破瓜の記憶をなんとかたぐり寄せていくが、痛みによって霧散してしまう。なんとか大きな呼吸を繰り返すことで力を抜いて強張る下腹部を緩めようとする。 (んっ……もう少し、もう少しで……はぁ……うぅ)  徐々にだが痛みが引き始める。挿入した瞬間の激痛が最も辛かったが、今は多少ならば腰を上下することもできそうだ。 「あっ……」 「月、つらいなら少し休んだらどう?」  大分落ち着いて周囲が見えるようになった董卓は気付く、一刀が気を遣って身動きしないでいてくれたことに。 (本当は、動きたいはずなのに……)  董卓の中でどくどくと脈打つ棍棒の熱が一刀が堪えているものがどれ程なのかを彼女に教えてくれる。  気を遣わせてしまった事への申し訳なさと、自分を大事に想ってくれる一刀の目に見えぬ行為への嬉しさで董卓はまだいたみの残る膣を軸として腰を回すようにして動かし始める。 「んぅ……ご、ご主人様……っ」 「……お、おい、月。大丈夫か?」  一刀の問いかけに答えることができないほどに夢中になっていた。気がつけば、快感がじわじわと増してきている。  入り口付近はまだ痛みが残っているが、突き破られた膜より先には想像以上の快感が起き始めている。 「は……あっ、んぅ……ご、ご主人様、あっ」 「月。すごく綺麗だ」  そう言って一刀が董卓の頭部を未だ覆う薄布を摘む。同時に彼女の下腹部が押し広げられる感覚がする。 「はぁ、はぁ……あっ、太くな……っ」 「月が魅力的すぎて……くぅっ、大きくなっちゃうんだよ……は、あぁ」  快感に顔を僅かに歪ませる一刀を愛おしく思いながら董卓は腰を前後させる。  膣内に収まっている熱しられた鉄棒のような一刀の分身が膣壁をこすりつけてくる。傷口が予期せぬ接触を起こして放つような痛みがある。  だが、それ以上に大きな波となった快感が董卓を包み、気持ちよさ以外を押し流していく。  その奔流がお尻辺りから頭の天辺まで一気に流れていく。 「はっ、あぁぁぁ、ふぅ、んん……っ」  膨張して、あり得ない程に勃起している火傷しそうなほどに熱い男根は董卓の女性を象徴する部分の最奥まで突き上げ、至急を揺さぶってくる。  大きく張り出したえらが媚粘膜を擦るごとに彼女の口からは押さえきれない甘い声がもれてしまう。 「くぅ、い、いいよ。月……」 「はぅっ、あ……んっ、奥っ、コツコツ当たってます……あああぁっ!」  とても初体験とは思えないほどの乱れ様を見せてしまう。 (ああ……な、なんでこんなに気持ちが良いの?) 「はぁ、んっ……どうした? 月」 「私、一応初めてなのに……こんなはしたないなんて……んっ……っ! 初めてなの……にっ!」  顔を両手で覆ってしまいたくなるほどに恥ずかしいのに波打っている楝色の髪とそれ覆うベールを振り乱し、激しい息遣いをしながら少年にまたがったままくねらしている腰の激しさを段々と増させていく。  その姿はもう普段の大人しさがあるメイドの面影はない。  今となっては彼女の初々しさを見せているのは結合部から白い肌を伝う赤い液だけだった。 「いいんだよ。乱れる月も俺は好き……だぁ!」 「はああ! う……んっ、はあ、くぅん」  一刀の言葉によって急速に悦びが芽生えてきて腰も勝手に動いてしまう。もう董卓の思考回路からの命令ではとめることはできない。  子宮口を突きあげられるたびに目の前が真っ白になるような快感が生じる。理性がますます溶けていく。 「はぁ、はぁ……月。今更、無理って言われても俺はもう止まらない……ぞっ!」 「それは……はぁん、くぅ……っ、私の……方ですぅ……っ」  一刀が感じている。顔を見てそれを悟った瞬間、董卓のなかに蓄積されてきた官能が活火山のように噴火していく。 「はぁっ……く、来る……来てしまいますぅ……っ!」  それが絶頂であることはわかる。だが、今の董卓がこれまでに経験したなによりも強すぎる。 (こ、こんなに……ち、違う、〝前の記憶〟と違う……こ、怖い……)  その瞬間が近づいてくるにつれて董卓の中に脅えが生じ始める。にもかかわらず身体、そして蜜壷は蠢き続けて昇天へと向けて着実に進んでいく。  涙が自然と溢れ出していく、声も腰も留めることができない。 「くっ! ゆ、月! あ……くぅぅぅぅっ!」  呻き声を上げながら一刀は董卓の細い腰を掴み、引き寄せて抱きしめる。 「きゃっ!」  激しい上下運動によって乱れ、既に三分の二脱ぎ状態にまでなっている着物。  そのはだけた前面からむき出しになっている控えめな胸が一刀の胸板にぴたりとくっつく。巨乳ならばここでむにゅっといきそうだが、彼女にはそんな奇跡は起こせない。  代わりに、董卓が纏っている着物が二人の身体に覆い被さる。 「はぁ、あ、くぅ……ご、ごしゅじんさまぁ」  董卓が上に乗ったままの体勢ではあるが、抱き寄せられたことによって密着度は大いに増している。胸だけでなく顔すらも近づいている。  身長差のために、董卓が下側から息を吹きかけるような形になる。  熱を帯びた秘境は蜜を吐きだしながら一刀の分身を包みこみ、射精をうながすように刺激していく。 「くぅ! はぁ……で、出る、出るぞ……ゆ、月……っ!」  既にその顔には経験者としての余裕はなく、込み上げる射出を望む感情を堪えるように歯を食いしばっている。 「はぁ、んぅ……っ、出してくださいっ、子種を、私のナカに吐きだしちゃってください!」  もう自分が何を言っているのかも正確には把握できてない。目の前が霞んでいく、頭の中で何度も何かが弾ける感覚がする。 「く、うぅ……う……出る……ぐううぅっ!!」 「あっ……ああっ!? く、来るっ……ふぁぁぁぁ、来ます、来ちゃいますぅ……あああああっ!」  びくっと強張った一刀が董卓を抱きしめる腕に力を込め二人の身体が一層密着する。同時に激流のような勢いで射精がはじまった。  まるで熱湯のようなザーメンが、断続的に董卓の子宮口を叩く。  一刀の口から獣のような声が漏れている。それが董卓の秘部を一層刺激する。  下腹部に凄まじい熱を感じる。つい逃げてしまいそうになるが、一刀の腕によってがっしりと抱き留められている状態ではそれはできない。 「ひぅっ……あ、熱い、熱いですぅ! はぁ、駄目、どんどん出てくるぅ! なかから溢れる、溢れちゃいます……はぁっ、はぁぁぁぁぁ、んんぅーっ!!」  大きく見開いた瞳からふいに涙がぽろぽろと溢れていく。 (ダメ、ダメぇぇっ! こんなに熱いものが流れ込んできたら……くぅぅ!)  溢れ出す寸前までため込まれた快楽という名の水が、燃えさかる精液によって限界を超えていく。 「ご、ご主人様、もう、駄目、ダメです。き、来ちゃいます、大きいのが! い、イク、イキますっ、ホントにもうダメぇぇぇ……っ あっ、あああーっ!」  絶頂による波が容赦なく董卓を呑みこんでいく。  一刀の種まきは続いている。まるで長らくためにため込んだ矢を戦で放出していくように大量に送り込まれる。 「……はぁ、は……あっ、ご、ごひゅじんしゃま。お、おねがいです……ぎゅって、して……ください……んんっ、あ、あぁ……くぅ、んんんんぅっ!」  あまりの快感に恐怖すら抱きそうになるが、頼んだ通りに力強く抱きしめてくれる一刀の腕によってそれは緩和される。  それでも快感までは収まることはなく、濁流に脅えながらも董卓は絶叫する。 「ご、……ごしゅじんさま……あああああーっ!!」  どくどくという一刀の鼓動を全身で感じながら、董卓は官能と快感の大波に呑まれるままに深みへと沈んでいった。  †  胸の上で全力疾走した後のように乱れた息を整えている少女を見る。 「大丈夫だったか、月?」 「はぁ、はぁ、ん……っ。大丈夫、です」  一刀の胸にもたれかかるようにしたまま董卓が小さく頷く。頬は紅潮していて玉のような汗がそれを輝かせていて艶めかしさを纏っている。  口もとから垂れっぱなしの涎もまたいやらしさを醸し出している。 (あ、まずい……)  一刀は、果てたばかりの分身が再びむくむくと起動し始めているのを感じる。 「ん……っ、ご、ご主人様、まだ足りないんですね?」 「まあ、結構溜まってたからな。はは」  上目遣いで見上げてくる董卓。  前の外史で初めて彼女と出会って以来、董卓の様々な姿を見てきたことがあった。  心と瞳の光を奪われたときの姿、親友と買い物に出かけているときに見せた楽しげな笑み、時折見せる真剣で凛々しい表情。  そして、肌を合わせたときの痴態や裸。達した時の姿も、子供のように甘える姿も見た。  だが、思い出で終わってしまうそれらよりも今現在、見せてくれる少女の表情は妖艶さが悩ましく、美しさに溢れているように感じる。  そんな感想を抱く自分が気恥ずかしくて一刀は頬を掻く。 「私は……その、大丈夫なので、もう少し……」  もじもじとしながらもそのこまやかな指は一刀の上着を脱がしにかかっている。もう片方の手は服の内側へと忍び込み、胸板を満遍なくさすっている。 「じゃあ、お付き合い願おうかな」 「……はい!」  満面の笑みで頷く、董卓の頭をくしゃっと撫でると、一刀は上着を脱ぎ捨てる。董卓によって下に着ていた服もまくり上げられる。  そして、二人は身も心も満たされるまで互いの身体を貪り合うのだった。 †  幾度にも渡る行為を終えた二人は一糸まとわぬ姿のまま並ぶようにして寝台で横になっていた。  床には一刀の学生服と、董卓の君主服が折り重なるように落ちている。  服を脱ぎむき出しとなった一刀の胸、その素肌に愛でるような優しい手つきで董卓の掌が触れる。今はそれだけで彼の心を一層落ち着かせてくれる。 「本当は詠ちゃんも一緒の方が良かったとは思ったんですけど……なんだか、私あの服を来てから変になっちゃって……」 「多分、詠と同じなんだと思うよ。きっと、多くの記憶が一気に戻った影響で余裕が無くなってたんだろうさ」  親友の事を想ってだろう。申し訳なさそうな表情をしている月に一刀はそっと囁く。 「それに、こういうことは向こうの準備ができてないとダメなんじゃないかと思うからな。丁度良かったよ」  今の一刀は、記憶の表出が行われた後に自発的にやってくるのならばそれ相応に相手をしようと決めていた。  董卓の姿を見て、実際に言葉を交わし、触れあったことでそう思ったのだ。  曖昧な状態の少女たちを相手にして記憶を引き出すような真似をする気はもちろん未だない。  だが、自分の中にある記憶と向き合い、それを受け入れた上で一刀と話したいというのならばそういった場を設けるつもりである。  しっかりとした覚悟を決めたのならば一刀もいい加減腹をくくる。 「それにしても、詠は寝込んだのに良く月は俺の元まで倒れずに来れたな」 「詠ちゃんは賢いですから……きっと、必要以上に悩んで動揺してしまったんだと思います。それに対して私はただご主人様を信じることしかできませんでした。きっと、その違いだと思います」  董卓は寂しそうな顔でつぶやくように答えた。 「別にどっちのほうが好感を持てるなんて俺は考えてないよ」  董卓の頭を抱き寄せて髪に口付けをする。 「へぅ……」 「詠のようになるにしても月のようになるにしても、いずれは俺が決着を付けなきゃいけなくなるとは思ってはいるんだけどね」 「……ご主人様のお考えはわかりました。でしたら、ご主人様がお望みなら阻害しないよう私からは余計なことはしないよう気を付けます。でも、なにかお役に立てることがありましたらお申し付け下さいね」 「ありがとな。月」  本当は、親友であり姉妹、もしくは家族同然の存在である賈駆も同じようになってほしいと思っているに違いないだろうと、董卓の心の内を察するのを試みた一刀は自分を見つめる彼女の頭をそっと撫でる。  董卓の髪はウェーブがかっており、癖はあるが肌触りはとても良く、梳くようにして触れているだけで気持ちが良い。 「へぅ……。そんな、私は別に」  照れて頬を紅くする董卓を微笑ましく思いつつ一刀は内心で言葉を続ける。 (本当に助かったよ。おかげで俺自身、自分と向き合えた気がする。……まだ、自信を持ってみんなの変化を受け入れることができるかはわからない。でも、そのための一歩を踏み出せた。ありがとう)  一刀は見た目は華奢だが、内面がしっかりとしている少女より強さをわけてもらった。  例え、それが微々たるものだったとしても、今の彼には大きな進歩である。  この先、少女たちと一刀の関係がどのような変化をし、道を進み、そして結末を迎えるのか、今はまだそれを知ることはない。