―――その一日は、勢いよく開かれた戸の音から始まった。  バンッ! 「………んぁ…?」 「かーずーとっ! あっさっだよー♪」  朝早くから元気な声が俺の部屋に響き渡る。  寝ぼけ眼をこすりながら声の主……蓮華へと顔を向ける。 「ほらほら、時間が勿体無いから起きて起きて! 着替えて着替えて!」 「…え、ちょ、何してんの蓮華! じ、自分で着替えるからいいってー!!」  問答無用で布団を剥ぎ取り、服を脱がせに掛かる蓮華からなんとか逃げ出すが、手をニギニギさせながらこちらへ詰め寄ってくる。 「わ、分かったから! 着替えるからちょっと落ち着け!」 「了解。 早くしてね〜」  と言ってからも、蓮華はにこにこ笑っているだけで部屋から出ていく気配がまったく無い。  仕方が無いので彼女が見ている前で着替えを始め……って、朝からなんなんだ!  なんで蓮華のテンションはそんな高いんだよ!?        ― 平和な世で、君との時間を ― 「…で、こんな朝早くからどうしたんだ?」  なんとか着替え――上着を脱いだ時に背中を指でなぞられる、などのイタズラを受けながら――を済ませ、 いつの間に用意したのかモーニングティーを優雅に楽しむ蓮華に訪ねる。  外はやっとお日さんが顔をだしたくらいだってのに、♪マークが周りに見えそうなくらい上機嫌だよこの人……。 「私は休み。一刀も休み。それなら“でーと”しかないじゃない?」 「……はい? 今なんて?」 「だ・か・ら、でーとしましょ♪ あ、それとも先約があった?」 「い、いや、無い。無いけど…」  まさかあの蓮華からデートの誘いがくるなんて……正直意外……。 「それなら問題無いわね! いざ、出陣!」 「こんな早くからか!? ちょ、ちょっと待ってくれ!」  唐突すぎて用意がまだ出来ていない。  財布はどこだったっけ……そうそう、用心の為に枕の下に置いてたっけか。 「どうし……はっは〜ん。一刀こそこんな朝から“お誘い”だなんて、やっぱり獣ね」 「ぶっ! ち、ちが…」 「でもね、今日は外に行きたいから我慢してね」 「うそ!? 青姦!?」  次の瞬間、どごっ!と蓮華の拳が炸裂。 「ほら、待っててあげるからさっさと用意してしまいなさい」 「な、なんだよ……分かってるんじゃないか……ゲフッ」 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜  それから手早く用意を済ませ、俺と蓮華は街を歩いていた。  朝の空気を楽しむようにゆっくりとした歩調で歩く。  開店まではまだ時間がある為、人通りもさほどなく、街は普段と違う雰囲気を醸し出していた。 「う〜〜ん…! やっぱり朝はいいわ!」 「いつもはこんな時間帯に来ないから、なんだか新鮮な感じがするな」 「活気のある街もいいけど、こんなのも悪くないでしょ?」 「ああ、空気がひんやりしてて気持ちいいね。ていうか、蓮華が一人で朝の散歩してたなんて驚いたな」 「ふふ…そうでしょそうでしょ?」  いまだご機嫌な蓮華を横目に見る。  朝からなんとなく感じる蓮華への違和感……その違和感はまるで……。 「一刀! 朝早いからってボケっとしない! ほーらシャキっとする!」 「え……あ、ああすまない」 「何考えてたの?」 「い、いや。今度からちょっと早起きしたくなるな〜と思って」 「え〜? 一刀に早起きなんか無理じゃないの?」 「言ったな!? よっし見てろよ! 次は俺が蓮華を叩き起こしにいくからな!」 「………そうね、楽しみにしているわ!」  一瞬……ほんの一瞬だけ、蓮華の顔が曇った気がする。  だが次の瞬間には蓮華は何事もなかったかの様に俺を置いてズンズンと先へ進んだ。 「さ、朝ごはんをおいしく食べる為に歩き回ってお腹を空かすわよ!」  一つだけ気付いた事がある。  いくら街が大きくなろうとも、区画そのものの構造はあまり変わらない。  変わったとしても、道が整備されたりするくらいだ。  そんな中で蓮華と歩いているこの道筋を……俺は知っている……。  この道筋をいつも辿っていたその人物を……俺は知っている……。 「……………」  蓮華はとある家の前で足を止め、その家をじっと眺めていた。  ………そっか。やっぱりそうなんだな。  俺はニヤけそうになる顔を必死に押さえ、少し足を速めて彼女の横に並ぶ。  そしてまた二人揃って歩き始めた。 「なぁ」 「ん、なに?」 「あそこの爺ちゃんと婆ちゃん、まだまだ元気だよ?」 「え…?」 「この前肖像画を見せてもらったけど、幸せそうな雰囲気がよくでてて、素晴らしい出来だったよ」 「そっか……」  そう一言呟き、目を閉じる。  爺ちゃん達への想いを噛み締める様にして。  民を想う気高い心……変わらないな……。  そんな事を思っているとなんだか嬉しくなってしまい、少しだけ笑いが漏れてしまった。 「ちょっと、なんで笑うのよ」 「いや、なんでもないよ。可愛いなって思っただけ」 「は!? いきなり何言ってるの!」  彼女が顔を赤くしながら頬を膨らませ、俺は笑う。  言い合いをしている内、気が付けば自然と指を絡ませ歩いていた。  柔らかな雰囲気の中で朝の散歩は続いた。 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 「と言うわけで! 私をからかった罰として、一刀のおごりです!」 「イェァ! ヒューヒュー!」 「……ちょっと、なんでそんな嬉しそうなのよ……」  俺のテンションは上がったまま中々下がらない。  なので、そのテンションのままノッてみたらちょっと引かれてしまった……。 「いやぁ、なんかおごりたい気分だったから」 「どんな気分よ……」  誤魔化してみたもさらに引かれてしまう結果に……。  よし、ちょっと落ち着こう、俺。 「まぁまぁ。本当におごるから、ジャンジャン行こー!」 「言ったわね? じゃあこの列のここからここまでを……」 「待て待て待て! 朝から食べる量じゃないだろ、それ!」 「男に二言があるとでも?」 「この後の事を考えろって言ってるの!」 「この後……? うそ!? 青か」 「だーーー! 違う! て言うか、うら若き乙女が口にする言葉じゃないだろ!」 「ぶー! 一刀だけズルイ!」 「ズルイって……ならなんでさっき俺は殴られたんだよ!?」  散歩の時のちょっと良い雰囲気はどこへやら……。  ま、でもこれでこそ、だよな。 「もー、しょうがないわね。軽めで頼むとするわ」 「そうして……あっ。あそこを歩いているのは……」 「どうしたの、一刀?」 「ごめん。ちょっと席外す。すぐ戻ってくるよー」 「ちょ、ちょっと一刀!?」 ―――数分後。 「ただいま」 「おかえり。なんだったの?」 「ちょっと、ね」 「何よ、教えてくれないの?」 「ふっふっふっふっふ」 「うわ、気持ちわるっ」 「ちょっと…それはヒドイ……」  容赦の無い言葉に、多少打ちひしがれる……が!  そこへさらに追い討ちが掛けられる! 「へい、お待ちぃ!」  目の前のテーブルに置かれていく料理、料理、料理、酒、酒、酒………… 「ってなんだこの量は!!」 「だって、注文する時になって一刀どっか行っちゃうんだもん。だから…ネ☆」 「“☆”がつく時、それすなわちイタズラの合図……じゃなくて、こんだけ食えるのか!?」 「………あはっ☆」 「おいぃぃ!! つか、朝っぱらから大飯に大酒かっ喰らうってどうなの!?」 「一刀。お金ならあるのよ? 問題無いわ」 「そう言う事を言いたいんじゃないの! 大体その金俺のだろ!」 「あ、おじさんおじさん。今からご飯でしょ? こっち料理余ってるからおいでよ」 「聞いてないし!」  その後、数人(騒ぎをきいて駆けつけた兵士も含む)を巻き込んでプチ宴会が始まった。  兵士さん……あなた達の弁護、後でちゃんとやっとくからね……。 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜   「あ〜楽しかった!」 「楽しんでもらえたようで何より」  ちなみにコレは皮肉じゃないぞ。  中盤からツッコムのにも疲れたから、開き直って一緒になってハジケタからな。 「じゃあ次は何処いこうかしら」  プチ宴会が終わってからずっと彼女とは腕を組んで歩いていた。  両手で俺の腕を抱き、寄り添ったまま「あそこ行こうかな」「ここも行きたいかも」と色々と考えをめぐらせている。  お酒も入り、テンションが下がる気配はまだまだ無い。 「よし決めた! 一刀、ここに入るわよ!」  彼女が示した場所は、意外にも普通の服屋だった。  店内に入るや否や物色し始める。 「ねえねえ一刀、コレなんて可愛いと思わない?」  持ってきたのは随所にフリフリの付いた、スリットが少し控えめなチャイナドレス。  可愛い系をチョイスしてくるなんて、これまた意外だ。 「ん、良いと思うけど、ちょっと大きすぎないか?」 「そう……? 何よ。ちゃんと合ってるじゃない」 「…………あの、なんで俺の体に当てて計測してるんですか?」 「なんでって……一刀が着るからに決まってるからじゃない」 「Oh.......」 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 「って、いつの間に試着室の前に!?」 「あ、起きた。動かなくなっちゃったから頑張って運んだのよ」 「思考停止してる間になんてことを! こら離せ酔っ払い!」 「酔っ払ってなんかないわ。私は素面よ」 「嘘つけ!!」  ニヤニヤしながら素面とか言われても、説得力が無さすぎる!  それ以前に本気で着せる気だぞ、あの目は! 「大体こう言う場合は女の子が何着も服を着て、『これ似合う?』とか『こっちはどうかな』とか聞くのが普通でしょ!?」 「え? 一刀、そんな何着も着たいの?」 「はーなーしーをー聞ーいーてー!」 「大丈夫。一刀なら似合うよ」 「ありがとう! 全然うれしか無いけどね!!」 「もー、ワガママが過ぎるわよ?」 「女性物の服を着せられるくらいなら、いくらでもワガママになっちゃうよ俺!」  とりあえず俺に女装の気は無い……と言う訳で、ここは断固拒否をつらぬく! 「論が無駄なら武で通す。それが世の理よ! 一刀……覚悟!!」 「うわあ! ぼ、暴力反対!」 「人聞きの悪い! これは実力行使って言うのよ!」 「俺にとっちゃ一緒だー!!」 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜   「あ〜楽しかった!」 「楽しんでもらえたようで何より」  声を思いっきり低くして、これでもかと言わんばかりの皮肉を込める。  さっきと同じ様に俺と腕を組んで歩いていた彼女が顔を上げる。 「何よその声」 「試着室の中だけならまだしも、なんで店員にまで見せないといけないんだよ! 店員ドン引きだったぞ!?」 「ねー。アレはあんまりよね。あそこは笑う所なのに」 「なんというドS発言!」 「名前だって考えたのよ? 私達姉妹の真名を使って、刀蓮(ダオレン)ちゃんってね」 「だー! もういい加減にしてくれよ “ 雪蓮 ” !」 「あら、分かっちゃった?」  そう言って雪蓮(身体は蓮華)はコロコロと笑った。 「どのくらいから気付いてたの?」 「まず朝。起こしに来てくれた時から違和感は感じてたよ。蓮華にしてはなんだか落ち着きが無いってね」  その言葉を聞いて雪蓮は少し眉をひそめた。  その目は「私に落ち着きが無いっていうの?」と訴えかけている様だ。  とりあえず笑って誤魔化して、先を続ける。 「そして朝の散歩。あの道、雪蓮と何度か歩いたよな」 「よく覚えてたわね」 「忘れるはずが無いだろ。大切な思い出なんだから」 「……そう」  呟いた雪蓮の腕に力が込められる。  言葉にしなくても、その腕から想いが流れ込んでくる。 「んで、雪蓮だと確信したのはあの爺ちゃんと婆ちゃん家の前で、かな」 「……………」 「蓮華だって街のお年寄りには優しいし大切にしてる。けど、あそこの爺ちゃんと婆ちゃんの事を深く知ってるのは、雪蓮だけだから」 「そっか……でも一刀も気にかけてくれてたんでしょ? 肖像画を描いてもらったって知ってたし」 「約束してたからね」 「……うん。やっぱり一刀は良い男ね。惚れ直しちゃうわ」 「や、やめろよいきなりそんな事言うの!」 「あはは! 赤くなったー!」 「まったく……」  朝からずっと振り回されっぱなしだけど、これでいいんだと思える。  雪蓮はもう死んでいる……それに身体は蓮華のなんだから、こちらに居られる時間は僅かなはず。  だから、精一杯いまこの時を楽しむんだ。 「そういえば城内に戻ってきたけど、何するの? ………はっ! まさか城内で青か」 「それはもういいから! 俺が行きたいのはあそこ!」 「あれ…? あそこって……」  俺が目指していたのは城内にある一本の木。  そして、俺と雪蓮の思い出に残る木。 「俺命名、“雪蓮サボリの木”」 「何よそれ! ひどい!」 「いや、本当の事だし。 そして……あったあった。ジャジャン! 白酒ー!」  “雪蓮サボリの木”の根元に置いてあった白酒を取り出す。 「えぇ? なんでそんなものが置いてあるわけ?」 「朝食注文する時に俺は席を外したろ? あの時、雪蓮のお付きだった侍女さんを見つけたんだ。で、その時にこの木の根元に白酒を置いてくれないかって頼んだんだよ」 「あの娘、ここ知ってたの!?」 「サボリの木って言ったら一発で分かったみたいだよ?」 「うそ〜!?」  バレてないって思ってたんだろうな。  精神は雪蓮だけど、蓮華が両手を地面についてうな垂れている様は……う〜ん、シュールだ。 「とりあえず落ち着けよ雪蓮。最終的には冥琳にだってバレたんだから一緒だって」 「う〜そうだけどさ……一刀! お酒ちょうだい!」 「はいはい」  木の根元に座り、お酒を要求する雪蓮。  俺も雪蓮の隣に腰を下ろし、用意してもらっていた二つの杯の内、一つを渡し酒を注いだ。 「ンクンク……はぁ、おいし。ほら一刀も」 「ん、ありがと」  雪蓮から酒を注いでもらい、一気に飲み干す。  俺が注ぎ、雪蓮が飲む。  雪蓮が注ぎ、俺が飲む。  トクトクと酒の注ぐ音だけが響く、静かな二人だけの時間が流れていった。    そして何度目かの酒を注ぎながら俺は口を開いた。 「なんで雪蓮は……身体は蓮華だけど、こっちに来れたんだ?」 「よく分からないわ。気付いたら蓮華になってたし。ただ、平和になった国と民みんなの笑顔を見たいとは常々思ってたわ。それに……」 「それに…?」 「一刀と何の気兼ねも無くでーとをしてみたいともね」  そう言って俺にウインクを投げかける。  その瞬間、蓮華の顔に雪蓮の顔がダブって見えた。 「私が生きてる時はさ、一歩城の外に出た瞬間から間諜が着いて来てたのよ。 感覚が鋭いってのもああいう時は考えものね」  雪蓮は肩をすくめ、ため息をついた。 「それを利用して間諜を始末したりもしたわ。最後のあたりなんかは散歩なのか間諜を誘き出してるのか分からなくなっちゃってた」 「雪蓮……」 「でもね、今日はその気配が無かったの……街にいる間中ずっとね。だから思ったわ……ああ、争乱の世は終わったんだって」  雪蓮は酒を一口あおり、じっと杯を見つめた。 「知ってる? 私、生まれて此の方、両手を塞いで歩いた事なんてなかったのよ?」 「え…? でも今日、両手で俺と腕を組んでたよね?」 「そ。だからあれが人生初の体験だったの。結構ドキドキしたんだから……」 「そっか……また一つ、雪蓮との思い出が増えたな」 「今日の事も、覚えててくれる?」 「当たり前だろ…! ずっとずっと、忘れるもんか」 「うん……。短い時間だったけどまた一刀に会えて、話せて、触れられて良かったわ。もう二度とは無い奇跡に感謝ね」 「なんだよ……もう、行くのか?」 「うん、時間きちゃったみたい……また泣かせちゃってごめんね、一刀」  拭っても拭っても溢れてくる涙に少しの憤りを感じる。 「くそっ……最後なのに……最後なのに、雪蓮の顔が見れないなんて……!」 「こうすれば見えなくても大丈夫でしょ?」  俺の手がゆっくりと顔に添えられた。  そこには蓮華の顔があるはずなのに、俺の手は確かに雪蓮を感じとっていた。 「一刀。呉を守ってくれてありがとう」 「民を、みんなを守ってくれてありがとう」 「蓮華を、小蓮を守ってくれてありがとう」 「……私を愛してくれてありがとう」 「来世でもまた……一刀に会いたいな」  蓮華からふっと力が抜け、倒れそうになるのを抱きかかえる。 「こちらこそ、素敵な思い出をありがとう……雪蓮………」 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜   「ん…う……一刀……?」  俺の肩に寄りかかるようにして眠らせていた蓮華が目を覚ます。  寄りかかっていた頭をあげ、俺を見つめた。 「雪蓮姉さまは……もう行ってしまわれたのね」 「あれ? 蓮華、もしかして意識あったの?」 「ずっとあったわよ、刀蓮ちゃん?」 「ぐあぁ!! 頼む! 後生だからソレは忘れてくれ!!」  よもや己の恥部を知る人間が他にいようとは…!  手を合わせ深々と頭を下げる……と、蓮華はその手を強く握ってきた。  顔を上げると蓮華は優しく微笑んでいた。 「一刀、ありがとう。雪蓮姉さまを愛してくれて」 「と、突然どうしたんだよ蓮華」 「まだね、私の中に姉さまの心が残っているみたいなの。それはすごく温かくて、心地よくて……一刀への想いで溢れているわ」 「雪蓮……」 「だから、妹としてお礼を言いたいの。雪蓮姉さまを愛してくれて、ありがとう」 「……お礼なんかいらないよ。今も、これから先もずっと愛し続けるんだから」 「ふふ。良いな雪蓮姉さまは。こんなにも一刀に想ってもらえて」 「何言ってるんだよ。蓮華だって何があっても愛し続けるに決まってるじゃないか!」 「ま、またそういう事を何の臆面も無く言うんだから!」    たった数時間の奇跡だったけど、心から楽しかったよ。  雪蓮、ありがとう。  雪蓮、愛してるよ。  また、来世で会おう……絶対。 「北郷ーーーーーー!」 「ん? あれは……穏?」 「慌てている様だけれど、どうしたのかしら?」 「北郷! “こっち”に雪蓮が来なかったか!? あいつ、理(ことわり)を無視してとんでもない事を……!」 「え? ま、まさか……」 「「め、冥琳!?」」                              ― おわり ―