改行による2パターンとなっています。最初は整形なしの素です。 ブラウザでご覧の方は、『ctrlキー+F』を押して出た検索窓に整形と入力して飛んでください。  「無じる真√N25」  星々の煌めく夜空、気がつけば白蓮は薄暗い木々に囲まれた川の畔に佇んでいた。  目の前には、彼女の想い人が立っている。ただその表情はよく見えない。その前髪のせいかはたまた顔に刺す影のためか……正直彼女にはそんなことなど関係なかった。  ただ、大事なのは目の前の人物の気配が薄くなっていること。 「お、おい、一刀! なんで黙ってるんだよ!」 「…………」  声を掛けるも返事はない。ただ黙って動かない。  駆け寄って肩を揺らそうと思っても彼女の躰がまるで彫刻にでもなったかのごとく、ぴくりとも動かない。 「くそぉ……おい、一刀! 一刀ぉ!」 「…………ら」 「え?」  何か、口を動かしたように見える。だが、聞き取れないほどに声が小さい。 「…………」 「な、なんて言ってるんだ……」  その口の動きをよく観察すると言葉が拾える。何度も繰り返すように動く彼の口元を凝視する。 「…………」 「えぇと、さ……よ……な――!」  確かに、一刀は口にした。いや、唇が動いていた。白蓮に向け、サ、ヨ、ナ、ラ、と。  そして気がつけば、一刀の姿を捉えているはずの白蓮の目に彼の躰と共にその背後の風景が見え始めている。そう、それは一刀の躰が薄くなっている――すなわち、普通に考えればあり得ない現象が起こっているということを表している。  白蓮は理解する。それが彼の消滅の始まりを表していることを 「い、嫌だ、一刀! か、一刀ぉぉおお!」  絶叫ににも近い大声で名前を呼ぶ。瞬間、躰の拘束が解ける。  軽くなった躰で愛しい者へと駆け寄る。そして、 「一刀っ、一刀ぉぉ、一刀ぉぉおおっ!」 「…………」  一歩、二歩と一刀へと近づき、もう届く範囲まで来たところで白蓮は、必死に手を伸ばした。その手が一刀の躰に触れた。白蓮は確かにそう思った。  だが、 「え? お、おい……ど、どこ行ったんだよ一刀。じょ、冗談は止めろよ……なぁ、おい一刀ぉ!」  その手、白蓮の伸ばした掌は彼の温もりでも暖かさでもなく、ただただ何も無い空を握りしめていた。それを彼女の頭が理解したとき、白蓮の躰から力がスッと抜けた。  そして、その場にへたり込み、大切な者の存在に触れることもできず宙に浮いたままとなった手を大地についた。 「う、嘘だろ……そ、そんな……本当に消えてしまったのか……一刀」  最早、涙声でそう呟く白蓮。そんな彼女をただただ夜の闇が包む。  何故だろうか、白蓮は寒いと思った。そして、ぎゅっと自らの腕で躰を抱きしめる。 「う……うぅ……く」  白蓮の瞳からぽろぽろと涙がこぼれ落ちる。躰を抱きしめる腕に一層力を込める。張り裂けそうな心をも抱きしめるように。  そして、ぽつりと口にする。彼の名を……。 「一刀……かずとぉ……」  また、胸が痛くなる。それをごまかすように白蓮は自らの腕で躰をきつく締め付ける。  名一杯力を込めようと瞼を閉じた。  視界を闇で閉ざしてからしばらくして、彼女が未だ泣き濡れたままの瞳を開くと辺りが赤かった。いや、赤く、そして黄色い。まるで太陽のような色。  それに、大地に座っていたはずなのに立っている。いや、それ以前に彼女の『いる』場所がおかしい。先程まで外にいたはずなのに今は室内に『いる』 (え……一体)  呟いたつもりだが、声にならない。  何故だろうかと首を傾げるのと同時に、先程から流れる汗を拭う。 (それにしても……熱いな)  そう、彼女は先程から、まるで真夏――いや、それ以上の暑さ、いやむしろ熱さを感じていた。  彼女が改めて辺りを見渡すと、その原因が分かった。 (な、なんで燃えてるんだ!)  彼女の周囲に炎の壁が立ちふさがっている。そして、この部屋、いや……この建物を食いつくさんとばかりに轟々と燃えさかっている。  そして、奇妙な違和感に気づく。 (あれ? ここって城の、いや易京城の玉座の間じゃないか!)  そう、彼女の率いる公孫賛軍が袁紹軍との戦いの中、立てこもった城にいるのだ。しかも、何故か火事というおまけ付きで。  頭を働かせているせいかまるでモヤがかかったかのように頭がぼおっとする。  だんだん自分が誰なのか、今一体どんな情況なのか混乱し始める。 (あれ? 自分で火を付けたんだっけ?)  朦朧とする頭で今一度、情況を把握しようとつとめる。 (確か……)  そこで、一つ一つ思い出す。  界橋で、袁紹軍と戦ったこと。  そして、初めはそこそこ上手くやれていたはずなのにちょっとした切欠で騎馬隊が大敗を喫したこと。  それからひたすら逃げに逃げこの易京城に立てこもったこと。  そして、長らく籠城戦を行っていたが袁紹軍の攻撃と策によってうち破られた。 (そうか……それで自害を……はぁ、やっぱりついていないんだな……『俺』は)  自らの不運さに思わずため息を漏らす『公孫賛』 (最後にもう一度……いや、出来ればお前と共に人生を歩んでいきたかったぞ……北郷)  そう想いくすりと微笑みを漏らしたところで燃えさかる柱が彼女を叩き潰そうとするかのような勢いで降り注いだ――――――。 「はっ!?」  『白蓮』はがばっと躰を起こす。その時、額に乗っていた手ぬぐいが落ちた。 「……あ、あれ?」  辺りを見渡す……どこにも火などあがっていなかった。  それどころか、辺りはシン……としている。  未だ混乱の中にある白蓮は首を傾げる。と、徐々に自分がこの場にいることを実感したところで、躰が汗だくなことに気がついた。 「そうか……『私』は寝ていたのだったな……」  ようやく思い出す。軍議の最中体調を崩し倒れたのを。そして、この部屋で牀に寝かされ。その際に付き添ってくれていた一刀が退出したところで意識を手放したことを。 「夢だったのか……全部」  それにしては嫌に生々しかったと白蓮は思う。炎に包まれた易京城などは臨場感がもの凄く溢れており、その場にいると錯覚するほどだった。 「なんだったんだ……あの夢は」  あまりにも不思議な夢だった。初めは一刀との別れだった……そして、もう一つは袁紹に追い詰められ自害する自分だった。それにしては違和感があった。 「私は、自分を俺なんて言わないんだがな……」  何故か、口からは出ない心の声で自分を称するときに『俺』と言っていた……その点だけが現実と違う、白蓮はそう思った。  だが、それ以外は現実的だった。もし、一刀が居なければ、星を失っていたら、元董卓軍の面々が仲間でなかったら……そんなもしを考えれば十二分にありうることだっただろう。そう考える白蓮の額を汗が流れ落ちた。 「……それよりも」  そう、変な夢も気にはなったがそれ以前のこと。一刀だ。どちらの夢でも白蓮は彼との別れを惜しんでいた。 「一刀……」  目を覚ましてから、白蓮は初めて彼の名前を口にする。  その瞬間、白蓮は胸がきゅうっと締め付けられるような感覚を覚えた。そして、切なさと焦燥感とが入り交じったような不思議な感情が白蓮を捲し立てる。  一刀に会え、と。そして白蓮は、今すぐ会いたいと強く思った。彼の温もりをいち早く感じたいと。 「かずと……かずとぉ……」  彼の名を呟きながら、白蓮は部屋を後にした……。  それは、突然のことだった。  一刀が寝ている牀へと衝撃が走った。それは誰かが一刀の躰の上に跨るように乗ったということを彼自身に確信せしめる程のものだった。 「だ、誰だ!」  激しい鼓動の音を聞かれないように一刀は大声で相手に怒鳴りつける。  だが、相手は何の反応もみせない。いや、僅かにびくりと動いた。そのことを疑問に思いつつも、一刀は枕元の剣へと手を伸ばそうとした。  その時、何故か嗚咽らしきものが聞こえる。 「……ぐすっ、か、かずとぉ」 「!? ぱ、白蓮かっ!」  その涙混じりの声の主が白蓮であることに気づいた一刀は剣から手を離す。 「ど、どうしたんだ?」 「…………」 「なぁ、黙ってても分からないぞ」 「っく…………お、お前を」 「ん?」 「ぐす……一刀を思いっきり感じたくて……来たんだ……ひっく」 「なっ!?」  嗚咽混じりに白蓮の告げた言葉に一刀は頭を鉄の棒で殴られた気分になった。  一刀の頭の中を、何故? どうして? 訳が分からない、そんな言葉がぐるぐると廻っている。 「な、なぁ、取りあえず理由くらいは聞かせてくれ」 「ぐす……お前はいつもそうだ。そうやって誤魔化す。でも、それも終わりだ」  窓から差し込む月明かりに照らされた彼女の顔は瞳を潤ませ、そこから一つ筋の後が残っている。だが、決意に充ち満ちている。 「私は、お前が好きだ!」 「!?」  それは一刀がこの世界に来てから最も聞きたくなかった言葉だった。  『かつての世界での少女たち』と『今の世界の少女たち』を重ねてみてしまう部分があったから。だからこそ、少女たちとそんな関係になってはならない。ましてや好きになるなど論外だった。 「なぁ……私じゃダメなのか?」 「い、いや……その……」 「やっぱ、魅力無いもんな私は……」 「そ、そんなこと――」 「でもな!」  白蓮の自虐の言葉を否定しようとする一刀を制し彼女は興奮したように喋る。 「私は、『また』お前に対して何も行動しないまま別れることになるのが嫌なんだ!」 「な、なんで……」  白蓮の言葉の要所に散りばめられた衝撃的な言葉が一刀の心を貫く。  何故、白蓮は別離のことを……知るはずのない事実をどうして口にしたのか。そしてそれが、『また』であると何故わかるのだろうか。そんな驚きや疑問といったものが、一刀の頭の中を荒れ狂う激流のように流れ、混乱という名の渦を引き起こす。  一刀がそんな状態にっている間も白蓮の独白が続く。 「だから、せめて想いを伝えたかったんだ。お前をどれだけ愛しているかを」 「白蓮……」 「悪かったな……なんだか、言いたこと言えたらすっきりしたよ」  そう言うと、白蓮は一刀の上から飛び去る。そして、扉へ向かって歩き出す。  振り返る際に僅かに見えた彼女の悲しげな表情が一刀を突き動かす。 「ま、待て!」  気がつけば、一刀は白蓮の腕を掴んでいた。 「一刀……いいのか?」  頬を真っ赤にさせながらも、未だ期待と不安の入り交じった潤む瞳で一刀を上目遣いで見つめる白蓮。 「あぁ、俺も腹を決めた!」  それだけ言うと一刀は白蓮を背に腕を回し牀へと優しく導く。 「そ、そのだな……一刀」 「何?」 「あの……私は今まで……その男とこういうことをだな……その」  そこまで言うと白蓮は顔全体を林檎のごとく真っ赤に染めて俯いてしまう。 「そっか……なら、優しくしないとな」  安心させるように微笑み、彼女の頭を撫でる。  そこで、初めて彼女の髪型が普段と違うことに気づく。 「それ……」 「あぁ、以前お前に貰った髪飾り……付けてみたんだ。似合うか?」 「うん、とても似合ってる。綺麗だよ、白蓮」  白蓮の髪を毛先でまとめている髪飾りをそっと撫でながら一刀は、僅かに震える彼女の唇へと口づけした。 「ん……」  白蓮が僅かに漏らす声が一刀の口内へ伝わる。  そのまま、彼女の舌を優しく愛するように一刀は自分の舌で撫でる。 「じゅ、じゅじゅ……んっ」 「はぁっ、くぅ……ん……じゅっ」  互いに唾液を漏らしてたまるかといわんばかりの勢いで吸いあう。  口内で絡まる二人の舌が水音を辺りに響かせる。  気づけば、白蓮の手も一刀の首に絡んでいる。 「んん……ぷはぁ」 「はぁ……はぁ……す、すごい……これだけで、あたまのなか、ぼおってなる……」  口づけだけでもうこれ以上ないんじゃないかと言うくらいに顔を深紅に染める白蓮を可愛いと思いながら一刀は、白蓮の髪飾りをそっと握るようにして彼女の頭を抱えていた手を動かす。  一刀は自らの手を首筋、鎖骨付近と順に撫でるように滑らせていき、盛大というわけでもなく、かといって控えめでもないお椀のような盛り上がりへと伸ばす。 「ふぅ……んっ」  服の上から触れただけで白蓮のからだがぴくりと動く。その様子を微笑ましく想いながら出来る限り優しく語りかける。 「緊張しなくていいんだ……俺がちゃんと白蓮を愛するから」 「…………」  言葉は無かったが、白蓮が首をこくりと頷かせたのを確認した一刀は彼女の服の前を開いていく。そして、桃色の下着が露わとなる。  そこに納められている二つの純白の丘が顔を半分覗かせている。  胸を覆う布をもそっと外す一刀。 「はぅ……」  胸が外気に触れたのを感じたからか、白蓮は瞳を潤ませ胸を隠そうと自らの掌に包み込んだ。 「ほら、恥ずかしがらなくていいんだ」 「でも……私の胸って……その、星とかと比べると……なぁ?」  白蓮は小声でそう呟くと、瞳を左右させそのまま所在なさ気に視線を宙に漂わせる。 「こら。他の女性の話はなしだ。俺は今、白蓮を愛したいと思ってるんだ」 「一刀……んぅっ」  一刀はすこしでも真剣に思っていることを伝えようと力強く告げる。  そして、白蓮の白い球体から彼女の手をゆっくりと外していき、代わりに自分の掌をそっと添える。  さらに、そこを少し力を入れて掴む。若々しい白蓮の胸がその弾力性を伝えてくる。 「はぁ……な、なんらかからだが、からだのしんが……はぁ、はぁ」 「あぁ、白蓮の熱がよく伝わってくるよ」  そう言って、さらに彼女の柔らかい山をこねくりまわす。 「ふぅ……んくっ……はぁ……」 「だんだん固くなってる」  一刀の掌に触れる小豆のがその存在を主張し始めている。  そっと白蓮の白い丘から手を離す。そして、一刀は彼女の紅色の苺をキュッと啄む。  それに合わせて白蓮の肩がぴくっと動く。  そして、白蓮の吐息の感覚が短くなってきたのを見えない合図として、一刀は片手をそっと彼女の秘所へと手をあてがう。 「大分濡れてきてるな……」  そっと、白蓮の淫裂をなぞると下着の上からでも一刀の指がびちょびちょになるほど濡れそぼっていた。  それを確認すると、一刀は指で下着を僅かに横へずらし淫花へと入れていく。  ズプッ、ズプッ 「あ、あぁ……か、かずとのゆびらぁ……はいってぇ……んっ」  音をたてながら一刀の指が飲み込まれていく。そして、そのまま一刀は手を上下左右へ彼女の肉壁をしげきするように動かしていく。 「う、うぅ……か、一刀。そ、それは……ひげきがつ、つよすひるぅ……はぁんっ!」  一刀の指に合わせ白蓮の腰が動く。一刀はナカへ入れた指は動かしたままさらにその淫列の先にある愛らしい肉粒を空いている親指で律動的に小突いていく。 「うぁあ、そ、そこはやぁ! らんか、かららがキュッってらっちゃう……んぁ!」  律動的な親指な動きに合わせ白蓮の躰が跳ねる。一刀の手をびちゃびちゃにするほどに愛液を溢れさせ、さらに飛沫を飛ばし続ける。  そして、それが何度か続くウチに白蓮の躰が弓なりになる。 「あ、あぁ、くぅっ、やぁ、いやぁ、あぁ!」  ビクッ、ビクッと白蓮の躰が上下する。 「イッたんだな……白蓮」  手の動きを弱めつつ一刀は柔らかく微笑む。そして、白蓮が一刀を受け入れられるようになったか確かめる。 「どうやら……大丈夫みたいだな」  もう、準備は整っていた。  それを確認じた一刀は彼女の下着の左右へ手を差し入れずり下ろしていく。 「あ、あぁ……はぁ、ふぅ……あっ……」  太股の辺りまで下着を脱がしたところで白蓮の躰が硬直した。 「大丈夫だから、ほら……」  それが手を通して伝わってきたところで白蓮の躰を抱き寄せ、頭を撫でる。すると、まるで安堵したかのように白蓮の躰から力が抜けた。  そのまま白蓮を刺激しないように一刀は自らの分身を解き放つ。  そして、白蓮の脚を自分の脇腹を挟むように抱える。、うるみの壺となった彼女の秘所にそそり立つ熱い塊、その先端をあてがう。 「あ、あぁ……かずとぉ……なんらかこわいよぉ……はぁ、はぁ」 「力を抜いて……俺に任せて」  一刀の首へ手を回して抱きつくようにしている白蓮の耳元へそうささやくと一刀は白蓮の白い双臀を両手でギュッと掴み左右へ広げる。  そして、一刀は馬の首のようにいななく分身を白蓮の秘部へ蜜しぶきをはじき飛ばしながら、ずぶりとその頭を挿入した。 「くぅ……うぅ……」  白蓮の躰が強張る。ずぷりという音を立てながら一刀の荒れ狂うモノは徐々に白蓮の奥へ向かって進む。  それから白蓮の中をしばらく進むと壁のようなものにぶつかった。それが彼女の最後の一線であることを一刀は理解した。そして、白蓮に一言声を掛ける。 「多分、痛いと思う……ごめん」  そして、勢いよく突き進める。すると、何かを貫通したような音がした。 「ヒィイッ!」 「白蓮、大丈夫か?」  白蓮の乙女が散ったのを表すような彼女の悲鳴を耳にしながら一刀は動きを止める。そして、白蓮の指が自分の首に食い込むのを感じながらも励ますように声をかけ続ける。  しばらく、それを続けている内に白蓮の息が落ち着いてくる。 「はぁ、はぁ……ふぅ」 「落ち着いたか?」 「あ、あぁ……続けてくれ」  一刀の首に先程ついたのであろう白蓮の爪痕を彼女がそっと指の腹で撫でている。一刀には何だかそれが気持ちよかった。  そして、一刀は白蓮の躰を自分の躰へとおろし始める。  先程までと違い、僅かに抵抗の少なくなった彼女の内部を一刀は突き進む。 「んっ、くぅ……」 「どう?」 「さっき……んっ、さっきとはひがう……なんかへん、へんら……」  そう言うと白蓮は僅かに顔をほころばせ笑みを零した。それに対して、一刀は彼女と同じように微笑むことで返した。  そして、ついに白蓮の内奥へと到達した。  そこから、今度はもう一人の自分を後退させる。 「くぅっ、あぁ……もってかれるっ、わたひがうぅっ……うあっ!」  そして、すぐに前進させる。 「あうっ、ズンッズンッってなるたび、ふあっ、かけめぐってくるぅ……あぁ」  前へ、後ろへ、何度もなんども繰り返し白蓮の淫肉を抉るように往復させる。それに合わせるように白蓮の躰が激しく跳ねまわる。 「はぁ……うぅ……んぁ……くぅ……」 「ぱ、白蓮……ど、どう?」 「ふぅん……い、イイ……すごくイイろ……かず、とぉ!」 「お、俺もだ……ふっ!」  更に速度を挙げる。  ずりゅずりゅずりゅずりゅッ!  一気に突き上げる。 「ヒィッ! うあぁ、かきだされっ――ひうっ」  ずにゅっ!  今度は勢いよく引き抜く。 「くぅ! ぐぅ……こ、これふらい……やっぱり、らめぇえ……」  どんどん、速度は上がり続ける。 「うぁ……はぁ……らんだか……私のナカにいるか、かずとがアツいぃっ!」 「俺を包む……くぅ……ぱ、白蓮だって熱いぞぉ!」  それから止まることなく水音が部屋中へ響く。  クチュクチュ、ピチャピチャという音、白蓮が鼻から漏らすうめき声がそれに混じり淫猥さを増し、一刀の興奮を一層高める。  白蓮の熟れ桃を揉みしだくように掌に力を込める。  突撃、後退の繰り返しもより勢いをつける。  そして、互いの肉をぶつけ合う彼らもついに終わりの時を迎える 「う……うあぁ、つ、突き抜ける……ナニかが突き抜けるぅ!」 「お、俺ももう!」  白蓮が首筋を立て、急に動きをとめ全身を引き攣らせた。  次の瞬間、ガクンッガクンッと壊れた玩具のように四肢を、躰を跳ねさせ、股間から透明な飛沫を噴出した。  そして、押しつぶされそうに成る程締め付けられた一刀の分身から白い液体が一斉射出された。 「うぁああ! あ、アツい、アツいのがナカに……ながれこんでくりゅう!」 「くぅぅぅ、ぱ、白蓮! ぱいれん!」 「あぁ……はぁ……はぁ、か、かずとぉ、かずとぉぉおお!」  二人は、同時に果てた。  白蓮が気絶したかのようにがくりと躰を倒し、一刀の胸にもたれかかった。 「はぁ、はぁ……くっ、一刀……」 「ふぅ……ん?」 「ありがとな」  そう言って白蓮は未だ桃色の頬をしたまま、はにかんだ。その笑顔は今まで一刀が見てきた中で最高に美しく、そして可愛かった。  一刀は、この笑顔が見られただけでも自分の選択は間違ってなかったのだと思えた。  それからしばらくの間、二人は動くことなく互いの温もりを貪り続けていた。  体力の戻った二人は、城をこっそりと抜け出てちかくの小川の畔へと来ていた。 「意外と綺麗だな。なぁ、一刀」 「そうだな……」  星々の煌めく夜空。そんな中、月がその存在を主張するように爛々と輝いている。  そして、二人の傍を流れている小川の川面にもその光景が映る。それにより、輝きもその神秘さも二倍となり幻想的な風景がそこには広がっていた。  そんな中を歩きながら一刀は程よい岩に腰掛ける。 「よっと、この辺で良いかな」 「それじゃ、私もっと」  白蓮も一刀の横へと座りそっとよりそう。まるで、そこが自分の居場所として当然であるように。  もう、一刀が白蓮のその想いから距離を取る必要はなかった。  だから、一刀はただただ彼女の望むままにさせた。 「なぁ、あとどれいくらいなんだ?」 「さぁ、俺も良くは知らない。でも、もうすぐだよ。そんな気がするんだ……」 「そっか……」  それから、二人はしばらく一言も発しなかった。  時だけが流れているのを小川のせせらぎが随時二人の耳へ届けていた。 「なぁ、一刀……」 「ん? なんだ?」 「袁紹との戦いはどうなったんだ?」 「はは、そう言えば肝心な事を忘れてたな」  何故今まで忘れていたのだろう。いや、それも致し方なかったのかも知れない。一刀はそう思う。白蓮が目を覚ましてからはただ互いのことのみを見ていた、感じていた……そして、求めていた。  だから、それ以外のことなど忘れていた。  一刀は、そんな愚直なまでに互いを想った自分と白蓮に対する妙な恥ずかしさを消し飛ばすように咳払いをした。 「そうだな、結果から言えば俺たちの勝ちだ」 「そうか! いや、そうだな……一刀がいたんだ。負ける訳ないよな」 「……そんなことはないさ。みんながいた、そして色々と運が良かっただけだ」  そして、一刀は白蓮にあった出来事を話していく。まるで昔話を語るかのようにゆったりと、そしてわかりやすく。  この際だとばかりに、命の危機に直面したことも含め正直に教えた。  聞いた直後、目を見開き呆然とした白蓮もすぐに、一刀は一刀か……と呆れを込めた微笑みを浮かべた。 「しかし、私が寝てる間に本当にいろんなことがあったのだな。城に戻ったら詠たちにも感謝しないとな」 「えぇと、それなんだが……実は、戦いが終結してから数日たってるんだ」 「え?」 「だから、詠たちは先に北平に戻った。袁紹たちのこともあったんでね」 「そ、そうなのか……」  さすがに白蓮も、今度ばかりは目を見開くだけでなく口もポカンと開けていた。 「あぁ、だからここに残ってるのは俺と、後は数人の詠たち以外の将の人たちと易京を護る兵たちだけだ」 「そうか……なんで一刀は残ったんだ?」 「ん? まぁ、白蓮のことが気にかかったからかな」  一刀は、空に浮かぶ月を眺め、頬をかきながらそう答えた。  だが、横にいる白蓮は不適に笑った。 「ふふ……それは嘘だな」 「どうして?」 「一刀、お前はここで私が気づく前に消えると思っていたんだろ……」  白蓮の指摘に一刀の胸がドクンと一際強く脈打った。 「ばれたか……実を言うと白蓮の言うとおりだ。ただ、白蓮のことを気にしたのも嘘じゃないぞ」 「ふふ……そうか、忘れられてるんじゃないかと思ったがそうではなかったんだな」 「当たり前だろ……なぁ、俺も聞いていいかな?」 「あぁ、何だ?」 「白蓮はさ、いつから俺が消えるってこと知ってたんだ?」 「それか。それは、お前と貂蝉が話しているときだ」  その言葉が一刀には信じられなかった。何せこの戦いの始まる前から白蓮が彼の消滅をしっていたということになるのだから。 「本当なのか?」 「あぁ、城から出て行く一刀が見えたから後を追ったんだ……それで、茂みに隠れて様子を見てた……」 「そうか……」  一刀は自分の迂闊さを呪った。もし、あの時もっと周囲に気を配れていたなら白蓮を苦しませることもなかった。そのことによる悔恨の感情が一刀の胸の中を渦巻く。 「おい……何、また一人で考え込んでるんだ!」 「あたっ!」  一刀の側頭部に衝撃が走る。何事かと視線を向ければ、そこには、指をピンと張った状態の白蓮の掌があった。  あぁ、デコピンをされたのかと今更気づく。 「どうせ、私に悪いことをしたとか思ってるんだろ」 「ど、どうしてわかるんだ?」 「あのなぁ、お前がどういう人間か知ってればそれくらいはわかる」  そんなに単純な人間なんだろうか……一刀はそう思わずにはいられなかった。 「というかだな、私は正直、良かったと思う。話を聞いていて」 「良かった?」 「そうさ、だってあの時話を聞いたから今私はお前の隣にいるんだ。そう思えばちょっとの苦しみなんてどうってことないじゃないか!」  そう言って白蓮が嬉しそうに笑う。一刀はその笑顔に救われる思いがした。 「ありがとうな。白蓮」  だから、一刀は感謝の気持ちを込めて白蓮の頭をそっと撫でた。想いが伝わるよう丁寧に丁寧に。 「もう、クセになってしまったじゃないか……コレ」  そんなことを不満そうにそうに呟いていた白蓮だが、実際に彼女の方を見てみれば瞳を閉じて気持ちよさそうに一刀の手に頭を預けていた。  一刀の手に伝わる白蓮の温もりが心地よかった。さらさらと指を撫でる彼女の髪がくすぐったかった。そして、撫でれば撫でるほど愛しく感じた。  そんな想いに押しつぶされないように一刀はあえて元気よくしゃべり出す。 「そうそう、まだ話すことはあるんだ。霞に烏丸兵を預けたこと……覚えてるか?」 「あぁ、あれは驚いた。突然何を言い出すのかと思ったぞ。烏丸族の連中は扱いが難しくて、私よりむしろ一刀の方が仲が良かったくらいだったからな。それをいきなり霞に譲るなんて無茶だと思ったぞ」 「だけど、結果は上手く言っただろ?」 「まぁ、そうだな」 「それで結果……なんだけどさ、最初は霞なら烏丸の人たちとそこそこ相性良いだろうなって思っただけなんだ。でもさ、その結果俺は正解だったんだって今になって思うんだ」 「ほぅ、それはまたどうして?」  そう言うと、白蓮は先を急かすように一刀の腕をキュっと掴んだ。 「霞が、烏丸兵に関しては俺の後任となってくれたからな」 「そう……だな」  一刀が後任という言葉を口にするのに反応するように彼の腕を掴む白蓮の手に力が込もった。 「一刀はすごいな……自分が消えるってわかってるのにそんな平然としてる」 「いや、聞かされた当初は結構辛かったよ……何で俺がって思ったりもしたしな」 「そうなのか、知らなかった……」  いたく感心したように言う白蓮に一刀は苦笑いを浮かべる。 「でも、そんな俺が自分が消滅する恐怖や別れの悲しみというような感情に打ち勝てたのは、白蓮やみんながいたからなんだ」  「私たち?」 「そう、思ったんだ。俺にはまだ護るべき人たちがいる。俺という存在がこの世界にいたという証を受け取ってくれる人たちがいるってね」 「成る程、そうだな」  白蓮が髪飾りを外し手に乗せ愛しそうにじっと見つめる。  あぁ、それも自分がいた証だな。そう思うと一刀もその髪飾りが一層愛おしく見えた。 「ところでさ、袁紹たちのことなんだけど」 「あぁ、捕らえたんだってな」 「そうなんだ。それでさ、まあ一応捕虜というかまぁ、行動を通常よりも制限した客将に近い扱いでもしてあげてくれないか?」 「うぅん、それはなんだも寛大すぎないか?」 「それは、わかるんだけどな……多分、顔良に補佐として誰か付ければ、ある程度残りの二人の制御は可能だと思うぞ」  あくまで、以前の世界で一刀の元にいたはわわでちょっとおませな軍師や覇王に仕え続けた姉妹の妹、鈴々と似たもの同士でよく喧嘩していた少女から聞いた情報だけど、と心の内で付け加える。  この世界では人の性格が以前の世界と比べ、著しく異なるなんてことはなかった。だからきっと大丈夫だと一刀は密かに三人を信じていた。 「待遇の良い捕虜ってことになるのか……まぁ、正直詠たちも近い部分はあったわけだしな……できるだけ善処はしてみるよ」 「ありがとう。そして頼むぞ白蓮」 「まったく、とんだ置き土産だな……馬鹿」 「ごもっとも。いやホント面目ない」   一刀は苦笑いを浮かべながら頭を掻いた。 「しかし、一刀は本当に色んなモノを残していくんだな」 「確かに、改めて考えると結構あるな」  あまりに多い形見となりそうだと二人して笑った。 「だけど、一刀にはたくさん助けられたな」 「そんなことないさ……俺はただ知識を提供したり動けるときに動いただけだ」 「いや、霞たちを私と引き合わせてくれただろ」 「あれは……まぁ、色々と俺に有利に事が働いただけさ」 「それに、詠が作ったあの兵器だってお前の知識が元に作られたじゃないか」 「はは、勘違いしちゃダメだ。凄いのは詠だよ。俺じゃない」  冷静に自分の話をした一刀に食い下がるように賞賛する白蓮。それはどこか彼女が躍起になっているようにも感じられ一刀は思わず笑みを漏らした。 「そうかぁ? 私はやっぱり一刀も凄いと思うがな……」 「俺はさ、確かに色々知識はある。でも、それは殆どが断片的なものなんだ」  そう、一刀は以前の世界で自軍の軍師や強敵たちに様々なことを学んだ。だが、その全てを習得できたわけではなかった。  ましてや、知識に関しては殆ど軍師の受け売りで情報もちぐはぐとしたものだった。 「だから、いわば俺は要所要所が破けたり文字がかすれてる文献みたいなものなんだ。それを解読し、書かれている正解を導き出した詠、俺が来た頃で言えば星だな……そんな人たちの方が俺よりも何倍も凄いと俺は思う」 「なるほどな……そうか、そうだったのか」  やけに感心したように何度も頷く白蓮に一刀は疑問を抱く。 「どうした?」 「いや、一刀はきっと自分の持つ凄さというものに気づくことはないのだろうと思ってな……ふふ」 「?」 「いや、わからなくていいんだ……それでこそ一刀なのだろうからな」  意味深に笑う白蓮に一刀はますます唸るのだった。  そんな楽しい一時にも終わりが訪れる――。 「どうやら、時間みたいだ……」 「そうか……消えるんだな?」 「あぁ、そうみたいだ」  そう言って、一刀は自分の躰を見る。徐々にその姿が薄くなり、もうすぐ砂漠に浮かぶ蜃気楼のようになってしまいそうだった。 「なぁ、白蓮」 「ん?」 「最後はさ……手、つながないか?」 「そうだな。そうしよう」  二人はどちらからともなく手を握り合った。  そして、自然と瞼を下ろし意識をその一転へ集中させた。  瞳を閉じ暗闇と化した世界の中、一刀は自らの手の中に収まっている白蓮の小さく柔らかい、そして暖かな掌だけを感じていた。  北平、その城内の中庭で月と詠は空に浮かぶ満月を眺めていた。 「今日は月が綺麗だね。詠ちゃん」 「そうね……なんだか洛陽にいたころを思い出すわね」  二人で感慨にふける。と、そこへ新たな人物が近づく。 「そら少し不吉ちゃうか?」 「霞、どうしたのよ?」  折角の気分を壊され不満顔で詠は尋ねた。 「いや、今回の戦いで烏丸のみんなもかなり被害あったからな……その確認や」 「そっか、今は霞の部下だものね」 「そういうことや。まぁ、所謂一刀からウチへの贈り物っちゅうやつやな」  嬉しそうに笑う霞を見て詠は何だか悔しく感じたので張り合うように思い当たることを語る。 「そう言えば、ボクもあいつの持ってる知識を少しだけ教えて貰ったわね。ま、中途半端で役に立つのか分からないものだけど」 「つまり、それが詠への贈り物っちゅうわけか」 「そうね、それで月は――」 「この侍女専用服であるメイド服だね」  そう答えた月の方を見ると彼女は着ている服を大事そうに撫でていた。 「む? 何をしているのだ?」 「おっ、華雄!」 「あら、あんたも何か仕事でもあったの?」 「まぁな、少し前まで袁紹たちの見張りをしてた」 「そ、そらご愁傷様……」 「ようやく、後退の時間になってな……」  そう答える華雄はずいぶんと憔悴し、顔がげっそりとしていた。  そこで詠は思い出す。  袁紹たちを捕虜としたのは良いものの白蓮の判断が得られず、取りあえず北平へ移送するということになったことを。 「…………ウチもあれは勘弁やな」  華雄に哀れみの視線を向けていた霞がボソリとは呟く。  詠はそれも仕方の無いことだと、心の中で霞に同意した。  結局袁紹たちのことは、一刀の判断を仰ごうということになった。  だが、その際に彼が三人の処遇を甘めにしたために袁紹たちが、いや正確には袁紹と文醜が調子に乗ってわがままを言って彼女たちの世話や監視を担当する者たちを振り回し困惑させ続け疲弊させていたのだ。  そんな中、唯一の救いだったのは顔良が抑えようと涙ぐましい努力をしたことだろう。  まぁそれも焼け石に水だけど、と思考締めくくり詠はため息を吐いた 「ご苦労様です」 「有り難きお言葉です。月様!」  にこりと優しく微笑んでねぎらいの言葉を掛ける月に華雄が直立不動で返答する。 「あんたも相変わらずね……」 「ふん、これが私の忠誠の表し方なのだからしかたないだろ。で、三人は一体何を話していたのだ?」 「あぁ、それはな一刀から何を贈られたかってことや」 「ほぅ……一刀からの贈り物か……」 「どや? 華雄にも何かあるんか?」 「私か、私は……遠い頃に無くした忘れ物……だな」 「は? 何それ?」  華雄の言葉の意味が分からず詠が聞き返す。  すると、華雄は慌てたように両手を振り、間違えたと言って改めて答えた。 「い、いや、そうだ! 服だ服!」 「へぇ、あんたが服ねぇ……」 「わ、私はいらんといったのだぞ。だが、あいつが似合うからと無理矢理だな……」 「はいはい、ごちそうさん」  華雄の弁明に、あー熱いと顔を仰ぐ霞。 「し、霞!」 「………………?」 「みんな揃ってどうしたのです?」 「ねねちゃんに、恋さん」  気がつけば、呂布と陳宮の二人が並んで歩いてくるところだった。 「…………楽しそう」 「一体、何をそんなに楽しそうに話しているのですか?」 「あぁ、二人も知っとるやろ? 一刀のこと」 「あぁ、あいつですか。知ってるのです」 「…………」  呂布も同意であるというようにこくりと頷く。 「まぁ、その一刀からそれぞれ何を貰ったかって話や」 「なんなのですか? よくわからないのです」 「…………」 「二人は、まぁ最近一刀のとこに来たから何も貰ってへんからな……わからんやろな」 「…………そんなことない」  霞が、苦笑混じりの言葉に否定の返事を呂布が返したため全員の視線が彼女の方へと注がれる。そして、代表するように詠が驚きを残したまま呂布へ質問する。 「ふぅん、じゃあ恋は何を貰ったの?」 「…………みんな」 「え?」 「……またみんなと一緒にいられる」  その呂布の一言は詠の心に深く深く染みこんだ。  確かにそうだ。詠はそう思った。  何を貰ったと言えば少なくともここにいる面々は皆、争乱に巻き込まれることでその命を危機にさらしてきた。  さらに呂布や陳宮とは、その争乱の中で離ればなれとなった。だが、現在は洛陽にいた頃と同じ顔ぶれが揃っている。それもまた、一刀が自分の躰を、そして命すらもかけて走り回ることで手に入れてくれたのだ。  詠は、それを今になって痛感させられた。  見れば、他の面々も先程までと比べ幾分か表情を暗くしている。そんな顔たちを見ながら、きっと自分もそうなのだろう、とも詠は思った。 「そうね……確かに、それがボクたちにとっては一番のもらい物よね」 「そうだな……」 「うん、こうやっていられるのもご主人様のおかげ……なんだよね」 「なら、帰ってきたら何かしてやらんとな」 「別にねねは感謝なんか――」 「…………」  霞の言葉に対してむすっとした顔で文句をたれる陳宮を呂布がじっと見つめる。 「う、うぅ……わ、わかってるのです。冗談です恋殿」 「…………ならいい」 「しっかし、さっきの月や詠やないけど、こうやっていると何だか洛陽で満月を見たのを思い出す気がするわ」  霞の言葉に対して誰も何も言わない。ただ、誰しもが空に浮かぶ満月を見上げていた。  我が物顔で空に居座るまん丸の月、それを城の中でも比較的近くに見える……と思われる鐘桜の屋根の上。  そこで、一人座り込んで空に杯を掲げる人影があった。 「ふむ、今宵の月はなかなか見応えのあるものだな」  杯の延長線上に見えるまるまるとした月へ穏やかな気持ちのこもった視線を送る。 「しかし、唯一残念でならないのは……」  そこで区切ると杯を口元へと運ぶ。  そして、 「主がおらぬことだな……美酒、美麗な月、よき御仁。三つが揃ってこそ呑み応えがあるというものだからな……」  杯の中になみなみと注がれた酒には口をつけず。そのまま屋根へと置く。  そして、空いた両手を首の後ろへと移す。 「…………今宵はこれを見るだけとしておくか」  首に掛かっていた装飾品。紐が通された指輪を人差し指と親指で摘む。  そして、先程の杯と同じように月へと弓矢の照準を合わせるように位置をぴたりと揃えた。その指輪の中心から月が見える。 「あれだけ雄大な満月も指輪越しに見れば小さいモノだな……ふふ」  先程まで見応えがあると思っていた月も今はそうは見えない。それよりも月の光によって光る指輪のほうが星の視線を釘付けにしていた。 「主…………私は心の底から美味だと思える酒が呑みたくてしょうがありません。ですので、お早く戻ってくだされ」  未だ光り輝く指輪へそう告げると、既に注いでしまっていた一杯を飲み干した。 「ふむ、やはり味気ないものだな」 「何だか味気ないわね……」  手に持った急須を机へ置くと、人和が一言そう呟く。  同意見なのか、天和も首を傾げる。 「うぅん、いつものと何が違うんだろ?」 「変よね……いつもは公演終わりのお茶が美味しくてしょうがないのに今日は普通……」  地和が急須の中のお茶をのぞき込みながらそうぼやく。 「それは、きっとご主人様がいないからじゃないかしらん?」  貂蝉の申し出に三人ともハッと顔を驚きに染める。 「……そっか、いつもは一刀さんが用意してくれてたんだっけ」 「そういえば、こっちに来てからはそうだったわね」 「あーあ、一刀がいればなぁ……」  地和は、そこで思い出した。公演中の自分が、どこかやり甲斐がないと感じていたことを……。いや、やり甲斐はあった。  観客がいて自分を見て盛り上がっている。それだけで地和はやり甲斐を感じていた。だが、今回の公演は何か違和感を覚えていた。  何か足りない、そんな気持ちが地和の中に留まり続けていた。  そして、それは天和、人和も同じであるように感じた。地和が見た限りではこちらに来てから行ってきた公演の中では比較的、全力を出し切れていないように見えた。  地和がそう考え込み唸っていると、貂蝉が可笑しそうに笑う。 「あらあら……」 「何よ! その笑みは!」 「んふふ、いえね、ご主人様がいないだけでここまで影響があると思わなくて」 「べ、別にそんなことないわよ」 「そうです。確かに付き人が一人いないと私たちの苦労が増えるけどそんなのたいして問題じゃありませんから」  地和の反論に続くように人和が眼鏡の縁を手で押さえながら冷静にそう述べた。 「二人はそうなの? わたしはやっぱり、一刀さんがいた方が楽しいかもって思ったけどなぁ~」  間延びした声で天和にそう言われ地和は思わず口ごもる。人和も同じだった。 「あーあぁ、なんか話をしてたら一刀さんの顔が見たくなっちゃったなぁ」 「……大丈夫よ。旅の商人の話じゃ戦は勝利だったみたいだし、きっと北平に帰ればあえるわ」 「そうそう、そしたらまたこき使ってやればいいんだから!」  悪態をつきながらも地和は思う。やはり自分も一刀に会いたいのだと。公孫賛軍に引き取られてからは一刀がずっと世話をしてくれていたのだ。  それが急にいなくなったから寂しく思ったのだろう。  地和がそう結論づけたとき、ふと貂蝉が視界に入った。 「…………ご主人様」  何故か切なそうな顔をしている。それが地和には少し気になった。 「さぁさぁ、一息ついたんだし後片付けしよぉ!」 「そうね……ほら、ちぃ姉さんも」 「え? あぁ、そうね……」  後片付けが開始することになったため、地和はその考えを頭から打ち消した。  四人がいなくなった控え室は沈黙に包まれていた。  沈黙に包まれてから一体どれほどの時間が経っただろうか。  長い時間か、それともほんの僅かな間なのか、それすら白蓮にはわからない。  それでも白蓮は瞳を閉じたままだった。何度か開けようかと思ったが瞼がまるで重りでもぶら下げているかのごとく動かなかった。 (…………怖いな)  だが、それは自分の深層心理が働いている。白蓮はなんとなくそれを理解していた。  未だ掌には彼の温もりを感じる。だが、目を開ければ再び白蓮の中の世界、そして時が動きだしその温もりが消えてしまう……そんな気がした。  それが白蓮の奥底で恐怖となって燻っていた。 (とはいえ、いつまでもこうしてはいられないんだ)  そう自らを叱咤し瞳を開こうとする。が、やはり上がらない。 (さっきからこの繰り返しだな……私は)  白蓮は思う。自分はこんなにも臆病だったのかと。誰かを失うことをこれほどまでに恐れていたのかと。  そして、北郷一刀を愛していたのかと……。 (えぇい、もう何十回も繰り返してるんだ! いい加減動け私!)  今一度自分を叱り飛ばし、妙な痙攣をさせながら瞼を上げた。  そして、隣へとその潤む瞳を移した。 「――ッ!」  白蓮の瞳から一筋の滴が流れていく。それは彼女の顔から滴り落ち、月の光を吸収し美しく輝きながら大地へと溶けていった。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 整形版はここからです。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――  「無じる真√N25」  星々の煌めく夜空、気がつけば白蓮は薄暗い木々に囲まれた川の畔に佇んでいた。  目の前には、彼女の想い人が立っている。ただその表情はよく見えない。その前髪のせ いかはたまた顔に刺す影のためか……正直彼女にはそんなことなど関係なかった。  ただ、大事なのは目の前の人物の気配が薄くなっていること。 「お、おい、一刀! なんで黙ってるんだよ!」 「…………」  声を掛けるも返事はない。ただ黙って動かない。  駆け寄って肩を揺らそうと思っても彼女の躰がまるで彫刻にでもなったかのごとく、ぴ くりとも動かない。 「くそぉ……おい、一刀! 一刀ぉ!」 「…………ら」 「え?」  何か、口を動かしたように見える。だが、聞き取れないほどに声が小さい。 「…………」 「な、なんて言ってるんだ……」  その口の動きをよく観察すると言葉が拾える。何度も繰り返すように動く彼の口元を凝 視する。 「…………」 「えぇと、さ……よ……な――!」  確かに、一刀は口にした。いや、唇が動いていた。白蓮に向け、サ、ヨ、ナ、ラ、と。  そして気がつけば、一刀の姿を捉えているはずの白蓮の目に彼の躰と共にその背後の風 景が見え始めている。そう、それは一刀の躰が薄くなっている――すなわち、普通に考え ればあり得ない現象が起こっているということを表している。  白蓮は理解する。それが彼の消滅の始まりを表していることを 「い、嫌だ、一刀! か、一刀ぉぉおお!」  絶叫ににも近い大声で名前を呼ぶ。瞬間、躰の拘束が解ける。  軽くなった躰で愛しい者へと駆け寄る。そして、 「一刀っ、一刀ぉぉ、一刀ぉぉおおっ!」 「…………」  一歩、二歩と一刀へと近づき、もう届く範囲まで来たところで白蓮は、必死に手を伸ば した。その手が一刀の躰に触れた。白蓮は確かにそう思った。  だが、 「え? お、おい……ど、どこ行ったんだよ一刀。じょ、冗談は止めろよ……なぁ、おい 一刀ぉ!」  その手、白蓮の伸ばした掌は彼の温もりでも暖かさでもなく、ただただ何も無い空を握 りしめていた。それを彼女の頭が理解したとき、白蓮の躰から力がスッと抜けた。  そして、その場にへたり込み、大切な者の存在に触れることもできず宙に浮いたままと なった手を大地についた。 「う、嘘だろ……そ、そんな……本当に消えてしまったのか……一刀」  最早、涙声でそう呟く白蓮。そんな彼女をただただ夜の闇が包む。  何故だろうか、白蓮は寒いと思った。そして、ぎゅっと自らの腕で躰を抱きしめる。 「う……うぅ……く」  白蓮の瞳からぽろぽろと涙がこぼれ落ちる。躰を抱きしめる腕に一層力を込める。張り 裂けそうな心をも抱きしめるように。  そして、ぽつりと口にする。彼の名を……。 「一刀……かずとぉ……」  また、胸が痛くなる。それをごまかすように白蓮は自らの腕で躰をきつく締め付ける。  名一杯力を込めようと瞼を閉じた。  視界を闇で閉ざしてからしばらくして、彼女が未だ泣き濡れたままの瞳を開くと辺りが 赤かった。いや、赤く、そして黄色い。まるで太陽のような色。  それに、大地に座っていたはずなのに立っている。いや、それ以前に彼女の『いる』場 所がおかしい。先程まで外にいたはずなのに今は室内に『いる』 (え……一体)  呟いたつもりだが、声にならない。  何故だろうかと首を傾げるのと同時に、先程から流れる汗を拭う。 (それにしても……熱いな)  そう、彼女は先程から、まるで真夏――いや、それ以上の暑さ、いやむしろ熱さを感じ ていた。  彼女が改めて辺りを見渡すと、その原因が分かった。 (な、なんで燃えてるんだ!)  彼女の周囲に炎の壁が立ちふさがっている。そして、この部屋、いや……この建物を食 いつくさんとばかりに轟々と燃えさかっている。  そして、奇妙な違和感に気づく。 (あれ? ここって城の、いや易京城の玉座の間じゃないか!)  そう、彼女の率いる公孫賛軍が袁紹軍との戦いの中、立てこもった城にいるのだ。しか も、何故か火事というおまけ付きで。  頭を働かせているせいかまるでモヤがかかったかのように頭がぼおっとする。  だんだん自分が誰なのか、今一体どんな情況なのか混乱し始める。 (あれ? 自分で火を付けたんだっけ?)  朦朧とする頭で今一度、情況を把握しようとつとめる。 (確か……)  そこで、一つ一つ思い出す。  界橋で、袁紹軍と戦ったこと。  そして、初めはそこそこ上手くやれていたはずなのにちょっとした切欠で騎馬隊が大敗 を喫したこと。  それからひたすら逃げに逃げこの易京城に立てこもったこと。  そして、長らく籠城戦を行っていたが袁紹軍の攻撃と策によってうち破られた。 (そうか……それで自害を……はぁ、やっぱりついていないんだな……『俺』は)  自らの不運さに思わずため息を漏らす『公孫賛』 (最後にもう一度……いや、出来ればお前と共に人生を歩んでいきたかったぞ……北郷)  そう想いくすりと微笑みを漏らしたところで燃えさかる柱が彼女を叩き潰そうとするか のような勢いで降り注いだ――――――。 「はっ!?」  『白蓮』はがばっと躰を起こす。その時、額に乗っていた手ぬぐいが落ちた。 「……あ、あれ?」  辺りを見渡す……どこにも火などあがっていなかった。  それどころか、辺りはシン……としている。  未だ混乱の中にある白蓮は首を傾げる。と、徐々に自分がこの場にいることを実感した ところで、躰が汗だくなことに気がついた。 「そうか……『私』は寝ていたのだったな……」  ようやく思い出す。軍議の最中体調を崩し倒れたのを。そして、この部屋で牀に寝かさ れ。その際に付き添ってくれていた一刀が退出したところで意識を手放したことを。 「夢だったのか……全部」  それにしては嫌に生々しかったと白蓮は思う。炎に包まれた易京城などは臨場感がもの 凄く溢れており、その場にいると錯覚するほどだった。 「なんだったんだ……あの夢は」  あまりにも不思議な夢だった。初めは一刀との別れだった……そして、もう一つは袁紹 に追い詰められ自害する自分だった。それにしては違和感があった。 「私は、自分を俺なんて言わないんだがな……」  何故か、口からは出ない心の声で自分を称するときに『俺』と言っていた……その点だ けが現実と違う、白蓮はそう思った。  だが、それ以外は現実的だった。もし、一刀が居なければ、星を失っていたら、元董卓 軍の面々が仲間でなかったら……そんなもしを考えれば十二分にありうることだっただろ う。そう考える白蓮の額を汗が流れ落ちた。 「……それよりも」  そう、変な夢も気にはなったがそれ以前のこと。一刀だ。どちらの夢でも白蓮は彼との 別れを惜しんでいた。 「一刀……」  目を覚ましてから、白蓮は初めて彼の名前を口にする。  その瞬間、白蓮は胸がきゅうっと締め付けられるような感覚を覚えた。そして、切なさ と焦燥感とが入り交じったような不思議な感情が白蓮を捲し立てる。  一刀に会え、と。そして白蓮は、今すぐ会いたいと強く思った。彼の温もりをいち早く 感じたいと。 「かずと……かずとぉ……」  彼の名を呟きながら、白蓮は部屋を後にした……。  それは、突然のことだった。  一刀が寝ている牀へと衝撃が走った。それは誰かが一刀の躰の上に跨るように乗ったと いうことを彼自身に確信せしめる程のものだった。 「だ、誰だ!」  激しい鼓動の音を聞かれないように一刀は大声で相手に怒鳴りつける。  だが、相手は何の反応もみせない。いや、僅かにびくりと動いた。そのことを疑問に思 いつつも、一刀は枕元の剣へと手を伸ばそうとした。  その時、何故か嗚咽らしきものが聞こえる。 「……ぐすっ、か、かずとぉ」 「!? ぱ、白蓮かっ!」  その涙混じりの声の主が白蓮であることに気づいた一刀は剣から手を離す。 「ど、どうしたんだ?」 「…………」 「なぁ、黙ってても分からないぞ」 「っく…………お、お前を」 「ん?」 「ぐす……一刀を思いっきり感じたくて……来たんだ……ひっく」 「なっ!?」  嗚咽混じりに白蓮の告げた言葉に一刀は頭を鉄の棒で殴られた気分になった。  一刀の頭の中を、何故? どうして? 訳が分からない、そんな言葉がぐるぐると廻っ ている。 「な、なぁ、取りあえず理由くらいは聞かせてくれ」 「ぐす……お前はいつもそうだ。そうやって誤魔化す。でも、それも終わりだ」  窓から差し込む月明かりに照らされた彼女の顔は瞳を潤ませ、そこから一つ筋の後が残 っている。だが、決意に充ち満ちている。 「私は、お前が好きだ!」 「!?」  それは一刀がこの世界に来てから最も聞きたくなかった言葉だった。  『かつての世界での少女たち』と『今の世界の少女たち』を重ねてみてしまう部分があ ったから。だからこそ、少女たちとそんな関係になってはならない。ましてや好きになる など論外だった。 「なぁ……私じゃダメなのか?」 「い、いや……その……」 「やっぱ、魅力無いもんな私は……」 「そ、そんなこと――」 「でもな!」  白蓮の自虐の言葉を否定しようとする一刀を制し彼女は興奮したように喋る。 「私は、『また』お前に対して何も行動しないまま別れることになるのが嫌なんだ!」 「な、なんで……」  白蓮の言葉の要所に散りばめられた衝撃的な言葉が一刀の心を貫く。  何故、白蓮は別離のことを……知るはずのない事実をどうして口にしたのか。そしてそ れが、『また』であると何故わかるのだろうか。そんな驚きや疑問といったものが、一刀 の頭の中を荒れ狂う激流のように流れ、混乱という名の渦を引き起こす。  一刀がそんな状態にっている間も白蓮の独白が続く。 「だから、せめて想いを伝えたかったんだ。お前をどれだけ愛しているかを」 「白蓮……」 「悪かったな……なんだか、言いたこと言えたらすっきりしたよ」  そう言うと、白蓮は一刀の上から飛び去る。そして、扉へ向かって歩き出す。  振り返る際に僅かに見えた彼女の悲しげな表情が一刀を突き動かす。 「ま、待て!」  気がつけば、一刀は白蓮の腕を掴んでいた。 「一刀……いいのか?」  頬を真っ赤にさせながらも、未だ期待と不安の入り交じった潤む瞳で一刀を上目遣いで 見つめる白蓮。 「あぁ、俺も腹を決めた!」  それだけ言うと一刀は白蓮を背に腕を回し牀へと優しく導く。 「そ、そのだな……一刀」 「何?」 「あの……私は今まで……その男とこういうことをだな……その」  そこまで言うと白蓮は顔全体を林檎のごとく真っ赤に染めて俯いてしまう。 「そっか……なら、優しくしないとな」  安心させるように微笑み、彼女の頭を撫でる。  そこで、初めて彼女の髪型が普段と違うことに気づく。 「それ……」 「あぁ、以前お前に貰った髪飾り……付けてみたんだ。似合うか?」 「うん、とても似合ってる。綺麗だよ、白蓮」  白蓮の髪を毛先でまとめている髪飾りをそっと撫でながら一刀は、僅かに震える彼女の 唇へと口づけした。 「ん……」  白蓮が僅かに漏らす声が一刀の口内へ伝わる。  そのまま、彼女の舌を優しく愛するように一刀は自分の舌で撫でる。 「じゅ、じゅじゅ……んっ」 「はぁっ、くぅ……ん……じゅっ」  互いに唾液を漏らしてたまるかといわんばかりの勢いで吸いあう。  口内で絡まる二人の舌が水音を辺りに響かせる。  気づけば、白蓮の手も一刀の首に絡んでいる。 「んん……ぷはぁ」 「はぁ……はぁ……す、すごい……これだけで、あたまのなか、ぼおってなる……」  口づけだけでもうこれ以上ないんじゃないかと言うくらいに顔を深紅に染める白蓮を可 愛いと思いながら一刀は、白蓮の髪飾りをそっと握るようにして彼女の頭を抱えていた手 を動かす。  一刀は自らの手を首筋、鎖骨付近と順に撫でるように滑らせていき、盛大というわけで もなく、かといって控えめでもないお椀のような盛り上がりへと伸ばす。 「ふぅっ……」  服の上から触れただけで白蓮のからだがぴくりと動く。その様子を微笑ましく想いなが ら出来る限り優しく語りかける。 「緊張しなくていいんだ……俺がちゃんと白蓮を愛するから」 「…………」  言葉は無かったが、白蓮が首をこくりと頷かせたのを確認した一刀は彼女の服の前を開 いていく。そして、桃色の下着が露わとなる。  そこに納められている二つの純白の丘が顔を半分覗かせている。  胸を覆う布をもそっと外す一刀。 「はぅ……」  胸が外気に触れたのを感じたからか、白蓮は瞳を潤ませ胸を隠そうと自らの掌に包み込 んだ。 「ほら、恥ずかしがらなくていいんだ」 「でも……私の胸って……その、星とかと比べると……なぁ?」  白蓮は小声でそう呟くと、瞳を左右させそのまま所在なさ気に視線を宙に漂わせる。 「こら。他の女性の話はなしだ。俺は今、白蓮を愛したいと思ってるんだ」 「一刀……んぅっ」  一刀はすこしでも真剣に思っていることを伝えようと力強く告げる。  そして、白蓮の白い球体から彼女の手をゆっくりと外していき、代わりに自分の掌をそ っと添える。  さらに、そこを少し力を入れて掴む。若々しい白蓮の胸がその弾力性を伝えてくる。 「はぁぁ……な、なんらかからだが、からだのしんが……はぁ、はぁ」 「あぁ、白蓮の熱がよく伝わってくるよ」  そう言って、さらに彼女の柔らかい山をこねくりまわす。 「ふぅ……んくっ……はぁ……」 「だんだん固くなってる」  一刀の掌に触れる小豆のがその存在を主張し始めている。  そっと白蓮の白い丘から手を離す。そして、一刀は彼女の紅色の苺をキュッと啄む。  それに合わせて白蓮の肩がぴくっと動く。  そして、白蓮の吐息の感覚が短くなってきたのを見えない合図として、一刀は片手をそ っと彼女の秘所へと手をあてがう。 「大分濡れてきてるな……」  そっと、白蓮の淫裂をなぞると下着の上からでも一刀の指がびちょびちょになるほど濡 れそぼっていた。  それを確認すると、一刀は指で下着を僅かに横へずらし淫花へと入れていく。  ズプッ、ズプッ 「あ、あぁ……か、かずとのゆびがぁ……」  音をたてながら一刀の指が飲み込まれていく。そして、そのまま一刀は手を上下左右へ 彼女の肉壁をしげきするように動かしていく。 「う、うぅ……か、一刀。そ、それは……ひげきがつ、つよすひるぅ……はぁんっ!」  一刀の指に合わせ白蓮の腰が動く。一刀はナカへ入れた指は動かしたままさらにその淫 列の先にある愛らしい肉粒を空いている親指で律動的に小突いていく。 「うぁあ、そ、そこはやぁ! らんか、かららがキュッってらっちゃう……んぁ!」  律動的な親指な動きに合わせ白蓮の躰が跳ねる。一刀の手をびちゃびちゃにするほどに 愛液を溢れさせ、さらに飛沫を飛ばし続ける。  そして、それが何度か続くウチに白蓮の躰が弓なりになる。 「あ、あぁ、くぅっ、やぁ、いやぁ、あぁ!」  ビクッ、ビクッと白蓮の躰が上下する。 「イッたんだな……白蓮」  手の動きを弱めつつ一刀は柔らかく微笑む。そして、白蓮が一刀を受け入れられるよう になったか確かめる。 「どうやら……大丈夫みたいだな」  もう、準備は整っていた。  それを確認じた一刀は彼女の下着の左右へ手を差し入れずり下ろしていく。 「あ、あぁ……はぁ、ふぅ……あっ……」  太股の辺りまで下着を脱がしたところで白蓮の躰が硬直した。 「大丈夫だから、ほら……」  それが手を通して伝わってきたところで白蓮の躰を抱き寄せ、頭を撫でる。すると、ま るで安堵したかのように白蓮の躰から力が抜けた。  そのまま白蓮を刺激しないように一刀は自らの分身を解き放つ。  そして、白蓮の脚を自分の脇腹を挟むように抱える。、うるみの壺となった彼女の秘所 にそそり立つ熱い塊、その先端をあてがう。 「あ、あぁ……かずとぉ……なんらかこわいよぉ……はぁ、はぁ」 「力を抜いて……俺に任せて」  一刀の首へ手を回して抱きつくようにしている白蓮の耳元へそうささやくと一刀は白蓮 の白い双臀を両手でギュッと掴み左右へ広げる。  そして、一刀は馬の首のようにいななく分身を白蓮の秘部へ蜜しぶきをはじき飛ばしな がら、ずぶりとその頭を挿入した。 「くぅ……うぅ……」  白蓮の躰が強張る。ずぷりという音を立てながら一刀の荒れ狂うモノは徐々に白蓮の奥 へ向かって進む。  それから白蓮の中をしばらく進むと壁のようなものにぶつかった。それが彼女の最後の 一線であることを一刀は理解した。そして、白蓮に一言声を掛ける。 「多分、痛いと思う……ごめん」  そして、勢いよく突き進める。すると、何かを貫通したような音がした。 「ヒィイッ!」 「白蓮、大丈夫か?」  白蓮の乙女が散ったのを表すような彼女の悲鳴を耳にしながら一刀は動きを止める。そ して、白蓮の指が自分の首に食い込むのを感じながらも励ますように声をかけ続ける。  しばらく、それを続けている内に白蓮の息が落ち着いてくる。 「はぁ、はぁ……ふぅ」 「落ち着いたか?」 「あ、あぁ……続けてくれ」  一刀の首に先程ついたのであろう白蓮の爪痕を彼女がそっと指の腹で撫でている。一刀 には何だかそれが気持ちよかった。  そして、一刀は白蓮の躰を自分の躰へとおろし始める。  先程までと違い、僅かに抵抗の少なくなった彼女の内部を一刀は突き進む。 「んっ、くぅ……」 「どう?」 「さっき……んっ、さっきとはひがう……なんかへん、へんら……」  そう言うと白蓮は僅かに顔をほころばせ笑みを零した。それに対して、一刀は彼女と同 じように微笑むことで返した。  そして、ついに白蓮の内奥へと到達した。  そこから、今度はもう一人の自分を後退させる。 「くぅっ、あぁ……もってかれるっ、わたひがうぅっ……うあっ!」  そして、すぐに前進させる。 「あうっ、ズンッズンッってなるたび、ふあっ、かけめぐってくるぅ……あぁ」  前へ、後ろへ、何度もなんども繰り返し白蓮の淫肉を抉るように往復させる。それに合 わせるように白蓮の躰が激しく跳ねまわる。 「はぁ……うぅ……んぁ……くぅ……」 「ぱ、白蓮……ど、どう?」 「ふぅん……い、イイ……すごくイイろ……かず、とぉ!」 「お、俺もだ……ふっ!」  更に速度を挙げる。  ずりゅずりゅずりゅずりゅッ!  一気に突き上げる。 「ヒィッ! うあぁ、かきだされっ――ひうっ」  ずにゅっ!  今度は勢いよく引き抜く。 「くぅ! ぐぅ……こ、これふらい……やっぱり、らめぇえ……」  どんどん、速度は上がり続ける。 「うぁ……はぁ……らんだか……私のナカにいるか、かずとがアツいぃっ!」 「俺を包む……くぅ……ぱ、白蓮だって熱いぞぉ!」  それから止まることなく水音が部屋中へ響く。  クチュクチュ、ピチャピチャという音、白蓮が鼻から漏らすうめき声がそれに混じり淫 猥さを増し、一刀の興奮を一層高める。  白蓮の熟れ桃を揉みしだくように掌に力を込める。  突撃、後退の繰り返しもより勢いをつける。  そして、互いの肉をぶつけ合う彼らもついに終わりの時を迎える 「う……うあぁ、つ、突き抜ける……ナニかが突き抜けるぅ!」 「お、俺ももう!」  白蓮が首筋を立て、急に動きをとめ全身を引き攣らせた。  次の瞬間、ガクンッガクンッと壊れた玩具のように四肢を、躰を跳ねさせ、股間から透 明な飛沫を噴出した。  そして、押しつぶされそうに成る程締め付けられた一刀の分身から白い液体が一斉射出 された。 「うぁあ! あ、アツい、アツいのがナカに……ながれこんでくりゅう!」 「くぅぅぅ、ぱ、白蓮! ぱいれん!」 「あぁ……はぁ……はぁ、か、かずとぉ、かずとぉぉおお!」  二人は、同時に果てた。  白蓮が気絶したかのようにがくりと躰を倒し、一刀の胸にもたれかかった。 「はぁ、はぁ……くっ、一刀……」 「ふぅ……ん?」 「ありがとな」  そう言って白蓮は未だ桃色の頬をしたまま、はにかんだ。その笑顔は今まで一刀が見て きた中で最高に美しく、そして可愛かった。  一刀は、この笑顔が見られただけでも自分の選択は間違ってなかったのだと思えた。  それからしばらくの間、二人は動くことなく互いの温もりを貪り続けていた。  体力の戻った二人は、城をこっそりと抜け出てちかくの小川の畔へと来ていた。 「意外と綺麗だな。なぁ、一刀」 「そうだな……」  星々の煌めく夜空。そんな中、月がその存在を主張するように爛々と輝いている。  そして、二人の傍を流れている小川の川面にもその光景が映る。それにより、輝きもそ の神秘さも二倍となり幻想的な風景がそこには広がっていた。  そんな中を歩きながら一刀は程よい岩に腰掛ける。 「よっと、この辺で良いかな」 「それじゃ、私もっと」  白蓮も一刀の横へと座りそっとよりそう。まるで、そこが自分の居場所として当然であ るように。  もう、一刀が白蓮のその想いから距離を取る必要はなかった。  だから、一刀はただただ彼女の望むままにさせた。 「なぁ、あとどれいくらいなんだ?」 「さぁ、俺も良くは知らない。でも、もうすぐだよ。そんな気がするんだ……」 「そっか……」  それから、二人はしばらく一言も発しなかった。  時だけが流れているのを小川のせせらぎが随時二人の耳へ届けていた。 「なぁ、一刀……」 「ん? なんだ?」 「袁紹との戦いはどうなったんだ?」 「はは、そう言えば肝心な事を忘れてたな」  何故今まで忘れていたのだろう。いや、それも致し方なかったのかも知れない。一刀は そう思う。白蓮が目を覚ましてからはただ互いのことのみを見ていた、感じていた……そ して、求めていた。  だから、それ以外のことなど忘れていた。  一刀は、そんな愚直なまでに互いを想った自分と白蓮に対する妙な恥ずかしさを消し飛 ばすように咳払いをした。 「そうだな、結果から言えば俺たちの勝ちだ」 「そうか! いや、そうだな……一刀がいたんだ。負ける訳ないよな」 「……そんなことはないさ。みんながいた、そして色々と運が良かっただけだ」  そして、一刀は白蓮にあった出来事を話していく。まるで昔話を語るかのようにゆった りと、そしてわかりやすく。  この際だとばかりに、命の危機に直面したことも含め正直に教えた。  聞いた直後、目を見開き呆然とした白蓮もすぐに、一刀は一刀か……と呆れを込めた微 笑みを浮かべた。 「しかし、私が寝てる間に本当にいろんなことがあったのだな。城に戻ったら詠たちにも 感謝しないとな」 「えぇと、それなんだが……実は、戦いが終結してから数日たってるんだ」 「え?」 「だから、詠たちは先に北平に戻った。袁紹たちのこともあったんでね」 「そ、そうなのか……」  さすがに白蓮も、今度ばかりは目を見開くだけでなく口もポカンと開けていた。 「あぁ、だからここに残ってるのは俺と、後は数人の詠たち以外の将の人たちと易京を護 る兵たちだけだ」 「そうか……なんで一刀は残ったんだ?」 「ん? まぁ、白蓮のことが気にかかったからかな」  一刀は、空に浮かぶ月を眺め、頬をかきながらそう答えた。  だが、横にいる白蓮は不適に笑った。 「ふふ……それは嘘だな」 「どうして?」 「一刀、お前はここで私が気づく前に消えると思っていたんだろ……」  白蓮の指摘に一刀の胸がドクンと一際強く脈打った。 「ばれたか……実を言うと白蓮の言うとおりだ。ただ、白蓮のことを気にしたのも嘘じゃ ないぞ」 「ふふ……そうか、忘れられてるんじゃないかと思ったがそうではなかったんだな」 「当たり前だろ……なぁ、俺も聞いていいかな?」 「あぁ、何だ?」 「白蓮はさ、いつから俺が消えるってこと知ってたんだ?」 「それか。それは、お前と貂蝉が話しているときだ」  その言葉が一刀には信じられなかった。何せこの戦いの始まる前から白蓮が彼の消滅を しっていたということになるのだから。 「本当なのか?」 「あぁ、城から出て行く一刀が見えたから後を追ったんだ……それで、茂みに隠れて様子 を見てた……」 「そうか……」  一刀は自分の迂闊さを呪った。もし、あの時もっと周囲に気を配れていたなら白蓮を苦 しませることもなかった。そのことによる悔恨の感情が一刀の胸の中を渦巻く。 「おい……何、また一人で考え込んでるんだ!」 「あたっ!」  一刀の側頭部に衝撃が走る。何事かと視線を向ければ、そこには、指をピンと張った状 態の白蓮の掌があった。  あぁ、デコピンをされたのかと今更気づく。 「どうせ、私に悪いことをしたとか思ってるんだろ」 「ど、どうしてわかるんだ?」 「あのなぁ、お前がどういう人間か知ってればそれくらいはわかる」  そんなに単純な人間なんだろうか……一刀はそう思わずにはいられなかった。 「というかだな、私は正直、良かったと思う。話を聞いていて」 「良かった?」 「そうさ、だってあの時話を聞いたから今私はお前の隣にいるんだ。そう思えばちょっと の苦しみなんてどうってことないじゃないか!」  そう言って白蓮が嬉しそうに笑う。一刀はその笑顔に救われる思いがした。 「ありがとうな。白蓮」  だから、一刀は感謝の気持ちを込めて白蓮の頭をそっと撫でた。想いが伝わるよう丁寧 に丁寧に。 「もう、クセになってしまったじゃないか……コレ」  そんなことを不満そうにそうに呟いていた白蓮だが、実際に彼女の方を見てみれば瞳を 閉じて気持ちよさそうに一刀の手に頭を預けていた。  一刀の手に伝わる白蓮の温もりが心地よかった。さらさらと指を撫でる彼女の髪がくす ぐったかった。そして、撫でれば撫でるほど愛しく感じた。  そんな想いに押しつぶされないように一刀はあえて元気よくしゃべり出す。 「そうそう、まだ話すことはあるんだ。霞に烏丸兵を預けたこと……覚えてるか?」 「あぁ、あれは驚いた。突然何を言い出すのかと思ったぞ。烏丸族の連中は扱いが難しく て、私よりむしろ一刀の方が仲が良かったくらいだったからな。それをいきなり霞に譲る なんて無茶だと思ったぞ」 「だけど、結果は上手く言っただろ?」 「まぁ、そうだな」 「それで結果……なんだけどさ、最初は霞なら烏丸の人たちとそこそこ相性良いだろうな って思っただけなんだ。でもさ、その結果俺は正解だったんだって今になって思うんだ」 「ほぅ、それはまたどうして?」  そう言うと、白蓮は先を急かすように一刀の腕をキュっと掴んだ。 「霞が、烏丸兵に関しては俺の後任となってくれたからな」 「そう……だな」  一刀が後任という言葉を口にするのに反応するように彼の腕を掴む白蓮の手に力が込も った。 「一刀はすごいな……自分が消えるってわかってるのにそんな平然としてる」 「いや、聞かされた当初は結構辛かったよ……何で俺がって思ったりもしたしな」 「そうなのか、知らなかった……」  いたく感心したように言う白蓮に一刀は苦笑いを浮かべる。 「でも、そんな俺が自分が消滅する恐怖や別れの悲しみというような感情に打ち勝てたの は、白蓮やみんながいたからなんだ」  「私たち?」 「そう、思ったんだ。俺にはまだ護るべき人たちがいる。俺という存在がこの世界にいた という証を受け取ってくれる人たちがいるってね」 「成る程、そうだな」  白蓮が髪飾りを外し手に乗せ愛しそうにじっと見つめる。  あぁ、それも自分がいた証だな。そう思うと一刀もその髪飾りが一層愛おしく見えた。 「ところでさ、袁紹たちのことなんだけど」 「あぁ、捕らえたんだってな」 「そうなんだ。それでさ、まあ一応捕虜というかまぁ、行動を通常よりも制限した客将に 近い扱いでもしてあげてくれないか?」 「うぅん、それはなんだも寛大すぎないか?」 「それは、わかるんだけどな……多分、顔良に補佐として誰か付ければ、ある程度残りの 二人の制御は可能だと思うぞ」  あくまで、以前の世界で一刀の元にいたはわわでちょっとおませな軍師や覇王に仕え続 けた姉妹の妹、鈴々と似たもの同士でよく喧嘩していた少女から聞いた情報だけど、と心 の内で付け加える。  この世界では人の性格が以前の世界と比べ、著しく異なるなんてことはなかった。だか らきっと大丈夫だと一刀は密かに三人を信じていた。 「待遇の良い捕虜ってことになるのか……まぁ、正直詠たちも近い部分はあったわけだし な……できるだけ善処はしてみるよ」 「ありがとう。そして頼むぞ白蓮」 「まったく、とんだ置き土産だな……馬鹿」 「ごもっとも。いやホント面目ない」   一刀は苦笑いを浮かべながら頭を掻いた。 「しかし、一刀は本当に色んなモノを残していくんだな」 「確かに、改めて考えると結構あるな」  あまりに多い形見となりそうだと二人して笑った。 「だけど、一刀にはたくさん助けられたな」 「そんなことないさ……俺はただ知識を提供したり動けるときに動いただけだ」 「いや、霞たちを私と引き合わせてくれただろ」 「あれは……まぁ、色々と俺に有利に事が働いただけさ」 「それに、詠が作ったあの兵器だってお前の知識が元に作られたじゃないか」 「はは、勘違いしちゃダメだ。凄いのは詠だよ。俺じゃない」  冷静に自分の話をした一刀に食い下がるように賞賛する白蓮。それはどこか彼女が躍起 になっているようにも感じられ一刀は思わず笑みを漏らした。 「そうかぁ? 私はやっぱり一刀も凄いと思うがな……」 「俺はさ、確かに色々知識はある。でも、それは殆どが断片的なものなんだ」  そう、一刀は以前の世界で自軍の軍師や強敵たちに様々なことを学んだ。だが、その全 てを習得できたわけではなかった。  ましてや、知識に関しては殆ど軍師の受け売りで情報もちぐはぐとしたものだった。 「だから、いわば俺は要所要所が破けたり文字がかすれてる文献みたいなものなんだ。そ れを解読し、書かれている正解を導き出した詠、俺が来た頃で言えば星だな……そんな人 たちの方が俺よりも何倍も凄いと俺は思う」 「なるほどな……そうか、そうだったのか」  やけに感心したように何度も頷く白蓮に一刀は疑問を抱く。 「どうした?」 「いや、一刀はきっと自分の持つ凄さというものに気づくことはないのだろうと思ってな ……ふふ」 「?」 「いや、わからなくていいんだ……それでこそ一刀なのだろうからな」  意味深に笑う白蓮に一刀はますます唸るのだった。  そんな楽しい一時にも終わりが訪れる――。 「どうやら、時間みたいだ……」 「そうか……消えるんだな?」 「あぁ、そうみたいだ」  そう言って、一刀は自分の躰を見る。徐々にその姿が薄くなり、もうすぐ砂漠に浮かぶ 蜃気楼のようになってしまいそうだった。 「なぁ、白蓮」 「ん?」 「最後はさ……手、つながないか?」 「そうだな。そうしよう」  二人はどちらからともなく手を握り合った。  そして、自然と瞼を下ろし意識をその一転へ集中させた。  瞳を閉じ暗闇と化した世界の中、一刀は自らの手の中に収まっている白蓮の小さく柔ら かい、そして暖かな掌だけを感じていた。  北平、その城内の中庭で月と詠は空に浮かぶ満月を眺めていた。 「今日は月が綺麗だね。詠ちゃん」 「そうね……なんだか洛陽にいたころを思い出すわね」  二人で感慨にふける。と、そこへ新たな人物が近づく。 「そら少し不吉ちゃうか?」 「霞、どうしたのよ?」  折角の気分を壊され不満顔で詠は尋ねた。 「いや、今回の戦いで烏丸のみんなもかなり被害あったからな……その確認や」 「そっか、今は霞の部下だものね」 「そういうことや。まぁ、所謂一刀からウチへの贈り物っちゅうやつやな」  嬉しそうに笑う霞を見て詠は何だか悔しく感じたので張り合うように思い当たることを 語る。 「そう言えば、ボクもあいつの持ってる知識を少しだけ教えて貰ったわね。ま、中途半端 で役に立つのか分からないものだけど」 「つまり、それが詠への贈り物っちゅうわけか」 「そうね、それで月は――」 「この侍女専用服であるメイド服だね」  そう答えた月の方を見ると彼女は着ている服を大事そうに撫でていた。 「む? 何をしているのだ?」 「おっ、華雄!」 「あら、あんたも何か仕事でもあったの?」 「まぁな、少し前まで袁紹たちの見張りをしてた」 「そ、そらご愁傷様……」 「ようやく、後退の時間になってな……」  そう答える華雄はずいぶんと憔悴し、顔がげっそりとしていた。  そこで詠は思い出す。  袁紹たちを捕虜としたのは良いものの白蓮の判断が得られず、取りあえず北平へ移送す るということになったことを。 「…………ウチもあれは勘弁やな」  華雄に哀れみの視線を向けていた霞がボソリとは呟く。  詠はそれも仕方の無いことだと、心の中で霞に同意した。  結局袁紹たちのことは、一刀の判断を仰ごうということになった。  だが、その際に彼が三人の処遇を甘めにしたために袁紹たちが、いや正確には袁紹と文 醜が調子に乗ってわがままを言って彼女たちの世話や監視を担当する者たちを振り回し困 惑させ続け疲弊させていたのだ。  そんな中、唯一の救いだったのは顔良が抑えようと涙ぐましい努力をしたことだろう。  まぁそれも焼け石に水だけど、と思考締めくくり詠はため息を吐いた 「ご苦労様です」 「有り難きお言葉です。月様!」  にこりと優しく微笑んでねぎらいの言葉を掛ける月に華雄が直立不動で返答する。 「あんたも相変わらずね……」 「ふん、これが私の忠誠の表し方なのだからしかたないだろ。で、三人は一体何を話して いたのだ?」 「あぁ、それはな一刀から何を贈られたかってことや」 「ほぅ……一刀からの贈り物か……」 「どや? 華雄にも何かあるんか?」 「私か、私は……遠い頃に無くした忘れ物……だな」 「は? 何それ?」  華雄の言葉の意味が分からず詠が聞き返す。  すると、華雄は慌てたように両手を振り、間違えたと言って改めて答えた。 「い、いや、そうだ! 服だ服!」 「へぇ、あんたが服ねぇ……」 「わ、私はいらんといったのだぞ。だが、あいつが似合うからと無理矢理だな……」 「はいはい、ごちそうさん」  華雄の弁明に、あー熱いと顔を仰ぐ霞。 「し、霞!」 「………………?」 「みんな揃ってどうしたのです?」 「ねねちゃんに、恋さん」  気がつけば、呂布と陳宮の二人が並んで歩いてくるところだった。 「…………楽しそう」 「一体、何をそんなに楽しそうに話しているのですか?」 「あぁ、二人も知っとるやろ? 一刀のこと」 「あぁ、あいつですか。知ってるのです」 「…………」  呂布も同意であるというようにこくりと頷く。 「まぁ、その一刀からそれぞれ何を貰ったかって話や」 「なんなのですか? よくわからないのです」 「…………」 「二人は、まぁ最近一刀のとこに来たから何も貰ってへんからな……わからんやろな」 「…………そんなことない」  霞が、苦笑混じりの言葉に否定の返事を呂布が返したため全員の視線が彼女の方へと注 がれる。そして、代表するように詠が驚きを残したまま呂布へ質問する。 「ふぅん、じゃあ恋は何を貰ったの?」 「…………みんな」 「え?」 「……またみんなと一緒にいられる」  その呂布の一言は詠の心に深く深く染みこんだ。  確かにそうだ。詠はそう思った。  何を貰ったと言えば少なくともここにいる面々は皆、争乱に巻き込まれることでその命 を危機にさらしてきた。  さらに呂布や陳宮とは、その争乱の中で離ればなれとなった。だが、現在は洛陽にいた 頃と同じ顔ぶれが揃っている。それもまた、一刀が自分の躰を、そして命すらもかけて走 り回ることで手に入れてくれたのだ。  詠は、それを今になって痛感させられた。  見れば、他の面々も先程までと比べ幾分か表情を暗くしている。そんな顔たちを見なが ら、きっと自分もそうなのだろう、とも詠は思った。 「そうね……確かに、それがボクたちにとっては一番のもらい物よね」 「そうだな……」 「うん、こうやっていられるのもご主人様のおかげ……なんだよね」 「なら、帰ってきたら何かしてやらんとな」 「別にねねは感謝なんか――」 「…………」  霞の言葉に対してむすっとした顔で文句をたれる陳宮を呂布がじっと見つめる。 「う、うぅ……わ、わかってるのです。冗談です恋殿」 「…………ならいい」 「しっかし、さっきの月や詠やないけど、こうやっていると何だか洛陽で満月を見たのを 思い出す気がするわ」  霞の言葉に対して誰も何も言わない。ただ、誰しもが空に浮かぶ満月を見上げていた。  我が物顔で空に居座るまん丸の月、それを城の中でも比較的近くに見える……と思われ る鐘桜の屋根の上。  そこで、一人座り込んで空に杯を掲げる人影があった。 「ふむ、今宵の月はなかなか見応えのあるものだな」  杯の延長線上に見えるまるまるとした月へ穏やかな気持ちのこもった視線を送る。 「しかし、唯一残念でならないのは……」  そこで区切ると杯を口元へと運ぶ。  そして、 「主がおらぬことだな……美酒、美麗な月、よき御仁。三つが揃ってこそ呑み応えがある というものだからな……」  杯の中になみなみと注がれた酒には口をつけず。そのまま屋根へと置く。  そして、空いた両手を首の後ろへと移す。 「…………今宵はこれを見るだけとしておくか」  首に掛かっていた装飾品。紐が通された指輪を人差し指と親指で摘む。  そして、先程の杯と同じように月へと弓矢の照準を合わせるように位置をぴたりと揃え た。その指輪の中心から月が見える。 「あれだけ雄大な満月も指輪越しに見れば小さいモノだな……ふふ」  先程まで見応えがあると思っていた月も今はそうは見えない。それよりも月の光によっ て光る指輪のほうが星の視線を釘付けにしていた。 「主…………私は心の底から美味だと思える酒が呑みたくてしょうがありません。ですの で、お早く戻ってくだされ」  未だ光り輝く指輪へそう告げると、既に注いでしまっていた一杯を飲み干した。 「ふむ、やはり味気ないものだな」 「何だか味気ないわね……」  手に持った急須を机へ置くと、人和が一言そう呟く。  同意見なのか、天和も首を傾げる。 「うぅん、いつものと何が違うんだろ?」 「変よね……いつもは公演終わりのお茶が美味しくてしょうがないのに今日は普通……」  地和が急須の中のお茶をのぞき込みながらそうぼやく。 「それは、きっとご主人様がいないからじゃないかしらん?」  貂蝉の申し出に三人ともハッと顔を驚きに染める。 「……そっか、いつもは一刀さんが用意してくれてたんだっけ」 「そういえば、こっちに来てからはそうだったわね」 「あーあ、一刀がいればなぁ……」  地和は、そこで思い出した。公演中の自分が、どこかやり甲斐がないと感じていたこと を……。いや、やり甲斐はあった。  観客がいて自分を見て盛り上がっている。それだけで地和はやり甲斐を感じていた。だ が、今回の公演は何か違和感を覚えていた。  何か足りない、そんな気持ちが地和の中に留まり続けていた。  そして、それは天和、人和も同じであるように感じた。地和が見た限りではこちらに来 てから行ってきた公演の中では比較的、全力を出し切れていないように見えた。  地和がそう考え込み唸っていると、貂蝉が可笑しそうに笑う。 「あらあら……」 「何よ! その笑みは!」 「んふふ、いえね、ご主人様がいないだけでここまで影響があると思わなくて」 「べ、別にそんなことないわよ」 「そうです。確かに付き人が一人いないと私たちの苦労が増えるけどそんなのたいして問 題じゃありませんから」  地和の反論に続くように人和が眼鏡の縁を手で押さえながら冷静にそう述べた。 「二人はそうなの? わたしはやっぱり、一刀さんがいた方が楽しいかもって思ったけど なぁ~」  間延びした声で天和にそう言われ地和は思わず口ごもる。人和も同じだった。 「あーあぁ、なんか話をしてたら一刀さんの顔が見たくなっちゃったなぁ」 「……大丈夫よ。旅の商人の話じゃ戦は勝利だったみたいだし、きっと北平に帰ればあえ るわ」 「そうそう、そしたらまたこき使ってやればいいんだから!」  悪態をつきながらも地和は思う。やはり自分も一刀に会いたいのだと。公孫賛軍に引き 取られてからは一刀がずっと世話をしてくれていたのだ。  それが急にいなくなったから寂しく思ったのだろう。  地和がそう結論づけたとき、ふと貂蝉が視界に入った。 「…………ご主人様」  何故か切なそうな顔をしている。それが地和には少し気になった。 「さぁさぁ、一息ついたんだし後片付けしよぉ!」 「そうね……ほら、ちぃ姉さんも」 「え? あぁ、そうね……」  後片付けが開始することになったため、地和はその考えを頭から打ち消した。  四人がいなくなった控え室は沈黙に包まれていた。  沈黙に包まれてから一体どれほどの時間が経っただろうか。  長い時間か、それともほんの僅かな間なのか、それすら白蓮にはわからない。  それでも白蓮は瞳を閉じたままだった。何度か開けようかと思ったが瞼がまるで重りで もぶら下げているかのごとく動かなかった。 (…………怖いな)  だが、それは自分の深層心理が働いている。白蓮はなんとなくそれを理解していた。  未だ掌には彼の温もりを感じる。だが、目を開ければ再び白蓮の中の世界、そして時が 動きだしその温もりが消えてしまう……そんな気がした。  それが白蓮の奥底で恐怖となって燻っていた。 (とはいえ、いつまでもこうしてはいられないんだ)  そう自らを叱咤し瞳を開こうとする。が、やはり上がらない。 (さっきからこの繰り返しだな……私は)  白蓮は思う。自分はこんなにも臆病だったのかと。誰かを失うことをこれほどまでに恐 れていたのかと。  そして、北郷一刀を愛していたのかと……。 (えぇい、もう何十回も繰り返してるんだ! いい加減動け私!)  今一度自分を叱り飛ばし、妙な痙攣をさせながら瞼を上げた。  そして、隣へとその潤む瞳を移した。 「――ッ!」  白蓮の瞳から一筋の滴が流れていく。それは彼女の顔から滴り落ち、月の光を吸収し美 しく輝きながら大地へと溶けていった。