恋姫式『孫子の兵法』始計篇  一.兵は国の大事なり。  一刀たち蜀軍は、異民族との対決を終え国へと戻るため進軍していた。その最中のことである、星が一刀に声を掛けてきたのは――。 「主、戦というものは非常に厳しい物事ですな」 「どうしたんだ急に?」  突然の星の言葉に疑問を抱きながら聞き返す一刀。よく見れば星の顔色が優れない。 「実は……」 「あ、あぁ……一体どうしたんだ」  ゴクリと唾を飲み込み、次の言葉を待つように星の口元へと意識を集中する一刀。 「……今回の戦の準備のため、街からメンマが……メンマが消えてしまったのです!」 「へ?」 「今回の遠征では非常に多くの兵糧が必要となり、街へも手が伸び民たちからも多く集めることとなったのは覚えておりますな」 「あぁ、確かにあれは街への影響も大きかっただろうな」 「えぇ、そもそも原因は主が大食らい組の参加を認めた事にあるのですぞ」 「うっ……そ、それは」  そう、今回の遠征に際して閣議を行った際、翠、鈴々という割と、いや滅茶苦茶食べる二人が参加したいと言って聞かなかった。  それは、五湖との対決を終え、彼らの侵攻が収まり平和な日々を送っていたため腕を震う機会も無くなっていたとある日のことゆえ仕方がなかった。  それでも、周りは反対をした。それもそのはず、この年は不作が続き食糧がまったく無かったのだ。だからこそ、大食らいを連れて行くのは兵糧の無駄と判断した。  だが、一刀と桃香は何も考えず二人を連れて行くことを決めてしまった。  その結果、街から比較的長持ちしやすいメンマをはじめとした食物を集めることとなった。そして……メンマが街から消えた……。 「良いですかな、主……そもそもですな……」 「うひぃぃぃぃぃい!」  それから、国に戻るまで一刀は星から延々と説教される羽目となった。 (解説)  今回は、最も被害を受けたのは一刀でした。しかし、一歩間違えれば国全体の食糧を大いに消費してしまう、軍資金として徴収される税の増加、若い衆が徴兵等で戦へ参加し何人かの命が失われてしまう、など国に負担がかかることとなります。  また、もし戦いに破れるようなことがあれば国は敵に支配され、国民の生死も敵に左右されることとなるわけです。  以上のことから、『戦をする際には、細心の注意、検討を怠らないこと』が重要となるわけです。  二.五つの基本問題  それは曹操軍が袁紹軍との対決を迎える時のこと、曹孟徳、彼女は自ら抱える軍師達に意見を尋ねる。 「私たちと麗羽の軍、果たしてどちらに勝ち目があるのかしら?」  そう言って、華琳は桂花へと視線を向ける。 「はい、華琳さまと袁紹、二人の違いはどちらに大儀が備わっているかによりますが、まず、間違いなく、華琳さまにあります。今回は調子に乗った袁紹が私たちに攻め寄せてきた訳です。そして、さすがに民衆たちもそれについてはわかっていることでしょう。その点から、まず一つこちらに勝算が見えます」 「そう、では、次は稟、貴方述べてみなさい」 「はっ、そうですね……天候に関してはどちらに味方するとも言えぬ状態かと、ですが、我らと袁紹軍との間には広大な黄河があります。そして、向こうが抑えたいと思っている場所はこちらが他を先に抑えることで渡し場である白馬津しかありません。そこへ機を持って攻め込みます。さすればこれもまた我らの勝算となることでしょう」 「ふふ、さすがね。しっかりと勝算がある部分にも触れるなんて」  そう言って華琳は僅かに笑みを浮かべる。その姿に稟がふらつく。もう少しで赤い噴水状態になることだろう。そんな稟から目をそらすと華琳は三人目へと視線を向ける。 「ぐぅ〜」  風は寝ていた。もう既に慣れっこである華琳は冷静に声を掛ける。 「風、起きなさい」 「おぉっ、どうやら風の番になったようですね〜」 「えぇ、貴方の思うことをいってみなさい。」 「ではでは、そうですねぇ〜向こうとこちらを比べますと袁紹軍は二枚看板である文醜、顔良頼りなところがありますね〜それに対し、こちらは勇猛果敢な夏侯惇将軍、季衣ちゃん、そして、お兄さん率いる北郷隊の三人娘の皆さんが出るわけですから戦力としてはこちらが優勢と見て間違いないでしょう。そして、こちらは軍師も充実してますからね〜むこうの参謀であり軍師も務める顔良将軍一人に負けることはないかと」 「そうね、では最後は何かわかるかしら? 春蘭」 「わ、わたしですか?」  急に話を振られ慌てふためく春蘭。 「え、えぇとですねぇ……その、いや分かるんですよ華琳さま。す、すぐ言いますから」  そう言いながらも春蘭はうんうん唸る。そんな彼女を見てられなくなったのか秋蘭が口を開く。 「姉者、今までの話の流れでわからぬか?」 「う〜ん、ここまで出かかっているんだ……だが、出て来ぬのだ」 「はぁ、仕方がないわね秋蘭、代わりに答えなさい」 「はっ、では……最後の項目は『法』ですね。華琳さま」 「そうね、春蘭にも分かるように説明なさい」  そう言って春蘭を見る華琳。春蘭はもうすっかり縮こまっている。 「つまり、我らと袁紹、どちらがよりきっちりと軍律や軍制など軍をしかと管理できているかどうかによるものです……そして、その点に関しては我ら、いえ、華琳さまの方が出来ていると思われます故、我らに勝算ありでしょう」  そう言い終わると、華琳は満足そうに頷く。同じように頷いている春蘭が口を開く。 「そうか、確かにそうだな華琳さまは攻めるのがお好きだからな! うむ、キツさで言えば袁紹ごとき相手にもならんな!」  大声でそう言うと、春蘭は愉快そうに笑い始める。彼女は気づいていない、場の空気が凍っていることに、一刀が哀れみを込めた視線を送っていることに。彼女が敬愛して止まない主が妙な気を放っていることに。そして、 「春蘭、後で私の部屋へ来なさい」 「へ? 華琳さま?」  春蘭は、よく分からず?を浮かべている。しかし、彼女に詳細を説明するものはいなかった。この後、彼女がどうなったかはご想像にお任せします。 (解説)  さて、この項目で言いたかったことはわかりましたでしょうか?  ちなみに、軍師三人と秋蘭が言ったこと、これが五つの基本問題であるわけです。一文字ずつで表しますと、『道』『天』『地』『将』『法』の五つとなります。  『道』はいわば軍が戦うにいたり民衆の同意を得ているかどうかになります。いわば大儀がしかとそこに存在するかどうかといったところです。これにより、国が一体化できるというわけです。  『天』、これはまさに天の利ということです。季節、天気、気候などがどちらに有利であるかということですね。ちなみに、赤壁で火計を使用した周瑜もこの天の利を読み成功したと言われています。  次に『地』です。これは、天の利と相対する地の利です。これは地の利や地理的条件を元にどちらが有利か判断すると言ったことです。  四つ目『将』、これは両軍の将の質はどちらが高いかと言うことになります。コレに関しては別の項目で触れることとなります。  最後は『法』ですが、これは本文でも述べたとおり軍律、軍制をしっかりと決めていること、そして緩ませないことです。ここがきちっとしているかで軍全体が引き締まり、まとまり具合が変わると言われています。  三.七つの基本条件  呉を奪還せんと、袁術軍に挑むことを決めた孫策軍、そして五つの基本問題による比較を行った。そして次に移ろうとしたとき、冥琳が一刀の方を向く。 「北郷、さらに比較すべきことがあるが何か分かるか?」 「え、えぇと……七つの基本条件だよな?」  恐る恐ると言った様子で冥琳の質問に答える一刀。 「そうですよぉ〜よく覚えてましたねぇ。教えた甲斐がありましたぁ〜」 「そ、そうか? まぁ、穏の教え方が良かったんだよ」  のほほんとした様子の穏に褒められ照れる一刀。 「こほん、それよりお前なりの考えを述べてみよ」 「あぁ、まず治政に関してだけどこれは間違いなく雪蓮の側がしっかりしてる。袁術側は張勲がなかなか良く動いているようだがこっちは何せ冥琳が良く動いてるんだ劣るはずはないさ」 「ふふ、なかなか嬉しいことを言ってくれるではないか」 「ぶ〜、ぶ〜私だって頑張ってるのに〜」  一刀の言葉に微笑を浮かべる冥琳と口の中が不満で一杯なのかと思うほどに頬を膨らませている雪蓮。二人の対照的な反応に一刀は思わず吹き出しそうになる。しかし、微笑を浮かべていた冥琳がすぐに表情を引き締めたのを見て一刀も真剣になる。 「では、次はなんだ?」 「つ、次はさっきもあったように将の有能さだったかな。えぇと、みんなしっかりと情況を読める人たちである。そして、約束を破ることなどそうそうない。三つ目にそれぞれの隊の兵をみんな思いやっている。特に思春の水兵隊への思いは並外れたものだろう」 「うむ、こやつと隊の者たちとは長い付き合いじゃからのう。わしらとはまた違うじゃろうな」 「……そうなのだろうか? 私は至って普通だと思っているのだが……よもや、私を煽てて取り入ろうとでもしているのか貴様!」 「ちょ、ご、誤解だってば。俺はただ純粋に思ったことを言っただけだって」 「ふん、まぁいい。もし、私の警戒を緩め蓮華様に何かしようと思っているなら諦めることだ。私が絶対にさせん」 「し、思春!」  思わぬ思春の銭儼に蓮華は多少ながら戸惑いの声を上げる。その様子に苦笑を漏らすもののすぐに一刀へと注意を向ける冥琳。 「さて、脱線してしまったが続きを聞こうか」 「うん、えぇと、智、信、仁ときたから次は勇か」  その言葉に、ただ頷く冥琳。 「そうだな、これも冥琳がいる以上ほぼ大丈夫だろう」 「ほう、その心は?」 「いつも周りの抑え役だから突っ込むだけが勇でないと知っている。かな?」 「くく……それは言えている。本当に誰かさんたちにはい、つ、も、苦労させられているからなぁ」  そう言いながら、冥琳は雪蓮と祭をへと視線を向けた。見られた二人も心当たりがあるのだろう。思わず口ごもってしまっている。 「はは、まぁ、それはそれとして、次だ。これが良き将としての最後の要素だな。きっちりと締めるところは締めてるってとこだな。これはみんな出来てるから問題ないだろう」  そう言いながら一刀は、冥琳が雪蓮や祭ですらもきちっと叱っているのを思い出す。 「うむ、その通りだな。さて、将の要素はそれとして、比較の続きといこう」 「将については今言ったとおり、そして次である天の利、地の利についても先程の通りだ。で、法令の徹底。これは雪蓮と街を回ったときに思い知らされたよ」  そう言って、一刀は思いだす。雪蓮がとある子悪党を切り捨てたことを。 「で、次が軍の精強さだ。これは孫呉復活の夢のため常に鍛えてきたんだ大丈夫だろう。そして動揺に兵卒の訓練度も問題なしだろう。賞罰についても厳格だし、特に問題は見つからないと思うよ。以上、七つの基本条件に基づく俺の考えだ」  そう言って、冥琳を見やる一刀。彼女はそれに頷いて返した。 「よしっ! これで準備万端みたいだいし行くわよ」  その声に場にいる諸将はおうと答えその気概を表した。 (解説)  この項目では、五つの基本問題と合わせて検討をするのに用いる七つの基本条件について触れました。この項目で述べられているもので注意すべき点は戦だけでなく政についても触れているという点です。孫子は、政治のあり方も戦の戦の優劣、もっと言えば勝敗にすら影響を与える者であると言っているわけです。  あと、将たる資格についても触れました。これは、「智、信、仁、勇、厳」の五項目となりましたが一刀の言葉と見比べながら説明します。情況をしっかりと把握できる――これが『智』、約束事を守ることができる――『信』、そして、兵を思いやることができるこれが――『仁』です。一刀が周瑜に言った抑え役をいつもしているというのは――『勇』です。最後にあった賞罰の厳格さが『厳』です。  これらを簡潔に述べると、戦における勝算の見積もり、情況判断力といったいわゆる先見の力のある者――この軍で言う周瑜、陸遜、呂蒙、微妙に一刀などが『智』を備えているとなります。次に仁と厳の二つをバランス良く部下に用いれてこそ、将としてふさわしいと言えるわけです。また、何人もの部下を持つ者は約束事は守らなくてはならないというのが『信』です。  『勇』ですが、これはただ一概に勇気ということではありません。ここでいうのは情況によって、退くべき時に退けるいわゆる後退する勇です。ですから、一刀も周瑜ならばと言ったわけです。  四、仕える条件。  それは、まだ荀文若が曹操につく前、袁紹の元へと訪問した頃のお話。 「あら、貴方は確か……荀ケさんとおっしゃいましか?」 「えぇ……そうです。こちらで仕えさせて頂きたく存じます」  普段のなりを潜め、あくまで礼節を持って接する桂花。 「おーほっほっほ、そうですわね……では、試験を行いましょう」 「試験……ですか?」  愉快そうに告げる麗羽に桂花は訝った様子で聞き返す。 「えぇ、貴方の才の程を見させていただきますわ」 「……わかりました」  そして、桂花は案内のまま一隊の前へと連れて行かれた。 「それで、何をすればよろしいのですか?」 「この者たちを練兵していただきますわ」 「ふぅん、こほん、この兵たちは一体?」 「この者たちは、最近入ったばかりの兵卒ですわ。貴方の力でどれほどまでに練兵が行えるのかを見させて頂きますわ」 「わかりました」  そう告げると、桂花は兵たちを並べ、自らの号令に従うよう説明する。そして二人の兵を隊長として任命した。  そして、指示を出し動くか見るがどうももたつく。そこで桂花は、 「しょうがないわね……それじゃあ、すこし号令を簡略化します」  そう告げて、簡略化した号令の説明をする。そして、もう一度行う。しかし、またもたつく。今回は、混乱するようなものではない。むしろ、単純故に戸惑うはずがない。 「とすれば、こいつらか……」  そう呟くと桂花は苦々しげに兵たちを見る。どう見ても兵たちからはやる気が感じられない。 「……隊長二人、こちらへ」  そう言って、桂花は二人を呼び寄せる。そして麗羽と共に来ていた兵に命じる。 「この二人を処断してください」  そう告げると麗羽が慌てて桂花に声を掛けてくる。 「ちょ、ちょっとお待ちなさいな! その二人は名家を出た者たち、そう易々と首を落とすことなど許しませんわ!」 「……私に練兵をせよと言ったのは貴方……何故止めるのですか?」 「何故ですって? この国ではわたくしの言葉が絶対だからですわ」 「……はぁ」  麗羽の返答を聞き、桂花はため息をつく。すると、今までとは違った顔つきになった。 「もういいわ……あんたのとこで働く気は失せたわ」 「な、なんですのその態度は!」 「それじゃあ……さよなら」  そして、桂花は袁紹の元を立ち去り早々の元へと向かい彼女から『我が子房が来た』と言われ重宝されることとなるのである。 (解説)  ここで述べたやり取り、まぁ分かる人は孫武と闔廬のことをもじったのはわかるでしょう。まぁ、詳細は飛ばしますが。  そして、ここで重要なのは袁紹が荀ケの考えを一方的に却下したことです。軍師がはかりごとを思いついても、それを主一人の判断で却下するようであるなら、その軍師には勝利を呼ぶことなどできない。故に軍師はその主に仕えるようなことはしない。また、その逆も然りということです。このことからわかるのは無印の恋姫†無双における一刀は仕える条件をもつ主だったわけです。  五.基本と応用 「……参りました」  そう言うと、亞莎はがっくりと肩を落とす。 「ふ、また私の勝ちだな。亞莎」  不適な笑みを浮かべたまま冥琳が手を伸ばす。そして、 「これで、お終いだ」  駒を動かして最後の詰めを行った。そして、盤上の戦いに決着がついた。  これまで五戦して亞莎の戦績は五敗だった。そして今回で六戦六敗となった。  その夜、彼女はふと、そのことを一刀との勉強会で思い出し漏らした。 「へぇ、やっぱり勝てないのか」 「はい、やっぱり私にはあの人の域までたどり着くことなど出来ないんでしょうか……学んだ兵法をも用いたんですが……足下にも及ばないんです」  そう言うと亞莎は再び肩を落としてしまった。 「うーん、きっと冥琳に勝てないのはまだ勉強を始めたばかりだからじゃないかな」 「え?」 「ほら、『基本に基づいて勝算を掴んだとしても勢を用いるべし』だろ」?」 「そっか……私にはまだ勢を用いれていないってことなんですね。もっと精進しなきゃ」 「そうだな。まぁ、俺に言えた事じゃないけど」  そう言って一刀は笑いかける。それを見た亞莎は顔を朱に染め、恥ずかしそうに俯くのだった。 (解説)  今回出てきたのは『勢』ですが、これはいわば情況を把握し臨機応変に対処する。ということです。  ここまでに挙げた基本問題、基本条件を元に勝算を判断してもそこから臨機応変な考えを用いることができなければ完全に勝利を収められるとは言い切れないのである。というのがここで言いたいことなわけです。  6.兵は詭道なり  それは、兵の合同訓練の一環として模擬戦を行うことになった時のこと。 「さて、どうしたものか……」  一刀は迷っていた。それはこの模擬戦のこと。 「やはり、心配ですか。朱里も雛里もおりませんし……」 「いや、それに関しては詠がいるからな。大丈夫だろう」  愛紗の質問に対してそう答えながら一刀は、隊の調整を行っている詠を見やる。 「それじゃあ、一体何をそんなに考え込んで居られるのですか?」 「ん? いや、どう攻めたものかってね」 「それならば、私と星で蹴散らしてみせます故ご心配には及びません」  胸を叩きながら自信ありげにそう告げる愛紗の言葉を聞いても一刀は考え込んでいる。 「まぁ、それがいいとは思うけど向こうも控える軍師が油断ならないからな」 「それなら、いい手があるわよ」  一刀の言葉にいつの間にかやってきていた詠が答える。 「本当か?」 「えぇ、それはね――」  結果として、この戦の結果は一刀たちの勝利だった。  詠が挙げた提案は、愛紗、星の両名に渡す兵数を出来うる限りまで減らすということ。 それでいて旗だけは多く翳したまま横から敵の本陣へと向かう。そうやって二人の隊が敵の気を引きつけている間に一刀が正面より大軍を率いて襲撃。それに残りの戦力を投入したのを見計らい自陣に待機しているように見せていた詠の部隊が敵本陣後方より速攻を繰り出すというものだった。 (解説)  今回の話について、まず模擬戦に参加した四名のうち、双方から戦力と見なされていたのは関羽、趙雲の二名でした。  そんな彼女たちをおとりとしてのみ使用、さらに最も後方にいると思われた大将である一刀の大軍による攻撃という二重の奇策で相手を混乱させ勝ちをもぎ取るのが詠の狙いだったわけなのです。  つまり、この話から伝えたいことは、戦闘力のある関羽、趙雲両名による奇襲攻撃を狙っていると見せかけて実際には敵を引き連れながら飄々と逃げ回るというのが狙いであったように攻撃をすると見せて退く、また逆に退くと見せかけて攻撃するといったようなことにより相手の意表をつき、手薄となった部分をつくこと、それが勝利の秘訣であるということです。  最終的に言いたいことは、これはこうと思い込まず、臨機応変に事を運用するのを心がけるべきであるということでした。  7.勝利の見通し  その日、通称三バカトリオこと麗羽、斗詩、猪々子の三人は賊退治に向かっていた。 「あそこの砦を乗っ取り好き勝手に暴れているんですのね」 「はい、ただ日に日にその数は増える一方だそうです」 「ふーん、まぁ闘りがいはあるってことっすね。麗羽さま」 「そうですわね……さっさと済ませてしまいましょう」 「ちょ、ちょっと待ってください。さっきから色々と考えてみてるんですが私たちが勝てるとは……」 「さぁ、行きますわよ!」 「おー!」  斗詩の言葉などまったく聞かずに、麗羽と猪々子の二人は敵の潜む砦に向かって駆けだしていた。 「ちょ、ちょっと二人とも〜」  慌てて、追いかける斗詩。  この後、三人はなんとか退治したものの、砦を破壊し、三人ともズタボロの姿で帰ったのだった。 (解説)  今回の話で言いたかったこと、それは『勝利の見通しがたたないこと、それは勝算がないからである』ということです。顔良が勝利の見通しができず、どうしたものかと考えてる内に二人が戦いをはじめ、結果はさんざんでした。もし、一歩間違えれば……結果は言わずもがなです。ちなみに、このことと関係しているのが謀攻篇にあります。  始計篇は以上となります。