──真√── 真・恋姫†無双 外史 北郷新勢力ルート:人和拠点 **  昨日より降り始めた雪によって順延となり、不意にぽっかりと空いた、ある公演の合間の一時。  人和はかねてより気になっていた事を訊いてみた。 「天和姉さんは『みんなの恋人』。ちぃ姉さんは『みんなの妹』。  ……どうして私だけ『とっても可愛い』なのかしら?」  それを訊かれた地和は、いぶかしげな表情を浮かべる。 「何でちぃに訊くのよ?」 「だってこれ考えたの、ちぃ姉さんじゃない」  人和に言われ、「あれ〜?そうだったかなぁ……?」と、本気で悩む地和。  とその時、それまで雑誌を読みふけっていた天和が口を開いた。 「違うよ〜。人和ちゃんのを考えたのは、私だよ〜」 「ああ!そうそう!  わたしが姉さんとわたしのを決めた時に、『お姉ちゃんも決めたいなぁ』って言ってたから、 人和のはお姉ちゃんに考えてもらったのよね」  それを聴いて、悩んでいた地和も思い出したようだ。  人和は「それじゃあ」と前置きし、 「どうして私だけ?」  と、改めて天和に訊いてみる。 「………………何となく?  ほらほら!人和ちゃんって可愛いし〜……うぅ」」  言った瞬間、がっくりと脱力した人和と地和を見て、慌てて付け足す様に言う天和。  この様子を見ると、本当に『何となく』決めたようである。 「で、でもどうして急に?」 「……それこそ『何となく』よ。……まぁ、気になってた事が判ったからもういいけど」  人和としてはその言葉の通りであったので、ここで話を終わらせるつもりだったのだが…… 「じゃあじゃあ、お姉ちゃんと交換する?  私が『とっても可愛い〜』で、人和ちゃんが『みんなの恋人〜』にするの!」  天和のその言葉に、実際にそれをやってみた時を想像してしまった。  と、その時、 「え!?」 「人和ちゃん!?」  天和と地和が、驚いた声を上げる。  人和は最初、二人が何に驚いているのか判らないと言うようにキョトンとしていたが、 違和感を感じた自分の頬を触り、その手が濡れているのを理解した瞬間── まるで、ギリギリまで溜められ均衡を保っていた水が、その最後の一滴で溢れかえる様に、 止め処なく零れ、流れていった。  声を殺して嗚咽を漏らす人和へ、天和と地和はどう声をかけたものかと迷っていたが、 「……ごめ……なさい、ごめんなさい……天和姉さん……私は……『みんな』の恋人にはなれない……」  嗚咽の中に混ざったそれを聴いて、二人は思い出した。  普段は表に出していないが、人和には心に秘めた想いがある事を。  その想い人が誰であるかは知っている。……逢いたくても、逢いに行けない相手。  普段は気丈にも……おくびにも出さないので忘れてしまっていた。  けれど人和の心の内では、こんなことで感極まってしまう程に、大きな想いに育っていたのか。 「人和ちゃん……」 「れんほー……」  天和と地和は、彼女の名を優しく呼びながら、そっと抱きしめていた。  それは、大切な妹の苦しみも何もかも、全て受け止めてあげたいと言う想い。  それは、大切な妹が辛さや悲しみから、抜け出せますようにとの願い。  そんな、大好きな姉達のぬくもりに暫しの間包まれ、言葉にならぬ想いを感じ、 「……ありがとう、姉さん達。……私は大丈夫だから」  人和は、ここぞと言う時に、しっかりと『姉』をしてくれる二人へ、柔らかな笑みを浮かべるのだった。  それでも── (……たい……逢いたいよ…………一刀……)  深々と降り積もる雪の様に、想いは、募る。