沙和君、どこ行ってもうたんや 5年前に入隊した沙和君は、全然仕事をしません。 履歴書には、うちには勿体ないような戦歴が書かれていたので採用しましたが、 ふたを開けてみたら、 休憩に出たらいつまでたっても詰め所に戻ってこないし、 お願いした報告書を一ヶ月かかっても書き上げることができないし、 警邏任務を任せてもいい加減で魏王から大目玉を食らうし、 全く困ったもんなんです。 でもね、暢気過ぎる彼女を首にしてしまったら、 次に雇ってくれるところはないんじゃないかと思って、我慢しています。 そんな彼女ですが、警備はまるっきりだめでも、 実は新兵訓練を任せたらピカイチってことに最近気づきました。 根気よく使っていれば、長所は見つかるもんです。 このように、うちはエリートの集まりではありません。 城下の商人から、「この子、北郷さんとこで世話したってくれへんやろか」と 頼まれて仕方なく採用したり、公募で採用しても沙和君のような人しかきません。 それでも、それぞれの長所をうまく活かしてやれば、 一軍の将にだって負けないすごいことができたりします。 許昌にあるこんな小さな警備隊に、 魏王さんなどの案件が もちこまれるのは、その証拠です。 今回も、すごい人は望んでいません。 沙和君より仕事ができれば、御の字です。 でも、期待はしています。 あなたに、うちの警備隊の将来がかかっているんですから。 隊長 北郷一刀