〜たんぽぽ珈琲〜 その2 翠と蒲公英にたんぽぽ珈琲は好評だった。 こうなると多くの人に飲んでもらいたくなが人情というもの、 翌朝の朝議でみんなに振舞うことにした。 「天の世界の飲物で珈琲と言うものなんだ、  俺の手作りで恐縮だけど、飲んでみてよ。」 蒲公英は何時もなら朝議で眠そうにしているのだが、 今日は満面の笑みをうかべつつ美味しそうに珈琲をのんでいた。 隣では翠が少し不機嫌そうにしているのは見なかった事にしよう。 「おいしー。 ねぇねぇご主人さまコレたくさんあるの?」 「ご自分で作られたとおっしゃっていましたが、そのような暇があるなら政務を・・・。んーコレは美味い。」 「ふむ、これはなかなか・・・。さすがは主、天の御使いの名は伊達ではありませんな。」 「おいしい、これは甘味に合いそうだね雛里ちゃん。」 「ご主人様のお手製・・・ そっ そうだね朱里ちゃん。」 「まぁまぁ、ご主人様がこのような物を作れるとは知りませんでしたは。後で璃々にも・・・」 「お館様は豆ですのぉ、お茶にしては・・・ちと色が濃いというか黒い?のぅ」 「ご主人様これおいしいですぅ・・・。」 「フンッ アンタがつくった割りに美味しいじゃない。」 「むー もっと甘いものがのみたいのだー。」 「そーなのです。もっと甘いものがいいのです。 香りはいいですが・・・。」 「・・・・・・・・・コクコク。」鈴々達に同意しているらしい。 「桃香様の淹れてくださったお茶とは比べるべくもないが、そこそこ美味いではないか。」 焔耶の言葉を聴いてタンポポの口元がニンマリと歪む。 「焔耶、それ”たんぽぽ珈琲”っていうんだよ。  いいでしょー。ご主人様がそう名付けてくれたんだ。」全員の視線が蒲公英に集中する。 ちょ!蒲公英! もとからその名前なんだってば・・・。 「ご主人さまは次は翠なんたらっていう飲物をつくってるんだよな?。」 全員の視線は言わずもがな、一瞬で翠に移る。 ちょー!翠? そんなものねーから。っていうか約束してませんよね? 『ご主人様!?。』 全員でハモッて一斉に睨まなくても・・・・。 「いや、あの、そのね、その飲物は天の世界でも元から”たんぽぽ珈琲”っていうんだ、  だから特別に蒲公英にお茶を作ってあげたわけでもなんでもなく・・・ね?。」 「ふーん そうなんだ、私には翠茶とかつくってくれないんだ。  蒲公英は可愛いもんな、どうせアタシなんか・・・。」 「翠ーッ! いや翠は可愛いから。ね。 あーなにかあったかなー。  もうちょっとで思い出せそうかも。今度思い出したら何か作ってあげるから・・・ねっ?。」 ほ、ホントか?と微笑む翠を見て何とかなったと安心していると。  ニヤリと皮肉めいた邪悪な笑みを星が浮かべた。 この顔を見た後ロクな事が起こった例がない。 ・・・・・・・・・しまった!北郷一刀 一生の不覚! 「ほーという事は主?、私には星という名の付く・・・。そうですな酒かメンマの様な物でも作ってもらいましょうかな?。」 てめーワザとだろ。この後、直ぐに起こるであろう混乱を楽しむつもりのようだ・・・。 数瞬の沈黙のあと、それは雪崩が起こるかのごとく・・・ 「ふむ、ではワシも酒でよいですぞ お館様。なぁに分は弁えておりますゆえ順番は最後のあたりでかまいませぬ。」 「私は桃香だからやっぱり桃の何かなのかな?ご主人様。」 「ご主人さま璃々にも作っていただけるのでしょうか?。親子ですので同じ種類の物がうれしいのですけど・・・。」 「鈴々は美味しくておーきくておなかいーっぱいになるものがいいのだ。」 「わ・・・私はご主人様のご負担にならないのであれば・・・。その何でもかまいません・・・ですが出来れば女らしい物が・・・。」 「へぅ。 私もあの、 お時間が余った時にでもよいので作っていただけるなら・・・。」 「このチンコ! あんた月のはキチンと作りなさいよ! わっ・・・私のは余った時間でも、最後でもいいから!」 「恋殿の名を冠する物は通り一遍のものでは駄目なのです! 私のは恋殿によりそう様な物にしやがれです!。」 「ほんご〜 私のも作ってくれるんだよな? な? 白蓮でだめなら白馬とか公孫とかでもいいから ほんご〜。」  上の部分で忘れられていた白蓮も加わっている。(作者に忘れられるとは恐るべし!白蓮は俺の嫁!) 「おっーほほほほっほほほ。 北郷さん?名族袁家にふさわしい華麗で優雅で美しい物にするんですのよ。」 「兄貴ー 私は強そうで豪快なヤツがいいな!。」 「スミマセンスミマセン(麗羽、猪々子を退場させながら。)、北郷さん出来れば私もおねがいします。」 ・・・なんかさっきより人数が増えたような・・・。 ん? 雛里と朱里が何も言ってきてないな、と皆に詰め寄られるなか視線をめぐらすと 顎に手をあて、頬に指をあてながら考える”伏龍と鳳雛”の姿があった。 「これはいいかもしれませんね・・・。ご主人さまこの”こうひぃ”と言うのは何からできているんですか?」 「ああ、それはタンポポの根っこを乾燥させて炒ったものなんだ。お金かからないしいいだろ?。」 「あの・・・他にもこういう元手の余りいらない、天の世界の美味しい物が作れる余地はあるんですか?」 「雛里ちゃんお金は多少かかっても大丈夫なんじゃないかな。」 「そうだね朱里ちゃん。天の世界の食べ物だもの・・・。多少高くても売れるかもしれません。」 「んー全員分名前にちなんでというのは流石に無理かもしれないけど、いくつか宛てはあるよ。」 いくつか候補を頭のなかで挙げながら一寸引っかかった事を聞いてみる。 「っていうか売るつもりなの? コレ売れるのかな?。というか何で皆そんなに拘るんだ?。」 一斉に溜息や諦めの声が口々にあがる。 「これだからなぁ・・・。」 「まぁーご主人さまだしね。」 「ほんとにコイツは・・・。」 「馬鹿チンコなのです。」 「ご主人さま、このたんぽぽ珈琲はこれからずっと先までのこるよね?」 にこにこしながら蒲公英が説明してくれる。 「俺のいた時代にも飲まれてたんだ、2000年近くはすくなくとも伝わるんじゃないかな?。」 「そうしたら、ずっと私の名は後世につたわっていくんだよね?」 「んーそうだけど、皆食べ物や飲物に名付けなくても立派な人として名が残ってるよ?。」 「そうだけど、ご主人様のいた歴史とこの世界の歴史は違うんだよね?  それに歴史を知らない人にも、学のない人にも、この蒲公英珈琲って名はつたわるんだよね?。」 「なによりご主人様が名付けてくれたっていうのが重要なんだけどね。」 太陽のような晴れやかな笑みをうかべ言い切ってくれた。 そうか、名か。 女性ばかりだから何となくそういう風に考えることがなかったが・・・。 この人たちは英雄なのだ。名を上げる為に命をはり、名を汚されようものなら命を賭して戦う。 「そうか、皆の名は俺の提案する物につけるまでもなく残るとおもうけど、  皆の為になるなら頑張ろうかな・・・。皆が望んでくれならだけどね。」 そのあとの朝議は臨時の首脳会議へと発展。 特産物開発工房の建設と、北郷一刀の政務負担軽減をするための様々な取り決めが次々と纏められていった。 試験的販売もする事となり、国中にたんぽぽの根を集めるよう命令がなされた。 翌日より、おれの政務は無くなった。 桃香、朱里、雛里、愛紗達の決済でほぼ全ての事柄が決定されるように取り決められたからだ。 戦争などの最重要事項のみ、俺と桃香の決済が必要ということになったらしい。 曰く、ご主人様は名を冠する物についての様々な事をお考えください。 との事だった。 日々の政務は面倒だったがいきなり無くなって、 代わりに先の見えない事柄に着手するというのはなんだか妙な気分だった。 ノルマも無く監視もなく・・・雲をつかむような話だ・・・。 いかんいかん。 つい怠けそうになってしまう。 未だ真っ白な紙に向い「ああでもない。こうでもない。」とトレードマーク? この時代だとなんていうんだろう?商標?印かな?の案を書き連ねる。 俺の大事な女の子達の名を冠するものだ、その目印になるようなものでないといけない。 二つと並ぶ物の無いような意味も持たせたい。あと俺の意匠も何かいれたいな。 俺が彼女たちと釣り合うとはおもわないが、俺と彼女達の絆のような物だとおもうし・・・。 コレでどうだろう? うむ!なかなかどうして! 書きあがった商標を腕を組んで うんうん と眺めていると、 初日の成果を確かめに桃香、愛紗、朱里、雛里がやってきた。 「これをさ、出来た物の印っていうか、商標?にしようとおもうんだ。どうかな?」 「おおっ!これは。」 「うんうん いいんじゃないかな!。」 「はわわ 素晴らしいです。」 「あわわ 素敵です。」 紙には大きくこうかかれていた。 恋姫†無双 〜end〜 「ところでご主人さま。この可愛らしい 犬? 猫?の絵はなんなのですか?」 可愛らしさにあてられた愛紗が頬をそめながら聞いてくる。 「ああ、それね。それはポンデライオンっていうんだ。可愛いだろう?」 「ぽんでらいおん? 動物なのですか?麒麟や鳳凰の類ですか?」 「たんぽぽの事を羅馬?ではダンデライオンっていうんだ。  ライオンっていうのは獅子のことでこれはうーん。  タンポポと獅子をあわせて可愛くしたような感じかな?珈琲の包み紙にでも書こうかと・・・。」 「また蒲公英ですか・・・。」 「やっぱりご主人さま蒲公英ちゃんがいいんだー。」 「あわわ、ご主人様はちいさい方が好きって事なのかもだよ朱里ちゃん。」 「はわわ、でも私達よりもう少し大きいほうがいいのかも知れないよ雛里ちゃん。」 蒲公英はぽんでらいおんの話を伝え聞き得意満面、まさに破顔一笑、 幸せが有頂天になったような状態が、第二段 翠珈琲(翠茶)が出来るまで続いた。 蒲公英は印章をポンデライオンマークに改め、旗印も変えようとしたが流石に反対された。 蒲公英の戦装束の胴巻きには以後ポンデライオンの意匠がほどこされたそうな。