とある日の夕暮時・・・ 「キャハハ ワーイ」「キャハハハ」町に響くのはのは子供たちの元気な笑い声。 「おーい、ガキどもそんなに急ぐと危ねぇーぞーハッハッハ!」 「あんた、またこんなに酒ばっかり飲んでぇ、全く平和ボケもいいとこだな!ハッハッハ」 「あぁ?天下太平、平和ボケ!大いに結構じゃあねぇ〜か〜っとくりゃ!ヒック」 「そりゃまたまったく、違げぇねー」 「「「だぁーはっはっはっは!!」」」 民は皆、笑顔を携えそれぞれに日々を忙しくも幸せに暮らしていた。 それは、曹操が覇道が成り、天下三分とすることで大陸は穏やかな時を迎え、 街も民も皆が歴史上類をみないほどの活気と落ち着きを見せている。 しかし、その落ち着きに見合わぬ、土煙が遠方から迫りくるのを物見の兵が目敏く発見した。 「五里遠方に行軍を確認!急ぎ、軍師様達に御報告を…」 兵士はその場を他の物に任せると、急ぎ物見台を下りて行き場内へと駈けて行った。 また、同刻。 「急げ!大船団がもう間近に迫っているぞ!」 別に設けられた物見台からも見兵が一人駈けていった。 その様子を屋根の上を定位置と決め、さも愉快そうにそれを眺めている槍を持った蝶仮面の者がいた。 程無くして二人の兵は重鎮達の集まる城内の一室。 「それでは、第四番隊の見張りの方から報告をお願いしましゅ!」 「ハッ!申し上げます。此処より五里ほど先に行軍。曹の旗を筆頭に惇将軍、淵将軍の物と見られる旗その他、ほぼ全軍が迫っている模様!」 「申し上げます。此方側には孫呉の旗を掲げた大船団が接近しております。船の数、規模を見まして、此方もほぼ全軍と見て間違いないかと・・・。」 矢継ぎ早に、息を切らせた兵たちのこの報告を受けた軍師達はと言うと・・・ 「はわわwどうしましょう〜予定より早く来てしまいました〜」 「あわわwまだ、全然、準備が整っていませ〜ん〜」 ・・・・・・・慌てていた。更には 「う〜、こんな時に星はどうしたのだ〜?」 「まったくだ!あたし達だけがこうして準備なんて不公平じゃね〜かぁ?あぁ〜!誰か手の空いてるヤツは居ないのかぁ?」 「此処にいるぞ〜!!!!って、お姉様も鈴々も文句言ってないで、手伝ってよ〜蒲公英もう、クタクタだよ〜」 う〜と唸る鈴々と、がお〜と吠える姉に挟まれ、蒲公英も泣きそうな表情で走り回っていた。 一方、 「ん?どこかで呼ばれたような?まぁ、大方この仮面の美しさについての評判であろう」 本人は相も変わらず屋根の上、今度は丁度つまみのメンマに箸をつけようとしていた。 またこちらでは、 「わぁ〜大〜変〜!ねぇねぇ〜私も何か手伝おうか〜?ねぇねぇ?」 たわわな胸を弾ませ、パタパタと走り回る太守様はお世辞にも役に立ってはいな模様、 更に、 「いえ!桃香様のお手を煩わす訳には参りません!」 「あらあら、焔耶ちゃんは桃香様のために一生懸命ねぇ〜ゴクゴク」 「わっはっはあ!それなら、どれ、ワシらは一つ邪魔にならんように退けておるかのぅ!グビグビっ」 愛しのエリーよろしく桃香様にご執心のBJ子に、それを肴に一杯やっている色欲魔乳達もやはり 役立ってはいなかった。 あちらでは、 「も〜あんた達!サボってないで働きなさいよ!・・・まったく、何でボク達までこんな事・・・」 「詠ちゃん。そんなこと言って霞さん達に会えるのうれしくないの?ウルウル」 「月〜////そっそんなのk」 「・・・恋、嬉しい。」 「恋殿が嬉しいのなら、ねねも嬉しいのですぞ〜!」 「アンタ達!!いいからちょっとはてつだいなさいよね!!まったくセキとの方がまだ役に立つわ!」 恥ずかしさの為かガーと吠える軍師に、逃げながらに器用にも肉まんを頬張る恋、 ピョンピョン跳ねながら応援する可愛い生物、こちらの組も現状は、まともに働いているのは 元君主様ただ一人という惨状・・・ そして、 「おぉ〜ほっほっほっほ!何だか知りませんけど、皆さんお忙しそうですわね?もし、"是非に"と言うのならば、 このわたくし"袁本初"の力をお貸しして差し上げてもよろしくってよ?おぉ〜っほっほっほっほ〜!」 「おお〜さすが姫!あたい達もバーンと行こうぜ!なぁ斗詩!」 「も〜麗羽さまも文ちゃんも、いい加減に諦めてくださいよ〜白蓮さんにお願いだから手伝わないでくれって 泣きながら頼まれたばっかりじゃないですか〜」 「麗羽ぁ〜頼む!私だけじゃもう無理だ!手伝わないでくれ!この通りだ!」 麗羽達が手伝いを買って出た部署からの苦情の処理を一手に押し付けられた白蓮は異常なまでに疲れ果ていた。 最早倒れるのも時間の問題だろう。 そして、『・・・プツン』 何かの切れる音がした。 「嗚呼!お前たちは皆、緊張感が足り〜ん!!桃香もです!これから我らが地に平和祈念式典の賓客を迎えようと言うのに!!」 ついに堪忍袋の緒が切れ、軍神関羽のカミナリが絶賛大解放で落雷中、そこはもう正しくカオス"戦場の如し"であった。 そう、この日。年に一度、三国の諸侯が一堂に会し、あの戦乱の世が終結を見たあの日を祝い、 平和への思いを忘れんと誓いを確認し合うために集る平和祈念式典のその当日であった。 ともあれ、三国が交代で主催を行うこの式典も、今年で四年目を迎え、主催国も蜀・魏・呉と一周し、 今年の主催は蜀の受け持ちであり、この蜀の地はもう、準備に追われお祭りムードに民も兵も皆が、 はわわwあわわwの大忙しであった。 しばらくして、 「劉備様、両国の代表の者が参りましたので、謁見の間にお越しくださいませ。」 そう文官が賓客の到着を知らせに来るや否や、 「ホント〜?ありがと。じゃあ、さっそく行くね!!」 「ちょっ桃香様!お待ちください!」 何もやらせてもらえずに隅でイジケていた桃香は目を輝かせ、飛ぶ矢ように謁見の間へ駆けていった。 続いて、飛び出していった桃香の後を愛紗も慌てて追って行った。 その後ろ姿を見て、はぁ〜と深い溜息をつくのは残されていった文官たちばかりであった。 愛紗が少し遅れて謁見の間に入ると、一年ぶりに聞く凛々しい王たちの声と姿がそこに有るはずだったのだが・・・ 「ようこそ〜雪蓮さ〜ん!(ぎゅぅぅぅぅぅ)」 「ちょっと〜やめなさいよ!っくつかないでってば、離れなさいよ!あっ!関羽、早くこの子をどうにかしてよ〜」 「いいじゃないですか〜久し振りで嬉し〜んですから〜(ぎゅぅぅぅぅぅ)」 そこには、必死の抵抗を試みる呉の王と、満面の笑みで抱きつく大徳の王の姿、 「とっ桃香様!!!何をしていらっしゃるんですか!!!!!!!!」 余りの光景に関羽が慌て、頭を抱えているところに、少し遅れてきた夏侯淵がほほ笑んでいた。 「やれやれ、今年もいつも通りの様ですね。華琳様の代理に、挨拶に訪ねて見れば、またこの様な。」 「かっ夏侯淵殿、よくぞいらした。全く桃香様ときたら、お恥ずかしい、そちらは皆変わりないか?」 「ああ。お陰様で、ようやく学校をつくるところまで漕ぎつけた、皆が忙しくしている。」 と、ここで、やっとの事で桃香を引き剥がした雪蓮が気になった事を口にした。 「ちょっと、華琳の代理ってのはどうゆうこと?」 「・・・・それは。」 一瞬、顔を俯かせ暗い表情となり言いよどむ秋蘭。 「………華琳様は、今日この地で、訪れなくてはならない場所が一つだけあるのです・・・何を置いても…」 どこまでも寂しげにポツリと絞り出すように紡いだ秋蘭の言葉を聞き、 「そっか・・・この日は、あの子に、いいえ魏の皆にとって、そういう日でもあるのよね・・・」 「華琳さん・・・」 「曹操殿・・・」 「・・・・・・・。」 耐えがたい沈黙が訪れた・・・のち、『パン!』と雪蓮が手を打った、 「暗い話はそれまで、さぁ、お酒お酒〜♪」 ここに居る皆が、雪蓮のこの無理やりの明るさに救われ、そして何より秋蘭の心はその気遣いに救われていた。 (嗚呼、私としたことが孫呉の王にまで気を遣わせてしまったか) 心の中でつぶやき、雪蓮に彼女だけに分かるように静かに礼を述べ、雪蓮もまた秋蘭にだけ分かるように優しく微笑んだ。 それは大切な人を亡くした者だけが分かち合える何かだったのかもしれない。 そして雪蓮に続き、今度は秋蘭がつづけた 「それと、言い忘れたが我が主から言付かってきたことがあった。『私に完成してない会場でぱーてぃーをする趣味はないわ、 準備が出来てから呼んでちょうだい、どうせまだ準備は出来てないのでしょう?』とのことだ。」 それを聞いた皆は驚き、そして、 「ぷっふふ、はははは! もう最高ね、流石は曹孟徳と言ったところかしら?・・・さぁ!準備が整うまでは、 何故かまだまだ時間もかかるようだし、私たちはゆっくり城下でも回って来ようかしら♪」 「あはははhh。華琳さんはなんでもお見通しなんだねぇ〜↓↓」 「フフ、それでは我々もしばらくゆっくりとさせて頂くとしよう。」 「ぐぬぅ。申し訳ない。いや、そうして頂けるとありがたい。準備が出来しだい使いの者を出す。」 そして、蜀の会場設備の猶予は守られ、この場はいったん解散となったのだった。