「まったく冥琳の奴め……」  闇に溶けた影が、うんざりとした声で呟いた。  表情も声に合わせて顰めっ面になっていることだろう。しかし、辺りは暗く、何人もそれを確かめることは出来ない。 「天子への献上物だから何だというのだ。呉国の為、身命を賭して戦っているのは我らぞ。物の役にも立たない人間に呉れてやる必要など何処にある」  聞く者が居れば飛び上がって驚きそうなことを平気で口にする。だが呉国においてはそれを言う権利が、この老……妙齢の女性には確かにあった。 「しかし、天子への献上品と言うだけあって旨かったのう」  うっとりとした声で影が呟く。しかし、 「だと言うのにあの若僧め……。もう一口、二口良さそうなものを……」  その声がすぐに険を含んだものへと置き換わる。  当人が傍に居たなら「そう仰って最後まで呑み干されるでしょう、あなたは」とこれまた顰めっ面で返したに違いない。  それが頭に過ぎったのか、影は思考を断ち切るように辺りを見回した。 「うむぅ、この辺だと思うたのだが……」  一条の光が僅かに辺りを照らす土倉の中、小麦色をした豊かな肉置きが浮かび上がる。  影はそれを誇るでもなく、何気ない様子で白くて長い髪を梳いた。 「ふむ」  二、三、辺りを睥睨して当たりを付けたのか、影は土倉のさらに奥へと分け入っていく。 「ん、これは……」  土倉の奥。いかにも怪しい年代物の壺が一つ、殊更隠すように置かれていた。 「赤い紙に包まれた小僧の頭ほどの壺。堅殿が言っておったのは、これか……?」  武断と豪快を以て知られるいつもの様子からは想像も付かないほど丁寧に持ち上げる。 「む……」  何が入っているのか、見た目以上の重量を感じて、影が呻く。  振ってみるとちゃぷちゃぷと期待を煽る音が聞こえてきた。 「どれどれ」  紙を破り捨て、壺の蓋を開くと、ぷうんと強く酒精を感じる匂いが辺りに漂った。 「どうやらこれらしいの」  にんまりと笑みを浮かべた影は重ねて壺の中身を確かめんと鼻を近づける。  それだけで酒の濃度がかなり高いことが判る。 「火酒のたぐいかの。呉原産では無さそうだが……。ま、どちらにせよ中々の一品であることに違いはなさそうじゃ」  蓋をいったん閉め、土倉を後にする影。  何もこんなむさ苦しいところで呑む必要はない。今は桃が美しい季節。咲き誇る花を愛でながら一献などとはいかにも風流ではないか。  程良く開けた場所を見つけ、妙齢の女性は腰をおろした。 「さてと……」  手持ちの杯になみなみと注ぎ、口を付けようとする。  その瞬間、小うるさい後輩の顔が浮かんだ。 (呉の大都督ともあろう御方が、土倉から酒をくすねるなど、何事ですかっ)  などと言って来そうな気がする。が、そのままこくこくと呑み干すことにした。 (お前が悪いのじゃぞ、冥琳。もう少し呑ませさえすれば、儂もこんなことをせずに済んだのじゃ)  それは完璧な責任転嫁だったが、女性の中では折り合いが付いているらしい。 「ぷはぁっ」  一気に呑み干し、口に残った酒を舌でなめ回して改めて味を確認しようとすると、臓腑の焼ける感覚した。 「これ、これじゃよ」  味も確かに重要だが、酒は臓腑を焼くためのものであって、それが弱いのであれば、いくら旨くても酒ではない。  そんな持論を反芻しつつ、壺へと手を伸ばす。 「どれ、もう一杯……む、なんじゃ?」  身体の奥から何かが湧き出るような感覚に、女性が身を震わせる。 「ふわふわと浮くような……。む、くっ? こ、これは?」  そして、ドクン、と大きな音が耳朶を打ったかと思った瞬間、 「ぐ、ぅうっ?」  心臓に強烈な痛みが走った。それこそ矢で貫かれたかのような──。  よもやと思ったのか、女性が胸に手をやるが、もちろんそこには矢など無い。 「く、むぅ……な、何じゃというのじゃ……」  堪らず体を折る。無意識のうちに胸を強く押さえてみるが、痛みは一向に収まりそうにない。 「がぁ、はっ、はっ、はぁっ」  頭に過ぎったのは、毒、というひと文字。 (何とも間抜けではないか。呉の重鎮としてどんな人物にさえ一目置かれる儂がこんなつまらないことで命を落としそうになっているとは)  しかしそんな思考さえも痛みが奪っていく。  女性は、その場で蹲り、のたうち回るが、痛みは加速する一方だ。 「け、ん、どの……」  そして、その言葉を最後に女性はぴくりともしなくなった。  雲が流れ、月光が女性を照らした。一級の美人といっていい容貌が浮かび上がる。汗で髪が額にはりついていたが、苦悶からは解放されていて、その表情からはどこか安らぎさえ感じることが出来た。  月がもう一度雲に隠れ、それが見えなくなる。その瞬間──、変動が始まった。  こうして──。  呉を襲う、ちょっとした騒動の幕が開いた。  ◇ ◇ ◇  珍しく早朝に目が覚めた。しかもどうしたことか別段眠くもない。 「こんな朝早くに起きてもな……。どうしようか」  今日は祭さんと稽古をつけてもらうのと、亞莎に勉学を教えてもらうのの2本立て。 「う〜ん。先に祭さんだから少し体を動かしておこうかな」  そうと決まればもたもたしている理由もない 「さっさと着替えよう」  思い切りパンツをずり下げ、一気に着替えモードに移行する。  続いて上を脱ぎ、真っ裸になった自分の体を改めて確認すると、思っていた以上に筋肉が付き始めていることに気づいた。 「結構、激しい特訓になってるからな……」  槍の基本は払いにあるとかで、一回の特訓でそれだけをえんえんさせられるということもあった。そういった鍛錬の賜物、ということだろう。 「しかし、意外と嬉しかったり……」  むん、と体に力を入れてみる。するとさらに筋肉が体に浮かび上がる。 「俺もまだまだ捨てたもんじゃないな」  どこまで筋肉が出てくるのかとさらに力を込めた瞬間──、  ドゴンッというもの凄い音とともに扉が開いた。 「い、一刀、た、大変よ……」  嵐のように現れたのは、血相を変えた蓮華、だったのだが、 「…………」  一転、凪いだ風のように硬直する。 「…………」  ボディービルダーごっこはまだしも、朝というのがマズかった。  ……男性諸氏には判るだろうが、アレが一際目立たんと隆々勃起してしまっていてですね。 「………………き」  しかも何故か蓮華の視線がソレにターゲット・ロックオン。何でそんなに、と思ってしまうほどガン見されてしまっており、 「きゃああああああああああああああああああ!? 何で裸なの? 変態!! 乙女に何てモノ見せつけるのよっ!!」  言葉よりも早く鉄拳が飛んでくる。 「いきなり入ってきてそれ!? っていうか見てたの蓮華じゃ、ぶべらっ!?」  ◇ 「ごめんなさい」  冷静さを取り戻した蓮華の第一声はそれだった。 「いや、別にいいんだけどさ」  しこたま殴られて軽く変形してしまった顔をなでると、蓮華がさらに恐縮した様子を見せた。 「本当にごめんなさい。毎晩アレでずんずん後ろから突かれてるのに、あんなに慌てる必要は無かったと思う……」 「え、そこ?」  そういう問題じゃないような、と首を傾げてみるが、蓮華はむしろ当然というように胸を張った。 「それはそうよ。ある意味見慣れているもの。他の男性のモノならすごく嫌だけど、あなたのなら……」  顔を真っ赤にして俯く蓮華。「あなたのならだいじょうぶ」と再度もごもごと口にする。普段キリっとしていて、果断な性格をした蓮華が照れている様子は何だかすごく可愛かった。 「そ、そういうことなら」  言われてみると、悪い気はしない。相手は蓮華だし、殴られたのも「ま、いいや」という気持ちになった。 「で、どうしたの? こんな朝早くに。何か大変、とか言ってたけど」 「そ、そうなの。あのね、一刀、驚かずに聞いて」 「いや、蓮華こそ落ち着いて?」  またもや平静を失い、俺の胸ぐらをつかみながら躙り寄る蓮華を制しようと声を掛ける。 「その、祭が……」 「祭さんが?」 「祭が子どもで、子どもが祭なのよ!!」 「……はい?」  蓮華が口にした言葉を反芻してみるが、何を言わんとしているのかサッパリ判らない。  俺の表情を見て、敏感に察したんだろう、蓮華は次の行動を起こしていた。 「直接見てもらった方が早いわ」 「お、おいっ!?」  俺の手をつかんで、走り出す蓮華。  部屋を出て、回廊を抜け、中庭を駆け抜ける。その先にあるのは呉国の中枢を担う朝殿だ。蓮華は一直線にそこへと向かっていく。  朝議の間に入ってみると、中央に軽い人だかりが出来ていた。 「ちょっとごめんなさい。通してくれるかしら?」  蓮華が諸将に声を掛け、震源への道を開いていく。そして、騒動の中央に居たのは難しそうな表情を浮かべる雪蓮と──、  これまたむすっとした表情の、しかし思わず見惚れてしまいそうな美少女だった。  ◇ 「お、来たわね」  雪蓮が俺と蓮華に気づいて、少し相好を崩す。 「うん。取りあえず来てみたけど、何なのこれ?」  騒ぎの原因が何か判ってない俺としては、状況把握が最優先事項なので、質問を直接雪蓮にぶつけてみる。 「何、って蓮華から聞いてないの」  雪蓮の声に、蓮華が恥ずかしそうに俯いた。 「ちょっと一悶着あってね。何か騒ぎがあったふうなことは聞いたんだけど、詳細まではまだなんだ」 「ふぅん……。ま、何でもいいわ。単純な話だから」  ほら、と付け加えて、雪蓮が顎で少女を指し示す。  促されるまま、俺も視線を移してみると、いかにも「ふん」と言いそうな顔で少女が視線を返してきた。  じっくり見ても、先ほどの第一印象は揺るがない。  強い意志を感じさせる切れ長の瞳、そしてそれとうまく調和した口と鼻。そのバランスが少女の美しさを作り出していた。  しかもそれだけではない。幼いのにどこか妖艶なのだ。口元の黒子と浅黒い肌、そして紫がかった白い髪。それらから匂い立つ、と言っていいのかどうか。どちらにしても、すごく可愛い女の子であることに違いはなかった。 「……って、あれ? 君、どこかで逢ったことない?」  ナンパみたいな切り出しになってしまったけど、本当にどこかで見たことがあるような……。 「何を阿呆なことを言っておるんじゃ、お主は」  独特の言い回し、そしてこの容姿……。  ばらばらだったピースが頭の中で一枚の絵として浮かび上がる。 「君、ひょっとして、祭さんの……」  そうじゃそうじゃとばかり少女が頷こうとして、 「娘さん?」  怒りの表情に塗り変わる。立ち上がって、つかつかと俺の方に歩み寄る少女。 「儂に、娘など……」  ローキック、と表現するのが烏滸がましいほどに神速で振り下ろされる御足。 「おらんわああああああああああああっ!!」  俺は、その一閃で無惨なまでに地へ伏すこととなった。  ◇ 「祭さん本人?」  痛みをこらえながら聞き返す。 「そうじゃ」  どこからどう見てもそうじゃろうが、と付け加えて憤然とする祭さん。 「いや、いきなり何十歳も若返ったんじゃ判らないよ」 「ほう……?」  ギラリと目を光らせる祭さん。 「つまりなんじゃ、五歳なら判ったというのか、お主は。十歳ならどうなのじゃ、十五までは大丈夫なのかの? ん、どうなのじゃ?」  何十歳の部分が勘に触ったらしい。  小さくなってしまったからか、襟首ごと俺を引き寄せて、にらめ付けてくる祭さん。 「ほら、祭の気持ちもわかるけど、そこまで」  雪蓮が間に入り、俺を祭さんを引きはがす。 「そもそも何故そんなことになっているのですか……」  冥琳が改めて祭さんを眺めて呆れたように呟く。 「冥琳、貴様がそれを言うかっ」 「私が? 何をしたというのです?」  本当に覚えがないのだろう、いつもの確信的で、そしてトゲのある語気ではなく、沈思しながら本当にそうか探っているような声だった。 「か〜〜ぁっ、これじゃから頭でしか物を考えない奴は困るのじゃ」  そういって、これまでの一連の流れを振り返る祭さん。  それを聞いた皆の反応は、 「…………それって、祭が悪いんじゃないの?」(雪蓮談) 「私も、祭が悪いように感じるけれど……」(蓮華談) 「シャオも〜」(小蓮談) 「…………そもそも主家の土倉を漁るなどと」(思春談) 「あの、その、私も、祭さまが……」(明命談) 「相変わらず祭さまはごうよ……お酒がお好きなんですね〜」(穏談) 「祭さま……」(亞莎談) 「な、何じゃ何じゃ、皆で儂を責め立ておって、楽しく呑んでいた酒を冥琳に奪われ、仕方なく他の酒を求めさまようた挙げ句がこの様じゃというのに……」  うるり、と目に涙をためる祭さん。  その様子は、いつものちょっとずうずうしい祭さんではなく、皆に苛められて困ってしまった可愛い女の子に見えなくもないわけであり……。 (泣かれると、ちょっと可哀想に思えるな……)  しかし、そんなことは斟酌しない強者が、幽鬼のようにゆらりと前面に出る。 「め、冥琳……」  その様子に、皆がぎょっとなる。しかし、一番驚いているのは、その圧力を一身に受ける祭さんだろう。 「一瞬本当に自身の行いを省みたのですが、そういうことですか。いや、私自身のことなどどうでも良い。先君が残した聖遺物を勝手に持ち出した挙げ句、呑んでしまったなどと、いかに宿将といえど不届き千万。これはたっぷりとお仕置きをして差し上げないといけないようですね?」  馬責めが良いか、いや水責めか、面白くないな、いっそのこと蟲責めというのもアリか……、と怖いことを呟く冥琳から脱兎のごとく逃げだそうとする祭さんだったが、一足遅かった。 「おや、どこへ行こうとされているのですか。祭殿の御用はこちらですぞ?」 「くっ、は、離せ冥琳、儂をどうするつもりじゃっ!!」  は〜な〜せ〜、という幼い声もむなしく、ずるずると祭さんはひきずられていった。 「冥琳……。余りやりすぎないようにね……」  ぽつりと呟く雪蓮の声が、皆の気持ちを代弁していた。  ◇ ◇ ◇ 「祭さん、どうだった?」  行政府からとぼとぼと出てくる少女に声を掛ける。 「どうだった、じゃと……?」  がばっと顔を上げて怒りを迸らせる祭さん。 「どうもこうもあるか、あの馬鹿冥琳め。当分禁酒せよとぬかしよった」 「は……?」 「給金もらったら呑むに決まってるじゃろと伝えたら、当分現物支給にさせていただきますから、などと……あの大たわけ……」 「罰則は無かったの? 百叩きとか、鞭打ちとか、あるいは降格とか、流刑とか……」 「あるわけないじゃろ」  ふん、と鼻を鳴らし、ずいぶんと薄くなってしまった胸を張る。 「所詮冥琳などひよっ子よ。儂のような宿将がいなくなっては、呉軍を運営していくのは一苦労。せいぜいこうやって嫌がらせするのが関の山じゃ」 「冥琳は祭さんの身を案じたんだと思うけどな」  子どもの体に酒を入れていいわけがない。  そもそも祭さんが小さくなってしまったことそのものを重視していなかったけど、これってすごい非常識なことだと思うし、何がどうなのかはっきりするまで、出来る限りのことは控えた方がいいんじゃないだろうか。 「何を知ったようなことを……。儂がいちいち冥琳ごとき若輩の言うことを聞いてたまるか」 「だからダメだって。俺も呑むのは反対」 「くっ、お主もか。やりづらくて敵わんな」  その言葉を言い置いて、祭さんが歩き出す。 「何処行くの?」 「そろそろ兵どもに訓練を付けてやらねばならんのでな」 「俺も付いて行こうか?」  祭さんの背中はいつものように覇気に満ちていたが、その小ささに何だか不安を覚える。 「……お主のような孺子に心配されるとはのう。いらぬ。決して付いてくるなよ」  祭さんの歩は止まらない。  どうしようかと一瞬迷ったが、結局付いて行くことにした。  ◇ 「全く、人の言葉を聴かん奴じゃな」  結局訓練場まで付いてきた俺に、祭さんは呆れたような声で言った。 「祭さんに似たんだよ」 「阿呆め……。儂の信条は「素直」じゃ……」  祭さんは真顔だったが、言葉の上ではニタリと笑っているように感じた。  そんな会話をしていると、部隊長のような人が寄ってきた。 「これは御使い殿、黄将軍をご存じないか? そろそろ訓練の時間なんだが、まだいらしてなくてな……」 「ああ、それはね……」  と続きを言う前に、俺に放たれたのと同等、もしくはそれ以上のローキックが飛んだ。 「うぎゃああああああああああああああっ!?」 「貴様の目は節穴か? 目の前におるじゃろうがっ!!」  これは俺の出番かなと、うずくまる部隊長とぽかんとする兵にこれまでの説明を試みる。 「実はね……」  ◇ 「こ、これが黄将軍?」  ざわざわと辺りが一気にうるさくなる。 「鎮まれ、この愚か者どもっ!!」  祭さんが一喝すると、ぴたりと鎮まる辺り、こんな姿になっても、ちゃんと将軍なんだなと思う。  兵たちも、自分たちが反射的に取った行動で、誰が自分たちの将なのか、理解したみたいだった。 「戦場で不変なものなどありはせぬ。現象は常に変動することを前提に、その本質が一体何なのか自分の眼で見抜かねばならん」  そう、お主らには教え続けた筈なのじゃがな、とため息をつく祭さん。 (いくら不変のものなどないと言ったって、自分たちの将がこんな美少女になってやってくるなんて誰も思わないよな……) 「ま、仕方ないのう」  ひとつ区切りをつけるよう言って、続けて「黄蓋軍、鶴翼陣で展開せよ」と号令を下した。  ◇  弓兵が動き、馬が疾駆する。  祭さんは射撃隊を率いているから自ずと弓兵が多いけれど、中には騎兵も存在する。これは、各部隊に対する伝令役の人たちだ。祭さんは、呉の大都督として全軍を率いることがあるから、その時に各将軍の部隊を手足のように操れるよう戦場を駆け回ったりする。  今回は模擬戦ということで、祭さんが大将となった軍と、先ほどの部隊長が大将となった二軍がこの戦場に展開している。  祭さんが寡兵を率いており、伝令役の人たちに指示を飛ばして寡兵ながらも軍をうまく軍を操って勝つ、その練度を確かめる、というような流れになっていた。  ◇  しかし──。 「何故伏兵が動かぬっ」  あるいは、 「そこは引いて友軍と合流せよと指示を出したではないかっ」  伝令兵が祭さんの指示を伝えきれなかったのか、部隊がちゃんと行動できなかったのかは判らないが、指示はことごとく実行されず、祭さんの部隊は負けてしまった。  ◇ 「なんじゃあいつらときたら……」  肩を怒らせて大通りを歩く祭さん。  祭さんは、あの後、兵を一同に集め、全員を叱りつけた。やる気はあるのか、自分がこんな姿になったからといってそれは言い訳にならない、と。  兵のしょんぼり具合を見ていると、祭さんの外見が幼いから言うことを聞く気がなくなったというよりは、美少女が将になってそっちに気をとられてしまったという感じに見えた。 (けど、それは祭さんの言うように関係ないことだよな……) 「酒でも呑まんとやってられんわ、おい店主」 「ちょっと祭さん?」  少し目を離した隙に、冥琳からの禁酒令を破ろうとする祭さんだったが、 「黄将軍、申し訳ございません……。実は周瑜様から……」  冥琳は既に街へと触れを出していたらしい。曰く「黄将軍が少女なってしまった。子どもの体に酒は善くない。黄将軍の酒好きを考えれば心苦しいことではあるが、買い求めてきても、決して売らないで欲しい」。 「周瑜様は本当にお優しい方ですね」  祭さんを想っての禁酒令に見える触れを受けた店主は、涙をうっすらと浮かべて冥琳を褒め称えた。 「わ、罠じゃ。そんなことはない、酒を呑んでも問題ないのじゃ」 「ダメですよ、黄将軍。周瑜様の御心を少しは考えてあげませんと」  外見に引きずられたのか、幼い少女に言い含めるかのようなことを言い出す店主。 「くっ……」  こうなったら祭さんに勝ち目などなかった。  同僚や自軍の兵には厳しいが、民に関しては守るものとして大切に扱っている祭さんにとって、これ以上押し通そうとすることは自分の信条に反することだった。 「おい、北郷」 「痛い、いたいって」  同僚にはまったく優しくない祭さんが、俺の耳を引っ張って囁く。 「お主、代わりに酒を……」 「ダメ」  最後まで聞かずに一蹴する。 「酒……」 「ダメ」  重ねて否定したことで頼みの綱が断たれたことを悟ったのだろう。 「ああ、もう、どうしろというのじゃっ!!」  憤懣やるかたないといった感じで地団駄を踏む祭さん。 (おもちゃを買ってもらえなかった子どもみたいだな) 「何をニヤついておるんじゃ、この阿呆」  祭さんの様子を微笑ましく見守っていると、つっこみが入った。 「別に。何でも」 「ふんっ」  鼻を鳴らす祭さんはすこぶる機嫌が悪そうだ。 「もう、今日のところは屋敷に帰った方がいいんじゃない? 寝て起きれば元の姿に戻るかもしれないんだし」 「この時分から寝ろじゃと? 誰がそんな……ふむ。なるほどな、そういうことか」  何が合点いったのか判らないが、祭さんはうむうむとすごく納得したように頷きを繰り返す。 「北郷がそう言うならそれに従ってやろうではないか」 「ありがとう?」  ふんぞり返って偉そうな少女の考えが読めず、取りあえず話を合わせる。 「その代わり、屋敷までは送ってもらうぞ?」 「……? それぐらい別に構わないけど?」 「善し、そうと決まれば早速ゆくぞ」  酒家が立ち並ぶ街路から本通りに出る。夕焼けが通りを照らしていて、人々はそれを一身に浴びながらどこかへ行こうと、あるいは今晩のご飯を買い求めようとしているようだった。  祭さんは、その間を縫うようにして歩を進める。何故、足取りが弾んでいるのかは判らないけどれども、今はただ祭さんについていくしかなかった。  ◇ ◇ ◇  キョロキョロ……  屋敷到着後、何故かお茶を出してくれるという祭さんの言葉に甘えて部屋までお邪魔してしまったのだが、 「何か緊張するな」  女性の部屋にひとり取り残されると、本当に居ていいのかなという気持ちになる。  ちなみに祭さんはお茶を煎れてくれていて、ここにはいない。 「武一辺倒かと思いきや、意外と書物もあるんだ……」  意外にも書棚がちゃんと設えられており、そこにはいくつも本が置かれていた。 「将たるもの、書にも通じておかんと仕事にならんからな」  いつの間にか戻ってきていた祭さんが、盆に乗った茶器を突き出してくる。 「本来なら家人にやらせるところだが、今回は特別じゃ」 「ありがとう」  祭さん自ら煎れてくれたお茶をずずずと飲む。 「おいしい」 「そうか、そういってもらえると、少しは嬉しいの」  もうひとつの茶器を手に取り、ずずずとお茶を飲む祭さん。そこで飲むのを止めて、茶器を置くかと思いきや、そのまま全部飲み干してしまう。 「さてと」  そういって立ち上がり、服を脱ぎ出す祭さん。 「ちょっとっ!?」  少女の裸身がうっすらと夕焼けの中に浮かび上がる。普段の祭さんからは考えられないぐらいに胸が薄く、また下部も、もちろん陰毛などは生えていなかった。小蓮より幼い、子どもの裸がそこにあった。 「何を驚いておる。お主の提案じゃろうが。寝て起きれば姿が元に戻るかも、と」 「それは確かに言ったけど」  この事態と何の関係が、と首を傾げていると、 「寝る前にヤることがあるじゃろうが」  こんなむしゃくしゃしているときに、そのまま寝られるものか、と祭さんは蠱惑的な笑みを浮かべた。 「でも、俺は……」  ちょっとこの祭さんは子どもすぎると思う。シャオ相手ですら少し罪悪感が湧くときがあるのに、さらに幼いとなると……。 「また、それか」  祭さんがむっとした声を出す。 「いかに子どものナリをしていようと、儂は儂じゃ。その本質を見ずに、何かを判断して、それに何の意味がある?」 「祭さんの姿は、現実的に子どもであって……」 「ふんっ」  俺の言葉を一笑すると、祭さんは、自分の秘部に手をやって、その周囲をくりくりと刺激し始めた。  もう片方の手は、薄い胸の頂点にある、小さな乳首を捉えていた。 「ふっ、あっ……」  少女の口から漏れる、あえぎ声。  その3つの刺激に、股間のモノがむくむくと大きくなってしまう。 「それがお主の本質じゃ。女であれば、たとえ少女であっても股間を大きくしてしまう」 「ち、ちがっ」 「違わぬ。ほれ」 「うわっ」  素足で俺のモノを踏みつける祭さん。 「十分硬くなってきておるではないか。これを使って儂を犯したいのであろう?」 「いやだ……。俺は今の祭さんは抱かない」 「何じゃと? ここまで大きくしておいて、何を今更」 「今更でも、これは生理的反応だから。気持ちが祭さんとしたいと思わない今、諾とは言えない」 「良く言った。じゃが儂は儂がやりたいようにやるだけじゃ」  祭さんがそういった瞬間に、意識が遠のいていくのを感じた。 「何、極少量じゃ。すぐに覚める」  何のことを言っているのか、眠りかけの頭では理解できないまま、俺の意識は途絶えた。  ◇ 「んふっ……んむむぅっ、ちゅっ、じゅるるっ……んく、んっ……」  股間に甘い刺激を感じて、目が覚めた。 「れろっ、んっ、むっ……んむっ、ちゅぷっ……ちゅるっ、んっ、よ、ようやくお目覚めか、ぺろっ、ちゅむっ……」 「ううっ……」  あの後を思いだそうとすると、ズキっと頭がいたんだ。どちらにしても、祭さんのベッドに転がされてしまっている今がさっきまでの続きなのだろう。 「って、ちょ、ちょっと祭さんっ!?」 「ふっ、んふぅ……、なんじゃ、今いそがしいんじゃ、ぷあっ、込み入った話なら後にしてくれぬか。ちゅっ、じゅるるっ……んく、んっ……」  そう言って、またペニスに顔を埋める祭さん。 「くっ……」  幼い顔に反して、そのテクニックは従来の祭さんそのもので、すぐに射精してしまいそうなほど気持ちいい。 「んぢゅっ、ちゅる、ちゅぷっ、んむむっ……んっ、はぁっ……あんな偉そうなことを言っておきながら、このそそりたちよう。北郷はこんな子どもにイカされてしまうのか?」  口を離して、唾液に濡れた亀頭をしごいてくる。細い指がきゅっきゅと亀頭をこすり上げるのを見ているだけで、いやらしい気持ちになってくる。  だけど、 「じゃ、やめてよ、俺はこんなこと望んでない」 「ふん、その強がりがいつまで持つかの? んっ、ん……れろっ、んっ……れろっ……ぺちょっ……」  亀頭と尿道口を重点的に舐める形で、口での奉仕が再開された。 「んっ……ちゅるっ……ふふっ、何かにじみ出てきておるぞ? ぺろっ、れろっ……んっ、っれろっ……」  先走りに気を良くしたのか、小さな口で、ペニスにキスを降らせる祭さん。 「んっ、んむっ……、んちゅっ……じゅっ、ちゅっ……ちゅっ……」  幼い少女、しかもやたらに可愛い女の子が自分のペニスに傅いているという光景にくらくらしてしまう。 「さらに肥大化したのう。……この変態め」  そう言うと、祭さんは、髪を掻き上げ、のど元に到達するんじゃないかというぐらいに深く銜えてきた。 「はっ、ん、じゅるっ、れろっ……もごっ……ちゅっ……ん、んっ、んっ……」  熱い唾液とぬちょぬちょの口内粘膜が肉棒にまとわりついてくる。 「じゅるっ、ずずっ、んじゅっ……、ちゅっ、じゅるるっ……んく、んっ……」  加えて、空いていた手で肉棒と玉をやわやわと揉み始める祭さん。  出来る限りの愛撫でイかせようとするそのやり口に、射精欲求が徐々に高まってくる。 「んぢゅっ、ちゅる、ちゅぷっ、んっ、んっ、ぺちょっ……んじゅっ、はっ……どうしたのじゃ、腰が動いておるぞ?」 「そんなこと、」  と言いかけたものの、祭さんの口内奉仕の余りの気持ち良さに僅かだが動いてしまっていた。 「んむっ、んっ、れろろっ……ちゅぱっ、ちゅっ、じゅるるっ、んちゅっ、んんっ……んっ、ちゅぷっ」  俺の罪悪感を打ち消すように、祭さんがさらに肉棒への刺激を強めてくる。 「うあぁっ……だ、ダメだよ、そんなにしちゃ、また腰が動いちゃうよ……」  このまま祭さんの頭を掴んで亀頭を喉奥に突き込みたい、ドロドロの白濁液を口内に吐き出したいという歪んだ欲望が鎌首をもたげる。 「ふむぅっ、じゅるっ、んじゅぅっ、おぬひのふきにひてっ、ぢゅるっ、よいぞ?……、んむっ、ちゅぱっ、むっ、んんっ……」  祭さんは、俺の好きにしていいと言ってくれたみたいだけど、それが困るという話であって……、 「くっ……」 「んむっ、んっ、れろろっ……ちゅぱっ、ちゅっ、じゅるるっ、んちゅっ、んんっ……んっ、ちゅぷっ」  祭さんの苛烈を極める口内奉仕に、肉棒の疼きが我慢できなくなってくる。 (だけど、出してしまうわけにはいかない……)  しかし、そう思う傍からそれを打ち崩そうと、可愛らしい口唇と舌、そして口内全体を使って、祭さんが、射精を促してくる。 「はぁっ、はぁっ……んくっ、はぁ……の、飲んだ方が良いかの? それとも顔にかけたいか……?」  それは悪魔の囁きだった。そのどちらでもない「今すぐやめてほしい」を本来選択すべきなのに、ペニスに感じるむず痒い感覚の前に、「全部飲んでほしい」と思わず口走っていた。 「判った。ちゅぱっ、くむっ……じゅっ、ぢゅっ、ちゅぷっ……んっ、んんっ……じゅるるっ、ん、ちゅっ」  祭さんが頭を前後させ、ぐじゅぐじゅに濡れたペニスを口唇でしごきたてる。  ともすれば自分が腰を動かして、祭さんの口内を犯しているんじゃないかと錯覚してしまうほどだ。 「うっ……くっ」 「んふっ、ふっ、むっ……んっ、ちゅぱっ、ぢゅるっ……んんっ、んじゅっ……ん、ん、んっ」  根元を揉み込む祭さんの手。 「ああっ、もうイくっ、イくよっ……」 「ちゅるっ、れろろっ、んむっ……ぢゅるっ、んにゅるっ、ん、じゅるるっ、ちゅ、ぺちょっ、れろっ……」  鈴口近くを念入りにねぶられたのが決定打となり、ついに高ぶりが限界を迎えてしまった。 「うっ、……も、出るっ! 祭さんの口の中に出すからっ……全部っ、飲んでっ」 「んむっ、むっ、ん、んんっ、じゅっ……ちゅむっ、ちゅぱっ、じゅるっ、んむぅっ……ちゅっ、じゅっ、じゅるるっ!」 「うっ……ぉっ、あっ、あああああっ!」  その快感に、俺は堪らず腰を押し出し、肉棒を祭さんの口の奥に突き入れてしまった。  ドピュッ……ブピュッ……ドクッ、ドクッ…… 「んくぅっ!? んっ、……んぐっ、んっ、んぐぅっ、ん、むっ……んんぅ、んくっ、んくっ」  白濁液を喉奥に叩きつけられ、目を白黒させていた祭さんだったが、なんとか体勢を立て直したようで、コクコクと喉を鳴らして嚥下し始める。 「んぐっ、んっ、んぅ、ん、こくっ、んくぅっ……んっ、んふっ」  蠕動する祭さんの喉を通っているのが自分の精液だと思うと、なんだか堪らなくなる。  しかし…… 「んずっ、んぐっ、ん、んぅ……んふっ」  いつになったら止まるんだろう。余りの気持ちよさのためか、なかなか射精が終わらない。  俺は、全部飲んで、なんて言ってしまったことを早くも後悔していた。 「祭さん、苦しかったら吐き出してももらっても大丈夫だよ?」  祭さんは首を振り、ドロドロの白濁液を嚥下し続ける。 「んっ、んぅっ、んく……んくっ、ん……んっ、んっ……」  ようやく吐精が終わり、祭さんが俺の肉棒から口を離す。 「んぅっ……ん、んっ、んっ……んはぁっ、はぁっ……はっ、はぁっ……はぁっ……」  苦しそうに胸を押さえながら、空気を吸い込むその姿に罪悪感が湧いてくる。  その姿の通り、今の祭さんは幼い少女であり、その体で出来ることしか、やれないわけで。 「ごめん、祭さん、結局俺……」 「そうじゃな。お主は結局、肉欲を儂にたたきつけたのう」  いったん言葉を切る祭さんだったが、すぐに、 「と罵ろうと思うたが、そんな顔をされては、文句を言うに言えぬではないか」  まったく、ともう一度股間に口を付ける祭さん。 「って、祭さんっ!?」 「んっ、んっ、んちゅ……」  手で優しく扱き、尿道に残った精液を絞ってから、舌でちゅぱちゅぱと亀頭を舐め上げる。  その愛撫に、萎えかけていたペニスが急激に硬くなっていく。 「んっ、んっ……ちゅっ、れろっ、ぺろっ、ん……」  精液が尽きたあとも、祭さんは、亀頭を口唇と舌で愛撫し、怒張をよりそそり立たせようと奉仕を繰り返した。 「すぐこんなに硬くしおって、この変態め」  くいくいっと亀頭付近に刺激を加える祭さん。  その言葉で、ずしんと重いものが胸に落ちてくる。 「……悪いと思うなら、そしてもう一度硬くしたのなら、ひとりだけ気持ち良くなるのではなく、……儂も気持ちよくせぬか」  ベッドに倒れ込み、自分でM字に足を抱えた祭さんが、俺を誘ってくる。 「……こう?」 「んっ……」  亀頭をワレメにセットすると、溶けた秘裂からトロトロと淫液が流れ落ちてくる。 「そ、そうじゃ……」  祭さんの目を捉えたまま、肉棒を花弁にこすりつけていると、恥ずかしくなったのか、ふいっと視線を逸らされてしまった。 「ん、んんっ……いつまで遊んでおるんじゃ、早うせよ」 「でも、祭さん、この体じゃたぶん痛いよ……?」 「……北郷は変態じゃからすぐに気持ちよくしてくれるのじゃろう?」 「……判ったよ。なるべく優しくするから。祭さんも、楽な姿勢で俺を受け入れて?」 「う、うむっ……」  祭さんの腰を引き寄せ、挿入の姿勢を取るが、そのとたん、祭さんの身体がビクンと強ばった。  何だかんだ言っても、この体では初めてなのだ、怖いという気持ちもあるだろう。 「まだ大丈夫だよ、挿れてないから、安心して?」 「べ、別に怖がってなどおらぬ」  熱く潤んだ縦スジを亀頭でくにゅくにゅと愛撫し、祭さんの心と身体を一緒にほぐしていく。 「んっ、あっ、……そ、そんな変態的な行為に及んでおらず、早う挿れぬか」 「判った。そろそろ沈めるよ……」 「あん、あっ、あ、野太いモノが入ってっ、くっ……」  祭さんのワレメを開き、処女肉を味わいながら、いきり立ったペニスを奥へとめり込ませていく。 「くうぅっ、んぐっ、い……、いっ、たっ、痛いっ……」  わずかな隙間をこじ開けるように、少しずつ腰を押し出す。  肉棒に絡む愛液のお陰で、思ったほど動きにくいということもなかったが、それでも肉穴の狭さは尋常じゃなかった。 「ぁっ……、ひぐっ、たっ、んっ、んぐっ……」  痛みに顔を歪める祭さん。しかし、俺が遠慮するのを恐れてか、直接言葉にすることは避けているようだった。 「もう少しで奥まで入るから……」  祭さんはぎゅっと目を瞑って僕の言葉に頷く。  ズプッ、グニュヌ……  ゆっくりと腰を押し進めていくと、先端に薄い膜のような抵抗を感じた。  今の祭さんが処女であるという証。 「あぐっ……ふっ、ぁっ……はぅっ、あっ、くぅ……」 「行くよっ……」  苦しそうに喘ぐ祭さんを抱きしめ、一気に突き破る。 「ふあぁぁぁっ────!!」  破瓜の痛みに悲鳴を上げる祭さん。  純潔を示す血が一筋、秘所から流れ出てくる。 「……入ったよ。奥まで押し広げられてるの判るでしょ?」 「はぁっ……ぁっ、はっ……中がっ、お主のモノでいっぱいになっておるっ、んっ、んぁっ……」  祭さんの媚肉がギチギチとペニスを締め付けてくる。  その快感に、今すぐピストンをしたくなるけど、苦しそうな祭さんを見る限りは無理だ。 「どんな感じかな?」」 「んっ……しょっ、正直なところ痛いの……。お主、こんな凶悪なモノを持っておったのじゃな。んくっ……貫かれたときは……殺されたかと思うたわ……」  ペニスをギチギチにくわえ込んでいる膣口を愛撫していくと、徐々に滑りやすくなってくる。 「ん、んっ……ふくっ、動いても大丈夫じゃぞ……?」  その言葉に膣穴から半分ぐらい肉棒を出し、初挿入と同じぐらい時間を掛けてゆっくり沈める。  グッ……、クチュ……ヌププッ…… 「ふぁっ……あっ、んぁっ……ああっ」  微速で膣壁をこすられ、可愛らしい喘ぎ声を上げる祭さん。  痛みで苦しんでいるというふうにはあんまり聞こえない。 「ひょっとして、もう大丈夫?」 「なっ、なんとかっ、なっ……」  こくこくと祭さんが頷く。  その反応に、祭さんの腰や下腹を撫でながら、ゆったりと抽送を開始する。 「んっ……うぅんっ、あっ、ああ、あ……んんんっ」  亀頭が見えるぐらいまでペニスを抜き、そして、膣の奥深くまで挿入するという長いストローク。 「ふあっ、ぁっ……あ、あ……んっ、ん、んんっ……」  綺麗なピンク色の膣壁が捲れ上がる度に、祭さんは、身を捩り、快感を口にする。 「そう言えば、まだ胸触ってなかったね」 「んっ、あっ……な、何をっ」  祭さんの可愛い乳首にそれぞれ人差し指を置いてみる。 「いい?」 「い、今更何を……。す、好きにしたら良かろう……」  祭さんの許可を得て、柔らかい胸の中心にある小さなポッチをクニュクニュと回す。 「ふくっ、うんっ、んっ……ふぇっ、ふぁっ」  俺の行為はさらにエスカレート。祭さんに覆い被さり、乳首に舌を這わせる。 「ふぁぁっっ!?」  舌の先や腹で突いたり押しつぶしたりしながら適度に唾液を染み込ませ、おもむろに桜色のとんがりを吸った。 「何を、ちゅうちゅう言ってるのじゃっ、……こ、この変態めっ!!」  本当ならここで「祭さんのおっぱいがいやらしいのが悪い」などと軽口を挟むのだが、あいにく口が塞がれているので、それは出来ない。 「んぁっ、うきゅっ、し、しごきすぎじゃっ……いい加減、やめんかっ」 「……じゃ、今度はこっちね?」  膣奥で待機させていた肉棒をぐっと引き出し、また突き入れる。  すると、今まで溜め込まれていた分の愛液が、じゅぷじゅぷっと大きな音を立てて膣から噴き出てきた。 「あっ、ああっ、んあぁぁんっ!! 太くて硬いのがっ!!」 「さっきまで痛いって言ってたのに、もう大丈夫なんだね」 「ふぁ、い、痛がってなどっ、おらぬっ、んっ、んあっ……んくぅぅっ」 「そうなんだ?」 「決まっておろう、もっと激しくしても問題などない……」 「それじゃそうできるように、体位を変えるね」  俺は中に挿入したまま、祭さんの小さい身体をくるりと転がし、足をもう少し開くよう指示を出す。  次いで、下腹部が祭さんのヒップに当たるぐらいペニスを深く挿入し直して、後背位の体勢を整えた。 「んあっ、な、なんという格好をさせるのじゃ……」 「誘ったの、祭さんでしょ」 「そ、そういう問題ではっ……んっ、んんっ、あんっ、あっ、ああっ」  打ち込みを再開すると、すぐさまいやらしい喘ぎ声が上がった。 「ああぁあぁっ、あんっ、あっ、あっ……んふぅぅっ、んっ、んあぁっ……」  腰からお腹、お腹から胸へと手を滑らせ、その小さなおっぱいを後ろから鷲づかみにしながら、熱く潤んだ秘所を攻め立てる。  膣内が窮屈なことに変わりはなかったが、最初に比べれば、だいぶ動きやすくなっていた。 「んっ、んんっんっ、んっんぅっ、んはぁっ……あっ、あんっ、あっ」 「随分と気持ちよさそうな声だね」 「うぅんっ……うんっ、き、気持ちいいっ、北郷のモノが気持ちいいのじゃっ」 「さ、祭さんの膣内もっ」  狭いだけあって、どこをどう突いても、その快楽からは逃れられそうにもない。 「ふあっ、ん、んんっ、ひぅっ、ひああああっ」  ぐいっぐいと肉棒を押し込むたびに、祭さんが、あられもない嬌声をこぼす。  その様子を見ていると、もっと強くしてもいいような気がしてきた。 「まだ強くしても大丈夫?」 「う、うむっ……ああっ、もっと激しくしても問題ないっ……」  それなら、と、打ち据えやすいよう腰に手をやって、ピストンを開始する。  やわら激しくなった抽送に身体を木の葉のように揺らす祭さんだったが、それでも痛いとは言わなかった。  逆に股間からエッチな汁を滴らせ、際限のない悦楽に、全身をわななかせる。 「ひっあぁんっ、ひぅっ、ふあっあっ……奥まで来るっ、いっぱい来てるぅっ」  堪らず敷布をぎゅっと握りしめる祭さん。ベッドに走る皺が、より深くなっていく。 「んくっ、あっ、ああっ……」  獣欲に突き動かされ、必死に腰を祭さんのお尻に叩きつける。 「んふぅうぅぅ、はあっ、はあぁああっ、もうイってしまいそうじゃっ……」 「俺もっ、あと少しだから、それまで我慢してっ」 「んんんっっ……んぁっ……」  祭さんの身体がグッと強ばる。  さっきみたいに緊張や痛みからではなく、イきそうになるのを堪えるためだ。  しかし、そうやって身体に力を入れた結果、オマンコの締まりも良くなってしまい、さらに性感が高まるというジレンマに陥ってしまったみたいだ。 「ひゃぁうっ、うあっ、ああっ、早くっ、早くぅっ」  祭さんが声を上げて、吐精をせがむ。  ぬめった媚肉を割り、膣奥に亀頭を突き込むたび、ぎしぎしとベッドが軋む。 「んあぁっ、あんっ、あっ、北郷のモノがっ、震えてるっ」 「ああっ……出るよっ、たくさん出るっ……祭さんのっ、中に出していいっ?」 「あっあぁぁっ、んっ、うんっ、うんっ」  祭さんの膣内を精液で満たしたいという欲求に従い、腰と尻が密着するぐらいまで、肉棒を突き入れる。  その瞬間、ペニスが暴発するような感覚に襲われた。 「んぁああっ、あっ、あ、あ、あああああぁっああっっ―――!!」  びゅくんっ! ぶぴゅっ、どぴゅっ……  ビュクビュクッとペニスが脈動し、堪えに堪えた獣欲が、その先端から噴き出る。  快感と達成感がない交ぜになった射精に、俺はみっともない呻き声を上げてしまった。 「うくぅぅっ、き、気持ちいいっ、すごく気持ちいいよっ……」  びゅっるっ、ぴゅっ…… 「ふあぁあっ、せっ、精液がお腹の中に入ってくるっ、あっ、熱いぉっ……」  少しでも多くの快感を得ようと、俺は、密着した状態で腰を揺すった。 「ああっ、あんっ、ぐちゅぐちゅかき回されてるっ……熱いのでっ、いっぱいのお腹がっ、かき回されてるっ……」  祭さんの小さな蜜壺からボトボトと精液がこぼれ落ちてくる。  その様子を見て、精液をこんな幼い祭さんに出したんだという実感が湧いた。 「んぁあっ……あぁっ、はぁっ……はぁっ……んぁっ、ぁっ」  今まで頑張って四つんばいを続けてきた祭さんだったが、ついに耐えきれなくなったのか、崩れ落ちるようにベッドに突っ伏した。  それに合わせるように、俺もベッドに倒れ込む。 「はぁ、はっ……、はぁ、まったく、ケダモノみたいな奴じゃな」  ポツリと祭さんが呟いた。 「それはいくらなんでもヒドイんじゃない?」 「そんなことないぞ」  もぞもぞと体を動かし、俺の胸に頭を乗せてくる祭さん。 「?」  普段、というか、いつもは、終わったあと手をつなぐぐらいしかしないんだけど…… 「……こういうのも、やってみたかったのじゃが、何分いつもの体では重いかと思うてな」 「…………ぷっ」 「笑うな」 「だって……、気使いすぎだよ、それ」  そういうことなら、と思って、祭さんの頭を撫でてみる。 「こ、こら調子に乗るでない」 「今だけ、今だけ」  そう、今だけだ。祭さんもいずれ、いや、ひょっとすると、次に目が覚めたときはいつもの状態に戻っているかもしれない。  それなら今しかできないことは今やっておくべきだろう。 「まったく」  結局北郷は変態なのじゃから、などと言いながら、祭さんは結局されるに任せたようだ。 「変な一日じゃった」 「そうだね」  朝早くに目が覚めてみれば、いきなり蓮華がきて、連れて行かれたのが朝殿で、そこには子どもになってしまった祭さんが居て、訓練に付き合ってみれば、兵は祭さんの言うことを聞かなくて、そして。 「もう、儂は寝るぞ」 「うん。俺もこのままここで寝ていい?」 「……今更枕を用意するのも億劫じゃ。このまましばし枕になっておれ」 「わかった。だけど、今だけだからね?」  そんなの許さぬ、と祭さんはぽつりと呟いた。 「……このまま戻らなかったら、何度となく枕になってもらうからの。覚悟しておれ」  未来のことは判らない。だけど、こんな展開も悪くないんじゃ、と思いながら、ふたりで夢に落ちた。 <了>